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2019 年度 卒業論文要旨集 - toho-u.ac.jp ·...

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情報科学科 2019 年度 卒業論文要旨集 2020 2 12 理学部
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情報科学科2019年度

卒業論文要旨集

2020年 2月 12日

理学部

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2019年度 情報科学科卒業研究発表会 プログラム

5208教室 5209教室 5210教室

数藤 研究室 (6)

9:00 - 10:00

伊藤 研究室 (4)

9:00 - 9:40

ナチェル 研究室 (4)

9:00 - 9:40

我妻 研究室 (6)

10:10 - 11:10

豊田 研究室 (5)

9:50 - 10:40

日紫喜 研究室 (5)

9:50 - 10:40

松島 研究室 (6)

11:20 - 12:20

木村 (泰) 研究室 (7)

10:50 - 12:00

白石 研究室 (5)

10:50 - 11:40

  新谷 研究室 (2)

11:50 - 12:10

昼休み

12:20 - 13:00

昼休み

12:00 - 13:00

昼休み

12:10 - 13:00

足立 研究室 (6)

13:00 - 14:00

金岡 研究室 (6)

13:00 - 14:00

白柳 研究室 (6)

13:00 - 14:00

菊地 研究室 (6)

14:10 - 15:10

佐藤 研究室 (7)

14:10 - 15:20

並木 研究室 (6)

14:10 - 15:10

木村(大)研究室 (5)

15:20 - 16:10

中島 研究室 (6)

15:30 - 16:30

高田 研究室 (6)

15:20 - 16:20

発表時間:10分 (発表 7分,質疑応答 3分)研究室交代:10分

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目次

5208教室 1

数藤研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2

我妻研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5

松島研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8

足立研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10

菊地研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12

木村 (大)研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14

5209教室 17

伊藤研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18

豊田研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 20

木村 (泰)研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 22

金岡研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 25

佐藤研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 27

中島研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 30

5210教室 33

ナチェル研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 34

日紫喜研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 36

白石研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 38

新谷研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 40

白柳研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 41

並木研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 43

高田研究室 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 45

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5208教室

数藤研究室

我妻研究室

松島研究室

足立研究室

菊地研究室

木村(大)研究室

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数藤研究室

カット点を含む動画の時空間超解像5516058 平良 大輝

スマートフォンなどの普及により生活のワンシーンを撮影する機会が増えてきた.それにあわせてボールを

投げる瞬間や捕る瞬間など,自分の目では捉えられないような動画の需要が高まっている.近年では通常のカ

メラで撮影した動画をオプティカルフローなどから動きを推測することでスローモーションの動画にする時空

間超解像という研究が行われている (Jiangら, 2018).しかし,対象となる動画がカット点を含む不連続な場

合は整合性のないものになってしまう.そのため本研究ではカット点の有無によらず整合性のとれた時空間超

解像を行うことを目的とする.

本研究では,Jiang らの手法をベースとして,動画をフレームごとの画像群に分割し,連続した二枚の画

像から U-net を用いてオプティカルフローと visibility map(可視性マップ)を推定する.さらに,得られた

visibility mapを特徴量としてカット点かそうでないかを区別する手法を提案し,カット点を時空間超解像の

対象としないことで整合性の取れた動画を生成する.最後に,カット点を含む動画のデータセットを用いて提

案手法の有効性を検証する.

実画像の色調に基づく線画の自動着色5516065 田中 亜実

近年,機械学習の技術を応用し,画像を生成する研究が数多く提案されている.最近では,PaintsChainer

という Generative Adversarial Network(GAN)を用いた線画の自動着色サービスがリリースされ,注目され

ている.しかし,これはアニメーションの人物等に限定して学習されており,他の一般的な物体の線画には色

調が合わない.本研究では,GANで着色画像を生成するのではなく,入力した線画と類似した構図の写真か

ら抽出した色を対応する領域に着色する手法を提案する.まず,線画の構図と類似する写真を検索する.次に,

線画と検索した写真,それぞれのオブジェクト領域をマッチングして位置を揃える.最後に,Delaunay三角

形分割やスーパーピクセルを利用し,写真から小領域ごとに色を抽出,線画への着色を行う.本研究では色や

形状の種類が豊富な「ケーキ」を着色対象とし,ケーキの写真,写真をなぞり作成した線画,これらを対応さ

せた新たなデータセットを作成した.ケーキのデータセットを利用した画像検索を行い,この検索写真を用い

て線画に着色した結果について評価実験を行い効果を確認する.

– 2 –

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人物の骨格情報を用いた動画生成5516021 円城寺 祐太

近年,動画の生成や動画の冒頭部分を入力として続きの動画を生成する動画予測など,深層学習を用いた動

画生成に関する研究が行われている.こうした動画生成技術は,画像生成の技術が自動着色などの画像の制作

補助に用いられているように,動画の制作補助ツールの技術として有望であると考えられる.しかし,これま

でに提案されている動画生成のモデルでは,人物を含む動画に適用した場合に,人物の全体の構造が生成途中

で破綻や消滅してしまうという問題がある.

本研究では,対象を人物に絞り,骨格情報を用いて動画生成を行うことにより生成動画の構造的破綻や消失

を起こりにくくすることを目的とする.動画生成モデルの一つであるMoCoGANにおいて動画生成時に骨格

情報を使用できるようにモデルに拡張を施した.

ワイヤフレームとの同時学習による単一画像からの深度推定5516107 水沼 佑太

これまで深度推定はセンサによるリアルタイム計測や,ステレオ撮影された画像からの再構成により行われ

てきたが,既に撮影された単一画像からの深度推定は困難である.近年では,単一画像からの深度推定手法と

して深層学習を用いたアプローチが多数示されているが,学習データの三次元構造の情報が不十分な場合には,

物理的な矛盾を生じる恐れがある.

そこで本研究では,物理的な矛盾の減少を目的として,人工物における構造の情報を同時に学習する深層学

習ベースの手法を提案する.具体的には,人工物における構造の情報としてワイヤフレームを利用し,深度情

報とワイヤフレームを同時に学習するネットワークを構築する.これは,三次元空間における平行な直線群は

画像中において消失点へ収束することから,概ね平行な直線で構成されるワイヤフレームは深度情報の補完に

有用であると考えられるためである.評価実験では,構築したネットワークを用いて深度情報のみで学習した

場合との比較をし,効果を検証する.

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テキスト領域の幾何学的補正による自然画像中の英単語の検出と認識5516068 寉岡 昂佑

近年の深層学習を用いたテキスト検出の研究は,紙に書かれたテキストを読み取るだけでなく,自然画像内

のテキストを読み取れるものも多くなっている.しかし,自然画像の中には,任意の方向を向いていたり,湾

曲をしていたり,独特なフォントが使用されているなど,不規則なテキストが多く存在する.その様々な形状

のテキストに対し,検出や認識を行うのは困難である.

本研究では,自然画像中の湾曲したテキスト内の単語に着目し,検出と認識の精度の向上を図った.セグメ

ンテーションにより湾曲した単語の検出を可能にする PSENetという検出器と,不規則に歪んだ単語を含んだ

画像を水平に修正してから認識をするMORANという認識器を組み合わせて検出と認識を行なった.実験に

より,通常の水平な単語の認識に加え,従来では困難だった湾曲した単語の認識が可能であることを示した.

また,認識された英字の単語を日本語に変換をする機能を追加し,日常生活での使用を考慮したシステムの構

築を行った.

うさぎの動作認識のための姿勢推定モデルの生成と学習5516002 阿部 亮河

近年家庭用ペットの多様化により,犬や猫だけでなくうさぎなどの小動物を飼う割合が増えている.しかし,

うさぎはケガや病気を隠してしまう習性があり,飼い主がそれらに気づきにくいことが知られている.飼い主

が常にペットを見守ることは現実的に難しく,それらを解消するために,飼い主が見ることができない間,カ

メラで観察することで飼い主の負担を軽減することが望まれる.しかし,カメラを用いた動作認識技術は人物

を対象としたものに限られており,小動物への適用事例はみられない.

そこで本研究では,小動物の動作認識手法を確立することを目的とする.小動物の動作においても人間と同

様に姿勢推定が重要であると仮定し,まず姿勢推定情報の取得を目的とする.うさぎの画像と関節位置情報か

ら成る独自のデータセットを構築し,ニューラルネットワークを用いた人姿勢推定手法を適用し実験した結果,

姿勢推定情報が良好な精度で得られることを確認した.

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我妻研究室

深層学習を用いたヒト視線位置予測のモデル5516102 増本 真子

ヒトは視覚空間中の最も重要な位置に焦点を当てる。この機能が注意選択である。注意選択のメカニズム

をヒト視覚情報処理系に基づき実現したモデルが Saliency Mapである。近年では、機械学習的手法を用いて

Saliency Map を出力させる研究も行われている。特に、機械学習の手法のひとつである深層学習 (ディープ

ラーニング)と深層畳込みニューラルネットワーク (Deep Convolution Neural Networks, DCNN)は、ヒト

を超える識別能力などを計算機に獲得させる。しかし、DCNNが獲得するモデルの情報処理メカニズムの詳

細は不明瞭である。

本研究では、自然画像に対するヒトの固視画像とその分布データを DCNN に適用することで、Saliency

Map の出力を試みた。さらに、活性化関数が出力させる Saliency Map の特性に与える影響を検証し、特に

Swish活性化関数を通して層間の連結を活性化させた。DCNNに獲得させた Saliency Mapモデルは、生体の

視覚情報処理メカニズムに基づくモデルと比較して、より高い精度でヒトの視線位置を予測した。また、一般

的な活性化関数を用いた先行研究とは異なる傾向を示す Saliency Mapを出力した。これらの結果は、活性化

関数が、Saliency Mapを出力する DCNNが獲得するモデルのメカニズムに重要な役割をはたす可能性を示唆

する。

図方向を統合する細胞集団の Saliencyモデルの発展5516113 山田 碧

生物は、画像中の最も重要な場所に焦点を当て、そこを重点的に処理、理解する。この機能が注意選択で

ある。大脳視覚野のメカニズムに基づき、注意選択のメカニズムを再現するモデルが顕著性マップ (Saliency

Map)である。顕著性マップには Ittiら (1998)や Russelら (2014)やWagatsuma(2019)の提案したモデル

が存在している。

本研究では、Wagatsumaの計算モデルを発展させ、より複雑な画像に対応した Saliency Mapを算出する

境界所有統合のモデル細胞の実現と図方向統合特性を検証する。具体的には、ランダムに生成したガウシアン

を組み合わせることで、境界所有を統合するモデル細胞の図方向統合特性を決定した。100000個の境界所有を

統合する注意選択決定のモデル細胞を生成した。このモデル細胞の反応により、注意選択領域が決定される。

各モデル細胞が示す Saliency Mapと自然画像に対するヒトの注視位置を計測した固視画像間の相関を指標と

して、ヒトの注意選択特性を再現する図方向統合特性を検証・選定した。ヒトの固視画像をよく再現する図方

向統合特性を持つ 100個の注意選択決定のモデル細胞が協働する Saliency Mapを構築した。さらに、自然画

像を本研究が提案するモデルに適用し、算出された Saliency Mapとヒトの固視画像を定性的に比較した。

– 5 –

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図方向統合に基づくヒトの面知覚メカニズム~第 4次視覚野の計算モデル~5516103 松岡 智也

ヒトの図方向統合に基づく面知覚メカニズムを計算論的に研究した。画像に含まれる物体領域 (図) と背

景 (地) の境界となるのが輪郭である。輪郭から物体が存在する方向を決定すること (図方向決定、(Border

Ownership;BO))はヒトの物体認識処理において重要である。BOは輪郭上の局所的な一点における図の方

向を表現するものであり、物体領域やその面領域を知覚するためには輪郭上で決定された BOを統合すること

が必須となる。BOを統合する情報処理は、大脳第 2次視覚野 V2よりも高次の第 4次視覚野 V4で行われて

いると考えられるが、そのメカニズムは解明されていない。そこで、本研究では、局所的な図方向である BO

を統合する皮質メカニズムを計算論的に検証した。具体的には、周囲変調に基づく V2の BO決定メカニズム

を、BOを統合する V4モデル神経細胞へと適用した。提案する V4の面領域決定モデルを実装し、シミュレー

ションを行った。適切な BOを輪郭へと割り当てた正方形と長方形に対して、提案モデルはその図領域に強い

反応を示した。このシミュレーション結果は、ヒトの知覚特性と定性的に一致する。これらの結果は、ヒトの

面知覚の起源となる BO統合の皮質メカニズムを示唆する。

脱抑制神経回路に起因するBorder Ownership選択性細胞の同期特性解析5516053 下村 遥

物体とその位置を理解するためには、物体(図)と背景(地)を分離することが不可欠である。この図決定の

機能を担う細胞がサル中高次視覚野で発見された (Border Ownership(BO)選択性細胞; Zhou et al., 2000)。

近年、BO 細胞の同期発火が図決定に重要な役割を果たすことが電気生理学実験により報告された (Martin

and von der Heydt, 2015)。高次視覚野からのフィードバックと視覚皮質間の信号伝達特性に基づく神経回路

モデルは、この BO細胞の同期発火特性を良く再現した (Wagatsuma et al., 2016)。しかし、このモデルは興

奮性モデル細胞のみで構成される。そのため、抑制性細胞の活動が同期発火にどのような影響を及ぼすかは、

まだ未解明である。本研究では、2 種類の抑制性細胞 (SOM, VIP) が動作する脱抑制の神経回路モデルを構

築し、BO細胞の同期メカニズムを検証した。VIP細胞が SOM細胞へと抑制結合を持つ一方、SOM細胞は

BO モデル細胞を抑制する。さらに、高次視覚野からのフィードバックが VIP 抑制細胞を活性化させること

で、BOモデル細胞の活動が変調される。シミュレーションの結果、提案モデルは、BO細胞の発火率と同期

発火の変調特性を良く再現した。この結果は、BO細胞の同期発火と物体知覚の皮質メカニズムを示唆する。

– 6 –

Page 11: 2019 年度 卒業論文要旨集 - toho-u.ac.jp · 2019年度情報科学科卒業研究発表会プログラム 5208教室 5209教室 5210教室 数藤研究室(6) 9:00 - 10:00

