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第一節 はじめに - Kobe Universityuchida/lecture/seminar/...1 第一節 はじめに...

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目次 第一節 はじめに・・・1 第二節 仮説・・・3 第三節 好感度に関するマーケティング・・・4 第四節 分析方法 4-1 回帰分析についての事前知識・・・5 4-2 今回の分析の回帰式・・・5 4-3 今回の分析で利用したデータの引用元と調整した理由・・・7 4-3-1ROA・・・7 4-3-2 認知度・・・8 4-3-3 好感度・・・8 4-3-4 ダミーで用いた業種の分類方法・・・9 4-3-5 本論文で使用したダミー変数、単独項について・・・10 4-4 記述統計・・・10 4-5 クロス表・・・12 第五節 分析結果 5-1 結果・・・13 5-2 結果の解釈・・・15 5-2-1 機械・・・15 5-2-2 サービス業・・・15 5-2-3 統計的に有意でなかった変数・・・17 5-2-4 結果の解釈のまとめ・・・17 第六節 おわりに・・・19
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Page 1: 第一節 はじめに - Kobe Universityuchida/lecture/seminar/...1 第一節 はじめに 現代の企業で社会からの認知度を気にしない企業は少ないように見受けられる。認知と

目次

第一節 はじめに・・・1

第二節 仮説・・・3

第三節 好感度に関するマーケティング・・・4

第四節 分析方法

4-1 回帰分析についての事前知識・・・5

4-2 今回の分析の回帰式・・・5

4-3 今回の分析で利用したデータの引用元と調整した理由・・・7

4-3-1ROA・・・7

4-3-2 認知度・・・8

4-3-3 好感度・・・8

4-3-4 ダミーで用いた業種の分類方法・・・9

4-3-5 本論文で使用したダミー変数、単独項について・・・10

4-4 記述統計・・・10

4-5 クロス表・・・12

第五節 分析結果

5-1 結果・・・13

5-2 結果の解釈・・・15

5-2-1 機械・・・15

5-2-2 サービス業・・・15

5-2-3 統計的に有意でなかった変数・・・17

5-2-4 結果の解釈のまとめ・・・17

第六節 おわりに・・・19

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1

第一節 はじめに 現代の企業で社会からの認知度を気にしない企業は少ないように見受けられる。認知と

は、社名を見たときに、製品やサービスを想起することができることや社名を知っているこ

とであり、認知度とは、人々の中で社名を認知することができる多さの指標である。認知度

を上げるための手法としては広告が挙げられるが、2015 年1月から 12 月までの日本の総

広告費は、6 兆 1710 億円であり 4 年連続で前年の金額を上回った。1この金額は財務省によ

るデータによると日本の平成 27 年度一般会計予算の公共事業費とほぼ同額であり、この大

きさから企業がいかに認知度を気にかけているかが分かる。2

しかしながら、近年、現代のネット社会において、企業の社会的認知度が高いということ

が常にその企業に良い影響を与えるとは限らないケースが見受けられる。インターネット

の発達で、社会認知度の高い会社は良い評判も悪い評判も情報の受け手にとって分かりや

すく、大勢の人に広まりやすいので、必ずしも社会認知度は企業に良い影響を与えないので

はないだろうか。そして、インターネットで一気に広まる悪い評判から殺到する誹謗中傷は

「炎上」と呼ばれ、社会問題になっている。代表例としては、ワタミ株式会社が挙げられる。

ワタミ株式会社は、社員の過労自殺が原因で社会の批判を受けた。過労自殺問題の氷山の一

角でしかないにも関わらず、創業者がマスメディアでの露出が多かったことで、インターネ

ットで批判が大きくなり、ワタミの業績は急激に悪化した。この例から、認知度は企業にと

って必ずしも良い効果ばかりではないということが推察できる。

そこで、認知度がどのようなメカニズムで収益性に結びつくのか考えることで、認知度が

長期的な視点で有効に業績に働くのかをこの論文で調べることにした。石井・栗木・嶋口・

余田(2004)によると,企業のマーケティング目標には市場シェア、利益、ブランド認知の向

上が挙げられる。この論文では、マーケティング目標の一つである認知度が実際に収益性に

影響を与えるのか調べることによって、広告を打つことで認知度をあげる,という企業のマ

ーケティングの大前提の意義を分析する。

本論文では、好感度の有無によって認知度が収益力に与える影響に違いがあるかどうか

を、複数の項目からある項目への因果関係を推定する手法である重回帰分析で調べてみた。

今回の重回帰分析では、業種ごとに影響が異なる可能性を考慮に入れるため、業種ごとに好

感度の高い企業と低い企業とに分けた。また、それぞれのグループの認知度スコアや、収益

性を測る指標として ROA をデータとして利用した。ちなみに、好感度スコア、認知度スコ

アは日本経済新聞社が企画した日経企業イメージ調査での好感度のランキング上位の企業

と認知度のランキング上位の企業の数値を使用している。

分析を行う前に立てた仮説は、次の通りであった。上で触れたようにシグナリングマーケ

1 株式会社電通( 2016 年 2 月 23 日)「2015 年(平成 27 年)日本の広告費のデータ」

〔http://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2016022-0223.pdf〕(最終検索日 2016 年

7 月 26 日) 2 大矢(2015)による

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ティング上の理由から、好感度がある企業と好感度がない企業を比べると、好感度が高い企

