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Kobe University Repository : Thesis ·...

Date post: 18-Feb-2020
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Kobe University Repository : Thesis 学位論文題目 Title 位相シフト制御PWM高周波電力変換装置とその応用に関する研 (Phase-Shifted PWM High-Frequency Switching-Mode Power Conversion Circuits and Systems and Their Applications) 氏名 Author 長井, 専攻分野 Degree 博士(工学) 学位授与の日付 Date of Degree 1994-03-31 資源タイプ Resource Type Thesis or Dissertation / 学位論文 報告番号 Report Number 1278 権利 Rights JaLCDOI 10.11501/3078406 URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/D1001278 ※当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。 PDF issue: 2020-02-26
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  • Kobe University Repository : Thesis

    学位論文題目Tit le

    位相シフト制御PWM高周波電力変換装置とその応用に関する研究(Phase-Shifted PWM High-Frequency Switching-Mode PowerConversion Circuits and Systems and Their Applicat ions)

    氏名Author 長井, 聡

    専攻分野Degree 博士(工学)

    学位授与の日付Date of Degree 1994-03-31

    資源タイプResource Type Thesis or Dissertat ion / 学位論文

    報告番号Report Number 甲1278

    権利Rights

    JaLCDOI 10.11501/3078406

    URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/D1001278※当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

    PDF issue: 2020-02-26

  • 博 士 論 文

    DoctorDissertation

    位相シフ ト制御pwM高周波電力変換装置

    とその応用に関する研究Phase-ShiftedPWM High-FrequencySwitching-ModePowerConversion

    CircuitsandSystemsand¶leirApplications

    平成 6年1月

    January1994

    神戸大学大学院自然科学研究科

    TheGraduateSchoolofScienceandTechnology,KobeUniversity

    長 井 聡

    SatoshiNagal

  • 内容梗概

    本論文は、著者が昭和 63年4月神戸大学大学院自然科学研究科生産科学専攻に入

    学以来現在まで一貫して行ってきた 「位相シフト制御pwM高周波電力変換装置とその

    応用に関する研究」の成果を体系的に集大成 したものである。

    近年、スイッチング用パワー半導体デバイスファミリーと駆動回路を含むインター

    フェース技術、回路部品 ・材料技術さらに制御理論やマイクロエレク トロニクスデバ

    イス制御システム技術などの飛躍的な技術革新により、高周波スイッチングモー ドに

    より、電力周波数を自由自在に変換 ・制御 して電気エネルギーを有効に高度化利用す

    るパワーエレク トロニクス応用技術は著しい発展を遂げている。 この高周波スイッチ

    ングモー ド電力変換を主軸 とする新技術はあらゆる産業分野をはじめとし、電力系

    統、交通 ・輸送、通信 ・情報、医療、宇宙などの分野、さらに身近な家電民生に至る

    広範かつ多様な分野における重要な基盤技術として認識されはじめている。高周波ス

    イッチング制御プロセッシングによる電力周波数変換回路技術及びその応用機器技術

    を主体とするア ドバンス トパワーエレク トロニクスシステム技術は電気エネルギーの

    高品質安定化供給並びにその多様な高度化利用分野にいくつかの最先端技術を取 り入

    れながら着実に発展 している途上にある。

    このような技術背景のもとで本研究では、新 しいパワー半導体デバイス導入になる

    電力周波数変換回路技術の重要な応用分野の一つとして知られている高周波誘導加熱

    用の新電源システム技術のソフ トウェアとハー ドウェアに焦点をあてている。 すなわ

    ちMOSゲー トパワー半導体デバイスや静電誘導(sI)パワー半導体デバイスといった新

    形パワー半導体デバイスを導入 した新 しい高周波スイッチングモー ドの高性能高機能

    電力変換装置の諸回路 トポロジーと制御方式を提示 し、計算機援用による特性解析 と

    その特性を図説評価 し、試作器による実証試験 も行い、新 しい研究成果をとりまとめ

    ている。 まず、ゼロ電圧又はゼロ電流スイッチングでモー ド遷移を実現させるソフ ト

    スイッチング動作モー ドを導入 した特定用途向けに適 した新 しい高周波共振形イン

    バータ回路 トポロジーの諸形式とこれらの回路に最適な位相シフ トパルス幅(PWM)刺

    御方式を提案 している。 さらに、各回路のシミュレーション解析 と特性評価を加え、

    回路設計上重要となる貴重な資料がとりまとめられている。

    本論文は、以下の9章より構成されている。

    第 1章では、高周波スイッチングモー ドによる電力周波数変換回路又は機器とその

    応用技術の必要性を説明し、新形パワー半導体デバイスによる高周波電力変換回路 ト

    ポロジーの現状と問題点について述べ、本研究の目的、特色及び位置づけを明らかに

    している。

    第2章では、最新の高周波スイッチング用パワー半導体デバイス/モジュールを体系的に分類整理 し、これらパワー半導体デバイスの位置づけを明確にし、特徴 と問題点

    (i)