3種類の抑制性細胞を導入した視覚野自発活動を再現する神経回路モデル5516071 戸沢 元紀

Teramaeら (Teramae et al.,2012)は、興奮性細胞と単一種類の抑制性細胞の集団が相互作用する生理学的

知見に基づく神経回路モデルを提案し、自発活動を再現した。興味深いことに、Teramaeらの計算論的な研究

により、独立した神経回路ネットワークが活動を持続する自発活動において、興奮性細胞間の結合強度分布が

重要な役割を果たすことが示唆された。しかし、現実における生物の脳とその神経回路において、様々な種類

の抑制性細胞が存在することが、近年報告された。これらの多様な抑制細胞は、それぞれが異なる結合性と機

能的意味を有し、神経回路ネットワークの複雑な活動特性を発生させる基盤となる。しかし、これらの抑制細

胞が、神経回路の自発活動に果たす役割は明らかになっていない。また、脳神経メカニズムを理解するために

は、生物学的に厳密な活動を示す抑制細胞のニューロンモデルが必須となる。本論文では、Teramaeらが提案

する対数正規分布に従う結合強度で連絡する興奮性細胞集団と生理学的知見に基づく 3種類の抑制細胞集団が

相互に作用する大脳皮質表層の神経回路ネットワークモデルを構築し、自発活動の再現を試みた。

視覚野第 2/3層内の局所的な相互作用に基づく神経回路モデル5516089 東森 大樹

ヒトの目から伝送される視覚情報は後頭部に配置される第1次視覚野(V1)で処理される。この V1は、興

奮性細胞と抑制性細胞で構成される6層構造の円柱型神経回路(以後ユニット)を持つ。ヒトの見るメカニズ

ムにおいて、異なる方位選択性ユニットが相互に作用している。

V1を構成する層構造神経回路の中でも、第 2/3層は重要である。主な役割は、高次の視覚野へ情報を伝達、

異なる方位選択性を持つ近隣のユニットとの相互結合の仲介である。そのため、視覚特徴統合と視知覚形成で

V1第 2/3層は根本的な役割を果たす。この第 2/3層の神経回路は、興奮性細胞と主に3つの抑制性細胞で構

成される。近年の研究では、各種類の抑制性細胞が示す応答特性などが報告されている。しかし、異なる方位

選択性ユニット間の相互結合を実現するネットワーク構造と各種類の抑制性細胞が果たす役割は解明されてい

ない。本研究では、興奮性細胞と 3種類の抑制性細胞に基づく V1方位選択性の神経回路モデルを2つ構築し

て結合させた。シミュレーション結果から、ユニット間結合による抑制性細胞の役割を予測する。

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松島研究室

歩行中の安全性を向上させるための後方接近物体の検出5516019 内山 拓巳

歩行者の後方には多くの危険が存在するが、それらを常に認識し続けることは困難である。十分に注意を払

うことができない後方から接近する物体を検出することで、システム利用者の後方認識を支援し、事故や犯罪

遭遇を回避させ、安全性を向上させるのが本研究の目的である。現在は多種多様な物体認識方法があるが、歩

行者や自転車でも手軽に使用できることを考慮して、本研究では小型カメラで撮影した動画像からの検出を行

う方法を採用した。歩行者の検出方法は、OpenCV のライブラリを用いて歩行者の顔を検出する。また自転

車の検出方法は、検出対象の大きさや角度変化に対して、比較的良好な検出性能を持つことが知られている

Haar-Like特徴分類手法を用いた機械学習により行う。検出した顔領域が、フレーム間で大きくなっているか、

小さくなっているかの変化を計測することで、後方から接近してくる人の有無を検出することができた。

山川形式尺八楽譜のアーカイブ作成5516036 川崎 大輝

尺八譜には多くの流派が存在するが、都山流と琴古流が二大流派を構成していて、それらの流派で用いられ

ている尺八譜の利用者は多いため、市販されていて容易に入手ができる尺八譜はこの二大流派のものがほとん

どである。尺八譜は流派毎に異なる尺八譜を用いることが多く、五線譜の音符に相当する譜字や音価の表記の

仕方が異なっている。特に音価の表記法については、江戸時代から続く琴古流ではゴマ点譜と呼ばれる拍の位

置による表記、明治期に考案された都山流では音価と拍の混合による表記になっていて、いずれの表記法も五

線譜の音価による表記法と異なっているため、五線譜による音楽教育を幼少期より受けてきた人達には分かり

難い譜となっている。この欠点を改良して昭和初期に考案されたのが山川形式尺八楽譜であるが、琴古流や都

山流の尺八指導や演奏等で使用されることがほとんどなかったため、広く普及するまでに至らなかった。本研

究では山川形式尺八楽譜の保存と普及の一助とするために、主に昭和中期に使用されていた山川形式尺八具楽

譜を PDFファイルとして読み取り、ブラウザ等で閲覧できるように HTML形式でアーカイブ化を試みた。

東京オリンピックのパンフレットアプリの開発5516046 佐藤 健太郎

2020年の7月から東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。これらは日本にとって一大イベント

だが、国民の全員が興味、関心を持ち、ニュースやWebサイトに目を通すとは限らない。あまり詳しい情報

を知らない人、情報を手に入れる手段に乏しい人も多数存在するはずだ。そこで、多くの人にオリンピック・

パラリンピックに関する情報を手軽に分かりやすく提供するアプリの作成をすれば、より多くの人に興味、関

心を与え、詳細な情報を手に入れる手がかりとなるだろうと考え、この研究を行うことにした。

開発には Googleが提供するプラットフォームである AndroidStudioと Javaを使用した。アプリの構造と

してはホーム画面(オリンピック、パラリンピックの選択画面)、競技選択画面、選択した競技の解説画面の3

階層に分かれていて、解説画面は日程や会場といった、他の情報源でも容易に得ることができる基本的なデー

タから、各種目や選手の解説などといった掘り下げたデータまで幅広く掲載し、単に情報を掲載するだけでな

く読み物としても楽しめるように工夫した。

本アプリを使用することで、本やWebページで逐一情報を調べなくても簡単に情報を得ることが可能にな

り、より多くの人に興味、関心を持ってもらえることが期待できる。

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VRと 360度カメラを使った仮想見学会システムの作成5516070 都倉 誠

近年、PC やスマートフォンで 360 度パノラマ画像を利用した仮想見学会が利用できるようになってきた

が、それらの多くは重要ポイントをつなげた静止画の連続として提示されるため、道や階段などの部分が省

略されることが多く、臨場感が低くなるために実際の見学会に比べると違和感を感じる場合がある。そこで、

バーチャルリアリティ向けヘッドマウントディスプレイと全天球デジタルカメラ、ゲーム開発エンジンを用い

てバーチャル空間で仮想見学会を行うことができるシステムの開発を試みた。このシステムでは、静止画では

なく動画で利用者に周囲環境の提示を行うため、移動ポイント間で省略される部分が無くなるので、臨場感の

欠如という問題点を解決できると考えた。

本研究では、仮想見学会を行いたい部分の動画を 360度カメラにより移動しながら撮影し、その画像をシス

テムに取り込むだけで簡単に仮想見学会を作成することができるシステムを作成した。実際に東邦大学習志野

キャンパスの校門から食堂までの区間で仮想見学会を作成したところ、臨場感がある仮想見学会を実現するこ

とができた。

顔認証による講義出欠確認システムの作成5516091 平田 絵理

大学等の講義で出欠の確認をするためには、毎回出席カードを配布して回収したり、直接名前を点呼する等

で行うのが普通である。しかしそれらの方法では時間と手間がかかるため非効率的であり、また代筆・代返な

どの不正行為を完全に排除することは難しい。この問題を解決するために、講義中に撮影した動画像から切り

出した画像に対して顔認証技術を適用し、自動的に出欠を確認するシステムの作成を試みた。

顔認証には様々な方法が提案されているが、機械学習を用いる方法では、一般的に膨大な学習データが必要

となる。しかし、対象者の人数が限られている場合では、少ないテンプレートデータを用いた簡便な方法でも

顔認証のシステムが作成可能ではないかと考えた。

顔の検出やテンプレートデータとの誤差の測定にはカスケード型分類器、AKAZE等を使用した。出欠確認

の処理を行う毎に、認識に用いるテンプレートデータを追加してゆくことにした。その結果、出欠を取る操作

を行う毎に認識精度が向上するシステムを作成することができた。

睡眠の質から見る疲労回復測定システム5516118 岡部 瞳

昨今、ストレスが人体に与える危険性が増大してきている。しかし疲労やストレスを客観的なデータとして

得ることが困難なため、自分自身でも的確に判断することが難しい。

この危険を回避する方法を探るために、人生の 3分の 1を占める「睡眠」に着目した。睡眠研究機関の研究

によって、睡眠パターンの傾向によって疲労回復や起床後の疲れやすさに影響を与えるというデータがある。

そこで fitbitという心拍数を計測できるスマートウォッチを用いて睡眠時の心拍データを記録し、そこから得

られる睡眠の質 (深度)の情報を基に疲労の回復度を測定するという研究を行った。睡眠の継続時間、睡眠深度

(レム睡眠・ノンレム睡眠など)のパターンや割合を睡眠の質の判定材料として採用した。

最終的には疲労回復度としてスコアを算出し、視覚情報としてストレスや疲労の回復の程度を確認できるよ

うにした。

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足立研究室

ラテン方陣と符号5516047 佐藤 詩織

正の整数 n に対して、n 個の文字から成る集合を A とする。位数 n のラテン方陣とは、集合 A の元を

n× nの正方行列に配列して、各行各列に文字 (Aの元)の重複のないものである。ラテン方陣を用いて、誤り

検出符号、誤り訂正符号、光直交符号 (Optical Orthogonal Code, 略して OOC)、低密度パリティ検査符号

(Low-Density Parity Check,略して LDPC)などの符号を構成することができる。

集合 Aが体となるとき、光直交符号が構成可能であることが知られている。集合 Aが体となるための必要

十分条件は、位数 nが素数または素数冪であることである。そこで、本研究では、ラテン方陣の位数 nが素数

の場合、すなわち n = 3, 5, . . .について、光直交符号を具体的に構成し、その特徴を調べる。次に、位数 nが

素数冪の場合についても調べる。さらに、位数 nが素数の場合について LDPCを構成し、その特徴を述べる。

公平でバランスの取れたスポーツ対戦の組合せ5516108 緑川 大地

スポーツの大会では、勝ち上がり方式(トーナメント戦)と総当たり方式(リーグ戦)がある。大会日程の

負担の関係から、多くの大会では勝ち上がり方式を採用されることが多いが、全チームと対戦することから、

総当たり方式の方が公平な対戦方法だといえる。しかし、チーム数が多くなるにつれ、試合数が加速度的に多

くなり、試合の組合せは複雑になるという欠点がある。

そこで、本研究では、チーム毎に偏りがなく試合の公平さを保ったまま、試合数を減らす試合の構成方法に

ついて調べる。試合数はグラフの辺の本数と関連しているため、辺の本数を減らすことを考える。各チームを

グラフの頂点と見立て、各チームの強さを頂点の重みとする。強さを考慮し総試合数を減らした試合の組合せ

は、ハンディキャップグラフと呼ばれるグラフになる。ハンディキャップグラフを用いて公平でバランスの取

れたスポーツ対戦の組合せを構成する。

長方魔方陣といろいろな魔方陣5516025 岡田 美草紀

魔方陣とは、n× nの正方行列に、1から n2 までの整数を縦/横/対角線に置かれている整数の和がそれぞれ

等しくなるように並べた配列である。本研究では、正方形を長方形に拡張し、長方形 (二次元)を直方体 (三次

元)に拡張する。

長方魔方陣とは、a× bの長方形の行列に、1から abまでの整数を縦/横に置かれている整数の和がそれぞれ

等しくなるように並べた配列である。三次元の直方体魔方陣とは、a× b× cの直方体に、1から abcまでの整

数を縦/横/高さに置かれている整数の和がそれぞれ等しくなるように並べた配列である。

サイズ a× bの長方魔方陣を c個作成し、それらを積み上げると、直方体ができる。これは、直方体魔方陣

とは異なり、高さの和に制約がない。このように高さの和の条件を外した配列を、長方魔方陣系という。

本研究では、長方魔方陣系の構成法について調べる。

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ラテン長方形と空白のセルをもつ長方魔方陣5516033 上島 辰海