業の方が、認知度は収益性により良い影響を及ぼすという予想である。その仮説が検証され

るために予想される重回帰分析の結果としては、どの業種でも、変数の係数は正の数であり、

同じ業種で比べたときに好感度ありの方が好感度なしの場合よりも係数が大きいという統

計的に有意な結果が出ることである。

本論文では、日経イメージ調査の認知度と好感度のデータを使用し、重回帰分析を行った。

その結果分かったことは、次のことである。業種が機械の企業で、好感度がある企業は、認

知度は収益性にほとんど影響を与えないと言ってもよい。また、サービス業では好感度の有

無に関わらず、認知度の上昇は収益性の上昇に影響を与えるということが分かった。したが

って、仮説と整合的な結果は出なかった。この結果から、好感度の有無によって認知度が収

益性に与える影響が変化するとは言えないことが分かった。よって、企業にとって、好感度

を上げるよりも認知度を上げることが収益性のためにはよいと示唆したい。

では、まず無形資産の与える影響に関する先行研究を紹介して、この論文との相違点を考

慮したい。本論文と最も関係の深い研究は,ブランドが企業業績に与える影響のプロセスに

ついて調べた福田(2014)である。福田(2014)は、ブランド効果は売上高の増大と費用の削

減をもたらすのではないかという仮説に関して分析を行っている。この論文では上場企業

が回答したアンケートの結果で指標化したブランド効果と、売上高に占める営業利益の割

合を意味する ROS、Return on Asset の略であり総資産に占める営業利益の割合を示す

ROA、資本に対する資金を回す効率性を表している CF/総資産という 3 つの指標で表され

る企業業績との関係を,共分散構造分析という方法によって分析している。ちなみにそこで

用いられている財務データは日本経済新聞社デジタルメディア局によるデータサービスで

ある日経NEEDSから引用したものであり、2010年と 2011 年の 2か年分を使用している。

分析の結果,ブランド効果と ROS,ROA,CF/総資産企業業績との間には正の相関関係が

あることがわかっているが、売上高成長率との統計的に有意な関連は見つからなかった。こ

の先行研究では、ROS、ROA、CF/総資産の3つを企業の収益力を示す指標として利用し、

ブランド効果が収益力に与える影響を調べている。

先行研究と本研究の共通点は、認知度やブランドという無形資産が実際の企業の業績に

どのような影響を及ぼすのか調べている点である。また、この先行研究と本論文との違いは、

二点ある。一点目は、本論文では、ブランドのなかの一つの要素だけでなく総合的に注目し

ている点で異なる。先行研究ではブランドと収益性の関連性を調べており、ブランドという

良いイメージに限定して考えているため、悪いイメージについては考察が不十分である。そ

こで、本論文では認知度という、良いイメージを持つ企業のみならず悪いイメージを持つ有

名な企業を含めている。二点目は、調査方法が異なる。先行研究では無形資産であるブラン

ドを企業に対してアンケートをすることでブランド効果を実感しているかを調べているが、

企業自身がブランド効果を実感しているかどうかは一種の主観的な要素が含まれてしまう。

これに対して本研究では、顧客などの一般に対して行われたアンケートを用いている。よっ

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て、無形資産の効果をより正確に表したものといえるだろう。

本論文は以下のような6構成になっている。第一節では、本論文の概要について述べ、本

論文との類似点と相違点を挙げつつ先行研究を紹介する。第二節では、本論文における仮説

とその理由について述べる。次の第三節では、回帰分析前の前提として、好感度の向上のた

めの取り組みについて述べ、業種ごとに分類して回帰分析をすることの妥当性を主張した

い。第四節では、分析方法の説明として、今回の検証を行う上での分析方法である回帰分析

の定義や、回帰分析を行う上で必要な知識であるダミー変数についての説明を行う。また、

分析で使用するデータや、そのデータの使い方を説明する。第五章では、回帰分析の結果を

述べるとともに、その結果をどう解釈するか考える。おわりに、第六節で結果を踏まえこの

研究で分かったことや、研究の改善点を指摘する。

第二節 仮説 今回の研究で検証したいことは、認知度が収益に影響を及ぼすメカニズムである。本論文

において仮説を「好感度がある企業と好感度がない企業を比べると、好感度が高い企業の方

が、認知度は収益性により良い影響を及ぼす。」と設定した。

なぜこのような仮説を立てたのかを説明する。そもそも考えられるメカニズムとしては,

企業認知度はその企業の収益性に正の影響を及ぼすという予想であった。その理由は、消費

者は知らない企業の製品・サービスよりも、すでに知っている企業の製品・サービスを好ん

で消費する傾向があるのではないかと考えるからだ。Goldstein(2007)によると、「知ってい

るものと知らないもののどちらかを選ぶ時、たとえ問題があっても、知っているほうを選ぶ」

と述べている。また、一般的に認知度が高いことによる経営上の利点として、シグナリング

としての役割が挙げられる。そもそも、モノやサービスを売買する上で、商品の正しい情報

が伝達できているかは重要であり、企業の認知度が高いと顧客はその商品の品質を担保さ

れたものと感じることができる。つまり、情報の非対称性がある市場において認知度は品質

の保証として働くのである。その他の利点は、広告費の軽減である。すでに認知度の高い企

業は、新しいモノやサービスを開始するときに、企業の認知度が低い場合に比べてその商品

の宣伝にかける広告費が高くならずに済む。ロート製薬、日清紡ホールディングス、イチネ

ンホールディングスなど、TV コマーシャルで社名を連呼する宣伝をよく見かけるが、これ

らの例を見ると、このようなコマーシャルがある理由は TV コマーシャルという一般に対し

て広く宣伝できるメディアを使って社名を知ってもらうことが収益力につながるという実

感を企業がしている可能性があると推察できる。

このような認知度が収益性に正の影響を与えるという予測を確かめるために、後述する

回帰分析で事前分析を行った。すると、回帰分析の結果では認知度は収益性に影響を及ぼす

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とは言えないことが分かった。4

したがって、認知度だけではなく、新たに好感度という要素を考慮に入れることで、認知

度が収益性に影響を与えるといえるのではないかと考えた。つまり、好感度が高い企業は好

感度が低い企業と比べると、認知度の高さが収益力に与える影響が大きいという予想をし

た。その理由は、好感度が高い企業は、顧客が購入時に製品・サービスを他社と比べたとき

に、認知している企業への安心感をより強く持つことになり、シグナリングがより強く働く

結果、消費者の購買意欲が高くなり、商品・サービスの差別化がしやすいと考えたからであ

る。一方、好感度が低いブラック企業は、先述したワタミのように、ブラック企業のレッテ

ルを貼られると消費者感情として社会からの制裁が強い。その分認知度が収益性に良い影

響を与えにくい状態と考えられる。

以上の理由から、本研究では仮説として、「好感度がある企業と好感度がない企業を比べ

ると、好感度が高い企業の方が、認知度は収益性により良い影響を及ぼす。」という仮説を

設定し,この仮説が支持されるかどうかを統計的に分析する。

第三節 好感度に関するマーケティング 好感度とは抽象的なものである。ここでは、好感度を上がったケースを紹介することで、

業種によって好感度の効果が異なる可能性が高いことを示唆する。それによって、後述する

業種ダミーを分析で使うことが妥当だと主張したい。

大幅に好感度が上がったケースを調べたクロス・マーケティングによる 2012 年5月の調

査では、好感度が大幅にアップした企業の業種は、「電気機器」(17%)、「ファッション・繊

維」(16%)、「飲料」(9%)、「自動車」(8%)、「携帯キャリア」(6%)となっており、業種

ごとに大幅な上昇があるかどうかは業種ごとに差があることが分かった。5また、好感度が

上がったケースを業種ごとに見ると、電気機器の会社では、購入時の接客やアフターサービ

スで好感度が上がるケースが目立っており、一方、飲料メーカでは、本業以外の取り組みが

好感度上昇のケースとして目立っている。つまり、業種ごとに好感度が上がったケースの特

徴も異なるのである。また、有名企業で経営者が広く世間に知られている場合は、経営者の

言動でも左右されるだろう。

では、具体的に好感度が大幅に上昇した経験を持つ企業とそのケースを提示していきた

い。好感度が大幅に上昇した経験を顧客が持つ企業は、その調査によると、ファーストリテ

4 Microsoft 社の Excel2013 にて、本文で後述するサンプルを使い、収益性を ROA、認知

度を認知度スコアとして数値化したところ ROA=認知度スコア*0.000306-0.01658 と

いう回帰式が推定されたものの、修正済み R2は 0.0124、回帰係数の 0.000306 の P 値は

0.105、-0.01658 の P 値は 0.676 であり、有意水準 10%でどの係数も棄却された。 5 データは、株式会社クロス・マーケティング(2012)「企業ブランド好感度アップの要因