  • を指摘 している。 特に高周波スイッチングパワー制御用として脚光を浴びているSIパ

    ワー半導体デバイス、MOSゲー トパワー半導体デバイス並びにパワー用高速ダイオー

    ドの諸特性と現状における問題点について述べている。 更にパワー半導体デバイスの

    高周波スイッチング動作時に発生するスイッチング損失、パワー半導体デバイスの電

    気的ダイナミックス トレス、電磁(EMI)ノイズといった問題を根本的に軽減する画期的

    な技術 としてのゼロ電圧又はゼロ電流のスイッチングモー ド遷移をとり入れたソフト

    スイッチング動作モー ドについて検討を加えている。

    第3章では、電力周波数変換回路応用技術の一つである高周波誘導加熱系について

    の基本原理を述べ、他の電気加熱方式にはない様々な特徴を言及している。

    第4章では、用途 ・電力容量 ・出力周波数 ・コス トなどによってパワー半導体デバ

    イスを用いた高周波インバータの諸回路形式の分類を行い、特徴を指摘し、導入可能

    な各種出力電力制御方式について述べている。

    第5章では、定周波位相シフト制御pwM高周波共振形インバータをとりあげ、動作

    原理及び特徴を述べ,特性解析と特性を図説評価し、このインバータの設計資料を提

    供 している。 又、この回路の問題点とイジバ一夕適用可能範囲を新形パワー半導体デ

    バイスとの関連のもとに述べている。本章で取り扱っている位相シフト制御pwM方式

    高周波直列共振形フルブリッジインバータは、インバータ回路自身が出力電力制御機

    能を持つためインバータ入力側の直流側電源電圧制御が不要となる上に、その回路構

    成もパワーモジュール対応のもとでは簡単なものとなり、制御応答も速 くなる特徴が

    ある。 解析結果から走周波位相シフト制御pwM方式高周波共振形インバータはスイッ

    チングアーム相互間の位相差角制御により出力電圧をpwM制御させるもので、出力電

    力を零から負荷回路定数とインバータ周波数で決まる最大出力まで連続かつ高速に制

    御できる他、適正な周波数帯では回路内を循環する無効電流も少なくでき、しかもパ

    ワー半導体デバイスの導通損失も少なくなるといった優れた特徴を具備 していること

    を強調 している。 しかしながら、この電圧給電構成の高周波位相シフトpwM方式イン

    バータは主スイッチング用としてのパワー半導体デバイスと逆並列に接続されるフラ

    イホイールダイオードのターンオフ時の逆回復動作時の過渡特性による本質的な回路

    現象から生じる電源短絡モー ド発生といった問題があり、パワー半導体デバイスのス

    イッチング損失が増大するため実質上100kHz以上の高い無線周波数(RF)領域への応用

    に対 しては適さないことを指摘 している。

    第6章では、第5章で述べた走周波位相シフト制御pwMフルブリッジ高周波直列共

    振形インバータに新たに位相シフトpWM適応形の周波数制御(PFM)機能を付加した高

    機能高周波共振形インバータを提示し、適応形周波数制御方式をとり入れた主回路と

    そのシステム制御回路の動作原理を説明し、特性解析 と特性評価について述べてい

    る。 位相シフト制御pwM高周波共振形インバータに可変周波数制御機能を付加するこ

    とにより逆並列高速ダイオー ドのリカバリ過渡特性に基づ く電源短絡モー ド発生と

    いった問題を取 り除き、パワー半導体デバイスのスイッチング損失を極小化すること

    ができる特徴があるため100kHz以上の高い周波数(RF)領域への通用が可能となる回路

    (ii)