正の整数 k, n(k < n)に対して、サイズが k × nのラテン長方形とは、n種類の文字を各行各列に高々 1回

しか出現しないように並べた配列である。長方魔方陣MR(a, b)とは、a× bの長方形の行列に、1から abま

での整数を各行、各列の和がそれぞれ等しくなるように並べた配列である。この長方魔方陣はすべてのセルに

整数が配置されている。それに対し、空白のセルをもつ長方魔方陣MR(m, km; ks, s)は、サイズがm× km

の長方形の行列に 1から ksまでの整数を各行各列の和がそれぞれ等しくなるように、空白のセルを許して各

列に s個ずつ並べた配列である。

そこで、本研究では、空白のセルをもつ長方魔方陣MR(m, km; ks, s)の構成法を調査する。構成法の一つと

して、次が挙げられる。空白のセルをもつ長方魔方陣MR(m,m; k, k)、すなわち空白のセルをもつ正方魔方陣

MS(m; k)を一つ用意する。この正方魔方陣MR(m; k)の各セルの整数に、それぞれ ks, 2ks, · · · , (m− 1)ks

を加えることにより、合計m個の正方魔方陣が生成できる。最後に、このm個の正方魔方陣を結合すること

で新たな長方魔方陣を構成することができる。

有限アフィン空間における超平面の平行類5516075 中村 郁也

位数 q の有限体を GF (q)と表す。このとき、q は素数または素数冪である。本稿では、位数 q が素数のと

きのみを扱う。3以上の素数mに対して、GF (q)のm次元ベクトル空間 V を考える。この空間 V は有限ア

フィン空間 AG(m, q)である。また、V は、GF (q)のm次拡大体K に対応する。K の非零元 αi はm− 1次

以下の多項式で表現できるので、この多項式の係数をベクトル表記したものを、原点を除く V の点 Pi に対応

させる。

ベクトル空間 V のm− 1次元部分空間W を超平面と呼ぶ。本研究では、超平面を平行類で分類する。その

特性を理解するために、次元 mを 3に固定し、素数 q = 2, 3, 5, · · · と変化させた場合について、V の点、超平面W に属する点の集合D、超平面W の平行類の点の集合 E を具体的に計算し、その性質を調べる。また、

素数 q を 2に固定し、m = 3, 4, 5, · · · と変化させた場合についても同様に調べる。

ハノイの塔の最小手数と最短経路5516064 竹末 大輝

ハノイの塔とは、3本の柱と中央に穴の開いた大きさの異なる複数の円盤から構成されるパズルである。初

めは全ての円盤が 1本の柱に下から大きい順で積み重ねられている。この円盤を一枚ずつ 3本の柱のいずれか

に移動させ、最終的に初めとは異なる柱に全ての円盤が下から大きい順で積み重なるようにする。但し、円盤

を移動させるとき、小さな円盤の上には大きな円盤を乗せることができない。

本研究では、まず、ハノイの塔の移動にかかる最小手数を調べる。n枚の円盤の移動にかかる最小手数を an

とする。ハノイの塔での移動が再帰的手続きであることに注目すると、an の漸化式が得られる。この漸化式を

解くことで、最小手数 an が求められる。次に、ハノイの塔の状態遷移図を調べる。大きい円盤から順に何番

の柱にあるかを表すようにそれぞれの状態に番号をつけて、1手で移り合う状態を線で結ぶと状態遷移図が得

られる。この状態遷移図により移動の最短経路を表すことができる。

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菊地研究室

千葉ロッテマリーンズの歴代競技力比較5516001 安部 悠三

本研究では、千葉ロッテマリーンズの 1992年シーズンから 2018年シーズンの星取表のデータを使用し、ど

のシーズンが最も強くどのシーズンが最も弱いのかを探る。Bradley-Terryモデルやマルコフモデルなどを用

いて、千葉ロッテマリーンズの各シーズンの競技力を算出する。競技力を基にどのシーズンが最も強いのか、

弱いのかを探りながら、順位と各成績の関係を求め、千葉ロッテマリーンズはどのようにすれば順位を向上

させることができるのかを考察した。その結果、最も強いシーズンは 2005年シーズン、最も弱いシーズンは

2017年シーズンとなった。また、順位と相関が強いものは打率、安打数、得点数、打点数であり、投手力より

も打撃陣を鍛えることが順位を上げるために必要なことがわかった。

セ・パ交流戦とその前後の成績の比較・分析5516083 長谷川 廉

本研究では、日本のプロ野球における、セ・パ交流戦とその前後 3つの時期に分けた打撃成績・投手成績・

守備成績のデータを使用し、分散分析、回帰分析を行った。分散分析では、セ・パのリーグ別に 3つの時期の

間で成績に差があるかどうかを、多くの変数を用いて考察した。回帰分析では、交流戦中のリーグ別、交流戦

前・交流戦中・交流戦後の 3つの時期のセ・パそれぞれの得点・失点に影響を与える変数について考察した。

その結果、交流戦中において、パ・リーグは投手成績・守備成績でセ・リーグに優っているということがわかっ

た。得点に対して有意な影響を与える変数を比較すると、リーグ別では犠飛、時期別では犠飛・併殺打に違い

が見られた。一方で、失点に対して有意な影響を与える変数を比較すると、リーグ別では特に違いは見られな

かったが、時期別では併殺参加に違いが見られた。

日本プロ野球におけるセリーグとパリーグの打撃力・投手力の比較5516085 林 敬之

近年日本プロ野球においてパリーグが強いと言われている。しかし、直接対決する機会はセ・パ交流戦、日

本シリーズを除くとない。本研究ではセリーグとパリーグで打撃力、投手力に違いがあるのかを探っていく。

また、セリーグとパリーグの大きな違いは、指名打者の有無である。セ・パ交流戦のデータを用いてセリーグ

のデータを指名打者有りに補正し、パリーグのデータを指名打者無しに補正してセリーグとパリーグを比較

した。

その結果、指名打者の有無に関わらず打撃力ではパリーグの方が優れており、指名打者無しのとき投手力は

セリーグの方が優れている結果になった。

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ウインターカップの成績による高校バスケットボール強豪校の特徴について5516097 廣口 裕花

高校バスケットボールにおける三大大会の 1つであるウインターカップにおいて、常勝チームのスタイルを

探る。本研究では、多変量解析の手法の 1つであるクラスター分析を用いて分析を行った。

まず、出場試合数が多い高校を個体として、クラスターに分けた。その後、優勝回数の多い高校が集まった

クラスターに着目し、それに含まれた高校を更に年ごとに細分化して分析を行った。

その結果、強豪校のスタイルが明確となった。成功確率の高いツーポイントシュートを多用し、チームプ

レーを重視していることが分かった。

成人喫煙率に影響を与える要因について5516084 羽田 大弥

先行研究によると、未成年の喫煙率が上昇しているとされているが、喫煙防止教育などの効果で成人になっ

てからたばこを吸わなくなる場合もある。そういった教育だけでは、喫煙率は下がらないと考えた。

本研究では、1965年から 2018年までの成人喫煙率のデータを使用し、喫煙率に影響を与えている要因があ

ると考え、重回帰分析を行って、今後の喫煙率がどのような要因で変化していくのかを考察した。その結果、

男女間で喫煙率低下の要因の違いはあるが、男女とも今後喫煙率が上昇することはないという結論に至った。

世代別に関しては 50代女性を除いたすべての世代で、今後喫煙率は上昇しないという結果になった。

全国学力・学習状況調査における都道府県の特徴5516045 佐加井 瑞穂

毎年、児童生徒の学力や学習状況を把握・分析するために、小学校 6年生と中学校 3年生の全児童生徒を対

象に、全国学力・学習状況調査が行われている。この調査では、学力テストだけではなく、生徒や学校の状況

を把握するために、質問紙調査も行われている。

本研究では、調査結果の都道府県別の平均を用いて、学力テストの得点と質問紙調査の回答の関係を分析し、

都道府県の特徴を考察する。

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木村 (大)研究室

混向グラフにおけるオイラーサーキットをもつための必要十分条件5516109 宮崎 康平

グラフ理論とは,グラフ構造がもつ様々な性質を探求する数学理論である.その中で,ある頂点から出発し全

ての辺を1度だけ通り,出発した頂点へと戻ってくる「一筆書き」を研究する話題がある.無向グラフと有向グ

ラフが一筆書き可能であるための必要十分条件があることは既に知られている.

本研究では,無向辺と有向辺が混在した「混向グラフ」における一筆書きについて議論し,一筆書き可能であ

るための必要十分条件を見つけ,証明した.その必要十分条件を見つけるために,既に知られている無向グラフ

や有向グラフが一筆書き可能であるための必要十分条件に帰着させた.帰着させるアイデアとして,混向グラフ

の全ての無向辺に向きを加えた有向グラフ「有向変種」や,無向辺のみで到達可能である頂点を1つの集合と

する「無向近傍」を頂点とする有向グラフを用いた.

人間の思考分析のための 4枚カード問題5516017 氏家 かすみ

人間の思考の特徴を知るための研究の一つとして,Wasonの 4枚カード問題という課題がある.4枚カード

問題は,実験参加者に,与えられた条件文が正しいかどうかを調べるために 4枚のカードのうちどのカードを

めくる必要があるのかを選んでもらうものである.これには,いくつかの類似問題があり,それぞれの実験結

果をもとに,人間の推論がどのように行われているのかを説明するための様々な仮説が考えられてきた.

本研究では,これまで考えられてきたいくつもの仮説が,誰によってどのような根拠のもとでうまれたの

か,また,それぞれの仮説のつながりを整理し,どのように研究が進められてきたのかについてまとめた.4

枚カード問題とその類似問題は,条件文を常識や直感が働きやすい具体的な内容に制限した義務論的形式と条

件文が抽象的で論理的思考が必要な直説法的形式と 2種類に分けられるが,本研究ではより人間の思考の解明

に近づける直説法的形式に重点を置いて,現段階でどの仮説が妥当であるかを考察した.

ゴブレットゴブラーズの解析5516050 佐藤 正隆

本研究ではゴブレットゴブラーズを後退解析によって解析するプログラムを作成し,必勝法を求めた.ゴブ

レットゴブラーズとは○×ゲーム( Tic-Tac-Toe)をより複雑にしたボードゲームであり,大中小3種類のコマ

があること,コマを被せることができること,盤面上のコマを移動させることができる.ゴブレットゴブラー

ズは二人完全情報零和ゲームで,全ての局面の理論値(勝ち,負け,引き分け)が決定可能である.後退解析

とは勝敗が確定した終了局面を作り,その一手前,二手前,・・・を順に勝敗を調べ,全局面の理論値を確定さ

せる手法である.後退解析を用いて初期局面の評価を調べた結果,13手で先手必勝であることが分かった.

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情報可視化のための双方向変換に基づくGGシステムの構築5516008 安東 大輝

情報可視化とはデータを人間がわかりやすいようにグラフィカルに表現した技術である.ビット列などの機

械内部で扱われる情報やビッグデータなどの膨大な情報から必要な内容を読み解き利用するのは一般に困難で

ある.情報可視化技術は人間がデータの内容を理解し,利用する手助けをする.人間が情報を読み解き,操作

する仕組みとして双方向変換のフレームワークが用いられる.双方向変換とは,例えば ATMのようにデータ

ベースの情報を人間が目で見てわかる形式で表示し,人間が操作した結果をまたデータベースにフィードバッ

グする仕組みである.

本研究では,ゴブレットゴブラーズの内部のデータ(数字)を自分たちが普段目にしている外部の表示に書

き換えられるようにした.そして外部の情報の変更点を内部のデータ(数字)にフィードバックできるような

プログラムを完成させた.このフレームワークは双方向変換と同じである.

購入意欲へのナッジによるアプローチ5516066 田辺 瑞貴

ナッジ理論とは「小さなきっかけを与えて、人々の行動を変える戦略」のこと。経済活動において「人は必

ずしも合理的な行動をとらない」ということを加味し、人の心理に焦点を当てた学問である行動経済学に属す

る手法で、「命令された」「強制された」感覚なしに人を従わせる力があることが特徴で「仕掛け」や「きっか

け」を与えることで本人の自発的な行動を引き起こすことができる。

本研究では、ナッジ理論に基づいて東邦大学購買部生協のお弁当を対象に購買意欲の向上を狙う実験を行っ

た。流動的に購買意欲を向上させる仕掛けとして「焼肉の画像がプリントされた用紙の仕掛け」を用意しお弁

当棚に設置した。すると実際に仕掛けを施した期間の売り上げ数が上がり、ナッジを活用したアプローチに十

分な効果があることがわかった。

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5209教室

伊藤研究室

豊田研究室

木村(泰)研究室

金岡研究室

佐藤研究室

中島研究室

Page 22: 2019 年度 卒業論文要旨集 - toho-u.ac.jp · 2019年度情報科学科卒業研究発表会プログラム 5208教室 5209教室 5210教室 数藤研究室(6) 9:00 - 10:00

伊藤研究室

Lpノルム誤差の最小化に基づく偶数次可変低域通過フィルタの最適設計5515074 出口 大和

ディジタル信号処理の分野では、ディジタルフィルタは広く応用されている。信号処理の途中で、ディジタ

ルフィルタの周波数特性を素早く変化させる必要がよくある。この要求は特定のスペクトルパラメータから直

接設計された係数を持つフィルタによって満たされる。しかし、これだけでは不安定なフィルタとなってしま

う為、本研究では安定性を保証する方法として、フィルタの伝達関数の分母に対して変数変換 (本研究では、

sin関数を用いる)を施してからMATLABの非線形最適化関数 fminsearchを使って最適な係数を見つける。

結果として、設計した 9種類の低域通過フィルタの伝達関数の分母が安定三角形内にあり、安定性が必ず保証

される周波数特性が可変なフィルタ (偶数次・可変低域通過フィルタ)の設計をすることができる。

Lpノルム誤差の最小化に基づく偶数次可変帯域通過フィルタの最適設計5516015 猪俣 公裕

ディジタルフィルタは音声処理、画像処理、情報通信など様々な分野において広く応用されている重要な

システムである。ディジタルフィルタの単位インパルス応答 h(n)が有限区間の数列であるとき、このような

ディジタルフィルタを FIRフィルタという。一方、単位インパルス応答 h(n)が無限区間の数列であるとき、

このようなディジタルフィルタを IIRフィルタという。本研究では、偶数帯域通過フィルタの安定性保証を取

り扱う。帯域通過フィルタとは、低い周波数成分と高い周波数成分を取り除き、中間の周波数成分を通す一種

のディジタルシステムである。本研究では、帯域通過フィルタの安定性を保証した上で様々な帯域通過フィル

タを設計する。設計の際に、理想の振幅特性と実際の振幅特性の Lp ノルム誤差を MATLAB の fminsearch

という非線形最小化関数で最小化してフィルタの係数の最適値を見つける。9種類の通過域幅を持つ帯域通過

フィルタを個別に設計して安定性の保証を確認する。

江原 響5516020 Lpノルム誤差の最小化に基づく偶数次可変帯域阻止フィルタの最適設計

ディジタル信号処理は画像・音声処理、情報通信処理、医療技術など様々な分野において広く応用されてい

る技術である。なかでも、信号処理操作を行うシステムのことを特にディジタルフィルタという。本研究では、

偶数次における可変帯域阻止フィルタの設計を行う。帯域阻止フィルタというのは、中間の周波数成分の通過

を阻止し、高い周波数と低い周波数の成分のみを通過させるディジタルフィルタのことである。帯域阻止フィ

ルタを設計するにあたり、安定性を保ちながら設計するために、安定条件を満たした伝達関数を用いて設計を

行うこととする。最適設計の方法としては、理想とされる振幅応答と randn関数を用いて初期値を発生させた

振幅応答を、MATLABの非線形最小化関数 fminsearchを用いて Lpノルム誤差を最小化し、フィルタの係数

の最適値を探索する。設計する 9つのフィルタの精度の指標として、Lpノルム誤差の他に最大絶対値誤差と

正規化自乗誤差を使用し、設計誤差が小さいことを検証する。

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Lpノルム誤差の最小化に基づく偶数次可変高域通過フィルタの最適設計5516098 古谷 湊人