分析」による。〔https://www.cross-m.co.jp/report/life/brand20120612/〕

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イリングのユニクロが1位であった。2位はサントリー、ソフトバンク、パナソニックと続

いた。ユニクロ(ファーストリテイリング)やソフトバンクの好感度上昇の理由として、「震

災後の対応」が挙げられている。ユニクロは震災時に仮設店を開き、被災者の生活を支えた。

6また、ソフトバンクでは社長の孫氏が東日本大震災復興支援財団を主導しており、会社と

しても利用者が月々の利用料金と合わせて寄付ができるオプションサービスを設けたりし

ていた。78そして、好感度が上がった結果、ロイヤリティの向上や、利用者が周囲に良い口

コミをしてくれるという効果が観測されたという。

このように、好感度は企業の業種によって、好感度の上がりやすさも上がりやすい事例も

傾向が異なることがわかる。

また、認知度についても業種ごとに認知度の上がりやすさや上がりやすい事例の傾向が

異なるか調べてみた。しかしそのような先行研究やリサーチは見つからなかった。

第四節 分析方法 4-1 回帰分析についての事前知識 この研究における分析には回帰分析を用いる。中西(2006)の説明によると、回帰分析と

は、数理モデルy=f(x)のもとでxによってyが説明できるという因果関係が背後にあると

仮定しその関係を実際に解いてみることである。y=f(x)が y=ax+b のとき、式上の a を回

帰係数と呼び、回帰係数が大きければ大きいほど、説明変数が被説明変数に与える影響が大

きいと考えることができる。また、特に説明変数が2つ以上のものを重回帰分析という。

また、回帰分析において、t値、P 値で仮説の検定をすることができる。t値とは、変数

の係数が実際は0で被説明変数との因果関係がないにも関わらず、推定された係数の値が

算出されるということが起こらない度合いであり、P 値は、変数の係数が実際は0で被説明

変数との因果関係がないにも関わらず、推定された係数の値が算出される確率を意味する。

つまり、t値は大きければ大きいほど、P 値は小さければ小さいほど、係数の信頼性が増す

という意味であり、t値と P 値は統計的有意性を示している。本研究では、P 値を使って

統計的有意性をみてみたい。

今回の分析では Stata という Stata 社のソフトを利用して重回帰分析を行い、複数の説

明変数がどのように被説明変数に影響を及ぼしているのか調べ、仮説の検定を行う。

4-2 今回の分析の回帰式

6「気仙沼と釜石に仮設店 ユニクロ、生活再建を支援」日本経済新聞 2012 年 3 月 12日第 6 面 7 「孫氏主導、復興財団が発足 私財 40 億円で子供ら支援」日本経済新聞 2011 年 7 月

26 日 第 3 面 8 「携帯の被災地寄付 10 万件突破」日本経済新聞 2012 年 2 月 29 日 第 5 面

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仮説を検証するために、被説明変数を ROA とし、説明変数には認知度を数値化した認知

度スコアを用いる。それぞれの変数については後述する。もともとは、

ROA=好感度あり認知度スコア*a+好感度なし認知度スコア*b+c

という回帰式を想定したが、ROA の平均や好感度の上がりやすさは業種ごとに異なること

を考慮した結果、ダミー変数として好感度の有無によって分類した業種ダミーを用いる。

つまり、回帰式は以下のようなダミー変数を用いた重回帰式になった。

ROA=(好感度あり製造業ダミー)*(認知度スコア)*a1

+(好感度あり化学ダミー)*(認知度スコア)*a2

+(好感度あり機械ダミー)*(認知度スコア)*a3

+(好感度あり小売業ダミー)*(認知度スコア)*a4

+(好感度ありサービス業ダミー)*(認知度スコア)*a5

+(好感度ありインフラダミー)*(認知度スコア)*a6

+(好感度ありその他ダミー)*(認知度スコア)*a7

+(好感度なし製造業ダミー)*(認知度スコア)*b1

+(好感度なし化学ダミー)*(認知度スコア)*b2

+(好感度なし機械ダミー)*(認知度スコア)*b3

+(好感度なし小売業ダミー)*(認知度スコア)*b4

+(好感度なしサービス業ダミー)*(認知度スコア)*b5

+(好感度なしインフラダミー)*(認知度スコア)*b6

+(好感度なしその他ダミー)*(認知度スコア)*b7

+c1*(製造業ダミー)

+c2*(化学ダミー)

+c3*(機械ダミー)

+c4*(小売業ダミー)

+c5*(サービス業ダミー)

+c6*(インフラ業ダミー)

+c7*(その他ダミー)

