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Accenture Technology Vision 2015 デジタル ビジネスの時代: 業 …€¦ · ACCENTURE...

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デジタル ビジネスの時代: 業界の垣根を越えて Accenture Technology Vision 2015
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デジタルビジネスの時代:業界の垣根を越えて

Accenture Technology Vision 2015

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#techv i s i on2015

序論 03

トレンド

01: The Internet of Me 08 「個」客体験をもたらすインターネット 限りなくカスタム化された世界

02: Outcome Economy 14 成果を売る経済 確実な成果を生み出すハードウェア

03: The Platform (R)evolution 20 プラットフォームの改革と進化 エコシステムを整備し、産業を再定義する

04: Intelligent Enterprise 26 インテリジェントな企業 膨大なデータとスマートな仕組みが優れた ビジネスを生み出す

05: Workforce Reimagined 32 「ワークフォース」再考 人間と機械の連携がもたらすコラボレーション

結論 40

調査方法 42

出典 43

目次

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ACCENTURE TECHNOLOGY V IS ION 2015

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多くの企業では、「SMACS」と呼ばれるソーシャル(Social)、モバイル(Mobile)、アナリティクス(Analytics)、クラウド(Cloud)、センサー(Sensor)を活用したデジタル・ビジネスへの転換が、この2、3年の大きな経営課題となっているのではないでしょうか。

デジタルをいかに活用するか--これは今日、多くの先進企業が取り組むテーマです。

序論

デジタル・ビジネスへの移行は、これまでのようなあり

ふれた経営課題とは次元が異なる、壮大なチャレンジ

を伴う変革です。2年前のAccenture Technology

Visionでは、すべてのビジネスがデジタルに移行する

ことの重要性に焦点を当て、テクノロジーがあらゆる

業界において収益性と市場での差別化を促進する、

主要な要因として機能し始めていることについて解説

しました。

また、昨年のAccenture Technology Visionにおいては

先進的な企業がすでにデジタル変革に着手し、デジタ

ル時代に向けてビジネスの再考に具体的に動き始め

ていることが明らかになりました。そして、「『規模』が

モノを言う段階へ」と題して、伝統的な大企業にとって

テクノロジーが単なる業務効率向上のツールではな

く、成長のための原動力として活用されることが次の

段階への必然的な流れであることを予測しました。

豊富なリソース、規模の大きさ、統制のとれたプロセス

を後ろ盾とする、伝統的な大企業がデジタル化する

ことによって、デジタル世界の構図を大幅に書き換え

るだろうと考えたのです。

現在、先進的な企業はまさに私たちが予測した通りに

動き始め、デジタル化への転換を推し進めています。

ただし、これらの企業は単にデジタルの力を利用して

優位性を強化しているだけではなく、従来の思考を

抜本的に見直しながら、急速に「個(me)」から「全体

(we)」へとシフトしています。彼らはデジタル・ビジネ

スが生み出す新たなエコシステムの形成に向けて、

異なる業界のデジタル・ビジネスやデジタル・サービス

を使う顧客、さらにはネットワークの末端のデジタル

機器に至るまで幅広く目を向けています。常に変化に

対して貪欲なビジネス・リーダーたちは、この広大な

デジタル・エコシステムを生かして、大きく業績を伸ば

そうとしています。これにより新たな市場を形成し、

私たちの働き方や暮らし方に変化をもたらそうとして

いるのです。

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#techv i s i on2015

「We Economy」で成功を収める

デジタル時代は、すべての人にデジタルがもたらす可

能性を示しただけではなく、デジタルの活用を不可避

なものにしました。さらに、「インターネット・オブ・シング

ス(Internet of Things:以下、IoT)」はあらゆるモノと消

費者の行動をもデジタルの世界に引き込み、新たな

イノベーションと機会を生み出す原動力となってい

ます。同時に、先進的な企業は社内でも同様の変革を

行い、従業員の思考をデジタルへ移行させ、業務プロ

セスや商品、サービスのデジタル化を図っています。

大局的に見てみれば、企業は各事業、顧客との関係、

そしてこれらを取り巻くすべての環境において、さま

ざまな可能性を秘めたデジタル構造とつながってい

ます。これにより、いまだかつてないほどのスケールで

企業と企業がつながり、業務の規模を拡大することが

可能になりました。企業は日々、何百もの業務プロセ

ス、何千人もの従業員、そして何百万人もの消費者と

つながっており、多くの大企業が何十億人もの人々の

生活に何らかの形で関わっているのです。

さらに、このつながりは一企業が抱える従業員や顧客

に限定されるものではなく、さまざまな事業、個人、

そして世界中のすべての産業が生み出すモノにつな

がるグローバル・ネットワークへと発展する可能性を秘

めていることに、多くの企業が気づき始めています。

この壮大なネットワークと変革の推進力により、デジ

タル世代の新時代、「デジタル・エコシステム」時代が幕

を開けました。

先進的な企業は、デジタル・エコシステムの活用がどの

ような成果を創出するかについてすでに認識してい

ます。デジタル化が推進され、高度に連携されるように

なった今、それは企業が単にデジタル・ビジネスへの

転換を遂げる以上の変革を成し得ることを意味してい

ます。デジタル・テクノロジーの価値を理解し、経験を

深めることで、企業にはさまざまな効果やメリットが期

待されます。

すべてのビジネスがデジタル・ビジネスに移行しつつ

ある現在、すでにその先を見越した取り組みに着手

する企業も現れています。こうした企業は、他社との協

働がより大きなステージでの変化を生み出すことに目

を向けています。企業同士が連携することで、以前は

不可能だった方法で新たな顧客体験、そして具体的な

成果を創出することができるのです。

このことは、急速に普及しているIoTが最も的確に表現

しています。企業はIoTによる連携を活用してデジタル・

エコシステムを創造し、新たなサービスの提供、顧客

体験の再形成、新市場への参入に取り組んでいます。

例えば、米国のホーム・センター大手ホーム・デポ

(Home Depot)は、新興のスマート家電市場への参入を

通じて、人々へ新しい暮らしを提案しようとしてい

ます。同社は製造業者と連携して、自社が販売する

すべてのスマート家電にソフトウェア企業ウィンク

(Wink)製のスマート家電システムとの互換性を持た

せました。これによりホーム・デポは、独自のスマート家

電のエコシステムを作り、新たなサービスとユニーク

な体験をウィンクの顧客に提供することが可能になり

ました。

オランダの電機大手フィリップス(Philips)も同様の

アプローチを採っています。同社の提供するヘルス

ケア事業は医療機器の製造にとどまらず、セールス

フォース・ドットコム(Salesforce.com)と連携してヘルス

ケア分野のサービスの再形成や最適化のためのプ

ラットフォーム構築に取り組んでいます。両社が構想中

のプラットフォームによって、開発者のエコシステムが

生まれ、セルフケア・予防から診断・治療、回復期を経て

健康を取り戻すまでのヘルスケア全域において、医師

と患者の円滑なコミュニケーション、および診察や

診断後のスムーズな作業フローを可能にするヘルス

ケア・アプリケーションの開発を進めています。

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フィリップスは世界各地から得たデータを統合し、患者

を自身の治療に積極的に関わらせ、同時に医療従事

者の意思決定能力を高め、治療効果を向上させようと

しています。これを実現するためには、カルテの電子化

だけでなく、フィリップスの画像機器やモニター機器、

パーソナル端末から得られる診断や治療の情報、各種

技術を取り入れた壮大なエコシステムが必要となり

ます。

イタリアの自動車メーカー大手のフィアット(Fiat)は、

スマートカーの販売に自動車業界における新たな成

長の機会があると考え、TomTom、ロイター、フェイス

ブック、チューンインラジオ(Tune In Radio)と提携し

て、独自のプラットフォーム「Uconnect(ユーコネクト)」

の構築に取り組んでいます。このプラットフォームは

フィアットクライスラー・グループの車に搭載され、

通信機能はもちろん、エンターテインメント機能も兼

ね備え、一方でドライバーの集中力を高めるナビゲー

ション・システムとして、快適な運転環境を提供します。

ホーム・デポ、フィリップス、フィアット、その他の多くの

企業がグローバルな規模で変革をもたらす可能性の

大きい技術を活用し、収益拡大に向けた取り組みを進

めています。デジタル・エコシステムを活用することで、

あらゆる業界の企業が飛躍的な成長を遂げ、大きな夢

を実現する力を持つことができるのです。

これらの先進的な企業は共通して、一企業として存在

するのではなく、エコシステムの一部として機能する

ことに事業改善と収益向上の大きな可能性を見いだ

しています。「個(me)」から「全体(we)」へとシフトする

ことで、企業同士が業界を越えて相互に補完し合う新

しい経済「We Economy」を再形成しつつあります。

現在では、ごく一般的な企業でもこれまで単独では

成し得なかった大きな課題に取り組めるようになりま

した。例えば、未来のスマート・メガシティを設計/構築

すること、数世紀前から存在する交通手段を一新する

こと、病院から保険業界、アパレルに至るまで多くの

業種にまたがる横断的なアプローチで、ヘルスケアの

品質向上を図ることです。このようにとてつもなく大き

な機会の数々は、顧客に喜びをもたらし、従業員の

モチベーションを高め、旧来のサプライヤーとの関係

を活性化し、そして投資家に大きな利益をもたらすは

ずです。

未来における市場のキープレーヤーとなり得るのは、

こうしたデジタル・エコシステムの中心にポジションを

見いだすことができた企業です。先進的な企業はすで

に動き出し、顧客、エンドユーザー、サプライヤー、パー

トナー、デベロッパー、情報提供ソース、スマートデバ

イスメーカー、専門スキルの提供者とデジタルでつな

がるネットワークを構築し、互いに協働して新市場と個

々のビジネス双方の成長達成という共通のゴールを

目指しています。

デジタル・エコシステムの中でポジションを確立する

ことは決して容易ではありませんが、その努力の先に

は莫大な利益が生み出される可能性が待っています。

デジタル・エコシステムの新時代はそれぞれの企業に

変革をもたらすだけでなく、市場全体の再形成をも

後押しします。この機会を生かせるか否かで、各企業の

将来は大きく左右されることになります。

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#techv i s i on2015

明日のデジタル・ビジネスをリードする企業の特徴

ACCENTURE TECHNOLOGY VISION 2015のトレンド

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現在、テクノロジーはかつてなく速いスピードで進化し続けています。ソーシャル、モバイル、アナリティクス、クラウド、そして加速度的に広がるIoTがデジタル・ビジネスを急速に発展させています。今年のTechnologyVisionでは、未来のデジタル市場を担うキープレーヤーに共通してみられる5つの新たなテクノロジートレンドに焦点を当てました。

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#techv i s i on2015

日常のモノがオンラインへ移行するにつれ、顧客体験もオンラインに移行しており、個人の生活のあらゆるシーンに密着した多くのデジタルチャネルが生まれています。未来志向の企業は、新たなアプリケーションや商品、サービスを生み出す手法を変革し、かつ確実に利益につなげています。企業は個々の顧客体験をコントロールするために、顧客のプロファイルや状況に応じてカスタム化された体験を創造していますが、ここでは顧客からの信頼も重要です。次世代の有力企業になるのは、この「『個』客体験をもたらすインターネット(Internet of Me)」を実現できる企業なのです。

「個」客体験をもたらすインターネット:限りなくカスタム化された世界

「トレンド1」 Internet of Me

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インターネットの強力で魅力的なパワーは、私たちの生活を、さらにパーソナライズすることを可能にしつつあります。マイニュースフィード、マイプレイリスト、マイブックレコメンデーション、カスタマイズされたコネクテッド・カー。しかし、これは序章に過ぎません。企業は顧客の日常の体験をシンプルで楽しくパーソナルなものにするため、積極的に顧客の嗜好、習慣、および文脈を相互に紡ぎ合わせた世界を作り出そうとしています。最新の購買履歴を即座に反映するオンライン広告のように、多くの企業は、「それっぽい」親密さを提供することはできますが、新たに取り組むべきパーソナライゼーションは、「個客」にとってより本格的で意味深いものになります。

アクセンチュアが世界2,000以上のIT担当役員および経営幹部を対象に実施した「Accenture Technology

Vision 2015 調査」では、企業は顧客のエンゲージメントを獲得するための多様な新規チャネルを模索していることが明らかになりました。主に、ウエアラブル(62%)、コネクテッドTV(68%)、コネクテッド・カー(59%)、およびスマートデバイス(64%)と回答しています。本調査の

結果をはじめ、数えきれないほどの類似例はInternet

of Meへ帰結していきます。つまり、ビジネスは具体的な個人を中心としてデザインされ、作成された製品やサービスが新たな相互接続された環境を作り出していくのです。

アプリケーション設計は、大幅に見直しを迫られることになるでしょう。その特長と機能は、デジタルおよび物理的世界の双方で、個人が達成しようとしている物事や生活の一部を制御・測定・自動化することが可能になるよう作り込まれるべきなのです。

大手企業は、この潮流の変化へ迅速に対応し始めています。アクセンチュアの調査では、81%の経営幹部が、組織のトップ3の優先順位としてパーソナライズされた顧客体験を挙げており、そのうちの39%が最優先と位置づけています。例えば、メルセデス・ベンツの新たなコネクテッド・カーでは、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)経由で、ドライバーの自宅の温度調節装置への接続が可能です1。ドライバーが家に到着すると温度調節装置へ通知し、家庭内の温度を

なぜ今なのか?