本研究では、理想の可変高域通過フィルタの振幅応答Md(ω, ψ)が与えられているものとして、偶数次可変

高域通過フィルタを設計する。設計方法として、ψ ∈ [−0.10π, 0.10π]を9個に離散化して、ψ の各値に対応す

る理想の振幅応答仕様Md(ω, ψ(l))を得る。次に、MATLABの非線形最小化関数 fminsearchを使い偶数次

の伝達関数の係数を見つけ、離散化して得られた振幅応答仕様Md(ω, ψ(l))を一本ずつ Lpノルム誤差の最小

化に基づく最適近似を行う。その際に、偶数次の伝達関数の安定性を保証するため、伝達関数の分母関数の係

数に対して変数変換を行い、係数と変換後の変数の最適値を見つける。異なる通過域幅を持つ偶数次可変高域

通過フィルタを個別に設計し、設計したフィルタの特性を評価する方法として、Lpノルム誤差 Ep、最大絶対

値誤差 Emax、正規化自乗誤差 E2 を使用する。また、安定性保証を検証した。

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豊田研究室

素数定理5516003 天野 友也

素数とは約数を 1 とその数自身の 2 つしか持たない数である。 最初の素数を 5 つあげると、2,3,5,7,11 で

ある。x を超えない素数の個数 π(x) の挙動について調べる。例えば、上にあげた素数の例から考えると、

π(3) = 2, π(4) = 2, π(10) = 4 などである。π(x) は x を大きくすると、 xlog x によく近似できることが知られ

ている。この事実を素数定理とよぶ。本論文では、まず、すべての整数が素数の積に一意に分解されるという

算術の基本定理を証明する。さらに素数が無限に存在することを、いくつかの方法で証明する。これだけでは

π(x) の分布がわからない。そこで π(x) の分布に対して情報を与える素数定理を調べた。その中でも今回は素

数定理に関する 2つの証明を行う。1つ目はチェビシェフの定理を用いて行う証明である。2つ目はリーマン

のゼータ関数を用いて行う証明である。

カントール三進集合の拡張とその次元5516054 菅谷 謙

カントール三進集合とは閉区間 [0, 1] を 3等分し、3つの線分のうち真ん中を取り除くという操作を繰り返

していくことでつくられる集合である。 [0, 1] の可算個の閉部分集合の積集合で表される。カントール三進集

合は零集合であり、また、カントール三進集合の次元 d は d = log 2log 3 のように非整数になる。本論文では最初

にカントール三進集合を拡張したカントール集合を紹介する。また、拡張したカントール集合の性質を調べ

る。特に拡張したカントール集合も零集合であることを述べる。さらに、拡張したカントール集合の次元も求

める。最後にカントール三進集合を用いた特異関数について紹介し、規則性や函数の性質を述べる。

ゼータ関数の解析接続5516059 高橋 裕也

すべての自然数の和 1+2+3+ · · · が − 112 となることを示す。 ζ(s) =

∑∞n=1

1ns と表すと、すべての自然

数の和は 1+ 2+3+ · · · = 11−1 +

12−1 +

13−1 + · · · = ζ(−1) と表される。 ζ(s) はゼータ関数と呼ばれている。

s が実数の場合、1より大きいときにゼータ関数は収束することが知られている。また解析接続とは、ある条件

を満たす関数が定義域の異なる 2つの表示で表されたときに、一方の関数の定義域を他方の表示によって拡張

する手続きをいう。本論文では、 ζ(s) の定義域を s = −1 を含む集合まで解析接続によって広げる。1994年

の Sondowの定理によると、ゼータ関数 ζ(s) の解析接続は 11−21−s

∑∞n=0

12n+1

∑nj=0(−1)jnCj(j + 1)−s で

与えられる。これを用いて s = −1 におけるゼータ関数 ζ(−1) = − 112 となることを示す。

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一般化三角関数とWilkerの不等式5516104 松本 圭矢

x を 0 < x < π2 を満たす実数とする。このとき、

(sin xx

)2+ tan x

x > 2 が成り立つ。これは、Wilkerの不

等式と呼ばれ、1982年に J.Wilkerによって提起された。Wilkerの不等式は双曲線関数に対しても成り立つ。

実際、(sinh x

x

)2+ tanh x

x > 2 が任意の 0でない実数 x で成り立つ。このようにWilkerの不等式は三角関数

や双曲線関数が満たす基本的な不等式の 1つである。また、三角関数や双曲線関数を拡張した関数 sinp(x) や

sinhp(x) が知られている。 p = 2 の場合、これらは sin(x) や sinh(x) にそれぞれ一致する。これら拡張され

た三角関数や双曲線関数に対してもWilkerの不等式が成立する。本論文では、 sinpq(x) や sinhpq(x) のよう

に sinp(x) や sinhp(x) をさらに 2変数に拡張する。そして、これらの関数に対してもWilkerの不等式が成り

立つことを示す。

カリスティの不動点定理5516011 池上 斗亜

カリスティの不動点定理とは、完備距離空間上の必ずしも連続とは限らない写像に関して不動点が存在する

ことを述べる定理である。定理の証明には、ツォルンの補題を用いたものがよく知られている。ツォルンの補

題は選択公理と同値である。選択公理の一つとして従属選択公理がある。従属選択公理とは、非空集合 A と

A 上の関係 R について任意の x ∈ A に対して y ∈ A が存在し (x, y) ∈ R がいえるとき、任意の自然数 n に

ついて (f(n), f(n+ 1)) ∈ R を満たす自然数全体から A への写像 f が存在することをいう。選択公理から従

属選択公理は導かれる。したがって、従属選択公理は選択公理よりも弱い仮定である。本論文では、従属選択

公理を用いてカリスティの不動点定理を証明する。

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木村 (泰)研究室

高校数学における縮小写像の不動点定理の利用5516012 石渡 英希

縮小写像の不動点定理は不動点に関する研究分野で多く使われている定理である. この定理は数列の収束と

極限を求めることに利用できるため, この定理を高校生が知ることで一部の問題を解くときに役に立つであろ

うと考えた. そこで, どのような漸化式で定義された数列に対して縮小写像の不動点定理を用いた解法を利用

できるかを考察し, ある形の漸化式で定義された数列でこの定理が適用可能となるための条件が判明した.

さらに縮小写像の不動点定理を高校数学の知識を使って表現することで, 高校生への発展授業としての利用

できないかと考えた.

本論文では不動点定理を利用して点列の極限を計算できる例をいくつか考察した後, 高校数学における数列

の極限の分野に注目し, 実際に高校3年生に授業をすると仮定した上で指導案を作成した.

ヒルベルト空間における集合列の収束5514050 信濃 直哉

数列の収束は高校数学で学ぶ基礎的な概念であり, 大学数学においても重要な概念である.一方, 集合を点列

のように並べた集合列においても, それと同様に収束の概念があり, その定義は複数ある. 本論文では集合列の

一種であるモスコ収束を用いて研究を進めた.

既に集合列がモスコ収束すればその集合への距離射影も収束し, その逆も然りという収束の関係にあること

は定理が証明されているので, 本論文ではヒルベルト空間において, モスコ収束しない集合列に対して、一部の

点からの距離射影列は収束するが, 別の点からの距離射影列は収束しない場合を考え, その様子を考察した. 特

に2次元平面上の集合列に対するモスコ収束と距離射影列の収束の様子について具体的な例を挙げて計算を試

みた.

ヒルベルト空間におけるリゾルベントと摂動関数5516095 平山 瑞季

リゾルベントとは, 関数 f(x)と関数 g(x, y)の和の劣微分に対し, 0を含む xが一意に存在するとき, y に x

を対応させる写像のことをいう. リゾルベントは 20世紀中頃から盛んに研究されており, ヒルベルト空間では

quasinonexpansiveや nonspreadingなど, さまざまな性質を持つことが知られている.

本研究では, ヒルベルト空間におけるリゾルベントの基本的な性質をまとめた後, ヒルベルト空間においてリ

ゾルベントを定義する際に用いられるさまざまな摂動関数について考察し,リゾルベントが quasinonexpansive

となるような, 新たな摂動関数を発見した.

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CAT(1)空間における凸関数のリゾルベントとその摂動関数5516092 平野 美咲

凸関数のリゾルベントは, 凸解析における重要な概念の一つであり, ヒルベルト空間などで多くの研究が進め

られてきた. さらに, 近年では様々な曲率の完備測地距離空間において研究が進められている.

曲率が非正の完備測地距離空間のリゾルベントが well-definedであることは, 1998年に F.Mayerによって

証明された. また, 曲率が正の完備測地距離空間のリゾルベントが well-definedであることは, 2016年に木村,

高阪によって証明された.

本論文では, CAT(1)空間の定義や性質をまとめた後, CAT(1)空間における凸関数のリゾルベントを定義す

る際に用いられる, さまざまな摂動関数を取り上げ, quasi-nonexpansive やΔ-demiclosed といった性質を持

つことを示した.

CAT(1)空間における generalized nonexpansive写像による Picard-Mann型の不動点近似

5516073 鳥居 翔

Generalized nonexpansive写像は非拡大写像の拡張の 1つである. 非拡大写像を用いた不動点近似定理につ

いては現在までにたくさんの結果が得られている. しかし generalized nonexpansive写像を用いた不動点近似

定理についてはあまり多くの結果が出ていないことがわかった. ヒルベルト空間上で先の写像を用いていくつ

かの不動点定理の証明を試みたところ generalized nonexpansive写像の定義の形がノルムの 2乗を用いてい

ないことにより中線定理が使いにくいことと, Opial 条件との相性が良くないことに気がついた. 本研究では

Mann型と Picard型の点列を融合させた Picard-Mann型とよばれる点列が generalized nonexpansive写像

を用いた不動点近似定理に有効であるという先行論文を元に CAT(1)空間においていくつかの不動点近似定理

を証明することに成功した. また、generalized nonexpansive写像の例についても紹介する.

Hilbert空間における弱収束定理のCAT(0)空間への拡張5516090 日高 雄太

CAT(0)空間とは, ある特定の条件を満たす測地距離空間のことである. この空間における非線形解析の研究

は, Hilbert 空間や Banach空間等と比較して, 歴史が浅いため解明されていない事が多い分野である.

本論文では Kimura によって証明された Hilbert 空間上で成り立つ弱収束定理を凸最小化問題に適用して,

完備 CAT(0)空間でも成り立つかどうかを調べ, 研究を進めた. 証明をするにあたって, 最初に係数条件を無限

級数が発散する場合と発散しない場合で場合分けをするが, 無限級数が発散する場合については Kimura and

Kohsakaによって証明済みである. よって, 本論文では無限級数が発散しない場合において証明を進めた.

結果として, 主にリゾルベントの性質を用いて, 完備 CAT(0)空間における弱収束定理を証明する事に成功

した.

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Hadamard空間における implicit iteration process

5515062 眞谷 勇志

Hilbert 空間は完備な内積空間であり, Hadamard 空間は 2 次元ユークリッド空間をモデル空間とした, 完

備な CAT(0)空間のことである. この 2つの空間は互いに完備性という共通点を持っており, さらに内積空間

は CAT(0)空間でもあるため, Hilbert空間で成り立つ様々な定理を Hadamard空間に拡張するという研究が

日々行われている. 本研究では Hilbert空間で証明された, 1つの写像に対する implicit iteration processの

収束定理を内積の定義されていない Hadamard 空間に拡張できるかを試みた. 始めに Hilbert 空間で証明さ

れた強収束の定理を Hadamard 空間に拡張することを目指し, 最終的にはそれを用いることで, 本題である

implicit iteration processの収束定理を Hadamard空間に拡張した定理の証明を行なっていく.