今回の重回帰分析において、a、b、c を推定する。回帰式を推定した後、どのような結果

が出れば、仮説が検証されるのか説明する。今回の仮説は、「全業種において、認知度は収

益力に正の影響を与える。そして、好感度がある企業と好感度がない企業を比べると、好感

度の高い企業の方が、認知度が収益性により良い影響を及ぼす」という予想であった。この

仮説が検証されるためには、統計的に有意な結果で、変数の係数が正の値を取っていること

が必要である。また、同じ業種の好感度がある場合の係数と、好感度のない場合の係数を比

べたときに、好感度のある場合の方が、係数が大きいことも必要である。この式の左辺、右

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辺についてこれから説明していく。

4-3 今回の分析で利用したデータの引用元と使い方の理由 続いて、本論文で使用したデータについて説明していきたい。サンプルは、個人からの認

知度ランキングの上位 200 に入り、後述する ROA がすべて判明するものを対象とした。そ

の結果、134 個のサンプルが集まった。

4-3-1 ROA まず、収益力の指標について考える。今回の調査では、収益力を見る指標として ROA を

利用している。ROA は総資産の規模にしたがった利益を示しているため、この指標を利用

することにした。

本論文では、ROA を導出するための利益項目に営業利益を採用する。ちなみに営業利益

とは、売上高から売上原価、販売費、一般管理費を差し引いて残った利益である。ROA の

利益部分には、経常利益を当てはめる場合も多いが、ここでは経常利益は採用しない。その

理由は以下の通りである。そもそも経常利益とは、営業利益から財務活動など本業以外の損

益を加減して求められ、財務活動に含まれる例としては、負債の利息などが挙げられる。当

然負債が大きいと支払利息の額が大きくなるが、負債が多いと減税効果があるため、わざと

負債を抱える企業もある。このように、財務活動の損益はその企業の財務戦略に関わる。つ

まり財務戦略の異なる企業を比べる場合に経常利益は不適当なのである。したがって収益

性今回のレポートでは、認知度の本業の収益力にどう関連するかを調べるため、経常利益は

用いず、営業利益を用いる。営業利益と総資産は日経 NEEDS に収録されている数値を使

用している。9

次に、財務数値の期間についてどのように選んだのか説明する。財務数値は認知度と好感

度の調査が行われた 2014 年 8 月 9 日から 2014 年 9 月 30 日の期間を含む会計年度の翌年

度のものを利用している。これは、認知度が観測された時点より前の期間の数値を含まない

ようにするためである。これによって、原因と結果が逆にならないようにしている。なぜな

ら、回帰分析では、説明変数と被説明変数が同じ時期のデータである場合には、説明変数と

被説明変数に何かの関連があることはわかるが、必ずしも説明変数が原因で被説明変数が

結果であるかどうかはわからないからである。つまり、被説明変数が原因で、説明変数が結

9 日経 NEEDS に記載されていない場合は、企業の公式ホームページにアップロードさ

れている有価証券報告書や、投資家への説明として自発的に公式ホームページで発表され

ている IR 資料の数値を引用している。また、財務数値は連結決算ではなく単独決算を利用

している。その理由は、認知度ランキングや好感度ランキングの中には例えば森永乳業と森

永製菓のように親会社が同一の企業があったため、そのようなケースを区別するためであ

る。

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果である可能性があり、また、何か別の変数が原因で、回帰分析上の被説明変数も説明変数

も結果である可能性もあるのだ。しかし、結果である ROA の観測時期を一期分、翌年にす

ることで、説明変数である認知度が原因で被説明変数である ROA が結果であると推定する

ことができるのだ。

4-3-2 認知度 認知度は日経企業イメージ調査で行われた認知度調査でトップ 200 に入った企業の認知

度スコアを利用している。まず,データの引用元である日経企業イメージ調査について、調

査がどのように行われたのか説明する。

日経企業イメージ調査は、企業が外部から持たれているイメージを客観的に測定するた

めに日本経済新聞社が企画し、日経リサーチが実施している調査である。1988 年から現在

の形の調査が行われているが、今回の研究では、2014 年に調査されたものを利用している。

なぜ 2014 年に調査されたものを使用しているのかというと、4-3-1 の ROA の節で先述し

たように、回帰分析では、説明変数と被説明変数が同じ時期のデータである場合には、説明

変数と被説明変数に何かの関連があることはわかるが、必ずしも説明変数が原因で被説明

変数が結果であるかどうかはわからない。よって、結果である ROA の観測時期を一期分、

翌年にすることで、説明変数である認知度が原因で被説明変数である ROA が結果であると

推定するためである。

今回、日経企業イメージ調査を選んだ理由は、調査の参加者の数が多く、認知度が段階的

に数値で表されており、正確性が高いと考えたからである。今回使用する調査は、2014 年

8 月 9 日から 2014 年 9 月 30 日の期間に行われた。

この調査では、店頭証券市場に上場している会社および非上場会社のうち各業種の大手

企業を中心に 576 社について調べている。首都圏 40km 圏内在住の 18 歳から 69 歳までの

一般個人 3671 人が調査に参加し、576 社を業種に従って 18 グループに分け、1人の回答

者は 32 社の企業について答えている。アンケート回答者は首都圏に集中しているため、首

都圏にはない地方の企業の認知度が低くなっている可能性はある。

企業認知度は「扱っている製品・サービスの内容をよく知っている」「扱っている製品・

サービスの内容を少しは知っている」「社名だけは知っている」「全く知らない」の 4 段階で

選択肢の中から一つを対象者に選んでもらい、それぞれ 3 点、2 点、1 点、0 点を得点とし

て与え、その平均を 100 倍した数値を認知度スコアとしている。

4-3-3 好感度 好感度も日経企業イメージ調査における好感度スコアを使用している。そのため、調査の

被験者も調査期間も同一のものを用いている。好感度スコアの計算方法は、「好き」「まあ好

き」「あまり好きでない」「わからない」の 4 段階で選択肢の中から一つを対象者に選ばせ、

「好き」「まあ好き」と答えた人の割合を百分率で好感度スコアとしている。認知度の調査

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と同じ調査参加者の好感度を知るために、認知度と同じく日経企業イメージ調査の好感度

ランキングに記載されていた好感度スコアを利用している。

本論文では一般個人対象の企業好感度ランキングの 200 位までに入っている企業を「好

感度あり」の企業とみなし、200 位までに入っていない企業を「好感度なし」の企業とみな

す。なぜ 200 位までを好感度ありとみなしたかというと、日経イメージ調査の対象となっ

た企業 576 社のうち上位 200 位までに入れば、対象の全体からみると上位 50%以上であり

好感度が高いと判定してよいと考えたからである。好感度の有無を差別化したダミー変数

によって、好感度が高いかどうかによって認知度が収益性に与える効果がどう変化するか

をみる。

また、今回の分析には一部、ダミー変数を用いる。照井(2015)によるダミー変数の説明を引

用すると、「回帰式の説明変数には、数量化された変数ばかりではなく、性質を表す変数を

入れることも可能である。これは、ダミー変数と呼ばれる。調査対象が女なら1、男なら0

といったように、人工的な整数値を与える例が上げられる。」としている。今回の分析では、

業種や好感度の有無という数量的に測定できない属性を分析するために使用する。

4-3-4 ダミーで用いた業種の分類方法 では、この業種のまとめ方について述べていきたい。今回の調査では、有価証券報告書な

どが収録されている企業情報データベースである日経会社プロフィルで示されている業種

を参考にしつつ多少調整してある。日経会社プロフィルでは今回の調査のサンプルは以下

の 22 個の業種に分類されている。

食品、繊維、化学、医薬品、石油、自動車、電気機器、精密機器、通信、小売業・

飲食店、サービス業、ゴム、陸運、空運、鉄道・バス、倉庫、非鉄金属製品、機械、

商社、その他製造業、建設、ガス

この調査では、以下の表 1 のように日経プロフィル上の 22 個の業種を 7 個にまとめてい

る。理由は、業種によって企業数が少ないものがあるためである。

表 1 本論文での業種分類と日経プロフィルの分類との対応

日経プロフィルで表記される業種

今回の調査での業種

その他製造、非鉄金属製品、ゴム、商社、食品

製造業

化学、繊維、医薬品

化学

自動車、精密機械、機械、電気機器

機械

小売業・飲食店

小売業

サービス業

サービス業

通信、ガス、倉庫、鉄道・バス、空運

インフラ

石油、陸運、建設

その他

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業種をまとめるに当たっては、ビジネスモデルがなるべく似通った業種をまとめるよう