エクスペリエンス(経験・体験)が最も重要ガートナー社が調査したビジネスリーダーの89%は、2016年までに、顧客体験が競争おける主要な基盤になると

考えています2。

モバイル領域を越えて車、家、そしてウエアラブル・デバイスを経由したインターネットへの顧客のアクセスは、急速に拡大しています。

アクセンチュアの調査へ回答したITおよびビジネス幹部層の3分の2(66%)が、スマートデバイスは同社の業界に

おける地位を高め、競争上の優位性をもたらすことから、組織へ大きい、もしくは非常に大きい影響を与えると

述べています。

消費者需要の高揚消費者の3分の2が、今後5年以内にインターネットにつながるホームデバイスを購入することが予想されており、

加えてウエアラブル・デバイスの所有は、2016年までに2倍になると予想されています3。

文脈的な経験ビッグデータ・アナリティクス・ソリューションと、急増する高度に文脈的な(時系列のつながりのある)データを収集

するエッジ・デバイスの組み合わせは、企業がユーザーごとに唯一無二の経験を提供することを可能にします。

どこでもパーソナライズ「ハイテク企業」だけでなく、どのようなビジネスにあっても、より良い体験を構築するためにパーソナライゼー

ションを活用しています。自社のコア製品やサービスをパーソナライズして統合する企業は、大きな競争優位性を

見いだしているのです。アクセンチュアの調査対象組織の60%が、パーソナライゼーション・テクノロジーへの

投資においてポジティブなROIを示しています。

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ACCENTURE TECHNOLOGY V IS ION 2015

ドライバー好みの設定に調整します。家電メーカー、ワールプールのスマート乾燥機では、Internet of Meに近い概念として、地球環境を意識する消費者に対して、電気代レートの低い時間帯にエネルギーを多く必要とする乾燥作業をあらかじめスケジュールできる機能を搭載しています4。ファッション、アパレルのリーダーであるラルフローレンは、センサーを搭載し、活動量や心拍をトラッキング可能な運動着を開発しました5。

動くべきは、今この時なのです。数々のデバイスの相互接続が拡大されつつあり、スマートなデバイスに対する需要は増え続けています。それに応じて、製品、サービス、およびビジネスプロセスの再構築を開始することがビジネスリーダーの責務なのです。Internet of Meのコンセプトを理解する企業は、持続可能でより高いエンゲージメントを自社の顧客に見いだし、ひいては、成長に向けた全く新しい展望を開くことになります。手をこまねいている間に、競争相手は確実にInternet

of Meへの取り組みを実行するでしょう。

マインドシェアを巡る新たな戦場現段階であれば、その取り組みへの期待や先入観も少なく、これまでに強力なプレーヤーも少数であるため、Internet of Meを通じて個客の「マインドシェア」は容易に手に入ります。マインドシェアの獲得は、混沌とした既存チャネルから新たなオポチュニティへの移行を模索するすべての企業にとって、極めて重要となります。目指すべきは、魅力的で楽しい経験を通じて、個客の注意をひくことです。企業は新しい製品やサービスを売り込むか、これらの新しいチャネルを通じて個客にアクセスする他企業に対するゲートキーパーとして作用する能力を持つことになります。

マインドシェアの概念を押し広げて、それが生み出す価値を理解するにあたり、フェイスブックについて考えてみてください。スマートフォン所有者の約70%がソーシャルネットワークのアクティブユーザーで、このアプリを平均14回/日も使用しています6。フェイスブックのサービスは、グーグルの検索機能と同様に、ほとんど社会的相互作用の代名詞となっています。グーグルとフェイスブックは、消費者のマインドシェアの大部分を保持しており、他企業が新しいサービスを宣伝し、提供するための事実上のプラットフォームとなっています。フェイスブックの2014年第3四半期の広告収入は前年比66%増加。モバイル広告では前年比64%ま

で増加しました7。

種々のテクノロジーの進化により、顧客のマインドシェアを獲得するため、企業は新しいチャネルを巡って競争しています。ウェブが家庭でユビキタス化した際には、企業は「オンライン消費者」のマインドシェアを獲得するため、新たなアーキテクチャ構築に投資しました。同様に、今やスマートフォンは携帯電話市場の3分の2近くを占めており、企業はモバイル領域に多額の投資を行っています。モバイル領域への投資は、それらを追求してきた企業に報いています。つまり、新たなビジネスモデルは専らアプリを中心に発展してきています。ウーバー(Uber)とリフト(Lyft)といったライドシェアサービスは、運送業のビジネスを破壊している「モバイルオンリー」企業の好例です。

IoTを中心とする最新技術の遷移は、デジタルとアナログ、二つの世界の最も良い側面を捉えることを可能にしました。デジタル技術のインテリジェンス、パーソナライゼーションおよび適応性は、現実世界のインタラクティブな体験とも調和しています。新しいデバイスの使用が増えるにつれて、消費者がこれらのデバイスをどのように使用するか、どのように相互に接続するか、そしてどのような形で相互作用を持つかを定義する機会を企業は得られます。これらの経験をコントロールする企業こそが、デジタル時代のリーダーとなります。

マインドシェアを価値へ変換する企業が新たなチャネルにわたりマインドシェアを向上するにつれ、彼らはInternet of Meを強化する新しい製品やサービスを提供する立場を利用することができます。確かに、より大きなマインドシェアは、より大きな購買意欲につなげることができます。例えば、コカ・コーラアマティル(Coca-Cola Amatil)は、新鮮でパーソナライズされた自動販売の経験を生み出すためにタッチスクリーン、ビデオカメラ、およびマイクロソフトのキネクト(Kinect)技術を導入し、自動販売機を改造したことで、売上を12%増加させました。しかし、販売促進はこの新しい消費者へのアクセス方法により利益を得る一つの方法に過ぎません。これらの接続された自動販売機で生成されたデータは、東南アジアの飲料会社によるクーラーの配置、在庫補充等に関する意思決定を改善しています8。

地理、文化、そして多様な個人のニーズは、企業がInternet of Meソリューションを拡張する方法のすべてに影を与えます。例えば、一部の地域では、個々の利益よりも社会的利益に高い価値があります。どのようなInternet

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#techv i s i on2015

of Me戦略であっても、慎重にローカルの好みを考慮すべきなのです。まずはニーズに最適なチャネルを決定した後、これらのチャネルでユニークなソリューションを構築することになります。すべての企業に当ては

まる一つのソリューションは存在しないのです。

ここで重要なポイントは、シリコンバレーのテクノロ

ジースタートアップではなく、「普通の」伝統的な企業

がこれらの動きを生み出しているということです。すで

に構築された環境下で新たな経験を提供することに

より、コカ・コーラのような企業が消費者のマインド

シェアへより多くのアクセスを獲得しています。この

ようにこれまで構築してきた市場を活用することで、

伝統的な企業は、Internet of Meでの優位性を持つこ

とができます。

Internet of Meでは経験が最も重要

最終的には、Internet of Meにおける成功は、消費者

が求める個人の体験を企業がどのように提供できるか

に帰結します。IoTを巧みに活用し成功を収めつつあ

る事例もあります。PhysIQは、ヘルスケアの専門家が

フィットネストラッカーのようなIoTデバイスによって生

成された新しいタイプのデータを活用するため、使用

しているデバイスに依存しない分析プラットフォーム

です。データは常に、ユーザーが選択したデバイスによ

って生成され、プラットフォームが時間とともに個々の

習慣や傾向を学習します。このスコアは極めてパーソ

ナライズされており、より効果的な予測と異常値を医

療関係者へアラートすることを可能にしています9。

各ソリューションは、企業がアクセスするツール、デー

タストリーム、フィードバックループに依存しており、自

社の製品とサービスをパーソナライズするため、これ

らのデータソースをどのように統合するか選択する

必要があります。デパートのメイシーズは、買い物客

の好みのアイテムが店内で購入可能になると瞬時に

メッセージを表示し、それらのアイテムにカスタマイズ

されたディスカウントを提示します。その通知には、買

い物客の閲覧、お気に入りそして新作アイテムの検索

情報など、Shopkickという自社アプリから得られるデー

タを使用しています10。

Internet of Meの領域で真のリーダーになるためには、

消費者の生活の中で消費者自身が他の経験とどの

ように関連づけられるか、もしくは顧客が欲する成果

を得るために、どのような手助けができるかを解き明

かす必要があります。

エコシステムのパワーを活用せよ

パーソナライゼーションの大きな機会は、Internet of

Meへの参加者だけではなく、個々の企業が認識する

ものとして現出します。個客の利益を生み出すために

商品やチャネルを結合する新しいパートナーシップを

模索することは、このアイデアに難色を示す企業に対

しても、有効性を示すことになるでしょう。家電の巨人

サムスンはインターネットに接続された冷蔵庫のよう

な白色家電を広いラインナップで提供しています。

これらの物理的な製品は、現在では、他の企業が自分

に有利に使用することができるデジタル世界へのイン

ターフェースです。

相互接続された世界のための戦略の最適化は、

Internet of Meにおける自社の役割を決定すること

から始まります。ある企業が専門化を進めると、ある

企業はデバイスを製造し、ある企業はデバイスの上に

アプリケーションやオファリングを開発します。そして

ある企業は、さらに他プロバイダーが接続するプラット

フォームを構築します。

毎日億単位のパーソナライズされた経験を提供する

ことは決して簡単ではなく、Internet of Meへ取り組

むためには将来的にプラットフォームが必要となり

ます。パートナーシップにより形成されたエコシステム

に、オープンでアクセス可能なAPIとデータを提供する

ことで、エコシステムの構成要員は自身の企業規模の

何倍ものパワーを獲得するでしょう。アクセンチュアが

調査した企業幹部の72%は、今後2年以内に、デジタ

ル・ビジネスパートナーとデータを統合した業界プラッ

トフォームが広範囲に適用されると考えています。

いかに顧客との信頼を構築するか

企業がパーソナライズされた経験を生み出す際、顧客

自身のプロフィール、そして習慣や嗜好といった個人

データの宝庫を受け取ることになります。それらの

データを快適に共有するためには、顧客が提供先を信

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ACCENTURE TECHNOLOGY V IS ION 2015

頼していなければなりません。この信頼は、企業と顧客

との絆として働き、製品やサービスを発展させること

ができます。

しかし、信頼が壊れた時、特に壊された信頼が現実世

界へマイナスのインパクトを与える場合、おそらく顧客

は代替案を探し、関係を清算するでしょう。最近のアク

センチュアの調査では、67%の個人が企業とデータを

共有しても良いと考えていることが明らかになりま

した。しかし、企業が第三者とデータを共有している場

合、その割合は27%まで低下します11。データの収集と

共有は、Internet of Meにおけるマインドシェア獲得能

力に直接的な影響を持っているため、デジタル・ビジネ

スでは信頼の3つの構成要素(セキュリティ、プライバ

シー、透明性)に関する能力を向上させる必要があり

ます。

無責任なデータの取り扱いは、評判、顧客の減少、およ

び規制遵守の観点から、即座に企業リスクへつながり

ます。ビッグデータの時代では、企業がリスクをヘッジ

し、依然としてレガシーシステムとの統合を維持する

ために、数々のセキュリティ予防措置を取ることができ

ます。

最も緊急の対応事項は、ソフトウェアおよびセキュリ

ティ関連のコントロールによる最新のリスクへの対処

と、新たなリスクへの対応計画のタイムリーな遂行を

確実に実施することです。どのデータが、誰によって、

なぜアクセスされたかを監視することが、信頼を維持

するための重要な機能になりつつあります。顧客は、

ペースメーカーからホームセキュリティシステムに至

るまで、あらゆるモノ・コトにスマートデバイスを採用す

るため、これは特に重要です。

信頼の第二の要素であるプライバシーの伝統的な概

念は、より一層複雑になってきています。少なくとも、

企業は、その使用条件とプライバシーポリシーへの準

拠を確認する必要があります。これは当たり前のよう

に思えるかもしれません。しかし善意の従業員によっ

て、あまりにも頻繁にそのルールが意図せずに違反さ

れているのです。

プライバシー要件への遵守に関するサードパーティー

のコンプライアンス監査は、信頼関係の構築に向けた

前向きな取り組みです。定期的かつ行き渡った監査を

実施すること自体も一歩の前進ですが、利害関係者に

その結果を開示することは大きな飛躍といえます。

一方で、企業が共有するデータが多大になるにつれ、

この問題はより複雑になります。対策として、APIを介

したデータ共有や、DRM対応のシステムを通じたメタ

データ付加により、プライバシー検査の公開を自動的

に行う方法があります。

最後の構成要素として、企業は自身の活動について、

個客への透明性を維持しなければなりません。驚く

べきことに85%の組織が、平均的な顧客に関連した

データ保有総量が増加している一方で、顧客自身は、

それがどのように使われるかにはほとんど関心を払っ

ていない、と述べています。

データリッチな製品・サービスの市場シェアとユーザー

による採択の獲得において、高まっていく信頼の重要

性を誇張することはできません。信頼関係と同様に、

企業ポリシーやInternet of Meの推進に関わる業務

プロセスを維持していくことが、デジタル・ビジネスの

成功に向けた基礎となるのです。

今後取り組むべきこと

「お客様第一」は、デジタル時代において新しい意味

を持ちます。権利を与えられた顧客は、いつでも、どこ

でもInternet of Meが増大する新技術の助けを借りて

自分自身を第一と位置づけるのです。すべてにおいて、

より速く、より良く、より安いものを望む顧客の要求は

止まるところを知りません。これに応じて、企業は衆目

を集め、新たなサービスを提供し、信頼関係を構築する

ための新たな方法を創り上げなければなりません。

時が経つにつれ、デジタル処理が可能で、限りなくパー

ソナライズされた受容可能で安全なオファー(情報

提供、販売、カスタマーサービス)を提供する、新たな

市場のエコシステムが現れるでしょう。仮想世界が物

理世界へ変換される世界では、一人一人の経験が少し

ずつ異なります。企業は、個々人に特有な親近感を与え

る製品やサービスを仕立てる必要があります。

さて、進化するInternet of Meの世界で、あなたが担う

役割は何でしょうか?