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金岡研究室

機器登録時における IoT機器フィンガープリンティングの実現と応用5516074 中田 美花

フィンガープリンティングとは、通信で発生するパケット情報などを用いて送信元の機器やソフトウェアな

どを識別する技術である。従来行われている IoT(Internet of Things) 機器のフィンガープリンティングは、

機器登録後の TCP/IP通信パケットを検証する事で識別をする為、ネットワーク内通信を行う前に識別をする

ことができない。そこで本研究では、IoT機器のフィンガープリンティングを機器登録時に実施する事で、組

織内通信を行わない早期段階での機器識別を目的とした検知手法の実現を提案する。機器登録時の IoT機器の

挙動を分類し、その中で代表的な挙動である「IoT機器が無線 LANの APとして起動している」「IoT機器が

Bluetooth接続のペアリング待ち状態で起動している」という 2点に注目し、そこに現れる特徴を用いてフィ

ンガープリンティングを行う。さらにフィンガープリンティングの実用性を示すために、ESSIDや Bluetooth

名から抽出できたフィンガープリントを使い、早期検知の実証実験を行った。また検知応用として対策システ

ムを複数紹介し、その試作結果も示す。

Androidアプリケーションにおける暗号技術利用動向の網羅的調査5516035 河合 惇丞

近年開発者向けユーザブルセキュリティ,ユーザブルプライバシーの研究分野においてソフトウェア開発者

の暗号技術の利用に関する研究が活発になっている.それらの研究で暗号技術の利用が適切にされておらず脆

弱性が存在するソフトウェアが多数あると分かっている.しかしこれらの研究は SSL/TLSや DES,AESな

ど特定の暗号技術に限った調査だけであり,暗号技術全般の網羅的な調査が行われていない.Androidアプリ

ケーションは SSL/TLSをはじめとして暗号技術の利用がされているケースが多くある.そこで本研究ではソ

フトウェアの暗号技術の利用状況の網羅的な分析の一環として,Apktoolや baksmaliといったツールによる

静的解析が容易であること,世界のモバイル端末における OSのシェア率が高いことから Javaで開発された

Androidアプリケーションを調査対象とする.Androidアプリケーションを静的解析し,暗号で用いられるメ

ソッド名や特徴のある用語によるフィルタリング,アルゴリズムが指定可能な代表的箇所の抽出,APIの利用

傾向分析により,現状どの程度暗号技術が利用されているのか,その時のアルゴリズムはどのようなものが多

く利用されているのかなどを探った.

IDベース暗号のユースケース検討及び提案と利点・欠点の考察5516110 宮本 康平

IDベース暗号は任意の情報を公開鍵として利用できる公開鍵暗号方式である。IDベース暗号は電子メール

アドレス、電話番号など任意の情報そのものを公開鍵として利用でき、復号鍵であるプライベート鍵の発行を

公開鍵よりも後に発行できる特徴がある。しかし、受信者本人がプライベート鍵を生成できず、KGC(鍵生成

局)にしか発行できない。そのため、IDベース暗号ではユーザーが KGCを完全に信用しなくてはならない。

また、プライベート鍵を漏洩してしまった場合公開鍵である ID も変更しなければならない。ID ベース暗号

はこうした課題が存在するため、今現在 IDベース暗号の特徴を十分に活かしたソフトウェアや利用シーンの

検討が不十分である。本研究の目的は、実際の利用シーンを踏まえて IDベース暗号の特徴を十分に活かした

ユースケースの検討とそこから得られたメリットとデメリットの分析・考察を行うことである。その結果、全

62 件のユースケースを検討した。また、メリットとデメリットの分析・考察からメリットを活かしたユース

ケースは 8件、デメリットに該当するユースケースは 54件挙げられた。

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オンラインゲームにおける不正行為の調査及び対策の検討5516111 毛藤 匡哉

現在ゲームは、ユーザーの位置情報を利用するスマートフォンアプリやリアルな体験を可能にする VRなど

様々な広がりを見せている。その一方でゲームバランスを崩壊させるパラメータ変更や第三者のアカウントへ

の不正ログインといった不正行為の手法も多様化しており、対策がより困難になっている。本研究では、ゲー

ムにおいてどのような不正行為がおこなわれていてゲーム開発者側はどのような対策を講じているのかを明ら

かすることを目的とする。初めに行った学術文献調査では該当する文献が少なく学術的議論は活発でないこと

が判明した。WEB上の記事等の調査では現在と従来の不正行為の違いについて分かったが、不正行為の手法

及びその対策については情報が制限されており有益な情報を得ることができなかった。この結果を踏まえ、情

報の公開されている量が多く解析も容易な Androidアプリの改造 APKに焦点を当て実際にどういった改造に

より不正行為が行われているか明らかにし対策の検討行った。解析を行った APKの中でコードの難読化が施

されており元のコードが読めないというケースが存在したが、改造 APKは使用可能でありコードの難読化だ

けでは対策としては不十分であることが判明した。

復元可能な方法でパスワードを保管しているサービスの実態調査5516013 伊東 和寿

Web サービスやアプリにおいてユーザから入力されたパスワードは重要な機密情報である。そのため外部

からの不正侵入などに備えて解読が困難な状態で保管しているのが理想的とされている。代表例として SHA2

アルゴリズムを用いてハッシュ値に変換して保管するというものがある。しかし、すべてのWebサービスや

アプリが理想的な保管方法を実装しているとは限らない。個人情報が流出してしまう事件は多く発生している

が、その中にはサーバ側でパスワードを適切に保管しておらず平文もしくは可逆な形で暗号化保管されていた

ため、不正侵入などの被害にあった際にパスワードそのものが流出したケースが存在する。本研究は、どのよ

うなサービスやアプリが利用者のパスワードを平文もしくは可逆な形でサーバ側に保管しているかどうかの実

態を調査して明らかにすることを目的とする。手法としてはサービスやアプリごとに調査対象をリストアップ

し、1つずつ調査を行う。調査の結果 Alexaによるランキングでの上位サイト、Google Playランキングでの

上位アプリともに不適切な保管方法を実装していると確認出来たものは存在せず、総じて平文を返すサービス

が多くはないことが本調査により明らかになった。

オストリッチ ZIPの学術的議論の調査及びリスク評価5516077 中山 道裕

機密性の高い情報を他者と電子メールで共有する場合、暗号化した ZIPファイルを電子メールに添付して送

り、別の電子メールでその暗号化を解くためのパスワードを送信する手法がビジネス用途を中心に多用されて

いる。この手法は、セキュリティ上の意味は少ないと書籍「仕事ごっこ」や Internet Week 2016の講演など

さまざまなところで指摘されている。しかし、利便性などの理由により機密性の高い情報を危険にさらしてい

る事実から目を背けて使われ続けている。それは現実逃避や自己欺瞞を示す Ostrich Policyで運用されている

と言ってよい。そこで我々はこの手法をオストリッチ ZIP(Ostrich ZIP)と呼ぶこととした。オストリッチ

ZIPに関する議論はさまざまな視点でされているが、それらが学術的に整理されているものは著者の知る限り

ない。そこで本研究は、オストリッチ ZIPの学術的議論の調査を行い、調査結果を踏まえてリスク評価を行う

ことを目的とした。リスク評価の結果、オストリッチ ZIPは添付ファイルを暗号化せず電子メールで送信する

手法の情報漏洩リスクと比べてリスク低減の効果は薄いことが分かった。

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佐藤研究室

加速度センサ・磁気センサによるユーザー状態分析5513010 伊藤 聡志

近年、インターネットに接続できる端末はパソコンだけではなく、スマートフォン、タブレット型端末など

様々な形で普及している。特に、スマートフォンは手軽に出先で操作することができるため利用者数が増加し

ており、スマートフォン上のアプリケーションの開発も盛んに行われている。そして、携帯端末を保持する

ユーザーの行動やその周辺の環境を携帯端末上のセンサの情報から推定するコンテキストウェア技術が盛んに

研究・開発されている。この技術により、ユーザーの行動に適応して端末の動作を切り替えることが可能とな

る。本稿ではユーザーの行動推定を行うための手がかりとしてユーザーの移動状態に着目し、「階段」「歩く」

「走る」「エスカレーター」「エレベーター」「電車」「バス」の 7つの移動状況を対象とした移動状態推定を行

う。その際に用いる判別器の様々な組み合わせ方について検討し、適切な判別器の構成を明らかにする。

画像処理技術を用いた屋内ナビゲーションシステム5516114 山田 航大

GPSは屋外の位置測位精度が高く、多くのアプリ等で利用されている。しかし、屋内では建物などで電波が

阻害され、その高い精度を発揮することができていない。そこで本研究では、ARフレームワーク「ARCore」

を用いたマーカレス型による位置推定とその応用としての屋内ナビゲーションシステムを作成した。これはカ

メラ画像から特徴点を抽出し、前後の特徴点の変化から相対位置を推定するものである。しかし、相対位置の

みではナビゲーションには利用できない。そこでマーカ型を利用し、初期位置を取得することで絶対位置にお

けるナビゲーションを可能とした。本システムは電波を使用しない測定法のため、屋内における干渉や反射の

影響を気にすることなく使用できる点が強みとなる。本システムの有効性を確認するために以下の2つの点を

評価した。1つは環境についての評価である。サンプルを改造したアプリを使用して、明るさや床の材質等を

比較し、距離に対する精度が高くなる条件を検証した。もう1つは作成したアプリの精度についての評価であ

る。ナビゲートした位置と実際の位置との差を求め、その値を評価した。その結果 98.5%を超える高い精度を

実現した。

Wi-Fi RTTを用いた自己位置推定と機械学習による評価5516079 長沼 慶弥

屋外の位置推定を行う場合、一般的に GPS を利用するが、屋内には電波が届かないため位置推定には不

向きである。そのため様々な屋内位置推定が研究されている。無線 LAN を用いた位置推定では、無線 LAN

の周波数、電波強度、BSSID を利用しベイズ推定で位置を用いる試みがあるが、電波の特性上精度に課題

が残る。一方で近年、無線 LAN のラウンドトリップタイムを利用し、1~2m 精度で位置推定を可能とした

IEEE802.11mcと Android9以降から IEEE802.11mcが利用可能になってきた。本研究では、電波強度だけ

ではなくアクセスポイントと端末の距離のデータを学習させ、位置を推定する手法を提案し評価した。実験で

は3機の無線 LANを用意し、位置推定の評価方法として、ベイズ推定、サポートベクターマシン、k-近傍法

を用い比較した。さらに、位置を推定する際に利用するテストデータの数を減らすことで、短い時間で位置を

推定できるデータの量の比較も行った。実験の結果、電波強度と、アクセスポイントと端末の距離のデータを

利用した手法で、電波強度のみの場合の精度を上回ることを示した。

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残留磁気を用いた屋内位置推定手法5516032 角田 朱

システムやサービスを屋内で展開する時に、デバイスなどの位置情報が必要な場合がある。館内のルート案

内や倉庫内の商品の位置管理、オフィスでの位置管理などである。そのような屋内での位置情報を管理する

時に用いられるのが屋内位置推定技術だ。手法にはWi- Fi測位、RFID測位、ビーコン測位、磁気測位など

様々な技術がある。その中でも建物や地下空間などを支えるのに使われている鉄骨などの鉄材が発している残

留磁気を利用するのが磁気測位と呼ばれる手法である。磁気測位では事前に収集した磁気データの特徴をデー

タ map化し、観測データとデータ mapを照合して位置を推定する。この手法では新たに設備を作る必要はな

く、設備コストは抑えられるというメリットがある。そのため残留磁気を利用した屋内位置推定は低コスト、

高精度での運用が期待されている。すでに従来研究ではリアルタイム処理で誤差 2m以下の精度で測位すると

いうことを実現している。しかしこの手法ではデバイスを移動させた時に推移する磁気の値変化を特徴として

用いているため、初期位置の割り出しなどによっては精度が低下してしまう。そこで本研究では必要移動距離

を縮小し、より精度を高めるための手法を提案する。

ユーザー間の情報交換に基づく位置推定手法5516088 東 沢広

現代社会において、スマートフォンによる道案内や携帯ゲーム機など様々な場面において位置情報を使用す

る機会が増えている。屋外の位置情報の測定は主に、複数の衛星から電波を受信して端末の位置を特定する

GPSが挙げられる。しかし、屋内や地下街などは衛星から電波を受信しにくく、測定不能または、精度が安定

しないことが予想される。屋内や地下街の位置推定方式の一つとしてビーコンを使用したものが挙げられる。

この手法では、正確な位置情報を持ったビーコンを数多く設置する必要があるため、コストがかかる。それに

対して、主に大都市に広がる地下街を対象としたユーザ間の情報交換に基づく位置推定手法が提案された。こ

の提案手法では、コスト面と精度面を考慮して、少数のビーコンとユーザ間の情報交換を利用するため、人の

行き来の激しい大都市の地下街では高い位置推定の精度が期待される。しかし、この手法では全ユーザに同じ

最高移動速度を与えているため、歩行速度の遅い人の精度が少し悪くなる。本研究では、この手法にユーザの

動的最高移動速度を導入することで、更なる精度の向上をさせた。

車両アドホックネットワークにおける道路網構造及び渋滞情報を考慮したジオルーティング手法の提案

5516007 新垣 李奈

近年情報通信技術の高度化に伴い、無線通信を用いて車車間や路車間で情報の送受信を行い安全支援や交

通渋滞などの道路交通問題の解決をはかる高度道路交通システム (Intelligent Transportation System:ITS)

の取り組みが行われている。その中でも車を利用して形成される車両アドホックネットワーク (Vehicular Ad

Hoc Networks::VANET) は、広く研究が行われている。VANETは固定の通信インフラを介して通信するの

ではなく、各車両に無線通信装置が搭載されており、近隣の車両間で直接通信を行うことができる。従来研究

の SRSでは、道路構造網に基づき宛先までの通信経路の算出と中継車両による動的経路の修復により、通信

量の増加を抑制しつつパケット到達性を改善する方法が提案されている。しかし、SRSでは低車両密度の環境

ではパケット到達率が十分に得られないという課題がある。本研究では、車両密度を考慮した経路選択を行う

ことで低車両密度の環境下でも安定したパケット到達率を得ることを目的とする。また最適経路の選択はダイ

クストラアルゴリズムを用い、中継する車は最適経路上を走る車のみと制限することで総送信パケット数を大

きく増加させることなく到達率を向上させることがわかった。

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分散ハッシュテーブルKademliaの改良案及び評価5516072 富山 麟太郎

近年、ネットワーク上で多数の利用者が様々なコンテンツを取得するためにサーバやノード(Pear)にア

クセスすることが増加した。そのため、ネットワーク上の情報をより効率よく探索するために P2Pシステム

(Pear to Pear System : P2P)が様々な技術に利用されている。P2Pには情報が存在するノードを効率よく

探索する技術として分散ハッシュテーブル(Distributed Hash Table : DHT)がある。DHTを用いることで

情報検索の効率を上げることができるが、人気のあるコンテンツの IDを持つサーバやノードに検索要求が集

中してしまい、負荷がかかってしまう問題点がある。本研究は DHTのアルゴリズムの一つである Kademlia

に着目し、負荷がかかっているサーバやノードへの検索要求を分散させることで負荷の偏りを軽減し、コンテ

ンツを取得する際の効率の向上、又その評価を目的とする。

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中島研究室

情報共有車両の実装による渋滞緩和への有効性の検証5516004 雨宮 寛太

これまで自動運転に関する研究が行われており,既にいくつかの技術が開発されて実用化されるまでに至っ

ている.例えば既に実用化されている技術として,自動ブレーキやオートクルーズ等がある.また,近年では追従

型クルーズコントロールといったものも出てきており,着実に完全自動運転に近づいてきている.そこで本研究

では, 手動運転から追従型クルーズコントロールへ切り替える際に, 車間で速度や車間距離といった情報を共

有し,より正確な運転を行う情報共有車両を実装し,渋滞緩和にどれだけ有効性があるのかを検証する.シミュ

レーションの結果から,情報共有車両は速度を一定に保ちながら走行するため,車両台数によらず渋滞が発生せ

ず安定した走行をすることが分かった.一方で,普通車両は基本的には速度が不規則に決定されるため,渋滞が

発生していたが,車間距離が十分に空いている場合は速度を出してより車間距離を詰めて走行できることが分

かった.