にしている。では、分類上の注意事項について述べる。日経プロフィルの業種のひとつであ

る商社を製造業として分類している理由は、商社となっている企業がサンプルの中ではユ

ニ・チャーム1社しかなく、オムツなどの日常の必需品を製造販売しているユニ・チャーム

の仕事内容を考えたときに製造業に近いと考えたからである。また、倉庫と挙げられている

企業は首都高速道路、中日本高速道路の二つであり、これらの企業の業務は道路の整備や建

設プロジェクトであるため、業種をインフラとしている。空運の業種とされていた企業は、

全日本空輸と日本航空の2社である。これらの企業は、機体の整備など固定費に準じるコス

トが多い。この性質が、同じく固定費が多いインフラ業にビジネスモデルが似ていると考え、

今回の研究では空運をインフラ業として分類した。一方で、陸運として挙げられる企業は空

運と同じく運送業をしているものの、空運ほど固定費はかからず、人件費がかさむ業種であ

る。そのため、業種インフラには入れず、業種その他に入れている。そして、業種化学と業

種製造を統合せず分けた理由は、業種化学に分類される企業は費用に占める研究開発費が

大きく、他の製造業とはコストのかけ方が異なるからである。

4-3-5 本研究で使用したダミー変数、単独項について

説明変数は、認知度スコアに、(好感度あり製造業ダミー)、(好感度あり化学ダミー)、

(好感度あり機械ダミー)、(好感度あり小売業ダミー)、(好感度ありサービス業ダミ

ー)、(好感度ありインフラダミー)、(好感度ありその他ダミー)、(好感度なし製造業ダミ

ー)、(好感度なし化学ダミー)、(好感度なし機械ダミー)、(好感度なし小売業ダミー)、

(好感度なしサービス業ダミー)、(好感度なしインフラダミー)、(好感度なしその他ダミ

ー)という 14 個のダミーを掛け合わせている。ダミー変数の一つが1のとき、他のダミ

ー変数は0をとる。

また本研究では、業種ごとに単独項を使用している。つまり回帰分析における定数項を

業種ごとに設定する。本研究で単独項を業種ごとにそれぞれ設定した理由は、業種ごとに

より精密な分析をしたかったためである。したがって、例えば、好感度ありの製造業の推

測される ROA は、c1を製造業単独項とすると回帰式は以下の通りになる。

ROA=(認知度スコア)*a1+c1

また、好感度なしの製造業の推測される ROA は、

ROA=(認知度スコア)*b1+c1

となる。

4-4 記述統計 サンプルの特徴をおおまかに見通すために、調査の記述統計を示す。

表2 記述統計

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標本数 平均値 標準偏差 最小値 最大値 中央値

ROA 134 0.0478 0.0515 -0.127 0.230 0.0471

製造業 ROA 34 0.0459 0.0501 -0.0801 0.165 0.0334

化学 ROA 16 0.0542 0.0396 0.00863 0.171 0.0475

機械 ROA 31 0.0282 0.0537 -0.127 0.115 0.0370

小売業 ROA 14 0.0721 0.0475 0.0146 0.179 0.0621

サ ー ビ ス 業

ROA

12 0.0758 0.0588 0.00216 0.230 0.0674

インフラ ROA 16 0.0604 0.0467 -0.00131 0.148 0.0554

その他 ROA 11 0.0197 0.0428 -0.0651 0.0771 0.0281

認知度 134 210.309 23.706 165.7 252.9 207.35

製造業認知度 34 220.985 22.334 174.5 249 229.4

化学認知度 16 195.016 17.348 173 232.8 196.1

機械認知度 31 204.371 19.522 169.1 239.2 201

小売業認知度 14 227.214 24.951 177 252.9 238.95

サービス業認

知度

12 204.525 25.020 165.7 252.9 198.05

インフラ認知

16 216.044 20.852 182.8 244.1 219.35

その他認知度 11 192.746 20.973 177.5 245.1 187.3

好感度あり 121 67.674 12.682 44.1 89.7 66.2

製造業好感度 33 74.027 12.175 45.1 87.7 78.4

化学好感度 16 61.488 9.133 50.5 80.9 61.25

機械好感度 29 65.497 12.106 44.1 88.2 63.2

小売業好感度 12 77.167 11.229 51 89.7 80.65

サービス業好

感度

9 62.7 12.266 45.1 80.4 65.2

インフラ業好

感度

14 64.986 11.116 45.6 81.4 64.95

その他好感度 8 57.8 10.265 46.1 77.5 56.4

上の表2には、サンプルとして利用したデータである ROA、認知度、好感度ありの企業

の好感度スコアを業種ごとに分類し、それぞれの変数名、変数の標本数、平均値、標準偏差、

最小値、最大値を記載した。

認知度と ROA が判明する企業 134 社は製造業が 34 社、化学が 16 社、機械が 31 社、小

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売業が 14 社、サービス業が 12 社、インフラが 16 社、その他が 11 社であった。その 134

社の中で、好感度トップ 200 に入っていた企業は 121 社であった。好感度トップ 200 に入

っている企業を好感度がある企業とすると、好感度がある製造業は 33 社、好感度がある化

学が 16 社、好感度がある機械が 31 社、好感度がある小売業が 14 社、好感度があるサービ

ス業が 12 社、好感度があるインフラが 16 社、好感度があるその他が 11 社であった。よっ

て、サンプル 134 社の中で好感度なしとされた企業は 13 社であり、好感度なしとされた企

業の数は多くはない。

ただし、この表2で気になる点が一点ある。機械 ROA において、平均値が中央値に比べ

著しく小さい点である。これは、極端に ROA が低い企業があり平均値を押し下げている可

能性がある。つまり、機械業には注意して分析結果をみる必要がある。

4-5 クロス表

次に、クロス表を作成することで、大まかな傾向を把握する。本論文の仮説では、認知度

が高いほど収益力が高いという前提があるが、実際にその傾向があるのかどうかクロス表

で確かめるためである。

クロス表とは列を利用したマトリックス状の表のことを言う。クロス表の計算結果は表

3 のとおりである。このクロス表では、サンプルの ROA 平均より大きいものを「ROA 高

い」、低いものを「ROA 低い」としている。また、サンプル内の認知度の平均より高いも

のを「認知度高い」、平均より低いものを「認知度低い」としている。認知度が高く ROA

が高い企業や、認知度が低く ROA が低い企業が多ければ、仮説の内容をおおまかに支持

することができる。

表3 クロス表

認知度高い 認知度低い 合計

ROA 高い 31 33 64

ROA 低い 32 38 70

合計 63 71 134

この表によると、認知度が高い企業の中では、ROA が高い企業の数より ROA が低い企

業の数の方がわずかに上回っているものの、認知度が低い企業の中では、ROA が高い企業

の数より ROA が低い企業の数の方が大きく上回っていることが見て取れる。したがって

このクロス表では、もちろんおおまかではあるものの、仮説を大きく否定する内容ではな

いことが分かった。ただし、このクロス表は業種を考慮に入れず集計しているため、業種

による ROA の平均値の違いを無視してしまっている。このため、より詳しい分析におい

ては業種の違いを考慮する必要がある。では、次に好感度の有無や業種ごとに詳しく調べ

るために回帰分析を実施する。

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第五節 分析結果 5-1 結果 回帰式を推定したところ、以下の結果が出た。