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インテリジェントなハードウェアが、デジタル世界と現実世界との最後のギャップを埋めようとしています。有力企業は、顧客が本当に望むモノ、つまり単なる商品やサービスではなくより価値のある成果を生み出すために、IoTの活用に目を向け、ハードウェアとセンサーをデジタル機器に組み込み、高度に連携させようとしています。こうした企業は、競合企業に勝つために、単にモノを売るのではなく、それによってもたらされる成果を売らなければならないこと、そのためにモノの活用やそれにまつわる体験価値までフォローすべきであることを認識しています。これが新しい「成果を売る経済(Outcome Economy)」です。

成果を売る経済:確実な成果を生み出すハードウェア

「トレンド2」 Outcome Economy

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#techv i s i on2015

アクセンチュアの調査では、87%の企業がインテリジェ

ントなハードウェアやセンサー、ネットワークの端末を

多く活用しており、「企業活動はこれまでのように単に

商品やサービスを売ることから(商品やサービスの利

用を通じた)成果を売る体制に急速に移行している」と

回答しています。そして回答者の84%は、「商品から得

られるインテリジェンスを活用することで、商品がどの

ように使用され、消費者がどのような成果を求めてい

るのかについて理解が深まった」と評価しています。

デジタル化を果たした企業が、商品・サービスではなく

成果そのものを顧客へ売る「成果を売る経済」がさま

ざまな場面で広がりを見せています。「成果を売る経

済」は企業が顧客の望む成果を理解し、提供した商品・

サービスがどれほどの成果を実現したかを定量的に

把握するケイパビリティを持つことで成立します。この

ケイパビリティを企業にもたらすのはインテリジェント

なハードウェア、つまりIoTです。産業機器からスマート

フォンまであらゆるハードウェアがセンサーを備え、IoT

でつながることで、企業が把握できる現実世界の範囲

(バウンダリ)は顧客のすぐ近くまで広がるのです。

これにより企業は顧客が何を達成しようとしているか

を推定・理解できるだけでなく、商品・サービスがどのよ

うに使われ、顧客へどれほどの成果をもたらしたかを

定量把握するためのメトリクスを定義し、測定できるよ

うになるのです。

例えば、バルセロナのコメディ劇場Teatreneuは、「入場

料無料、ひと笑い0.3€(上限24€)」という課金体系を採

用し、売上高25%増を達成しました1。背もたれに設置

されたカメラで顧客の表情を補足し、表情認識技術を

用いて笑顔を検知しているのです。一方ミシュランは、

タイヤに埋め込まれたセンサーから割り出した走行距

離に応じて課金するというビジネスモデルを立ち上げ

ています。また、ロサンゼルス市はパーキングメーター

に埋め込まれたセンサーから駐車スペースの空き状

況をリアルタイムに把握し、空き率(=場所の人気度)

に応じ駐車料金を変更する取り組みを行っています。

空き状況と料率は顧客へアプリ配信されており、顧客

は人気の場所に駐車するという成果を求めるほど高い

駐車料金を払うという形で、成果ベースの課金モデル

を実現しています。その結果、売上2%増、顧客の支払

う平均駐車料金11%減、駐車場利用率11%増を達成し

ました2。

なぜ今なのか?

ハードウェアがより身近にハードウェアの設計、制作、展開に必要なツールが、企業・個人問わず幅広く利用可能になっています。ハードウェア

開発はハイテク企業の特権ではなくなったのです。

M2M(Machine to Machine)の低コスト化2014年、コンシューマ・エレクトロニクスにおけるグローバル企業の経営陣のうち45%が、M2M投資に踏み出す