複数車線における渋滞緩和車の導入による高速道路の渋滞緩和の提案と評価5516005 荒居 和志

現在,渋滞の解消・緩和の手法として様々な手法が提案されている.その中でも渋滞緩和車両を用いた手法

では道路の増築などに比べて長期休みやイベントの際に集中して投入ができるので車両台数に合わせた配置が

できる.そのため渋滞緩和車両を用いた渋滞の解消が期待されている.渋滞緩和車両を用いた渋滞の解消につい

ては単車線での有効性は示されているが,追い越しを考慮した複数車線での有効性は示されていない.本研究

では,渋滞緩和車両を用いて追い越しを考慮した 2車線での渋滞の解消・緩和を試みることで,渋滞緩和車両

の有効性を示し,適切な台数や配置方法を提案する.実験の結果,追い越しを考慮した 2車線での渋滞の解消

は,車線変更の際に条件を加えることで成功することがわかった.また,渋滞緩和車両の機能を維持するため

には,車線変更の際に車戦変更先の渋滞緩和車両との位置関係を見る必要があり,車線変更先の渋滞緩和車両

の前後に移動をすることを制限することで渋滞緩和車両の機能が維持されることがわかった.

阪神高速における運転者モデルのパラメータ推定5516023 太田 渉

高速道路の渋滞緩和策を検討する際,現実における交通流を模擬したシミュレーションを利用することでそ

の対策の効果を推測できる.交通流のシミュレーションではマルチエージェントシミュレーション (MAS)が

用いられることが多い.MASでは車を一つのエージェントとし,各エージェントに目的地の遷移やエージェ

ント同士の相互作用などのパラメータを設定することで,現実の交通流を模擬することができる.しかしその

パラメータ設定は個人の経験で行うことが多く,客観的なパラメータを推定することは難しい.本研究では阪

神高速における交通流のデータと IDMでのシミュレーション結果をヒートマップや SSD・SADで比較し,そ

のシミュレーションで用いるパラメータが実際のパラメータに類似しているかを調査した.

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東邦大学理学部棟 3号館における避難計画の有効性の推定5516048 佐藤 大河

マルチエージェントシミュレーションとは,個々のエージェントの振舞いがその他のエージェントと相互作

用し,群衆全体の振る舞いを観測するシミュレーションである.本研究では,天災が起きた際の東邦大学理学

部棟 3号館における歩行者モデルを作成し,マルチエージェントシミュレーションにより避難者の行動を計算

機上に再現した.また,避難者に避難計画を実施する場合と実施しない場合で避難時間や混雑状況にどのよう

な変化が起きるのかを比較することで避難計画の有効性を検証した.避難計画は 3種類用意したが,どれも避

難計画を実施しない時より避難時間の短縮につながった.その中でも最も有効だと検証されたのが,階層ごと

に時間差をつけて避難を開始するという避難計画であった.

優先搭乗券の取得方法がテーマパーク来場者に与える影響の分析佐藤 希美 5516049

世界中には,数多くのテーマパークが存在する.人気があるテーマパークでは多くの来場者で賑わっており,

アトラクションに乗るために長時間待たなければならないこともある.東京ディズニーランドやユニバーサ

ル・スタジオ・ジャパンなどでは来場者を待たせない工夫の一つとして優先搭乗券を配布している.優先搭乗

券とは持っている人が優先的にアトラクションのサービスを受けられるようになるシステムである. 東京ディ

ズニーランドでは,アトラクションのエリアで優先搭乗券を発券する方法のみを採用していたが,2019年 7月

に携帯端末を利用して優先搭乗券を発券できるようになった.本研究では,東京ディズニーランドを参考にし

てテーマパークモデルを作成し,携帯端末から優先搭乗券を取得する方法と従来の方法を比較し,来場者の待

ち時間や滞在時間にどのような影響を与えるかを検証した.

車両混雑情報の提供が駅構内の混雑に与える影響のシミュレーション5516115 吉澤 宏紀

電車に乗る際に,人は自身の嗜好で乗車位置を決めている.混雑した車両に乗らないような乗車位置を選ん

だり,改札や階段付近に近い場所を選んだり,自身が下車する駅の改札や階段,乗り換え通路が近くなるよう

に選んだりする.これらの要因によって,乗車位置の混雑度に偏りが生じ,結果的に車両混雑率も偏ってしま

う.本研究では車両混雑度が取得できるものを駅構内に設置することによって駅ホームにおける乗車位置の偏

りの緩和を試みる.また車両混雑度の取得場所を変更した際に偏りがどのように変化するかを検証する.

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5210教室

ナチェル研究室

日紫喜研究室

白石研究室

新谷研究室

白柳研究室

並木研究室

高田研究室

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ナチェル研究室

単一細胞トランスクリプトミクスデータ解析を用いた急性骨髄性白血病の細胞判別と疾患進行

5516061 高安 真由

生物学的システムの理解には、各構成部分の知識が必要である。その中でも次世代シーケンシングを用いて

細胞ひとつひとつの遺伝子発現を解析する手法である Single-cell RNA-sequencing(scRNA-seq)を使用して、

従来の遺伝子発現解析よりも高い精度でトランスクリプトームの不均一性を計測することが可能である。実

際、単一細胞トランスクリプトミクスは、数百から数千あるメッセンジャー RNA(mRNA)を同時に計算し、

特定のクラスタに含まれる各細胞の遺伝子発現レベルを測定する。ここではまず、急性骨髄性白血病 (AML)

における造血幹細胞移植 (HSCT)前後の骨髄単核球細胞をサンプルとして scRNA-seqデータを取得する。い

くつかのデータ分析方法や解析手法を組み合わせて、健康状態から移植前後までの様々な状態を照らし合わせ、

各細胞型のクラスタの変化を調べていく。

制御性アプローチによる日本株式市場の情報解析5516052 清水 瑛功冴

複雑なシステムの相関関係を理解することは、金融危機などの大きなシステムショックの影響を知る上で非

常に重要である。 金融ネットワークをはじめとした複雑なシステムでは、相関は一定ではなく、時間によって

変化する。 今回、日本の株式市場の株価 (日経平均採用銘柄)のデータを収集した。さらに、金融の複雑ネッ

トワークとして、2006年から 2018年までの各年のデータ相関に基づいてネットワークを構築した。これらの

相関値を利用して、相関ネットワークを構築し、これらのネットワークを分析する。またこのネットワークモ

デルは、株式の小さな部分集合を同定することが可能であり、これらは年間を通じて構造ネットワークのコン

トローラーとしての重要な役割を果たす。特に、このノードの集合のサイズの変動と世界的な経済危機との関

係を調査する。年ごとにおける制御可能性分析は、市場全体がどのように変動するかだけでなく、このシステ

ムを用いて業種別に分類された特定の株がどれほどの影響をもたらすのかを解析する。

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タンパク質相互作用ネットワークにおける機能モジュールの同定とその制御解析5516009 安藤 雅晃

関心のあるほとんどのネットワークは、コミュニティまたはモジュール構造を示し、それらの頂点は、コ

ミュニティまたはモジュールと呼ばれるグループに編成される。生物学では、タンパク質機能モジュールは互

いに相互作用し、同じ細胞プロセスに関与するタンパク質のグループであると考えられる。複雑なネットワー

クのモジュール性を調査するために、いくつかのアルゴリズムが提案されている。しかしながら、モジュール

と制御性の関係はあまり調査されていない。ここでは、まずクラスタリングベースのアルゴリズムを使用し

て、ヒトのタンパク質間相互作用(PPI)ネットワークの最大モジュールを決定する。次に、制御性解析によ

り、各モジュールにおける重要なコントローラーの豊富さを決定する。 さらに、遺伝子オントロジー(GO)

分析を行い、同定されたモジュールの生物学的意義を評価する。 その結果、ほとんどの生物学的ネットワーク

モジュールに重要なタンパク質が豊富に含まれていることが明らかになり、疾患における最適な薬物標的の同

定に影響を与える可能性がある。

遺伝子発現プロファイルとネットワークデータの統合を用いた SVMと可制御性解析によるがんの種類の判別

5516062 高山 裕介

近年、マイクロアレイベースの遺伝子発現プロファイリングは、がんに関連するバイオマーカーを特定する

ための広範なアプローチとなっている。遺伝子発現データを使用することにより、サポートベクターマシン

(SVM)などの確立した高度な機械学習技術を使用して疾患を分類できる。ただし、ほとんどの場合、分類器

は生物学的機構の理解に容易に役立たない「ブラックボックス」として動作する。ここでは、遺伝子発現マイ

クロアレイと生物学的ネットワークに基づいた癌分類への複合アプローチを提案し、白血病や肺癌などのいく

つかの疾患タイプに適用する。 遺伝子発現が各疾患タイプと強く相関している遺伝子のサブセットを選択す

る統計分析を実行した後、SVMモデルを適用してデータを分類する。次に、制御性モデルを適用して、タン

パク質相互作用ネットワークを使用してネットワークコントローラーの集合を決定する。この集合は、分類の

目的で使用される集合と比較される。白血病の場合に特に大きい重複は、特定のネットワークの場所(コント

ローラー)にある一部のタンパク質も、疾患状態への移行時にさらに変動する傾向があることを示唆している

ため、疾患に適したバイオマーカーまたは識別因子を表すと考えられる。

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日紫喜研究室

国土数値情報に基づく医療機関の分布の検討5516040 倉持 涼

高齢化が急速に進行する中、将来の年齢別人口分布に対応した医療機関の配置を地理情報を用いて検討する

方法を考案することは重要な課題である。本研究は、現在の医療機関の配置と予測人口分布との関係を視覚的

に分析し洞察を得るためのデータ処理ならびに表示方法の開発を目的とした。データとしては国土数値情報の

医療機関データと1kmメッシュ年齢別予測人口データを用いた。シェープファイルのデータを GeoJSON形

式に変換し、フリーな地図プラットフォームである Leaflet.js の Javascript API を用いて、それらのベクト

ルデータを Open Street Mapのラスター地図上にレイヤーで重ねて表示した。自分は2種類のベクトルデー

タのレイヤーを同時に重ねることができなかったので、別々に検討した。その結果、数としては高齢者は都市

部により多く、また、病院は都市部により集中していることがわかった。人口のまばらな地域の高齢者の医療

ニーズをどうするか、病院の配置と高齢者の配置と両面から考慮する必要があると考える。

事故多発交差点マップの作成5516051 塩崎 航成

毎年、各県で交通事故防止運動や国を挙げて保安基準の改正を行っているが、それでもなお悲惨な交通事故

のニュースは後を絶たない。発生件数だけでも平成元年から平成 30 年までの間で 2231 万 1776 件にものぼ

る。特に交差点内での交通事故は、交通人身事故発生件数過去 10年間の平均で 47.4%を占めており、信号機

により交通整備が行われているとはいえ多発しているのが現状である。本研究では、事故多発交差点について

その発生場所を地図上に表示し、特徴をつかみやすい形で表すことにより、交差点での交通安全に役立つシス

テムの構築を目的とした。そこで、事故多発交差点についての調査、既存サービスの良い点・悪い点を調査し、

必要な機能の把握、独自のサービス構築を試みて新規機能の実装を行った。その結果、事故類型のイラスト説

明の表示や Street viewなどの既存サービスにはない新たな機能を付け加えることができ、交差点での交通安

全に役立つ情報提供が可能になった。

千葉県の「老人ホーム」の分布5516057 鈴木 和輝

近年、「老健渡り」といわれる人々が社会問題となっている。その特徴は、介護が必要だが自宅で暮らすの

は難しいのに、費用負担の小さい特別養護老人ホーム(特養)の空きがなくて入れないので、仕方なく介護老

人保健施設(老健)を渡り歩くことを強いられていることである。そこで、いわゆる「老人ホーム」といわれ

るものの分類を調べ、また、千葉県における分布を明らかにしようと試みた。データとしては国土数値情報の

福祉施設データと1kmメッシュ年齢別予測人口データを用いた。シェープファイルのデータを GeoJSON形

式に変換し、フリーな地図プラットフォームである Leaflet.jsの Javascript APIを用いて、それらのベクトル

データを Open Street Mapのラスター地図上にレイヤーで重ねて表示した。その結果、東京都に近く、人口

の多い市に老人ホームが多く存在する事、逆に山間部や農村部の人口の少ない市に老人ホームが少ない事が分

かった。しかし、人口ではなく市区町村における老年人口の割合に着目してみたところ、割合が高い地域には

老人ホームが少ないことが判明した。これが老人ホームの潜在的なニーズと関係があるのかどうかはさらに検

討が必要であると考える。

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観光資源における自然災害の可視化5516094 平山 真聖