表4 回帰分析の結果

変数 係数 標準誤差 P 値

(好感度あり製造業ダミー)*(認知度スコア) 0.000224 0.000403 0.579

(好感度あり化学ダミー)*(認知度スコア) -0.000339 0.000716 0.637

(好感度あり機械ダミー)*(認知度スコア)

**

-0.000987 0.000480 0.042

(好感度あり小売業ダミー)*(認知度スコア) 0.000122 0.000801 0.879

(好感度ありサービス業ダミー)*(認知度ス

コア)***

0.00184 0.000645 0.005

(好感度ありインフラダミー)*(認知度スコ

ア)

0.000315 0.000681 0.645

(好感度ありその他ダミー)*(認知度スコア) 0.000843 0.000896 0.349

(好感度なし製造業ダミー)*(認知度スコア) 0.000116 0.000584 0.843

(好感度なし機械ダミー)*(認知度スコア) -0.000847 0.000587 0.152

(好感度なし小売業ダミー)*(認知度スコア) -0.0000835 0.00104 0.936

(好感度なしサービス業ダミー)*(認知度ス

コア)***

0.00206 0.000750 0.007

(好感度なしインフラダミー)*(認知度スコ

ア)

0.0000562 0.000811 0.945

(好感度なしその他ダミー)*(認知度スコア) 0.00106 0.00102 0.298

(製造業単独項) 0.150 0.200 0.454

(化学単独項) 0.274 0.227 0.23

(機械単独項)* 0.382 0.204 0.064

(小売業単独項) 0.203 0.259 0.435

(サービス業単独項) -0.157 0.225 0.486

(インフラ単独項) 0.152 0.233 0.516

(その他単独項) -0.153 0.179 0.392

(注:説明変数の項目の後ろにある「**」は有意水準5%、「***」は有意水準 10%、「*」

は有意水準 1%を意味している。)

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サンプル数は 134 個であり、修正済み R2は 0.131 であった。中西(2006)によると修正済み

R2 とは、数理モデルによってどの程度サンプルをうまく説明できるか、つまりあてはまり

のよさを表している。修正済み R2は0から1までの値を取るが、あてはまりのよさが良け

れば良いほど1に近づき、あてはまりの精度が低ければ低いほど0に近づく。

この表における単独項に関する結果の見方を説明する。7つの業種別の単独項において、

業種その他の単独項が定数項になっている。つまり、その他の単独項の基準になっていると

いうことだ。したがって、業種その他以外の単独項は、表の係数に書かれている値に業種そ

の他の係数の値を足したものが単独項となる。

ちなみに、好感度なしの業種化学の企業はサンプル内になかったため、回帰係数は計算さ

れなかった。表の結果から、回帰式を推定すると、以下のようになる。

ROA=(好感度あり製造業ダミー)*(認知度スコア)*0.000224

+(好感度あり化学ダミー)*(認知度スコア)*-0.000339

+(好感度あり機械ダミー)*(認知度スコア)*-0.000987

+(好感度あり小売業ダミー)*(認知度スコア)*0.000121

+(好感度ありサービス業ダミー)*(認知度スコア)*0.00184

+(好感度ありインフラダミー)*(認知度スコア)*0.000315

+(好感度ありその他ダミー)*(認知度スコア)*0.000843

+(好感度なし製造業ダミー)*(認知度スコア)*0.000116

+(好感度なし機械ダミー)*(認知度スコア)*-0.000847

+(好感度なし小売業ダミー)*(認知度スコア)*-0.0000835

+(好感度なしサービス業ダミー)*(認知度スコア)*0.00206

+(好感度なしインフラダミー)*(認知度スコア)*0.0000562

+(好感度なしその他ダミー)*(認知度スコア)*0.00106

+(製造業ダミー)*-0.00308

+(化学ダミー) *0.120

+(機械ダミー)*0.228

+(小売業ダミー)*0.0498

+(サービス業ダミー)*-0.311

+(インフラ業ダミー)*-0.00146

+(その他ダミー)*-0.153

では、次に統計的有意性を見てみる。有意水準5%では、P 値が 0.05 より小さいときに、

帰無仮説が棄却され統計的に有意とされる。言い換えると、説明変数が被説明変数に影響を

及ぼしているといえる。表を見てみると、P 値が 0.05 よりも小さい項目は、

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(好感度あり機械ダミー)*(認知度スコア)

(好感度ありサービス業ダミー)*(認知度スコア)

(好感度なしサービス業ダミー)*(認知度スコア)

の3つであった。

次に、有意水準 10%で推定した回帰分析を確認する。

有意水準 10%では、P 値が 0.1 より小さいときに、帰無仮説が棄却され統計的に有意と

される。言い換えると、P 値が 0.1 より小さいときに説明変数が被説明変数に影響を及ぼし

ているといえる。表を見ると、P 値が 0.1 より小さい項目は

(好感度あり機械ダミー)*(認知度スコア)

(好感度ありサービス業ダミー)*(認知度スコア)

(好感度なしサービス業ダミー)*(認知度スコア)

(機械単独項)

の4つであった。

5-2 結果の解釈 ここでは、回帰分析結果の解釈について述べる。まず、統計的に有意水準 10%で有意に

なった変数から考察し、次に、有意にならなかった変数について考えていく。

5-2-1 機械 好感度がある業種が機械である企業は、認知度スコアが1上がると、ROA は 0.0009868

下がることがわかる。(表4参照)この結果は、認知度スコアが ROA に正の影響を与える

という仮説に反するものである。では、なぜこのような結果が出たのだろうか。

係数が負になった理由として考えられるのは、分析に用いた ROA がその期間たまたま負

の値になってしまっているため、ということだ。ROA は認知度と好感度の調査が行われた

2014 年 8 月 9 日から 2014 年 9 月 30 日の期間を含む会計年度の翌年度のものを利用して

いる。この期間は、好感度ありの業種機械の企業 29 社の中、東芝、シャープ、ホンダ、富

士通、リコー、ニコン、パイオニアの 7 社も営業利益がマイナスになっている。これら 7 社

の影響こそが、係数が負になった理由と考えられる。機械産業全体的に厳しい会計年度だっ

た可能性がある。ちなみに、もちろん恒常的に係数が負であることは考えられるが、もしそ

うであるならば、企業の営業利益が毎年赤字であるという意味になり、現実的ではない。よ

って係数が恒常的に負であることは妥当ではないと考えた。

また、係数は負の数を取っているものの、かなり係数が小さいことが分かる。つまり、係

数はマイナスではあるものの、認知度スコアの変化はあまり ROA の変化に影響を与えない

と解釈することが可能である。

5-2-2 サービス業

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次に、(好感度ありサービス業ダミー)*(認知度スコア)と(好感度なしサービス業ダ