理由として、M2Mの低コスト化をあげています。これは2013年から18ポイント増加しています3。

センサーの高効率化センシングデバイスはこれまでになく安く、小さく、長寿命になっています。至る所に配置できるのみならず、メン

テナンス不要でおよそ2~5年駆動することができるのです。

M2M通信規格の成熟M2M通信の標準化が進むことで、より顧客に近い場所の状況を踏まえたリアルタイムな意思決定が可能となって

きました。2014年の調査によると、22%の企業がすでにM2Mを活用しており、42%が2016年までの活用を目指

し、75%が2017年までにM2Mが戦略ロードマップの一部となると回答しています4。

潤沢なネットワーク帯域大多数の市場において、有線無線によらず通信帯域が潤沢になっています。2016年にはネットワーク通信の54%

が無線経由となり有線を上回ると試算されています。さらに2013年には平均16Mbpsだった広域固定無線通信の

速度が、2018年まで42Mbpsに至るという予想も出ています。

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「成果を売る経済」の興隆

ドリルではなく穴を売れ。この言葉が広く知られて

いることが示す通り、「成果を売る経済」の根本理念で

ある「成果提供」という考え方は古くから存在します。

しかしその実現には大きなハードルがありました。顧

客の望む成果を深く、かつ継続的に理解する手立てが

非常に乏しかったのです。また商品・サービスの実現成

果の定量把握も非常に困難でした。

デジタル・テクノロジーはそのハードルを超える力を

もたらします。「成果を売る経済」はもはや概念や標語

ではなく、現実のものになろうとしているのです。「成

果を売る経済」の実現はあらゆる業界における主要プ

レーヤーのデジタル変革アジェンダになっているのみ

ならず、市場破壊を目論むベンチャービジネスも注目

しています。

農業バイオ企業のモンサント(Monsanto)は昨今、セン

サーデータや衛星写真等に基づくスマート農業情報

サービス企業のクライメート(Climate)を買収しま

した。この買収により、モンサントは農家に対しリスク

低減、収穫量増加、利益増加に直接貢献する情報や

インサイトを可能としました。その内容は、農地の土壌

や気象から最も収穫量の見込まれる作物のレコメンド

だけでなく、選ぶべき品種や種をまく時期、世話の仕

方、収穫時期や収穫量、そして最終的な売上高の予測

まで多岐にわたります。さらに予測が外れた場合の損

害を補償する保険サービスも併せて提供し、成果提供

にコミットしています5。

一方、自動車業界においては、テスラ・モーターズは

インテリジェントなハードウェアを利用しドライバーに

安全性という成果を提供しています。2013年、テスラ・

モーターズはIoTを組み込んだスマートサスペンション

を搭載した電気自動車を発売しました。しかし発売後、

高速道路の凹凸による衝撃でバッテリーパックが容易

に発火する恐れがあるという不具合を発見しました。

従来であればリコールが必要な事案ですが、テスラ・

モーターズはサスペンションへファームウェアアップ

デートを配信し制御ロジックを調整することで、ドライ

バーの命に関わる事故の発生を未然に、かつ速やかに

回避したのです6。

製薬業界においても「成果を売る経済」へのシフトは始

まっています。Proteus Digital Healthは服薬患者の成

果達成、つまり治療の早期化へユニークな方法で貢献

しています。錠剤にセンサーを埋め込み、ウエアラブル・

デバイスを着用した患者の服薬を検知する仕組みを開

発したのです。服薬状況を把握しリマインド等のアク

ションを取ることで、服薬忘れによる治療の長期化や

それに伴う医療費の増大を防ぎます。これは患者のみ

ならず、医者や、製薬業者を含めたWin-Win-Winを実

現しています7。

顧客接点:エッジ・ハードウェア

これらの事例で共通しているのは、いわゆる非ハイ

テク企業が顧客接点たるハードウェア(エッジ・ハード

ウェア)のインテリジェント化により、恩恵を受けている

という点です。

「成果を売る経済」では、エッジ・ハードウェアが現実

世界を理解し、コントロールします。これは既存のテク

ノロジーへハードウェアを掛けあわせることで実現さ

れるものです。クラウドベースのソフトウェアアナリティ

クスやデータ可視化技術はもちろん、エッジ・ハードウェ

アのセンサー化や処理能力向上は、いずれも「成果を

売る経済」の実現に欠かせない要素です。中でもエッ

ジ・ハードウェアがインテリジェンスを備えると、顧客と

エッジ・ハードウェアはより多くのデータをやり取りする

こととなります。このデータ・リッチなフィードバックルー

プこそが顧客と企業の最後の一歩を結ぶのです。

エッジ・ハードウェアが現実世界を理解するのに欠かせ

ないのがセンサーです。センシング技術の発達により、

センサーはより多くの事象を検知できるようになりま

した。また出荷量増加に伴う単価下落により、センサー

はより手に入りやすい存在となっています。加えて、

Raspberry PI等の安価な小型汎用ハードウェアの登場

により、エッジ・ハードウェアを利用したサービスはより

短期間かつ低コストでプロトタイピングが可能となり

ました。このような背景から、規模の大小によらず、

先進的な企業はエッジ・ハードウェアを競争力の源泉と

捉え、新市場への参入手段に活用しようとしています。

ハードウェアの世界への進出は、「成果を売る経済」の

実現に向けて避けては通れない道なのです。

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ハードウェアはより身近に

さて、ここで言うハードウェアとは、サーバやPC、ネット

ワーク機器などの伝統的なITコンポーネントのみを

指すものではありません。より広く、IoTの介在しうる

すべてのモノがその対象です。ウエアラブル・デバイス

はもちろん、洗濯機や監視カメラ、車やビルも含まれ

ます。

ハードウェア開発は、これまでは非常にハードルの高

いものでした。特にハードウェアに無縁の企業にとっ

ては非常に困難でした。しかし、ハードウェアがより

安価に開発でき、サービスとの統合が容易となった

昨今、その存在はもはやソフトウェアと同等と言える

ほど身近になりました。特に開発のしやすさという点に

おいて、ハードウェアはソフトウェアに肉薄してい

ます。10年前はハードウェアごとにOSのスクラッチ開発

が必要だったのに対し、現在はハードウェアに組み込み

済みのLinuxのカーネル上に載せるソフトウェアコン

ポーネントをカスタマイズするのみで開発が完了して

しまうのです。

「成果を売る経済」のハードウェア的側面の実現を後

押しする背景として、クラウドファンディングの存在も

無視できません。2011年から2013年にかけて、クラウド

ファンディグサイトの最大手であるKickstarterおよび

Indiegogoにおいてインテリジェントなハードウェアの

開発を伴う443ものプロジェクトが10万ドル以上の投

資を集め、その10%近くがベンチャーキャピタルの支

援を得て平均870万ドルの初期投資を獲得しました8。

新製品の市場反応や価格付けに関する洞察を得る場

として、多くの企業がクラウドファンディングを活用し

ています。

歴史ある大企業もすでにハードウェアをより成果に

フォーカスさせるための活動に着手しています。GEは

クラウドソースのデザインコミュニティーであるQuirky

に出資し、コネクテッド・デバイス・プラットフォームで

あるWinkを立ち上げました。Winkにはハードウェア

が連携するための標準や認証体系等が定義されて

おり、Wink準拠のハードウェアはメーカーを問わず互

いに通信・制御しあうことが可能です。独自仕様の自社

製品間のみしか連携できない状態を脱し、より連携の

幅を広げることで、顧客の求める成果への貢献余地を

広めているのです9。さまざまなインテリジェントなハー

ドウェアが開発され、またさまざまな業界がハード

ウェアの開発に乗り出しその活用が進むことで、「成果

を売る経済」は実現に近づくのです。

標準化こそが変革への道標

ハードウェアの活用に向けた変革において最も重要な

要素は、ハードウェア間連携の標準化です。「成果を売

る経済」へのエンゲージメントを目指す企業は、自社の

みならず業界の将来の方向性を左右しうる標準化の

議論にいち早く参画すべきです。そうでなければ、将

来のビジネスにおける競争ルールを他者に決められて

しまうことになります。

標準化戦争はすでに始まっています。2013年までは

IoT関連の標準化を行う団体はAllSeen Allianceたった

一つだったのに対し、2014年には六つもの業界団体や

その他団体が標準策定に乗り出しています。これらい

くつかの団体はコネクテッドホームにフォーカスしてい

る一方、その他は企業アプリケーションを対象にさま

ざまなテクノロジーレイヤの標準化をうたっています。

いずれの標準が勝ち残るか、現時点で明確な答えは

ありません。しかし、多くの団体が標準化におけるイニ

シアチブを取らんとしている事実は、将来のビジネス

におけるハードウェアの重要性を裏付けていると言え

ます。標準化戦争が収束し明確な勝者が決まるまで、

複数の標準が断片的に存在する期間が何年も続くと

予想されます。しかし、企業は勝者が決まるその時をた

だ待っているべきではありません。自らのデジタル化

戦略に最も合致するコンソーシアムを見極め、参画し、

他社とのコラボレーションを通じて積極的に学ぶべき

です。

企業は何をするべきか

企業がより深く顧客を理解し、成果に貢献する商品・

サービスを打ち出すにつれ、企業に対する顧客の期待

もより一層高まることになります。昨日までは先進的と

言われたサービスが、明日にはあって当たり前のもの

となっても不思議ではないのです。

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IoTの活用は、顧客とエッジ・ハードウェア間のフィード

バックループをより密にし、より企業を顧客へ近づけ、

深い顧客理解をもたらし、商品・サービスをより成果に

貢献するものへ変革していきます。今日の大多数の企

業が提供する商品やサービスはいわゆる成果達成の

ツールです。当然、機能的ではあるものの、顧客が成果

を達成するにはそのツールを自らカスタマイズする必

要があります。パッケージソフトウェアの導入において

多大な工数をかけたカスタマイズが必要であることが

適例でしょう。しかし今や、企業は顧客の望む成果につ

いてインサイトを得ることが可能となり、より顧客の達

成に直接的に貢献する商品・サービスを提供すること

ができます。

このケイパビリティを獲得するには、企業はまず顧客

の望む成果を理解する必要があります。そのためには

エッジ・ハードウェアを獲得し、顧客とのフィードバック

ループを作り出し、得られたインサイトを業務プロセス

や商品・サービス開発へ反映することが重要です。自社

商品・サービスのライフサイクルにおいて顧客との

フィードバックループを作り出すタイミングを見極め

ます。顧客の成果達成までのステップに注意を払いつ

つ、成果達成により近い場所でループを作り出すこと

が、顧客の目指す成果を理解するには肝要です。

エッジ・ハードウェアを新たに獲得する場合は、自社開

発もさることながら、他社の買収やコラボレーションも

視野にいれるべきです。多くの場合、新たなエッジ・

ハードウェアの自社開発や既存商品・サービスへの

センサー埋め込みが有効な手段ですが、全く新たな市

場開拓やビジネスモデル変革を目指すのであれば、他

社買収やパートナリングが必要となる場合もあります。

さらに、来るべき「成果を売る経済」の世界に備え、企

業は成果ベース課金を前提としたビジネスへの変革に

着手するべきです。商品・サービスというツールを原価

と利益で定められた価格で提供する従来型のモデル

から、実現成果をベースとした対価を受け取るモデル

への転換には、投資プロセスのみならずガバナンスや

評価体系など企業全体のトランスフォーメーションが

必要です。自社の既存商品・サービスの一部を成果

ベース課金に変更するなど、小規模のパイロットでそ

のインパクトを見極めることが第一歩となるでしょう。

創造的破壊のはじまり

「成果を売る経済」が現実にものになる時、つまり企

業がエッジ・ハードウェアにより360°の顧客理解を獲得

し、デジタル世界と現実世界が真につながった時、本当

のディスラプション(創造的破壊)が始まります。顧客

へ成果を提供するという戦略は、今日においては先端

的ですが、数年後には企業変革の主要アジェンダと

なり、その先では企業存続に不可欠なものとなるで

しょう。中でもエッジ・ハードウェアはその中核となる

ケイパビリティであり、業界を問わずビジネスリーダー

たるに備えるべき競争力の源泉です。エッジ・ハード

ウェアをすべてのビジネスのDNAとするのです。

エッジ・ハードウェアはより深い顧客理解をもたらし、

商品・サービスをより顧客の成果達成へ貢献するもの

に変革していくでしょう。一企業のみでこれを実現する

のは困難です。他社と継続的にコラボレーションし、

エッジ・ハードウェアを含むケイパビリティ研さんやイノ

ベーション創出に励む企業こそが、次世代のリーダー

となり、「デジタル・ディスラプター(デジタル化時代の

創造的破壊者)」となるのです。

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フォーブス・グローバル2,000において、デジタル・インダストリー・プラットフォームおよびエコシステムは、飛躍的なイノベーションと破壊的成長をもたらす次の波として注目されています。プラットフォームを構築した企業は、力強い成長と収益に向けたデジタル・エコノミーにおける機会をますます多く獲得するようになります。クラウドやモバイルにおける急速な進化は、単にプラットフォームに関するテクノロジーやコストの壁を取り去るのみならず、業界や物理的距離を越えて新しい活動の場を切り開くことになります。要するに、プラットフォームに支えられたエコシステムが新しい競争の場となるのです。

プラットフォームの改革と進化:エコシステムを整備し、産業を再定義する

「トレンド3」 The Platform (R)evolution

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#techv i s i on2015

ここで言うプラットフォームとは、単に形式的な設備で

はなく、新しい製品や価値、サプライチェーン横断で

買い手や売り手に対する差別化要素を生み出すイン

ダストリー・テクノロジー・プラットフォームのことを指し

ています。2012年、ジョン・ディア(John Deere)は

MyJohnDeereプラットフォームを、農業の生産性、効率

性や収穫高を向上させる精密農業を後押しする、卸売

り促進の基盤として立ち上げました。このプラット

フォームを通じ、農業経営者は機械に関する情報、農

作物のデータや農業オペレーションを集約的にマネジ

メントすることが可能となり、最終的には利益が向上し

ました1。

ジョン・ディアは、自社のビジネスを成長させる新たな

武器としてデジタル・インダストリー・プラットフォーム

を展開し始めた多くの企業の一つに過ぎません。

ソーシャル、モバイル、アナリティクス、クラウド、IoTに

裏打ちされたこのプラットフォームは、洗練されたテク

ニカル・アーキテクチャ、農場ガバナンス、新しい業界

特化型アプリケーションを支えるテクノロジー・サービ

スから構成されています。それは、業界の課題に対し

て複数企業がどのようにしてアプリケーションを構築し、

接続し、展開するかを示す青図となります。プラット

フォームは再利用可能な機能や能力のプールとする

ことで、アプリケーションの構築・進化を素早くかつ簡

易に実現し、ひいては企業により良いビジネス成果を

もたらしています。

同時に、デジタル・エコノミーにおけるプラットフォー

ムは、ビジネスモデル戦略の観点では、競合に対する

差別化要素を生み出す源泉となっています。プラット

フォームを軸とするビジネスの大きな特徴は、他社が

価値を生み出すという点にありますが、多くのケース

では、プラットフォームにより新しいデジタル・モデル

が実現していると言えます。過去10年間において、

アップル、フェイスブック、セールスフォースのような

ネット企業がこうしたプラットフォームを軸としたビジ

ネスを独占してきました。しかし今日、非テクノロジー

業界の伝統的な大企業が、プラットフォームを軸とし

たビジネスを実現すべく、主要な戦略的イニシアチブ

の一環として迅速な動きを見せつつあります。

なぜ今なのか?

デジタルがGNPを追い越しつつあるデジタル・エコノミーの成長はGNPを追い越しつつあり、成長や収益の観点での差は開き続けています。

プラットフォームを軸とした企業の出現マサチューセッツ工科大学(MIT)の統計では、2013年時点での時価総額トップ30社のうち、14社はプラットフォーム

を軸とした企業です2。

デジタル領域の創造的破壊2000年以降、フォーチュン500社のうち、52%の企業が倒産、買収、もしくは消滅していますが、その大部分はデジ

タルによる新たな産業構造により、伝統的な産業構造が駆逐された結果です3。

クラウドの経済性クラウドやモバイル・プラットフォーム、アプリケーション開発の進化により、デジタル・インダストリー・プラット

フォームにおける技術面やコスト面での壁は取り払われつつあります。

すべての人々が活動する場IDCの調査によると、2016年初頭段階で、100を越える新しいデジタル・インダストリー・プラットフォームが非テクノ

ロジー企業により生み出される見込みです4。

APIの力デジタル・エコノミーにおける隠し味とも言えるAPI技術は、アプリケ-ションを開発し、価値を創出するために、

自社のデータやプラットフォームを他社に公開することを可能としています。

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実際に、プラットフォームにおける明日のリーダーは、

今日のテクノロジーの巨人を越えていくことになるで

しょう。テクノロジー・プラットフォームと業界の専門的

知識を結びつけることで、企業は破壊的イノベー

ションを生み出し、主要なマーケットを先導し、さらには

成長を加速する上で重要な、新しいビジネスモデルや

機能を構築しつつあります。こうしたプラットフォーム・

モデルに欠かせないのは、それを裏支えし、提供価値

を行き渡らせるエコシステムです。

デジタル・インダストリー・プラットフォームの構築や、

エコシステム戦略の発展は、複数年にまたがる活動と

なります。こうした活動はもはや「もし」という仮定の話

ではなく、「いつ」、「どうやって」という具体的な段階に

入っています。大企業も中小企業も今や、デジタル・

インダストリー・プラットフォームやエコシステムを新た

な競争の場として捉えています。

ようこそ、プラットフォームの時代へ

デジタル・ビジネス・プラットフォームは、プラットフォー

ム時代の幕開けを象徴しています。MITによる2013年

の調査では、時価総額グローバルトップ30社のうち、

14社がプラットフォームを発祥とする企業でした。つま

り、プラットフォームを構築した企業が売り手、買い手、

サードパーティーをリアルタイムにつなげる土俵を独

占しているのです5。

今日、デジタル・インダストリー・プラットフォームは、

テクノロジーとビジネスにおける変化の波を推し進

めています。しかし、なぜ今なのでしょうか。その要因と

なったのは、伝統的なITインフラストラクチャーやアプ

リケーションにおけるテクノロジー、コスト、時間の壁

が取り払われたことです。ガートナーのレポートによる

と、2017年までにインフラを提供するサービス・プロ

バイダーのコストは、40%近く値下がりする見込み

です6。こうしたデジタル・テクノロジーの急速な進化

と、それによりもたらされる経済水準により、伝統的な

企業がデジタル・インダストリー・プラットフォームを構

築することができるようになったのです。

デジタル・テクノロジーが、過去10年間において数多く

の従来型企業に創造的破壊をもたらしてきた一方、

デジタル・インダストリー・プラットフォームは、今後3年

間、もしくは5年間に、さらなる創造的破壊をもたらす

ことになるでしょう。伝統的な企業が変化に対応する

ために残されている時間は、刻一刻と少なくなってい

ます。2000年以降、フォーチュン500各社のうち、52%

の企業が倒産、買収、もしくは消滅していることから

も、近代的企業も永続的なものではないということは

明白です。こうした現象の大多数は、デジタルによる産

業構造により、従来型の産業構造が駆逐されたことが

原因です。

デジタル・インダストリー・プラットフォームに求められる技術要素

それでは、企業はどのようにして自身のデジタル・イン

ダストリー・プラットフォームを築いていけばよいので

しょうか。

多くのデジタル・インダストリー・プラットフォーム

は、Microsoft Azure、Amazon Web Services、Force.

comやその他クラウドサービスといったパブリックもし

くはハイブリッドクラウド基盤上で構築されるでしょう。

クラウドサービスの成熟度と経済性に加え、APIは、クリ

エイティブで革新的なアプリケーションやサービスを

迅速に構築するための隠し味とも言えるものになるで

しょう。端的に言えば、APIによって企業内外のアプリ

ケーションは連携し、データを共有することができる

ようになります。

「APIエコノミー」としてしばしば言及されるように、API

の急速な拡がりによりデジタル・エコノミーは強く結び

ついており、APIに習熟することがデジタル・ビジネスの

成功において必要不可欠なケイパビリティとなります。

併せて企業は、モバイル・プラットフォームや、オープン

ソース開発、リアルタイム・コンピューティング環境に関

するケイパビリティも備えることが求められます。

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マインドセットを、「個社(Me)」から「プラットフォーム(We)」へ