日本は、世界観光収入ランキングにおいて 11位になるなど、年々観光収入が逓増している。しかし日本は

近年、洪水や地震など数多くの災害に見舞われている。これは、観光客にとって大きな不安の種の一つになる

だろう。一方、自治体が公表している防災対策のハザードマップは災害予測に基づいた災害の程度や避難所が

記載してあるが観光資源の位置表示がなく、観光客にはわかりにくいものとなっている。そこで観光資源の表

示があるハザードマップを作成すればこの二つの問題が解決すると考えた。また、千葉県内の観光資源がどの

程度の洪水被害を受けるかマップからデータを抽出し、現在の千葉県内の観光資源の置かれた状況を確認しそ

の考察を行った。作成にあたり災害予測のデータは国が提供している国土数値情報を使用しマッピングのため

の webライブラリには「leaflet」を使用した。

Google Map APIを利用した千葉県内の車椅子トイレへのナビの作成5516112 山崎 優太

現在、日本では高齢化社会の影響から車椅子利用者数が増加傾向にある。今後もますます増加すると予測さ

れる。そこで、車椅子利用者が使いやすいバリアフリーのトイレの位置情報を提供したいと考えた。車椅子利

用者が通常のトイレを利用することは困難なことであり、外出中でも困らないように本研究を通して、役に立

ちたいと考えた。本研究では、Google Map APIを使用し、現在地から一番近い車椅子が利用できるトイレへ

の最短ルートを表示して、車椅子トイレを必要としている方々を案内するとともに、URLも表示して、その車

椅子トイレの詳細も表示できるようにした。本研究の方法で、千葉県以外でもより多くの箇所についての情報

を収集・表示できれば、車椅子トイレを必要とする人の役に立つだろうと考える。

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白石研究室

二輪車に搭載した単眼カメラ映像中のマンホール検出5516080 鍋谷 佑

乗用車の安全性を情報技術によって高める機能が普及してきている。しかし、二輪車については、乗用車と

比較すると発展途上にあるといえる。

そこで、本研究では、二輪車の安全性を高める手法、特に、雨天時の二輪車の事故を減少させるために、雨

天時でも利用可能な安価で簡単に搭載できる単眼カメラから映像を分析してマンホールの有無を検出する手法

を対象とする。

先行研究では、楕円フィッティングによる検出手法が提案されていたが、雨天時を対象としていなかった。

そこで、本研究では、この手法が雨天時にも適用可能か追試した。偏光フィルタを用いるなどの工夫をしたも

のの、楕円フィッティングによる検出は雨天時にはあまり適していないことが判明した。

また、畳み込みニューラルネットワークを用いて、画像中のマンホールの有無を検出することを試みた。そ

の結果、画像領域を限定すれば精度よく検出できることから、映像中の画像を入力して検出できる可能性が示

唆された。

大編成楽曲におけるパート間の関連性に着目したスコアリーディング支援システム5516034 輕部 響子

吹奏楽などの大編成楽曲を演奏する際には、自分の担当するパートの役割と、周囲のパートとの関連性を把

握することが重要である。この関連性は通常スコアに示されているが、大編成の楽曲のスコアはその複雑さゆ

え、音楽知識のある人でも読むのが難しいとされる。

本研究では、大編成楽曲におけるパート間の関連性を容易に把握できるようにするためのツールを開発する

ことを目的とする。演奏者が必要な情報を短時間で簡単に読み取ることを可能にし、練習の効率化を図る。

このツールでは、各パートを 1本の線で表し、役割と周囲のパートとの関連性をそれぞれの線の位置関係で

示す。同じ役割を持つパートの線をまとまって表示し、そのまとまりの位置によって役割を示す。さらにまと

まりごとに背景に色を付け、より分類を分かりやすくした。パートの役割と関連性に重点を置くことによって、

効率的な情報の可視化が可能となった。

漫画における登場人物の描画の有無に基づく Storylineの生成手法の検討5516030 小澤 明弘

Storylineとは、横軸に時間の進行を取り、ストーリー中で登場人物が同時に現れるときに、登場人物に対応

する線を近接させることで、映画などの物語を可視化するものである。

従来の研究では、主に映画作品を対象として Storylineを構成する手法が提案されてきた。本研究では、長

編漫画を対象とした Storylineを構成する手法を対象とする。

まず、各キャラクターが漫画の各ページに登場しているかどうかという情報を基に、自動的に Storylineが

構成できるかを試みた。そのために、各ページにキャラクターが登場しているかを手作業で色をマークし、そ

の結果をスキャナで取り込んで画像とし、各ページに塗られている色を検出するプログラムを作成した。その

結果を Storyline生成するシステムの入力とした。

この結果得られる自動的に生成された Storylineと、漫画を読んでストーリー中のキャラクターの近接関係

を解釈した結果から作成した Storylineを比較した。

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TVドラマを対象としたストーリーの進行とともに人間関係が変化する人物相関図の生成手法

5516022 大下 佑衣

TVドラマの特徴は、ストーリーの進展に伴って人間関係が変わるという点である。多くの場合、一枚の人

物相関図しか提供されないが、ストーリーの進行とともに変化していく人間関係を把握するには不十分である。

本研究では、各話ごとの人間関係を可視化するとともに、話数が進むにつれて変化する関係を把握できる人

物相関図の生成手法を提案することを目的とする。

開発したソフトウェアでは、実際に放映された全 7話からなる TVドラマを対象として、主要な登場人物間

の人間関係を話数ごとに確認できるようにした。話数を進めたり戻したりでき、さらに現在表示している話数

の中で更新された関係と、以前から存在する関係とを容易に区別できるようにした。この結果、全話視聴でき

ない人や久々に作品を観る人でも、簡単に登場人物の人間関係の変遷を把握できる。

ソフトウェアを使用した感想として、大体の関係は把握できる一方で、細かい状況は読み取るのが難しいと

いう問題点も指摘された。

筆ペンで表書きを綺麗に書くための支援アプリケーションの開発5516069 戸井 成美

近年、毛筆で文字を書く習慣は失われつつあり、さらに急速なコンピュータ技術の進歩により、紙そのもの

に文字を書く習慣は減っている。しかし現代でも、祝儀袋や不祝儀袋などの表書きは筆を使って書くこととさ

れているため困る人は多い。表書きとは、祝儀袋や不祝儀袋を出す際に、その袋に書く用途と自分の名前のこ

とを指す。

この問題を解決するため、本研究では、練習なしで、入り用なときに表書きを綺麗に書けるツールを提供す

ることを目的とし、筆ペンで表書きを綺麗に書けるように支援するアプリケーションを開発した。このアプリ

ケーションはタブレット上で動作し、ユーザが用途と名前を入力するとお手本が表示され、袋をタブレットの

上に置き、写し書きをする。

開発したアプリケーションを使用した評価では、アプリケーションを使った方が上手に字を書け、また上手

に見えると回答した人数が多かったため、アプリケーションの有用性を実証できた。

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新谷研究室

不確定性を排除したマインスイーパーの作成法5516041 阮 怡亮

マインスイーパーは、隣接マスに存在する爆弾の個数を表す数字をつかって、爆弾の位置を推理するゲーム

である。このゲームの面白さは、難しい推理が解けることによる達成感である。しかし、爆弾の位置を断定で

きないような状況に遭遇することがある。そのような不確定性に遭遇すると興醒めしてしまう。その不確定性

は AIを用いて盤面を解き、盤面が解けない場合は作り直すことで排除できる。これを実現したゲームは既に

あるが、ソースコードは公開されていない。そこで本研究ではマインスイーパーの AIを作成する。これを用

いて不確定性を排除するプログラムを実装し、性能を解析するとともに改良を試みる。盤面のマスは爆弾であ

る時に1、爆弾でないときに0の値を持つことにすると、ゲームの問題は連立一次方程式として定式化される。

作成した AIは、この連立一次方程式の解をツリー探索によって求める。この AIを用いたマインスイーパー

プログラムの性能を解析したところ、爆弾の密度やマスの数の増加につれて、不確定になる割合が増加してい

くことが分かったので、詰まったときにバックトラックする仕組みを用いることで処理を効率化した。

オセロにおける接戦指向型戦略5516100 前田 直人

現在、人間の実力を大きく上回るオセロプログラムがインターネット上に多く存在している。また、2019年

には吉田拓真が、負けるのが難しい最弱オセロを開発した。人間が勝つ (負ける)ことがほぼ不可能なプログラ

ムはオセロゲームとして考えた時、面白さに欠ける。対局を接戦に近づける戦略をとれば、ゲームの面白さ向

上につながると考えた。本研究は、プレイヤーの勝率を 5 割に近づける戦略を明らかにすることを目的とす

る。ここでは、「AI が不利なときは強い手、有利なときは弱い手を打つ」という戦略を検討する。この戦略で

は、どちらが有利か判定する方法と、弱い手の打ち方を決める必要がある。戦況の判定には評価関数を使い、

弱い手の打ち方として、A.ゲーム木の深さを減らす、B.最弱オセロと同じ打ち方、の 2種類を検討した。弱

い手を手法 Aと手法 B で打った場合における勝率の違いを調べる実験を行った。弱い手を手法 Aもしくは手

法 Bで打つ戦略を実装したプログラムと被験者で対局を行ってもらい勝敗を調べたところ、AIが不利なとき

は強い手、有利なときは最弱オセロと同じアルゴリズムで手を打つ戦略が勝率を 5割に近づけるうえで有効で

あることが明らかになった。

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白柳研究室

凸包アルゴリズムの安定化5516028 奥田 和樹

一般的に計算機では小数に対してある桁数に達すると切り捨てや切り上げ、四捨五入などの丸め操作を行

い、近似的な計算を行っている。ところが、近似的な計算では厳密な計算に比べて誤差が生じやすい。この影

響でアルゴリズムによっては全く異なる結果を出力することがある。これが不安定なアルゴリズムである。そ

こで、数値数式融合計算方式の一つである Shirayanagi-Sweedler の「安定化手法」に着目する。安定化手法

とは、入力した多項式の係数を区間化して区間演算を行い、分岐命令である if 文のところでは、0が含まれる

区間を 0 に変換するという「ゼロ書き換え」処理を行うものである。この手法によって、従来の近似的な計算

に比べて高速に信用の高い結果を得ることができる。

本研究では、数式処理ソフト Maple を用いて、安定化手法を2次元凸包および3次元凸包を構成するアル

ゴリズムに適用し、安定化手法の効果を確認した。

双子素数とその疑似概念について5516029 小栗 ひかる

双子素数とは、差が 2である二つの素数の組を構成する各素数のことである。例えば、100以下の双子素数

の組は、{3,5}、{5,7}、{11,13}、{17,19}、{29,31}、{41,43}、{59,61}、{71,73}の 8組である。疑似概念と

して、いとこ素数や三つ子素数なども存在する。

本研究では、数式処理システムMapleを用いて限界まで出力し、双子素数とブルン定数(双子素数の逆数の

和の極限)のグラフ化、及びその疑似概念とそれに対するブルン定数のグラフ化に取り組んだ。疑似概念では、

存在しないとされている 7個以上の素数の組(七つ子以上の素数)を、存在条件を変えて新しく作り出した。

そうして得られた出力結果をもとに 7個以上の素数の組(七つ子以上の素数)の性質やグラフの変化を読み取

ることによって、双子素数に関する未解決問題を解く鍵を探した。

オイラー予想の拡張5516081 根本 拓海

フェルマーの最終定理とは、3 以上の自然数について、xn + yn = zn となる自然数の組 (x, y, z)は存在し

ない、という定理のことである。オイラーはフェルマーの最終定理の n = 3 のとき、すなわち x3 + y3 = z3

を満たす自然数の解 (x, y, z) は存在しないことを証明した。ここから、フェルマーの最終定理を拡張して、

x4 + y4 + z4 = w4 や x5 + y5 + z5 +w5 = v5 の自然数解は存在しないだろう、より一般に n > 3 に対して、

n− 1個の n 乗数の和を 1 個の n 乗数で表すことはできないであろうと予想した。これがオイラー予想であ

る。のちに反例が見つかり、この予想は正しくないことが証明されている。

本研究では、フェルマーの最終定理、オイラー予想をもとに冪乗数、項数を変化させた式の自然数解の有無

を Maple によって調べ、その規則性を探求した。

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ウーラム数の一般化5516082 橋之口 拓未

二つの自然数 (m,n) からはじめて、それまでに出てきた異なる二項のただ一通りの和になるような数を

(m,n) ウーラム数という。

本研究では、先輩方の卒業論文や参考文献をもとに、数式処理システム Maple を用いて、(m,n) ウーラム数

を一般化できるかを研究した。そして一般化することで、「ウーラム数の間に任意に大きな間隙があるか」と

いう未解決問題に応用できるかどうかを考えた。まず、(1,2)ウーラム数から得た隣接するウーラム数のペア

(47,48)から (47,48)ウーラム数について計算した結果、 1⃝ウーラム数の列を群で考えることで任意の間隔があること、 2⃝以上の法則は 2303 までの範囲で成り立つことが分かった。以上の結果を用いて、連続する数の