ミー)*(認知度スコア)について解釈を行いたい。これらの分析の結果である係数が意味

するのは、好感度があるサービス業は認知度スコアが1上がると、ROA は 0.00184 上がり、

好感度がないサービス業は認知度スコアが1上がると、ROA は 0.00206 上がることという

ことだ。これは仮説を支持する。

では、この結果の解釈を行う。サービス業において認知度が収益性に正の影響を及ぼす、

つまり、認知度が高いほど収益性が高いという理由には、認知度によるブランディング効果

が考えられる。認知度がサービス業においてブランディング効果をもたらす理由として挙

げられる理由をここで示唆したい。特にサービス業は他の産業と比べて商品が目に見えな

い分、購入前に品質をうかがい知ることが難しい。よって認知度が高いほうが安心と顧客は

感じ、よく知られていることそのものがブランドになっているという可能性がある。

ここで変数(好感度なしサービス業ダミー)*(認知度スコア)と(好感度ありサービス

業ダミー)*(認知度スコア)の係数の大小関係が気になる。どちらの項目も、統計的有意

水準は1%であり、変数が 0 ではないという信頼性は高い。しかしながら、(好感度ありサ

ービス業ダミー)*(認知度スコア)の係数 0.0018377<(好感度なしサービス業ダミー)

*(認知度スコア)の係数 0.002064 となっているところに疑問が残る。この係数の大小関

係をそのまま解釈すると、好感度がある企業よりも好感度がない企業の認知度の方が収益

性に大きな良い影響を及ぼすという意味になる。しかしながら、サービス業において認知度

が同じ企業同士で比べると好感度がない企業ほど収益性が高いということには違和感が残

る。そこで、追加調査として(好感度ありサービス業*認知度の係数)=(好感度なしサー

ビス業*認知度の係数)という仮説を立てて、検定をすることにした。

検定の結果は

Prob > F = 0.2409

であった。この検定の結果の意味することは、(好感度ありサービス業*認知度の係数)

=(好感度なしサービス業*認知度の係数)であるのにも関わらず、そうではない数値が出

る確率が 24.09%以上であるということだ。よって、「好感度ありサービス業ダミー)*(認

知度スコア)の係数<(好感度なしサービス業ダミー)*(認知度スコア)の係数となると

ことは誤差の範囲内であり、そもそもの係数は等しいのではないかと推論することができ

る。したがって、サービス業に関しては、認知度が与える効果は好感度の有無とは関係ない

が、認知度そのものは収益に良い影響を及ぼしているということが分かった。

では、次に好感度があるかどうかによって認知度は収益性に及ぼす影響の大きさを左右

させない理由について示唆したい。その理由は2つ考えられる。

第一に、好感度が高いサービス業は、短期的には利益になりづらい顧客サービスを行って

いるのではないのだろうか。サービス業はサービスという形にはならないものを扱ってい

るため、好感度を上げるために企業が行っていることの一つといえば、客一人当たり対応す

る従業員の数を増やし、施設の質を高めて、顧客対応を丁寧に行うことが挙げられる。好感

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度が高い企業は人件費や設備に投資をかける必要があり、短期的には利益になりづらい顧

客サービスを行っているのではないのだろうか。

また、第二の理由として、サービス業では規模の経済が働きにくいことが考えられる。サ

ービス業では従業員、つまりモノではなくヒトが商品の中身である。好感度を上げるための

ひとつの方法には、サービス業の場合、スタッフのサービスが丁寧であることが挙げられる。

サービスを顧客一人一人に丁寧に行うと、他の業種に比べて規模の経済が働きにくいこと

が考えられる。

5-2-3 統計的に有意でなかった変数 続いて統計的に有意ではなかった変数について考察する。統計的に有意ではなかった変

数は、サービス業と機械業以外である。なぜこれらの変数は有意な影響を与えなかったので

あろうか。考えられるのは主に以下の二つの理由である。

まずひとつは、好感度の有無をダミー変数として利用する方法が不十分だった可能性で

ある。というのも、日経企業イメージ調査において、好感度ランキングのトップ 200 に入

っている企業を好感度がある企業とし、ランキングに入っていない企業を好感度がない企

業としたが、その区別の方法が大ざっぱだったという意味である。もちろん、好感度の有無

を考えるときに、どこかで線引きをする必要があるのは確かである。しかし今回の調査では、

証券市場に上場している会社および非上場会社のうち各業種の大手企業を中心に 576 社に

ついて調べているものを利用しているが、認知度ランキング 200 位までに入っている企業

は好感度ランキングにも入っている企業が多い。認知度サンプルの 134 社中 121 社が好感

度ランキングに入っていたことを考慮に入れると、好感度なしとされていた企業も実際に

は調査対象 576 社の中では比較的好感度が高い可能性もあり得る。よって、上場企業や大

企業は数多くあるのにも関わらず、たった 200 位に入っていないだけで好感度がない企業

としてしまうのは少々乱暴な判断だったかもしれない。

また、もう一つの可能性は、企業のサンプル数が少ないという可能性である。全体のサン

プルは 134 個あるが、業種、好感度の有無によって 14 つに分類されている。その結果、特

に好感度なしの企業のサンプル数が少なくなっていしまっている。サンプル数をより増や

せば、回帰分析の精度を示す R2がより1に近づき、正確性が増しただろう。

5-2-4 結果の解釈のまとめ ここで分析結果に関する考察をまとめる。まず、(好感度あり機械ダミー)*(認知度ス

コア)と(好感度ありサービス業ダミー)*(認知度スコア)と(好感度なしサービス業ダ

ミー)*(認知度スコア)が有意水準 5%で統計的に有意と認められた。また、有意水準 10%

では(好感度あり機械ダミー)*(認知度スコア)、(好感度ありサービス業ダミー)*(認

知度スコア)、(好感度なしサービス業ダミー)*(認知度スコア)、(機械単独項)で統計的

有意と推定できた。つまり有意水準 10%において、好感度のある機械業は認知度が上がる

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ほど収益性が下がる。また、サービス業の場合、認知度が上がれば収益性が向上し、好感度

がある企業よりも好感度がない企業の方が、認知度が収益性に与える影響は大きいと重回

帰分析によって示された。

推定された係数の結果を見てみると、好感度がある機械業はわずかにマイナスの値を取

っており、サービス業では、好感度がある企業の方が、好感度がない企業よりも認知度が収

益性に与える影響が小さかった。しかしながら、機械業は、ROA を調査した年度が機械業

全体で調子の悪い時期であり、係数の絶対値がわずかなことから、認知度が収益性に与える

影響はほんのわずかであると結論付けた。また、サービス業では、(好感度ありサービス業

ダミー)*(認知度スコア)の係数=(好感度なしサービス業ダミー)*(認知度スコア)