企業がプラットフォームを軸としたビジネスモデルへ

変遷するにつれ、企業のテクノロジー面でのケイパ

ビリティは急速に変化しています。それに伴って企業

は、プラットフォームを活用することでより大きな課題

に取り組み、解決していきたいと熱望するようになって

います。

例えば、カイザー・パーマネント(Kaiser Permanent)で

は、さまざまな業界の企業と協力し、ヘルスケア領域に

おける複雑な課題に取り組んでいます。2013年に社内

外のソフトウェア会社がアプリケーションを開発可能と

なるようAPIを開放しました。カイザーは40億ドルもの

投資(概ね患者一人当たり444ドル)を行い、Health

Connectプラットフォームを構築しました7。これにより、

臨床医と900万人の患者はメディカルレコードへリアル

タイムにアクセスできるようになりました。同時に、モバ

イルアプリケーション、自己管理サービス、家庭内モニ

タリング、バイタル・コンサルテーションなどのサービス

を提供し、旧来の境界線(バウンダリ)を拡張しました。

カイザーのデジタル領域の取り組みにより、患者にタイ

ムリーで高品質なケアを提供できるようになったのに

加え、オペレーションコスト削減、臨床医の時間と技術

と専門領域の最適化を実現しました。

着目すべきことは、もはや、既存のエコシステムにどの

ように適合させるかという点ではなく、ほぼすべての

業界において、新しいデジタル・エコシステムを構築す

るプロセスがすでに始まっているという点です。将来に

おける成功を勝ち取るにあたっては、今日築きつつあ

る、デジタル領域のリレーションが物を言うようになる

のです。つまり、ビジネスやテクノロジーのリーダーは、

新たに創出したデジタル・エコシステムに命を吹き込む

ため、「個社(me)」から「プラットフォーム(we)」へシフト

することが求められるのです。

エコシステムはイノベーションを創出する砂場

こうした新たなデジタル・エコシステムはイノベーショ

ンをもたらし、ビジネスを遂行し、パートナーや顧客と

のつながりを生み出す全く新しい方法を作り出します。

大企業がイノベーションを継続的に実現することは

容易ではありません。先進的な企業は、これまでとは異

なる手法、すなわち他社の力を使ってイノベーションを

創出しようとしています。自社のプラットフォームを

開放することで、パートナー、アライアンス先、スタート

アップ企業、そしてさらに顧客を巻き込んだ形で商品・

サービスをクリエイティブかつ安全に試行する場(イノ

ベーション・サンドボックス)を創出することができ、目覚

ましい結果をもたらします。

しかしながら、このイノベーション・サンドボックスは

イノベーションを推し進めるのみならず、他の企業や

サードパーティ・デベロッパーとリスクを分かち合うこ

とで、未知の領域におけるリスクを低減させることが

できます。さらに、こうした成功企業は、プラットフォー

ムにおいてエンドユーザーも巻き込むことで、ビジネス

的、経済的利益の分け前を得ています。例えば、アップ

ルのApp Storeでは、最も売り上げているモバイル・

ゲームアプリであるクラッシュ・オブ・クラン(Clash of

Clans)は100万ドルを1日に稼いでいますが、アップルは

その売上の30%を得ています8,9。

ネットワークがもたらす加速効果をテコにイノベーションを促進

エコシステムは、イノベーションや新しいアイデアを

創出する場のみならず、企業の成長を加速する上でも

重要な手段の一つになりつつあります。ネットワークに

よる加速効果を理解することで、同じゴールに向かって

まい進する人々をつなげる多くのネットワークから、

知識や経験を引き出すことができるようになります。

こうしたネットワークを活用することで、継続的な成長

をより早く、より経済的にスマートな手法で推し進める

ことができるようになります。

従来のビジネスにおいても、商品やサービスのシェア

が向上するにつれてその魅力が増すようなケースを見

ることができます。電話がその一例です。一握りのユー

ザーが利用していたうちは、興味深い製品ではあった

ものの価値は小さなものでしたが、全世界で数十億の

世帯に普及した後は、その魅力は革命的とも言えるも

のとなりました。

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エコシステムにおいて企業は、多くのステークホル

ダーに価値をもたらす、多面的なネットワーク効果を

生み出す場としてプラットフォームを活用したいと考え

ています。そうしたプラットフォームにおいては、利用

が拡大するにつれ、報酬はプラットフォーム・オーナー

やステークホルダーで共有されます。セールスフォー

スのようなデジタルを起点とした企業は、こうした多面

的なネットワーク効果をうまく活用してきました。そう

した効果を活用することで、過去10年において、10万

の企業がSalesforce1 Platformを採用し、22万以上も

のアプリケーションが開発されました。端的に言えば、

セールスフォースは、指数関数的に価値を生み出し、報

酬を企業や顧客、エンドユーザーと分かち合うエコシ

ステムとして、プラットフォームを活用したのです10。

デジタル・エコシステムにおける企業の役割を模索

企業がデジタル・エコシステムの一部と見なされるよう

になった後に必要な次のステップは、エコシステムに

おける独自の価値や役割を決めることです。つまり、

エコシステムにおける第一のリーダーとしてデジタル・

インダストリー・プラットフォームのオーナーとなるの

か。それとも第二のリーダーとして共有された役割を

担うのか。はたまた、他の組織のエコシステムに接続す

るのか。接続する場合には、自社のエコシステムをどこ

で、どのように他のプラットフォームに接続するのか。

何が業界をまたがったチャンスなのか。競争を勝ち抜

くプラットフォームとは何か。

まず第一に、すべての企業は、自社でプラットフォーム・

エコシステムを構築するのか、パートナーを組んで開

発するのか、それとも出来合いのエコシステムに参加

するのかを決定する必要があります。それに応じて各

企業は、自社の環境の絵姿を描き、デジタルにおける

パートナーやデベロッパーとの関係や相互接続を識別

した上で、そのエコシステムにおける競争がどのよう

に繰り広げられるのか評価することが求められるよう

になるでしょう。

結論

デジタル・ビジネス・プラットフォームは、企業が業界

特有の課題やチャンスに対するアプリケーションをどの

ように構築し、接続し、そして展開するかを示す新たな

青図となります。しかし、プラットフォーム自体は、価値

創出の新しいコンセプトを実現するブロックを組み立

てているに過ぎません。それは進化を続け、先進的な

企業が多くのプラットフォームを軸としたデジタル・ビジ

ネスを試行した末に、ニーズに適合するプラットフォー

ムに到達することになるでしょう。

革新的なのは、プラットフォームを軸としたエコシス

テムへのシフトです。ますます多くの先進企業が、エコ

システムにおける潜在的役割をすでに担っています。

彼らは、パートナーを巻き込んだ力強いエコシステムに

基づくデジタル・プラットフォームを進展させることで、

新しい領域で生まれるチャンスを思い描いています。

そしてまた、デジタル時代における将来は、自社単独の

努力や成功のみに依存するのではなく、プラットフォー

ムが質を高め、新たな可能性を生み出すエコシステム

の成功が大きな鍵を握ることになります。

プラットフォームを軸としたエコシステムは、もはや遠

い未来のアイデアではありません。ツールやテクニック

はすでに現実のものとなりつつあり、データへのアクセ

スは日々容易になっています。そんな中で最も必要な

のは、プラットフォームを軸としたエコシステムに向かう

マインドセットのシフトです。先行企業はすでに今、シフ

トしつつあります。グローバル企業においては、ますま

す差し迫ったチャレンジが求められています。どのよう

なプラットフォームやエコシステムが自社における競争

優位の源泉となるのか、そしてそのデジタル・エコノ

ミーの中で自社がどのような役割を担うのかを早急に

決めなければなりません。

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#techv i s i on2015

ソフトウェア・インテリジェンスによって、実務上のさまざまな知見やソフトウェアを活用した次世代のサービスが生み出されるでしょう。これまで、先進的なソフトウェアの主な目的は、社員の効率的な業務運営と迅速な意思決定を支援することでした。しかし、本格的なビッグデータの時代が到来し、データの処理能力やデータサイエンス、認知技術が飛躍的に向上した現在、「ソフトウェア・インテリジェンス」によって、企業は高度な処理に基づく情報に従って、優れた意思決定を行うことが可能になります。

インテリジェントな企業:膨大なデータとスマートな仕組みが優れたビジネスを生み出す

「トレンド4」 Intelligent Enterprise

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ACCENTURE TECHNOLOGY V IS ION 2015

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#techv i s i on2015

先進的な企業は「ソフトウェア・インテリジェンス」を試験段階の技術ではなく、ビジネス全体の機能性を高めるもの、すなわち、企業全体にわたるイノベーションを推進し、新たな進化と発見をもたらすものであるとみています。

長年、競争力を高め成果を創出するためには、データを重視する企業文化を根付かせ、意思決定にデータを活用することが必要と考えられてきました。こういったデータ重視の考え方から、マーケティング担当者が広告出稿の検討にビッグデータを活用したり、経営層が成長戦略を加速させるために分析ツールを活用したりしてきたのです。

しかしながら、多くの企業が、データ量が多い、データを適切に処理・分析することができていないなど、自社で保有するデータの活用に苦労しているのが実情で、それは下記の調査結果が示す通りです。

• CIOの半数が、ソリューションが複雑で統合困難なことを主な課題としてあげています。

• 28%の企業が収集したデータから価値を生み出すことができていると回答し、40%はビッグデータの活用方法を検討する必要があると回答しています1。

この課題に対する解の一つはより多くの意思決定をソフトウェアに委ねることです。ソフトウェア自体が進化し、新たなイノベーションを促すようになります。これまで以上に、企業は機械とデジタルインテリジェンスに新たな投資をする必要があります。

今まさに、アプリケーションやツールが人間の知性を身につけるソフトウェア・インテリジェンスの時代となりつつあります。もちろん、ソフトウェア・インテリジェンス自体は目新しいものではありませんが、収集可能なデータ量の増大、データを蓄積するコストの低下、データ処理能力の向上およびデータサイエンスの発達によって、ソフトウェア・インテリジェンスの実用化が加速しています。

インプットとなるデータが増加することにより、統計的アルゴリズムの精度が向上し、それまで思いもつかなかった関係性を発見することができるようになります。多くのデータを保有することが、より良いアルゴリズムを使用することに優り、シンプルなアルゴリズムでも高度なインテリジェンスを生み出すことにつながります。

では、具体的に、ソフトウェア・インテリジェンスはどのように定義すればよいのでしょうか。

なぜ今なのか?

デジタルソリューションの複雑さCIOの半数は、ソリューションが複雑で統合困難なことを主な課題としてあげているとともに、91%がソフトウェア・インテリジェンスはITの単純化に貢献すると回答しています2。

データ量の増大IDCは、2020年までに発生する40ゼッタバイト以上のデータのうち、35%はアナリティクスに有用なデータと予想しています3。(2013年は22%)

ストレージコストの低減ストレージコストの低減がデータ量の増大によるコストを相殺し、分析により新たな価値を発見するためのデータ蓄積を行うことが可能となっています。過去30年にわたり、1Gバイト当たりのHD単価は、1980年の40万ドルから2013年の0.05ドルと、14ヶ月ごとに半減しています4。

データ処理能力の向上クラウドサービスの活用により得られる計算能力を活用し、大規模なビッグデータ分析が可能となっています。IDCは、パブリック・クラウドサービス市場は、二桁成長を続けており、2013年で457億ドルに達し、2018年までに毎年平均18%で拡大するとしています5。

データサイエンスの発達深層学習、コグニティブ・コンピューティングが高度化するとともに、企業が実用化を進めています。自然言語解析・画像解析等の技術進化により、不明瞭な質問に対しても、より早く、より良い回答を得ることが可能となっています。

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サーモスタット(温度調節器)の例で考えてみましょう。最もシンプルなのは、「室温が21度より下がったらスイッチをオンにする」といったものです。住人によるサーモスタットの「設定」は、ソフトウェアの言葉では「ルール」に相当します。現在のより賢いサーモスタットは住人の行動を「学習」し、機械自体がルールを本質的に進化させていくことができます。住人のスケジュール、発言などをモニターし、朝出てから帰ってくる瞬間までは室温を自動的に低めにしておくこともできます。しかし、ソフトウェア・インテリジェンスは、このような段階よりももっと先に進もうとしており、次世代のデバイスは、住人すら気づかない新しいコネクションや法則を「発見」することができます。例えば、住人が健康器具で運動を始めてから15分後にいつもヒーターを切ります。それに従い、機械が住人の代わりにヒーターを切ります。これはソフトウェア・インテリジェンスで言えば、「発見」、「自己進化」、「意思決定」に相当します。

さらに、将来的には、コグニティブ・コンピューティングが、「知覚」、「理解」、「実行」と一段階上のレベルのことを実現するようになるでしょう。より多くのデータにアクセスし、状況を推論することができれば、住人が風邪をひいていることに気づくでしょうし、そうすれば温度を上げることもできます。また、ヘルスケアプロバイダーに接触できるようにし続けることもできるかもしれません。

サーモスタットを例に見てきましたが、ソフトウェア・インテリジェンスは、ビジネスの中核の能力と考えるべき時にきており、効率的な業務運営を実現するだけでなく、業務・サービスに革新をもたらします。最適なカスタマーサポート内容は何か、サプライチェーンをどのように最適化するかの意思決定もします。このように、ソフトウェア・インテリジェンスの活用が企業の競争

力を左右します。

インテリジェント・ソフトウェアの想定外の触媒ソフトウェア・インテリジェンスをここまで高めてきた要因や触媒をあげるのは難しいことではありません。ストレージのデータコストが下がったこと、コンピュータの処理能力が上がったこと、データサイエンスが進化したことなどです。しかし、注目すべきものは思いもよらないところにありました。データそのものです。

ここ数年、データの爆発的増加が起こっています。インターネットに接続するデバイスが増えたからです。研究レポートによれば、この2年間で生み出されたデータは有史以来人類が生み出してきたデータに匹敵します。

2014年に調査会社の IDCは、デジタルユニバースは、2020年には44ゼタバイトまで増大するとの予測を発表しました。これは地球上の全人口一人当たり毎分に換算すると、1.7メガバイトに相当します。このデータのうち、ざっと10%は320億のインターネットにつながったデバイスに由来します。デバイスの数は、現在の2倍以上です6。

また、ここ数年のアクセンチュアの調査でも、55%以上が、データボリュームが着実に増加していると回答していますが、結果的に、全業界・業種のすべての企業は、驚くほどの量のデータにアクセスしており、そのことが、ソフトウェアのインテリジェンスを高めているのです。機械によって確かにビッグデータの規模を生かすことができます。統計アルゴリズムの正確さを高め、これまで見い出せなかったデータの新しい関連性を見つけ出します。

より多くのデータを持っていることが、より優れたアルゴリズムを負かすこともあります。これは、ビッグデータによって、相対的にシンプルなアルゴリズムのパフォーマンスが飛躍的に高まり、ソフトウェア・インテリジェンスが新しい高みまで押し上げられたためです7。

言語翻訳の例を考えてみましょう。長年にわたって人類は言語の持つ広大なルールとロジックをプログラムに置き換える正確な翻訳システムを作ることに腐心し、悩んできました。ひとつひとつの言葉の翻訳に問題があったわけではありません。さまざまな言語体系がもつ、文法、微妙なニュアンス、異質な特徴を翻訳することが障壁で、この取り組みをチャレンジングなものにしていました。Google翻訳は、ビッグデータを活用することで言語翻訳を可能にし、ついにエンジニアは一歩前に進むことに成功したのです。ビッグデータを構成する何億ものドキュメントや、何十億もの言葉の並びを探索することで、最良の翻訳を選び出すことができ、すでに人によって翻訳されたドキュメントのパターンを検出すれば、Google翻訳はどれが適訳かというインテリジェントな推測を行うことができます。Google翻訳は80もの言語間の翻訳が可能で、2億人の人々が日々使っている、現時点でベストのツールです8。