組だけでなく、差が 2、3 ある組のウーラム数でも同様な法則が存在するかについて研究を行った。

円分多項式の係数について5516087 林崎 拓己

多項式 xn―1(nは自然数)を整数の範囲内で因数分解したとき、n=104までは、各因子の係数は1、

0、ー1となるが、n=105のときに初めて係数に-2が出現する。実は、任意の整数に対して、それが係

数として出現するようなnが存在するということが、円分多項式の係数に関する鈴木の定理から導かれる。

本研究では、後藤翔太先輩の卒業論文で掲げた課題に取り組んだ。円分多項式において1,0、-1以外の

例外的係数を生成するnのうち、鈴木の定理の証明で使われた方法で求められるnを鈴木数と呼び、そうでな

いnを非鈴木数と呼ぶこととする。鈴木の方法は、ある性質を満たす奇数個の素数列を利用するが、偶数個で

はどうかと疑問を持った先輩は、素数列が4個のときを研究していた。例外的係数を出力するnを350万ま

で調べ、その素因数の個数が偶数であるものを抽出し、4個より多いケースを探求した。それに加えて、例外

的係数とその頻度、出現する項の最小次数、最大次数をMapleで計算し、表としてまとめた

ラッキー素数は無限に存在するのか5516106 三浦 大悟

ラッキー数とは、自然数の中から、エラトステネスのふるいに似た方法で選ばれる数である。具体的には、

自然数 1,2,3,...を並べて 1番目の 1はラッキー数、自然数から 2n番目の数 (偶数)を除き、2番目の 3

はラッキー数、出来た数列から 3n番目の数を除き、3番目の 7はラッキー数、新たに出来た数列から 7n番

目の数を除き、4番目の 9はラッキー数。以下、このプロセスを繰り返して残った数がラッキー数である。な

お、ラッキー素数(ラッキー数かつ素数)が無限に存在するかどうかは、いまだ証明されていない未解決問題

である。

本研究では、この問題について研究した。1~5000までは 2015年度の服部先輩が計算しているので、5001

から 500000まで計算した。計算機実験は数式処理システムMapleを用いて行った。

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並木研究室

Pythonによる図形詰め込み問題5516027 小川 航平

図形詰め込み問題とは,配置すべきもの(製品)の集合と配置される空間(容器)が与えられたとき,製品

を容器内に,様々な制約の下で効率よく配置する問題である.布や鉄板などを切り分ける際,コンテナに荷物

を詰める際などの実用的な問題と密接な関わりを持つ.図形詰め込み問題において厳密な最適解を求めること

は非常に難しいことから,様々な近似アルゴリズム提案がされている.ここで,近似アルゴリズムとは最適解

とは限らないが,短時間で近似解を求めることができる手法である.

本論文では,2次元の長方形詰め込み問題に対して,提案された2つの基本的な近似アルゴリズム NF

(Next-Fit)法,BL(Bottom-Left)法を扱い,実際に Pythonによる実装を試みた.そこで得られた近似解

から,精度や実用性を考察した.さらに,この BL法については3次元の直方体詰め込み問題へと拡張し,実

装を行った.こちらに対しても得られた近似解から,精度や実用性を考察した.

Pythonを用いたグラフ彩色問題5516006 新井 智哉

グラフとは,点集合と点と点の隣接関係を表す枝集合からなる数学的な対象物である.グラフの彩色問題と

は大きく2つあり辺彩色と点彩色である.辺彩色とは,同じ頂点から出る辺を異なった色で辺に色を塗る方法

である.点彩色とは,同じ辺を共有する頂点同士は,互いに異なった色で頂点に色を塗る方法である.応用例

として辺彩色は,スケジューリング問題や水道管網などに,点彩色は,電波塔の周波数問題などに利用されて

いる.

本論文では,Python 実行環境下においてグラフの彩色問題と解法の実行速度の比較について取り上げる.

また,最小点彩色数の近似解を求めるWelsh-Powell のアルゴリズムと 0-1 整数線形最適化問題との結果を,

頂点数の多さとその最適化問題の計算の速度を比較する実験を行った.

DEAを用いた映画の分析5516042 小石 百恵

DEA(Data Envelopment Analysis)とは,1978年にテキサス大学のチャールズ教授とクーパー教授によっ

て提唱された実用性の高い経営分析法である.事業体の活動は,資源を投入し便益を産出する変換過程とみる

ことができる.DEA では,産出/投入という比を用いてその変換過程の効率性を測定し評価する.この手法は

初期の段階では政府学校軍隊など公共団体の評価手法として提唱されたが,現在は民間企業の経営分析手法と

しても広く使われている.

本研究では,この DEAの基本的な考え方について,単純な計算事例を用いて概説する.また,映画のメイ

ンキャスト数やメディア露出を投入,興行収入を産出とし,興行収入の効率性を分析していく.

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平均・分散モデルによるポートフォリオ最適化5516018 内川 宗徳

人は人生 100年時代を迎え,今の「働く世代」は,終身雇用制の崩壊や年金制度の持続性にも不安を感じて

おりお金との向きあい方を考える必要に迫られている.私たちはインターネット環境の急速な普及と発達によ

り,以前より身近に「投資」という言葉を耳にするようになり,投資に関心を寄せる人も少なくない.投資を

行う際,いくつかの株式に分散投資をすることで投資に対するリスクを軽減することができる.複数の種類で

構成される分散投資を金融ポートフォリオといい,最適な投資配分を探すことをポートフォリオ最適化という.

これは数理計画法のアルゴリズムを用いて数値的に求めることができる.

本論文では実際市場である東京証券取引所一部に上場している企業の 2019年 1月から 2019年 12月末まで

の株価データを使用し,業種別に代表銘柄を選び,ポートフォリオ最適化を測る.各市場の銘柄に対する投資

比率や期待値,リスクは代表的なモデルである平均・分散モデルを用いる.さらに業種ごとの期待収益率 (投

資を行う際,平均的に期待される収益の平均値)などを用いて比較を行い,投資対象となりうる市場について

考察する.

損失関数の振動性とアルゴリズムによる減少傾向の比較5516067 土屋 隆弘

深層学習の内部構造は,神経回路網を模したニューラルネットワークから成っている.また,そのニューラ

ルネットワークの評価は損失関数がしており,その値が減少しより小さければ小さいほど,良いニューラル

ネットを築けていることになる.

本研究では各要素の重みとニューラルネットワークの出力から求められる損失関数の出力を指標に重みを更

新していき,出力の最小化を図る.アルゴリズムやデータセットでその減少の仕方が異なるので,MNISTや

fashion-MNISTといったデータセットを用いて各アルゴリズム比較を分析している.それにより振動性の意

味と,振動性から何がわかるのか考察していきたい.

数理最適化問題を用いた数独の作成5516038 清田 諒

数独とは一般的に,9 × 9マスの正方形の盤面に与えられた数字から考察して,1 9までの数字をあるルー

ルに従って盤面に埋め込んでいく数理パズルである.数独は多くの雑誌や新聞にも掲載されるほか,携帯電話

やスマートフォンのアプリケーションにもなっており,老若男女に幅広く浸透しているパズルである.現在で

は,児童の教育や高齢者の老化防止など脳を鍛えるものとして我々の生活に大いに役立っている.

本研究では,我々の身近にある数独がどの様なものなのか数独の作成を通して考察した.数独の基本的な

ルールについて確認し,そのルールに従って数独の作成を試みた.数独の作成については,python実行環境

下において数理最適化問題の手法を用いて行った.また,数字をどれほどまで隠しても数独の問題が作れるの

か実験し,数理最適化問題の観点から,数独の難易度調整について可能なのか数独の隠れている数字の数から

考察した.

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高田研究室

二種類の市場心理を考慮した倒産時刻のモデル化5516010 飯畑 良佳

Information-based Approachでは、市場参加者がなんらかの情報を得て、それに応じて適正価格を算出し、

取引が行われていくと考える。このような状況を適切にモデル化するため、さまざまに変化する市場情報によ

り生成される増大情報系をまず先に定式化し、それを所与として市場参加者が理論価格を導出するような数理

モデルを構築する。本研究では、倒産する可能性のある債券価格の理論モデルを考える。Brody-Hughston-

Macrinaモデルでは、企業の倒産時刻を表す確率変数 τ は、なにか別の確率変数 X を用いて τ = f(X)と表

すことができると仮定するところから出発する。ただし、f は確定的な関数であり、確率変数X には、企業の

倒産と関連する何らかの要因という意味付けをする。もし、市場参加者がX を知ることができれば(f を知っ

ているという前提のもとでは)、倒産時刻予測できてしまうことになる。そこで、なんらかのノイズが加わっ

た状態で確率変数 X を観測し続けると仮定する。本研究では、この要因 X が一つではなく、二つの場合にモ

デルがどのように拡張できるか研究する。具体的には、倒産する可能性のある債券(信用リスクのある債券)

の価格を導出する。

市場心理を反映させた倒産時刻と瞬間デフォルト率のモデル化5516014 伊藤 烈

数理ファイナンスでは、突然に発生する倒産時刻を数理的にモデル化し、資産運用などの何らかの意思決定

に役立てるためのモデルを構築している。本研究では、市場に出回っている情報をもとに債券の適正価格を

算出する一般的な枠組みである、Brody-Hughston-Macrina による Information Based Approachに基づき、

倒産リスクのある債券の数理モデルについて論じる。企業の倒産時刻を決定する不確実要素を確率変数 X で

表しその X にノイズが加わった情報を観測できるという条件下で、倒産時刻を表現できる数理モデルを作成

する。ここでノイズはブラウン運動でモデル化する。また倒産時刻をあらわす際に標準的に用いられる概念と

して瞬間デフォルト率(これは Hazard rateと呼ばれるものと一致する)を用いる方法がある。瞬間デフォル

ト率がわかれば、それを時間で積分することによって、任意の時間間隔の倒産確率を算出することができるた

め、基本的な量と言える。本研究では、瞬間デフォルト率を理論的に導出することを目的とする。

2社のデフォルト時刻のモンテカルロシミュレーション5516024 大森 勇輝

本研究では、2社の同時倒産時刻の関係について研究し、シミュレーションを行った。まず、2つの会社の

倒産に影響を与える経済的要因(GDPや失業率といった実際に会社に影響を与える可能性のある物)を数値

として考え、倒産時刻を求めるモデルを構築した。経済的要因 X はそのときどきの経済状況に応じてさまざ

まな値を取りうるため、今回の検証ではランダムな変数として扱っている。そして、相関係数¥rhoの値を比

較しやすいように変化させて代入し、シミュレーションを行うことによって、毎回異なる倒産時刻が出てくる

が、適当な回数このシミュレーションを行なった場合、2社の間に相関のある結果が出てくるのではないかと

いう予想をたてて、検証を行った。また、相関関係が分かりやすくなるように経済要因を 2つの場合について

調べた。

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市場情報と倒産確率の関係  1社の場合の割引債のモンテカルロシミュレーション5516044 齊藤 岬

割引債とは、券面に利札(クーポン)がついておらず額面金額から割り引いた金額で発行される債券のこと

を言う。発行価格は額面価格よりも低くなっており、この差額が利付債でいう利息に相当し、満期時には額面

償還される。しかし、企業が発行する割引債にはその企業が倒産した時には投資資金が回収できなくなるとい

うデフォルトリスクが含まれている。一般に企業の倒産はランダムな時刻に確率的に起こるものである。

本研究では、倒産しうる割引債の価格の変動をモンテカルロシミュレーションすることを目的とし、そのた

めに企業の倒産時刻を決定する不確実要素を確率変数 X で表し、割引債の価格を表現できる数理モデルを作

成する。価格変動と倒産のシミュレーションが可能になれば、債券のポートフォリオの価値のシミュレーショ

ンや、この債権を原資産とするデリバティブの価格の計算などもできるようになるため、有用性が高いと言

える。

コピュラ モデルを用いた 2社のデフォルト時刻のモンテカルロシミュレーション5516063 竹内 亮

ある企業 Aがデフォルト(債務者が債務を履行できなくなること)したときに、他のある企業 Bもある企

業 Aの影響を受けてデフォルトする可能性が極めて高ため、ある企業 Aとある企業 Bには連動性があるとい

える。このことをコピュラに従う一様乱数を Excel発生させ標準正規乱数を得ることによって、Aと Bのデ

フォルトの相関を表現するモデルを構築することができる。本研究では、実際に一様乱数と正規乱数を Excel

上に 100個つくり、それらの相関について、モンテカルロシミュレーションを行い、ある一定期間の 2社間の

同時デフォルト発生時刻の関係についてみていく。

デフォルト伝染モデルにおけるデフォルト時刻のシミュレーション5516117 米本 大

ある企業 1がデフォルト(債務不履行)状態に陥ったとき、その企業に関連するビジネスを行なっている企業

2もデフォルト状態に陥る可能性が高くなると予想される。このことをデフォルト伝染と呼ぶことにする。本

研究では、デフォルト伝染を数理的に解析するため数理モデルを構築し、モンテカルロシミュレーションによ

る分析を行う。デフォルト伝染モデルの瞬間倒産確率(ハザード率)の式を λ1t = λ1I{τ2>t}+(λ1+α1)I{τ2≤t}

と定義し、企業 1, 企業 2 の倒産時点を表す確率変数をそれぞれ、τ1, τ2 とする。実際にモンテカルロシミュ

レーションを行い、τ1, τ2 の値を 100個出力する事で、2つの値の関係性を見る。MATLABを用て τ1, τ2 の

値を 100回出力するモンテカルロシミュレーションを行い、考察を行なった。

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