の係数、という仮説を立て検定を行ったところ、その等号が成立する可能性が 24.09%であ

り、この係数の差は誤差の範囲内であるということが分かった。

したがって仮説と結果を比べると、仮説は「好感度がある企業と好感度がない企業を比べ

ると、好感度の高い企業の方が、認知度が収益性により良い影響を及ぼす」という予想であ

ったが、分析の結果、有意水準 5%でも 10%でも仮説は支持されなかった。

ここで、この調査の不十分な点を二つ指摘したい。一つ目は、好感度 200 位以下を「好感

度なし」としてしまったことに、強引さがあったのではないか、という点だ。二点目は、認

知度が、一年後よりも長い期間を通じて収益性に影響を及ぼす可能性を否定できない点で

ある。第一に、この研究では、長期的視点で好感度を考慮にいれるには不十分な側面がある

かもしれない。というのも、好感度が高いことの効果の一つはロイヤリティが高くなりリピ

ーターが多いことが挙げられる。今回の分析では、好感度の有無によって与える収益力の変

化を短期的視点でしか見ることができていない。なぜなら、今回の分析では好感度の効果は

一年後に生じるという仮定の基、分析を進めている。しかしながら、必ずしも一年後に好感

度の効果がすべて現れるとは限らないのではないだろうか。また、逆に、今回の ROA の数

値は、数年前の認知度の結果である可能性もある。したがって、認知度が収益性に影響を与

えるのは一年後という仮定の基では仮説は否定できるが、一年という期間以外では仮説は

否定できない。

そして、第二に、今回の分析では、業種機械が全体的に不況で、営業利益が赤字になって

いる企業が他の業種に比べて多かった。そのため、回帰分析の係数がマイナスになってしま

った。このように、調査対象の期間が特定の業種において不況の時代である可能性や、とあ

る企業が調子の良くない期間である可能性がある。よって、これらのことも考慮に入れるべ

きである。つまり、認知度が収益性に及ぼす影響力の大きさを業種ごとに比べるためには、

複数の年のサンプルを用意しておくほうが十分な結果を得やすいだろう。

以上より、本論文は、好感度の有無の定義を変え、無形資産の効果が表れる期間を考察し、

サンプル数を増やすことで改善されるだろう。

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第六節 おわりに

本論文では、好感度の有無によって認知度が収益力に与える影響に違いがあるかどうか

を重回帰分析で調べた。重回帰分析では、ダミー変数を用いて業種を7つに区切り、かつ、

業種ごとに好感度トップ 200 に入っている企業とそうでない企業を好感度がある企業と好

感度がない企業とみなし、合計 14 つのグループに分類した。好感度と認知度のデータは経

企業イメージ調査のデータを使用し、収益性は日経 NEEDS の ROA を使用している。

分析を行う前に立てた仮説は、次の通りであった。認知度は収益力に正の影響を及ぼす。

そして、全業種において、好感度がある企業と好感度がない企業を比べると、好感度の高い

企業の方が、認知度が収益性により良い影響を及ぼすという予想である。

予想される重回帰分析の結果としては、どの業種でも、変数の係数は正の数であり、同じ

業種で比べたときに好感度ありの方が好感度なしの場合よりも係数が大きいという統計的

に有意な結果が出ることである。

しかし実際は、仮説通りの結果が出なかった。出た結果は、有意水準 10%で(好感度あ

り機械ダミー)*(認知度スコア)と(好感度ありサービス業ダミー)*(認知度スコア)

と(好感度なしサービス業ダミー)*(認知度スコア)と(機械単独項)が有意であった。

そして、重回帰分析の推定による係数に着目すると(好感度あり機械ダミー)*(認知度

スコア)は係数が負であり、また、(好感度ありサービス業ダミー)*(認知度スコア)の

係数<(好感度なしサービス業ダミー)*(認知度スコア)の係数となった。そこで、(好感

度ありサービス業ダミー)*(認知度スコア)の係数=(好感度なしサービス業ダミー)*

(認知度スコア)の係数という検定を行ったところ、等号が成立する可能性は 24.09%であ

り、この二つの係数の値の違いは誤差の範囲内であるということが分かった。

分析結果をまとめると、以下の通りである。業種が機械の企業で、好感度がある企業は、

認知度の上昇は収益性の低下に影響を及ぼすものの、わずかといっても過言ではない。また、

サービス業では好感度の有無に関わらず、認知度の上昇は収益性の上昇に影響を与える、と

いうことだ。

今回の分析における分析では、上記の分析結果を得ることができ、意味のあるものであっ

たが、より詳しく分析するには課題は大きく分けて四点ある。一点目が、サンプル数が少な

い点である。サンプル全体では 134 個あるが、業種、好感度の有無によって 14 つに分類さ

れた結果、一つのグループでみるとサンプル数が少なくなってしまった。

また、課題の二点目は、今回の分析では、2014 年の認知度や好感度から 2015 年の収益

性への影響を見たが、2013 年の認知度や好感度から 2014 年の収益性などの他の時期の場

合を考慮できていない点である。今回の分析では、機械業全体が調子の悪い時期であった。

しかし複数業種ごとに比較する際には、業種特有の好況や不況によって分析に影響が出な

いようにするべきである。

三点目の課題は、企業の好感度の有無の判定方法である。というのも、日経企業イメージ

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調査において、好感度ランキングのトップ200に入っている企業を好感度がある企業とし、

ランキングに入っていない企業を好感度がない企業としたが、その区別の方法が大ざっぱ

だったという意味である。好感度なしとされていた企業を、上場企業や大企業は数多くある

のにも関わらず、たった 200 位に入っていないだけで好感度がない企業としてしまうのは

少々乱暴な判断だったかもしれない。改善点として、好感度の有無をより精密に判断するこ

とが求められたであろう。

そして、分析における課題の四点目は、この研究では好感度の有無によって与える収益力

の変化を短期的視点でしか見ることができていないことである。というのも、今回の分析で

は好感度の効果は一年後に生じるという仮定の基、分析を進めている。しかしながら、必ず

しも一年後に好感度の効果がすべて現れるとは限らないのではないだろうか。一年後に効

果が生じるという仮定を取らず、長期的な視点でみれば結果が変わる可能性がある。今回、

サービス業において好感度の有無は収益性に影響を与えないという結果が出たが、長期的

な視点でみると、サービス業は好感度の有無が収益性に影響を及ぼすのか調べてみたい。

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[https://www.cross-m.co.jp/report/life/brand20120612/]

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気仙沼と釜石に仮設店 ユニクロ、生活再建を支援」日本経済新聞 2012 年 3 月 12 日

第 6 面 「孫氏主導、復興財団が発足 私財 40 億円で子供ら支援」日本経済新聞 2011 年 7 月 26日 第 3 面

「携帯の被災地寄付 10 万件突破」日本経済新聞 2012 年 2 月 29 日 第 5 面

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「無名ブランドの認知度を向上させる法」ダイアモンド社『DIAMOND ハーバード・ビシ

ネス・レビュー 2007 年 7 月号』15 頁、16 頁

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森棟公夫、照井伸彦、中川満、西埜晴久、黒住英司(2015)

『統計学〔改訂版〕』有斐閣,363 頁


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