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#techv i s i on2015

もう少し、過剰なまでのデータが、有益なインサイトの増加を推し進めることを想像してみましょう。企業が顧客やプロダクト、競合他社、そして市場についてより優れたビジネス上の意思決定をできるようになるという例です。

音楽認識サービス、シャザム(Shazam)の例を見てみましょう。シャザムは、多数のユーザーにとっては、音楽を「聴き」、数えきれないほどのデータをスキャンし、数秒で曲名とアーティストをピンポイントで当ててくれるアプリでしょう。しかし、シャザムのビジネスモデルの背後にあるソフトウェア・インテリジェンスはそこではありません。典型的な例として、シャザムは、33日後にビルボードのトップ100曲に上り詰めるヒットソングを的中させることができます。「学習インジケーター」は「アプリのクリック」データで、ユーザーがどれくらいの頻度で特定の曲を調べようとしたか詳細なデータをもっています。これらのデータから示されるインサイトへのニーズは非常に高く、シャザムは有料で情報提供する「ダッシュボード」サービスを開発しています。レコード会社やコンサートのプロモーターがダッシュボードにアクセスすれば、売上の増加やより良いコンサートツアーの計画を実現できます。ビッグデータはビッグな

売り上げにつながるのです9。

ソフトウェア・インテリジェンスの成熟段階ソフトウェア・インテリジェンスは、ルールベースのプログラミングから、機械学習、ディープラーニング、コグニティブ・コンピューティング、さらには自然言語処理や画像解析までも包含します。ソフトウェア・インテリジェンスの成熟段階としては、自動化から始まり、機械学習そしてコグニティブ・コンピューティングまでの3段階があります。ソフトウェア・インテリジェンスの進化は例えば、音声認識のための自然言語処理(NLP: Natural Language Processing)や、画像認識などの特定のテクノロジー領域に表れています。

自動化企業は、多くの業務を簡素化し合理化することが必要だと考えています。ここ数十年、ルールベースのアルゴリズムは、精度の高い、迅速な意思決定をするための標準的な手段でした。ソフトウェア・インテリジェンスを導入する取り組みの初期段階としては、定型的・単純な作業を特定し、ルールベースによる自動化を進めてゆくことです。

今日のデータセンターは多大なデータを扱います。セットアップ、コンフィグレーション、システム管理といった大変な作業について、Chef、Puppert、AnsibleといったオープンソースがITインフラの管理タスクの自動化・簡素化に寄与しています10。Puppert Labsは、コンフィグレーション管理ツールを実装することにより、数日間、または数週間かかっていた作業を数時間で実施可能としました11。

ロンドンヒースロー空港は、空港業務の自動化を決定し、ペガシステムのアプリケーションプラットフォームを導入しました。その結果、9週間で効果を創出、定刻発

の割合を68%から85%に増加させました12。

機械学習ソフトウェア・インテリジェンスの特筆すべき能力は、自ら発達し、新しい発見をすることです。人による手動アップデートに頼ることなく、最新の状態にアップデートしていくとともに、顧客を製品・サービスにひきつける機会を発見します。ビッグデータと機械学習を活用し、データ間や顧客との関係性に関する示唆を得る企業は、競合優位を築くことができます。

機械学習は、単体の技術でなく、現代数学、統計学、クラスタリング、確率論などさまざまな技術を包含しています。データサイエンティストは、ベイジアンネットワーク等、さまざまなアルゴリズムの中から問題解決に最適なアルゴリズムを選択します。

また、機械学習は、データから学び得られた知識を活用し、人間だけでは得ることができない新たな示唆を提示します。このような示唆を活用することで、競合に先んじて製品開発や市場開拓を進めていくことができます。適切に機械学習を活用することでさらなる価値を創出することができます。

例えば、ネットフリックスでは機械学習によるレコメンデーションを活用して、これまでの視聴番組データを基に、ユーザーにパーソナライズされた作品を推奨しています13,14,15。また、エネルギー分野ではプラント管理に機械学習を導入しています。正常パターンを学習し、リアルタイムでの観測結果から異常パターンを検出し、アラートを提示することで、プラントの安定稼働を実現しています16。

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多くの企業にとって、機械学習はチャレンジングな技術かもしれません。しかし、今こそ、優秀な社員を教育し、機械学習のスペシャリストを採用し、競争優位を生み

出すため機械学習を実装すべきです。

コグニティブ・コンピューティングを通じてインテリジェンスを拡大する

ソフトウェア・インテリジェンスの成熟曲線の最終段階は、コグニティブ・コンピューティングです。コンピューティングは、ルールベース、機械学習、そして他の先進技術の蓄積と考えられ、感じ、理解し、行動することができます。言い換えれば、コンピュータが世界を感じ、状況を分析し、集められた情報を理解し、意思決定をします。

多くのデータを処理し、コンテキストまで理解する能力により、コグニティブ・コンピューティングは、人間だけが対処可能であった、定義が曖昧な問題に対しても対処することができます。このような曖昧な問題に対しては、正しい答えはないかもしれませんが、コグニティブ・コンピューティングはベストな解を得る支援をします。このアプローチは今日の企業が直面している問題や課題を解決する一手段です。

コグニティブ・コンピューティングの最近の進歩は、ディープラーニングの脳の処理プロセスに似た深いパターン認識の進歩が関係しています。また、人間味のあるインターフェースの実現に不可欠な、自然言語処理や画像解析の発達も寄与しています。

IBMは、コグニティブ・コンピューティングに多大な投資をしています。コグニティブ・コンピューティングを活用しているワトソンは、2014年のテレビ番組でクイズチャンピオンに勝利しました。さらにワトソンは、ヘルスケア領域での活用が期待されています。患者の症状が曖昧な状況の中でも、医師がよりパーソナライズされたケアを提供することを支援します17。

また、IPSoftは、バーチャルエージェントのAmeliaを提供しています。Ameliaは、マニュアルを学習し顧客に迅速に回答するだけでなく、経験からも学習し、人間とのやり取りの中で文脈を理解し、人間味のある対応をします。IPSoftはAmeliaを導入することで、短期間でのITコストの削減を実現しています18。

コグニティブ・コンピューティングは多くの企業にとって、手の届かないところにあるかもしれませんが、先見性のある企業は技術に対する期待値を高めソフトウェア・インテリジェンスを活用し始めています。彼らは、小規模なよく定義されたユースケースから導入を開始し、徐々にそのスコープを拡大していきます。それと同時に、曖昧な問題や難解なチャンレンジに対処するために、より多くのデータを提供し、コグニティブ・コン

ピューティングにコンテキストを理解させています。

課題を克服するための協働ソフトウェア・インテリジェンスの活用において、リスクは存在します。どんなにアルゴリズムが優れていたとしても、インプットデータに過度に依存することは、イノベーションを促進するよりも、むしろ阻害する要因となります。例えば、GPS等のスマートフォンから得られるデータをインプットとして、道路の穴を特定するアプリの場合、検出される穴が裕福な地域に限定されがちです。これは、スマートフォンを所有している層が、比較的裕福であることに依存しています。アプリのコンセプトは良いものの、地域全体を対象とすることができていません19。

このようなことに対処していくためには、新たなレベルでの人間とコンピュータの協働が必要です。コンピュータは、正確かつ膨大な結果を提供することができます。一方で、人間は創造性や文脈を理解する能力で優っているため、コンピュータが出す結果を疑い、改善することができます。調査結果からも、成功している企業は、人間と機械を一緒に管理し、協働させています。

インテリジェンスの力

賢くそして注意深くソフトウェア・インテリジェンスを活用することで、効率的な業務運営とイノベーションを生み出すことができます。企業は定型的な業務を自動化することから開始し、その後、機械学習、コグニティブ・コンピューティングへと成熟度を高めていくべきでしょう。先見性のある企業は、ソフトウェア・インテリジェンスを試験段階から実用段階に移行し、イノベーションに拍車をかけるとともに、全社的な生産性をあげています。ソフトウェア・インテリジェンスを活用することは、全業界・全企業にとってゲームチェンジャーとなりえます。

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#techv i s i on2015

デジタルに舵を切るということは、人と機械がともに活動することがより一層増えることを意味します。自然言語インターフェースやウエアラブル・デバイス、そしてスマートマシンは、自社の従業員をテクノロジーで強化する新しい機会を実現するでしょう。そして、「人と機械のコラボレーティブ・ワークフォースをどう運営していくか」という新しい課題が浮かび上がってきます。人の英知とインテリジェント・テクノロジーが合わさって協業することの利点を見極め、新しく再考されたワークフォースの「重要構成メンバー」として人と機械の両方を進んで受け入れることが、ビジネスの成功につながります。

「ワークフォース」再考:人間と機械の連携がもたらすコラボレーション

「トレンド5」 Workforce Reimagined

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#techv i s i on2015

「新入社員の『テクノロジーさん』、こんにちは」彼(彼女)はこれまでの誰より聡明で仕事が速く、しかし一方でまだトレーニングとチームメイトの助けを必要としており一人では働けません。いや、一人で働くべきではありません。別々にではなく「人と機械がともに働く」ことでより素晴らしいアウトプットが生み出されます。機械は単なるツールではなく、新しいコラボレーティブ・ワークフォースのパートナーです。

テクノロジーとの協業はすでに生活の中に見て取れます。車の「半自動運転」を考えてみてください。セルフ・ドライビング・ナビゲーションは車と運転者をアシストして、運転体験を向上させ、安全性を高めています。

郊外で酷い渋滞の中を運転する場合を考えてみましょう。例えば、メルセデスベンツSクラスのドライバーはハンドルのボタンを押してインテリジェント・ドライブ・システムに運転を任せれば、あとは機械が時速60kmで運転してくれます1。もちろん同じことは人にもできますし、あまり新味はないかもしれません。でも、機械は疲れたり、気晴らしが必要になったりすることがありません。つまり、運転を楽なものにして車の安全性を高められるのです。

企業や組織の場合どうでしょうか。米航空宇宙局NASAでは宇宙飛行士とロボットがチームを組んでスペースデブリ(宇宙空間の浮遊ゴミ)を回収するという困難で危険な任務にあたっています。高度なアナリティクスアルゴリズムと望遠カメラの組み合わせでロボットは宇宙ゴミの回転や重力、軌道などを解析し、宇宙飛行士は安全にゴミを回収できます2。

これらは人と機械がともに働くといかに効果的かという例です。今後、こういった例がいくつも出てくるでしょう。高度な音声認識、自然言語処理、ウエアラブル・テクノロジー、意志決定におけるインテリジェント・ソフトウェアの活用(トレンド4参照)などで、人がより素晴らしい成果を生み出すことが可能になります。

再考や再編成された新しいワークフォース、つまり「人と機械が効果的に協業するコラボレーションチーム」を進んで受け入れることで、企業は新しいデジタルワールドで比類なき競争力を獲得できます。大半の人は、先端ソフトウェアやロボットが無人で自律運転する姿を想起するかもしれません。しかし、同様に人がテクノロジーと相互に連携し合うことの先進性や重要性についても考えてみるべきです。

ジャーナリズムの領域でも、LAタイムズの記者がインテリジェント・ソフトウェアと連携する状況が生まれており、QuakeBotは地震が発生した際の初期原稿を担当します3。QuakeBotは政府機関から地震のデータを取得し記事テンプレートに反映させるように作られており、その後、人間の編集者が校正して記事として公開します。QuakeBotは記事を3分で書き上げられるので、LA

タイムズは地震の記事を最速で出せるのです4。

次世代のビジネスでは、人々とテクノロジーが隣り合っ

て働くことでより良い成果を生み出し、難局に立ち向か

うことでしょう。人と機械のコラボレーションの良好な

サイクルを作り出した企業は、デジタル時代向けに再

考されたワークフォースで飛躍的な成果を上げること

ができます。

テクノロジーによって強化されるワークフォース

自然言語処理インターフェースによって、人が機械を

身にまとい、テクノロジーを補助的に活用することが

非常に容易になってきています。サイボーグになれと

言っているわけでありません。ウエアラブルによって

デジタル・テクノロジーをリアル世界に持ち込み、人は

機械を用いてよりチャレンジングな作業を卓越した業

務効率で達成でき、テクノロジーはワークフォースの一

翼を担うことになります。

アクセンチュアの調査によれば、77%の企業が今後3年の間に従業員に対してトレーニングを提供するのと同様に、機械に対してトレーニングを行わなければならなくなるだろうと考えています。

77%

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ACCENTURE TECHNOLOGY V IS ION 2015

最先端の自然言語インターフェース

人と機械の仲立ちをするインターフェースの開発は

機械との協業の促進要因です。自然言語処理と音声

認識の発展によって、人はより自然にテクノロジーや

機械と連携できるようになってきました。企業はこの価

値を認識するところから始めるべきです。

自然言語処理の市場規模は、2013年の38億ドルから

2018年には99億ドルにまで成長する(年平均成長率

21.2%)5と予測されています。スマートフォンでの音声

検索(アップルのSiriやGoogle Now)はポピュラーに

なってきていますが、音声認識技術に加えて、構造化

されていない不定形な会話などをリアルタイム検索

可能なデータに変換する自然言語処理技術がこれら

を実現しています。

Expect Labs社のMindMeldは「予想型コンピューティ

ング」とでも言うべきアプリケーションで、実に多種多

様な仕事に変革の可能性があることを示唆してくれ

ます。このアプリケーションは、音声の会話に注意深く

耳を傾け、関連情報をタブレットにリアルタイムで表示

します。同社はすでにMindMeldのAPIを公開しており、

他のアプリがこの機能を用いることもできます6。カス

タマーセンターの例で考えてみると、MindMeldのテク

ノロジーでオペレーターはより的確に回答するための

情報をリアルタイムで得て対応通話時間を減らし、

顧客体験を高めるだけではなく、コールセンター全体

の効率的な運営にもつながります。

ウエアラブルのパワー

ウエアラブル・デバイスは、センサーを介してさまざま

なデータを収集し、実質的に人の「五感」を強化しま

す。埋め込まれた物理的センサーが周囲の情報(イン

テリジェンス)を収集することで、危険な状況下の従業

員の生命の安全を守ることができます。

例えば、Accenture’s Life Safety Solutionは、石油・ガス

精製所、化学プラント向けのソリューションで、襟に着

けたワイヤレスデバイスに、4種類の有毒ガス検セン

サーなどを搭載7し継続的に環境をモニターします。

また、キャタピラー社の重機用テレマティクスソリュー

ションは、重機のオペレーターが眠気を催した場合に

備えて動画解析を行います8。

ウエアラブル・テクノロジーは、重要情報を控えめな方

法で提供することで非常に大きな価値をもたらします。

昨年、アクセンチュアとフィリップスが共同で実証実験

を行ったように、医師が手術室でグーグルグラスを着用

すれば、患者のバイタルサインを眼鏡越しにモニター

しつつ患者に集中することができます9。インディアナ

大学病院の外科医も腹部腫瘍の切除手術にグーグル

グラスを活用しています10。さらに、執刀医視点のカメ

ラや装着したスマートグラスによって撮影された手術

のライブストリーミングや録画を用いて、トレーニング

の改善を計画している病院もあります。

また、ウエアラブル・テクノロジーは文字通り「パワー」

でもあります。米軍は強化外骨格(ロボットスーツ)の

テストをすでに進めており、建設現場や船舶のメンテ

ナンス向けにロッキード社の「スーツ」を2体購入済み

です。初期テストの結果、タスク次第で2倍~27倍の

生産性向上が見られています11。今やこれらの機械は、

工場の生産現場に導入が進む段階に移りつつあり

ます。

アクセンチュアの調査によれば、40%の企業が、センサーがインテリジェンスや機器の情報を収集し、ワークフォースにより一層の示唆を与えるようになるだろうと回答しています。

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#techv i s i on2015

人と機械が隣り合って働く

ロボティクス技術の適用領域が広がると、人と機械が

隣り合ってチームとして働くようになるでしょう。機械

は正確さ・スケール・継続性の面で優れており、人はクリ

エイティビティ・コンテキスト理解・複雑なコミュニケー

ションに向いています。企業は、両者に適切にタスクに

割り振って、人と機械のインパクトを最大化させる新し

いワークフォースをつくる段階に来ているのではない

でしょうか。

すでに、人と機械の協業によるプロセスの生産性向上

について説得力のある事例はたくさんあります。カー

ネギーメロン大学の実験によれば、人とロボットのチー

ムは3人の熟練工のチームに比べ、車のフレームを

10倍速で組み立てることができました。実験では、簡単

な溶接の場合、プロジェクターを備えたロボットがパー

ツの設置箇所を人に示し、ロボットが一カ所当たり5秒

で完璧に溶接を行い、難易度の高い溶接では、ロボット

が人の補助に回ることでより良い成果につながりま

した12。

タスクの特定やプロセスの改善は、企業がワーク

フォースを再考する上での序章に過ぎません。機械学

習の活用はすなわちマネジャーがロボットを信頼して

仕事を任せることです。アマゾンのKivaロボットは倉庫

従業員との協働ピッキング業務だけでなく、倉庫全体

のオペレーションにも関わっています。ロボットは、棚

から商品を持ってきて梱包する時間を平均1.5時間か

ら15分にまで短縮しました。ロボットの動的かつ順応性

の高いアルゴリズムは、倉庫運営にも活用されてい

ます13。例えばロボットはめったに注文されない商品は

遠く離れたエリアに仕分けることを知っています。

これらのテクノロジーの優れた活用例は、協業によって

人の効率性を高める機会があることを意味します。

人と機械の「ブレンディッド・ワークフォース」は、企業に

タスクの自動処理、プロセス改善、企業全体へのポジ

ティブフィードバックループ(インテリジェンス、パ

フォーマンス、生産性の向上)をもたらします。

新しいワークフォースをつくる

最先端のテクノロジーは、人と機械のコラボレーション

を容易にし、それぞれ別々に働いていた時よりも強力

なチームにします。企業は、人の才能と機械の能力を

フルに生かす「ブレンディッド・ワークフォース」のトレー

ニングの優先順位を上げ、テクノロジーを活用する

範囲を広げるべきです。ガートナー社は、2018年までに

なぜ今なのか?

テクノロジーの成熟自然言語処理は人とテクノロジーや機械との自然なやり取りをより簡単にしました。2018年までに100億ドル市場

になる14と予想されており、ウエアラブル・コンピューティングの進展で仕事にテクノロジーを組み込みやすくなる

でしょう。

人間味のあるインターフェースバイドゥのチーフサイエンティストは、バイドゥ上での音声・画像検索が文字検索を5年以内に上回るだろうとしてい

ます15。

ROIの素早い創出ガートナー社は2018年までに業務オペレーションのTCO(Total Cost of Ownership)はスマートマシンや工業化・

規格化されたサービスを広く用いることで、今より30%下がる16と予測しています。

効率の改善ガートナー社は2017年にはフィールドサービス領域でのスマートグラスの活用で10億ドル節約できる17としています。

従業員の安全衛生などの重要局面への活用大半の資源(石油、ガス、鉱物、エネルギー)の採掘現場では、今後、人をより危険なミッションをともなう危険な

エリアに送り出すことになるでしょう。ロボットと人の協業は不可欠です。

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ACCENTURE TECHNOLOGY V IS ION 2015

ビジネスオペレーションのTCOは今日より30%低減さ

れると予測していますが、これを可能にするのは、企業

中にスマートマシンや工業化(規格化)されたサービス

が適用されるからです18。

テクノロジーによるトレーニングそのものの効率化 -- MOOCs

テクノロジーは学習の手段も変えつつあります。また、

テクノロジーは人のフィードバックによってよりスマー

トになります。これらの改善が進めば、より多くの

雇用が創出されるでしょう。MOOCs(Massive Open

Online Courses/オンライン学習)は、学習の質を高

める方法として注目を集めつつあります。

Coursera社のSignature Track programを用いれば、

企業は、受講者が自分のペースでリモート受講できる

独自のトレーニングプログラムを開発できます。スタン

フォード大学では、MOOCsにマシンラーニングを組み

込むことで、10万人が受講するコースでほぼリアル

タイムのフィードバックを得るという優れた効率性を

実現しました19。

機械へのトレーニング投資も考えなければなりま

せん。MITは、産業用ロボットは人の癖を観察して適応

できるとしています。実験では、人は部品を好きな順序

で据え付け、ロボットはその様子を観察し、人が部品を

据え付ける順序を予測し、先回りして接着剤を充填する

ことに成功しました。ロボットが観察を通じて学習すれ

ば、人は仕事の段取りやスタイルを変えなくても仕事

を効率化できるのです20。

ロボティクスの進化は、バクスター社のReth ink

Roboticsのように、ロボットの腕を動かすだけで作業を

理解させることも実現しています21。時がたてば、リア

ルタイムのコラボレーションラーニングも実現できる

かもしれません。

スキルの民主化・特殊スキルの解放

人と機械の連携を改善するもう一つの方法は、スキル

の“民主化”です。スキルセットを整理分類して、匠や

熟練スペシャリストのタスクをすべての従業員に解放

することです。

例えば、ソフトウェア開発には、コーディングスキルや

文法、アーキテクチャの理解が必要でしたが、高レベル

なプログラミング言語を用いた開発(アップルのSwift

やグーグルのGo)では、ビジネスユーザーが自身でアプ

リケーションを作ることを「比較的」容易にしています。

GUIはデータの加工や下処理を容易にしました。Trifacta

社はアジャイルデータ探索ソリューションを提供してお

り、高度なビジュアル解析を基本的にすべての人が利

用できます。人々のスキルをアジャイルな学習によって

伸ばすことで、企業は、特殊スキルの呪縛から逃れ、本

来取り組むべき課題に注力できるようになるのです。

没入体験を得ることができるウエアラブル・ディスプレ

イはスキル向上や雇用改善につながります。三菱電機

はMetaioのAR(強化現実)ソフトウェアを、エプソンの

スマートグラス「モベリオ(MOVERIO)」で試験活用し、

エアコンの技術者をサポートしています。スマートグラ

スを通じて技術者は3D画像を修理箇所に重ね合わせ

て見ることで、不良パーツをどうやって取り除き交換す

るか理解できます22。

アクセンチュアの調査によれば、1/3の企業はロボティクス技術をビジネスの自動化、プロセスの工業化(規格化)に活用するだろうと回答しています。

1/3

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#techv i s i on2015

フォルクスワーゲンも現場で使う画像システムをXL1

ハイブリッド車向けに構築しており、技術者は画像を見

ながら複雑なパワートレイン機構を修理できます。タブ

レット上でデジタル画像がリアル画像に重ね合わせて

表示されるので、技術者は短い時間で複雑な製品機構

に対応でき、手を止めてサービスマニュアルを繰った

り、本社に電話で追加指示を仰がずに状況に合わせた

対応法を学習できるようになりました23。

ベター・ワークフォース=ベター・ビジネス

「ワークフォース」の再考で、よりたくさんの仕事をよ

り良く行うことができる一方、たくさんの新しい問題が

浮かび上がってきます。

どの仕事が人に配置され、どの仕事は人が機械と協業

すべきなのか。どういったガバナンスが意思決定に役

立つのか。機械がより活躍できるように意思決定をど

う分権化させるべきか。「ブレンディッド・ワークフォー

ス」環境を見据えてどんなトレーニングを行うべきか。

人を雇う際にスキルについてどう考えればいいのか。

特別なナレッジを重視すべきかそうでないのか。……

状況をどう認識し、ビジネスプロセスが変わりゆく現

状にどう答えるかが、ビジネスやITのリーダーの最も大

きな問いでしょう。事実、すべてのビジネスオペレーシ

ョンは、「人が主導し、技術が実現する」パラダイムから

「デジタルが主導し、人が実現を可能にする」パラダイ

ムにシフトしつつあります24。

先行企業は、これらの問いに対して意見を表明し始め

ており、「インテリジェント・テクノロジーとトレーニング

のあり方」について考え始めています。そして、もう一

度コアビジネスについて再考し、より良く機械を組み

込む是非を考えています。さらに、将来どのようなタイ

プの人を雇うべきか考察し始めています。

ビジネスのこれからの10年を考える際に、人と機械が

ばらばらに働くだけでは十分とは言えません。明日の

有力企業はワークフォースについて再考し、人とパート

ナーであるテクノロジーが効果的にブレンドされた

会社でしょう。新しいデジタルワークフォースへの備え

を進めましょう。

アクセンチュアの調査によれば、90%の回答者は、3年以内にMOOCsをワークフォースのより良い教育手段として用いるだろうと回答しています。

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ACCENTURE TECHNOLOGY V IS ION 2015

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#techv i s i on2015

Accenture Technology Visionでは、2年前に「すべての

ビジネスはデジタルに」ということを予測しました。

将来にわたる成功のためテクノロジーとビジネスモ

デルにおける世界規模のトランスフォーメーションを

予見し、このデジタル時代において、すべてのビジネス

に再考を促す事柄について詳述しました。

昨年は、「『規模』がモノを言う段階へ」と題して、伝統

的な大企業が成長のための原動力としてテクノロジー

を活用し始めていることを予見しました。豊富なリソー

ス、規模の大きさ、統制のとれたプロセスを後ろ盾と

する、伝統的な大企業がデジタル化することによって、

デジタル世界の構図を大幅に書き換えるだろうと考え

たのです。

1年が経過し、グローバル2000にあげられる大企業は

まさに私たちが予見した通りに動き始めました。1837

年に設立されたジョン・ディアは、今日、デジタル領域の

真の先駆者になっています。一方、コンシューマ向け

電子機器メーカーの巨人であるサムスンは、今日、

異なるデジタル領域に進出しつつあります。これらの

デジタルの巨人は日々増えています。

しかしながら、着目すべきなのは、非IT企業がこのデジ

タル化を推し進める運転席に着いているということ

です。彼らはデジタルの流れを推し進めてくれるテクノ

ロジーの次の波を待っているのではありません。彼ら

自身が行動することなく、テクノロジー標準が具体化

されることなどないのです。さらに、彼らはグーグル、

フェイスブック、ボックスやピンタレストといったデジ

タル企業が何をなしているのかを単に座して観察して

いるだけではありません。彼ら自身の手で大きな流れ

を生み出そうとしているのです。

デジタル・ビジネスへのシフトは、単に業務プロセスに

テクノロジーを取り入れるということではなく、各企業

がより広範に広がるデジタル・エコシステムを活用する

ために自社の事業領域を拡大し、次世代の商品・サー

ビス、ビジネスモデルの創造を図っていることを示して

います。

このようにデジタル化を進めている企業は大きな構想

を持ち、常に自らに大きな問いかけを行っています。

自動車の自動運転が可能になったら、自動車保険の

販売方法はどのように変わるのだろうか。「電力の供給」

のようなサービスを売るのか、それとも「暖かさや快適

さ」のような成果を売るのか。テレビ受像機を売るの

か、それともスマート・ホームのためのハブ(拠点)を創

造するのか。未来の巨大なインテリジェント・シティを創

り出すためには何をすればよいのか。迫りくる世界的

な食糧不足を解決するためにはどうすればよいのか。

先進的な企業は、単にデジタル・ビジネスへの転換を図

るためにテクノロジーを活用するということは、もはや

考えていません。こうした企業は、いかに自社の強みと

デジタルの力を融合させて市場の再形成を行い、「We

Economy」の中で新たな役割を担っていくのかを常に

考えています。

誤解のないように補足すれば、この「We Economy」は

アプリケーションの構築においてこれまでと異なった

アプローチを必要とします。それは、リキッド(変幻自

在)であり、インテリジェント(自律的な知能を持つこ

と)であり、そしてコネクテッド(相互に接続される)とい

うことです。将来におけるアプリケーションは、俊敏性

が求められます。こうしたアプリケーションの再創造に

より企業は、ビジネスのスピードへ追従しながらも複雑

性を管理し、より密に接続されたビジネス環境を実現

するアプリケーションから利益を享受することになる

のです。

伝統的な企業の経営者は、「デジタル・テクノロジーを

いかに活用できるのか」、「成長を促し、規模を拡大して

より大きな課題に取り組めるようにするにはどうすれ

ばよいのか」、そして「『We Economy』の中で他の企業

と連携することによって、自社の未来はどのようなもの

になるのか」を考える時が来ています。

結論

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ACCENTURE TECHNOLOGY V IS ION 2015

アクセンチュアがAccenture Technology Visionで発表するトレンドは、今後の発展の鍵となるテクノロジーの進化を強調する傾向があり、過去に取り上げたテクノロジーのうちのいくつかはすでに、多くの有力企業が推進するデジタル開発の中核に位置づけられています。こうしたトレンドは概して、未来の成功に向けた戦略立案における企業の考え方の根本的なシフトを象徴しています。あらゆる業界の先進的な企業は、Accenture Technology Visionが提供する深い知見に基づく展望からインスピレーションを得て、自社のデジタル化計画に生かしています。

補足

アクセンチュアが今年のAccenture Technology Vision

2015で示したトレンドの基盤となる、これまでとは全く

異なるフレキシブルで、インテリジェントで、接続可能

な「We Economy」のためのアプリケーションが、今後

ますます求められるようになるでしょう。未来のアプリ

ケーションには、さらなる俊敏性が必要です。これから

改革をスタートさせる企業は、次々と変化し複雑化す

るビジネスに対応し、相互に関連し合うビジネス環境と

の連携を可能にするアプリケーションを活用すること

で大きな成果を生むでしょう。この新しいアプローチ

は、アクセンチュアの論考「アプリケーションの未来」の

中で解説されています。

アクセンチュアのTechnology Visionは、3~5年の期間

を視野に、テクノロジーのトレンドをまとめています。

毎年最新のトレンドに光を当ててきましたが、重要なの

は、それぞれのトレンドは実は全体像の一部を象徴して

いるに過ぎないということです。各企業がデジタル・

ビジネスへの転換に取り組む過程で、最新のテクノロ

ジーの進化に追随することはもとより、成熟しつつある

既存のテクノロジーを熟知し、使いこなすことも必要

です。こうしたテクノロジーは企業が次世代のビジネス

を構築するための基礎となり、今年のTechnology

Visionで解説された多くのトレンドを生み出すきっかけ

となっています。Technology Visionで取り上げられた

すべてのトレンドに関する参考文献は、以下でご覧いた

だけます。

accenture.com/jp/tech-vision2015

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#techv i s i on2015

Technology Visionについて

アクセンチュアが毎年発表しているTechnology Vision

は、今後3~5年の間に大企業にインパクトを与える新

たなテクノロジー・トレンドを、当社の知見と調査に基づ

いて描き出すレポートです。

2015年版のレポートは、次のような手順で作成しました。

最初に着手したのは、社外の顧問委員会「Technology

Vision External Advisory Board」から意見を集約する

作業です。この委員会には、公的機関や学術界の有識

者、民間企業、ベンチャー・キャピタル、スタートアップ

企業などの経営者や起業家が参加しています。

調査方法

その後、テクノロジーの専門家、さまざまな業界の専門

家、アクセンチュアの経営幹部など100人を超える対象

者にインタビューを実施しました。次に、1700人以上も

のアクセンチュア社員からクラウドソーシングによって

テクノロジー・トレンドに関するアイデアを募りました。

それと並行し、新興テクノロジーの実際の導入状況を

グローバル規模で把握するため、当社の調査部門であ

るAccenture Researchが9カ国で10の業界を対象に、

2000人を超えるビジネス部門・IT部門の経営幹部職に

調査を実施しました。

役職

IT部門統括責任者24%

15%

13%

13%

9%

9%

7%

6%

4%

部門長

CIO

CTO

CMO

統括責任者

COO

CFO

CSO

事業規模(USD)

6-9.9billion

1-5.9billion

+50billion

500-999million

20-49.9billion

10-19.9billion

業種

220

243

230

101221221

208

162

234

160

Headquarters

Locations

Headquarters

Locations

10%

190

オーストラリア

184

10%

ブラジル

167

10%

中国

171

10%

フランス

10%

143

インド

298

15%

イギリス

451

15%

アメリカ

199

10%

ドイツ

185

10%

南アフリカ

自動車 銀行 通信 ヘルスプロバイダー 産業機器

保険 製薬・バイオ 公共サービス 小売り エネルギー

Accenture Technology Vision 2015調査概要

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ACCENTURE TECHNOLOGY V IS ION 2015

トレンド1: The Internet of Me

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23, 2014. https://nest.com/blog/2014/06/23/the-nest-

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acquitygroup.com/docs/default-source/Whitepapers/

acquitygroup-2014iotstudyfca32e3440236f7b9704ff0

00083d49c.pdf?sfvrsn=2.

4 “Whirlpool Corporation Announces Product

Integration with Nest,” Whirlpool press release, June

24, 2014. http://investors.whirlpoolcorp.com/

releasedetail.cfm?ReleaseID=856250.(Note: Energy-

saving feature is offered via Nest’s Rush Hour

Rewards program)

5 “Ralph Lauren Introduces iPhone-connected ‘Polo

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com/2014/08/26/ralph-lauren-introduces-iphone-

connected-polo-tech-fitness-tracking-shirt/.

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Macy%E2%80%99s-Outlines-Developments-

Omnichannel-Strategy-Technology#.VBc5R0sR4jJ

11 “The Four Keys to Digital Trust,” Accenture,

September 9, 2014. http://www.accenture.com/

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four-keys-digital-trust.pdf

トレンド2: Outcome Economy

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http://www.bbc.com/news/technology-29551380

2 ExpressPark Demand Based Pricing results are

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How is it Working?” from the ITSA Smart Parking

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3 “The M2M Adoption Barometer 2014,”

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m2m/insight_news/2014-07-02-the-m2m-

adoptionbarometer-2014.

4 Ibid.

5 Climate Corporation website: http://www.climate.com/.

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November 18, 2013. http://www.teslamotors.com/

blog/mission-tesla.

7 Interview with Yashar Behzad, Director of Product

Development and Data Science at Proteus Digital

Health, July 30, 2014.

出典

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44

#techv i s i on2015

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crowdfunded-venture-capital-hardware/.

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confusion_out_of_home_automation_starting_

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トレンド3: Platform (R)evolution

1 “John Deere Launches MyJohnDeere Web Portal as

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2 “The Ups and Downs of Dynamic Pricing,”

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Business Disruption,” Constellation Research, February

10, 2014. https://www.constellationr.com/research/

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business-disruption

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5 “The Ups and Downs of Dynamic Pricing,”

Innovation@Work blog, October 31, 2014.

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dynamic-pricing#.VSdS_vmUdG0.

6 “Gartner Forecasts IT Spending Growth and Trends,”

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9 Apple website: https://developer.apple.com/

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10 Salesforce.com website: http://www.salesforce.

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2 Ibid.

3 “EMC Digital Universe Study,” with data and

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6 “EMC Digital Universe Study,” with data and

analysis by IDC, April 2014. http://www.emc.com.

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ACCENTURE TECHNOLOGY V IS ION 2015

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robot-la-times-2014-3.

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#techv i s i on2015

4 “Rise of Robot Reporters: When Software Writes

the News,” New Scientist, March 21, 2014.

http://www.newscientist.com/article/dn25273-rise-of-

robot-reporters-when-software-writes-the-news.html.

5 “Natural Language Processing (NLP) Market worth

$9,858.4 Million by 2018,” Natural Language

Processing (NLP) Market [IVR, OCR, Pattern

Recognition, Auto Coding, Text Analytics, Speech

Analytics, Machine Translation, Information

Extraction, Question Answer, Report Generation]—

Worldwide Market Forecast & Analysis (2013–2018),”

MarketsandMarkets, October 2013. http://www.

marketsandmarkets.com/PressReleases/natural-

language-processing-nlp.asp.

6 “More AI for developers as Expect Labs releases the

MindMeld API,” Gigaom, February 19, 2014.

https://gigaom.com/2014/02/19/more-ai-for-

developers-as-expect-labs-releases-the-mindmeld-api/.

7 “Accenture Life Safety Solution Named New

Product of the Year,” Accenture press release,

October 23, 2012. http://newsroom.accenture.com/

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newproduct-of-the-year.htm.

8 “New Technology from Seeing Machines Offered in

Caterpillar Mining Trucks to Combat Driver Fatigue,”

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machines-offered-caterpillar-mining.htm.

9 “Accenture and Philips Collaborate on Google Glass

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Technology Industry,” Accenture, October 3, 2013.

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google-glass-medical-equipment-technology-

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10 “Google Glass Helped to Enhance the Way that a

Surgeon Can Perform Various Procedures,” Mobile

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wearable-technology-assistscancer-surgery/8510991/.

11 “Navy’s Exoskeleton Could Make Workers 20 Times

More Productive,” Wired, September 10, 2014.

http://www.wired.com/2014/09/navys-exoskeleton-

could-make-workers-20-times-more-productive/.

12 “The Future of Computer Intelligence Is Everything

but Artificial,” Wired, June 11, 2014. http://www.

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intelligence-is-everything-but-artificial/.

13 “Meet Amazon’s Busiest Employee—the Kiva

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kiva-robot/.

14 “Natural Language Processing (NLP) Market worth

$9,858.4 Million by 2018,” Markets and Markets,

October 2013. http://www.marketsandmarkets.com/

PressReleases/natural-language-processing-nlp.asp.

15 “Baidu Builds Largest Computer Brain for Online

Queries,” Bloomberg, September 4, 2014. http://www.

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largest-computer-brain-for-online-queries.

16 “Gartner Reveals Top Predictions for IT

Organizations and Users for 2015 and Beyond,”

Gartner press release, October 7, 2014. http://www.

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17 Ibid.

18 Ibid.

19 Jonathan Huang, “Data Driven Student Feedback for

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Forum, April 16, 2014. https://forum.stanford.edu/events/

2014/2014jonathanhuanginfo.php.

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ACCENTURE TECHNOLOGY V IS ION 2015

20 “Robotic Assistants May Adapt to Humans in the

Factory,” MIT News, June 12, 2012. http://newsoffice.

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21 “Increasingly, Robots of All Sizes Are Human

Workmates,” MIT Technology Review, April 23, 2014.

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increasingly-robots-of-all-sizes-are-

humanworkmates/.

22 “Augmented Reality gets to Work,” MIT

Technology Review, February 24, 2014. http://www.

technologyreview.com/news/524626/augmented-

reality-gets-to-work/.

23 “Volkswagen XL1 Gets an Augmented Reality Service

App,” Mashable, October 5, 2013. http://mashable.

com/2013/10/05/volkswagen-augmented-reality/.

24 “Gartner Reveals Top Predictions for IT

Organizations and Users for 2015 and Beyond,”

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アクセンチュア・テクノロジー・ラボについて「Technology Vision」は、アクセンチュアの技術研究

開発組織である「アクセンチュア・テクノロジー・ラボが

発行する年次刊行物です。テクノロジー・ラボは、アク

センチュアと共に、20年以上にわたってお客様がテクノ

ロジー・イノベーションを業績に結びつける取り組みを

支援してきました。この研究開発チームは、新たに台頭

するテクノロジーを探求し、テクノロジーがどのように

未来を方向づけ、最先端のビジネス・ソリューショの波

を形成していくのか、そのビジョンを描き出します。

アクセンチュアについてアクセンチュアは、経営コンサルティング、テクノロ

ジー・サービス、アウトソーシング・サービスを提供する

グローバル企業です。約32万3,000人の社員を擁し、

世界120カ国以上のお客様にサービスを提供してい

ます。豊富な経験、あらゆる業界や業務に対応できる

能力、世界で最も成功を収めている企業に関する広範

囲に及ぶリサーチなどの強みを活かし、民間企業や

官公庁のお客様がより高いビジネス・パフォーマンスを

達成できるよう、その実現に向けてお客様とともに

取り組んでいます。2014年8月31日を期末とする

2014年会計年度の売上高は、300億USドルでした

(2001年7月19日NYSE上場、略号:ACN)。

アクセンチュアの詳細は

www.accenture.comを、

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15-1171

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