  • トポロジーであることを指摘 している。 また、特性解析結果より明らかなように、軽

    負荷時に出力電力を位相シフトpwM制御 した時においても、高周波インバータの動作

    周波数の制御変化帽も小さくて済む他、回路を流れる無効電流循環モードも少なくな

    るといったことより、パワー半導体デバイスの導通損失が大幅に低減できるという優

    れた特徴があることを言及している。 走周波位相シフトpwM高周波共振形インバータ

    の本質的な特徴を維持しつつこのような新 しい特徴を付加することができることとな

    り、この適応pFM制御方式は第5章の回路方式の改良形高周波インバータとして位置

    づけされることを強調している。

    第7章では、位相シフトPWM適応形可変周波数制御高周波フルブリッジ共振形イン

    バータの試作器のハードウェアについて説明し、実験結果について種々の検討を加え

    ている。この試作高周波インバータは高周波大電力が要求される誘導加熱電源応用を

    目的としているため、スイッチングパワー半導体デバイスは個別半導体デバイスとし

    ての電圧 ・電流の定格が大きく、かつ電力密度が比較的高い新形のSIT(静電誘導形パ

    ワートランジスタ)を使用した高周波共振形インバータと制御システムであり、これに

    関連した新しいSITの周辺駆動インターフェース回路や実装技術をあわせて述べてい

    る。 すなわち位相シフトpwM適応形可変周波数制御回路のシステムハードウェア構成

    法と動作を説明し、高周波電力整合変換用の高周波 トランスの回路モデル及び設計法

    についても述べている。 この試作機の実測結果では、約90%以上の高い電力変換効率

    と原理通りの良好な動作波形が観測されており、本方式の有効性を実験的な見地より

    実証している。

    第8章では、ロスレスキャパシタスナバやロスレスインダクタスナバを使用するこ

    とによりフルブリッジ高周波直列共振形インバータアーム内の全てのスイッチング用

    パワー半導体デバイスオ中wM制御プロセス及び負荷変化にかかわらずゼロ電圧又はゼ

    ロ電流のスイッチングモード遷移によるソフトスイッチング動作が実現できる走周波

    位相シフトpwM制御方式高周波フルブリッジインバータの新しい回路 トポロジー形式

    と位相シフトpWM適応形可変周波数制御モードをとり入れた高周波共振形フルブリッ

    ジインバータの新しい回路 トポロジー2形式を提示している。 さらにこれらの回路動

    作原理を述べ、特性解析と特性の図説評価を行った結果について議論 している。 これ

    らの新回路 トポロジーは広い負荷回路定数変化と位相シフトpwMによる広い出力電力

    可変範囲において高性能ゼロ電圧又はゼロ電流ソフトスイッチング動作が可能となる

    回路形式であることを示し、スイッチング用パワー半導体デバイスの電圧 ・電流ス ト

    レスも許容範囲内に抑えられる設計ができるので、パワー半導体デバイスの特性能力

    を十分発揮させることができ、これらは回路 トポロジーの-形式として加えることが

    できることを示 している。 これらの提案した高周波共振形インバータは直列共振タン

    クとロスレスインダクタアーム又はロスレスキャパシタアームの効果を最適に導入し

    たものである。 これは第 5章で論じた高周波共振形インバータの回路 トポロジーを基

    本としているが、ロスレスインダクタアーム又はロスレスキャパシタアームを非対称

    にとり入れた新しい変形回路 トポロジーとすることにより500kHz以上から数MHzの周

    (iii)

  • 波数帯で安定動作ができる形式となることを指摘 している。 一方これらの高周波イン

    バ ータファミリーの応用例は高周波交流出力応用以外の特定用途向け応用の他、高周

    波インバータリンクDC-DCコンバータや、太陽電池用システムにみられる高周波リン

    クCVCFサイクロインバータなどへの新 しい重要な応用展開が考えられることを指摘 し

    ている。 さらに新形パワー半導体デバイスによる高周波ソフ トスイッチング制御イン

    バータ技術はア ドバンス トパワーエレク トロニクス分野において誘導加熱応用とは

    違った新 しい高周波交流出力応用として強力超音波発生用やプラズマ発生用、高周波

    インバータリンクDC-DCコンバータによるアークウェルダーなどの新種電源にみられ

    る新 しい高周波大電力応用展開へと拡大化が期待されるものであり、次世代を支える

    ハイテク分野での重要な基盤技術 となることを言及している。

    第9章では、本研究の内容と得られた重要な研究成果の総括をし、高性能 ・高機能

    高周波インバータを中心とする高周波パワーエレクトロニクス技術の将来動向につい

    て述べている。

    (rv)

  • 目 次

    第1章 緒論

    第 2章 新 しいパワー半導体デバイスとソフ トスイッチング動作モー ド

    2.1 緒言

    2.2 パワー半導体デバイスの位置づけと評価

    (1 )

    2・ 3 SIパワー半導体デバイスの位置づけと駆動インターフェース回路 (13)

    2・4 MOSゲー トパワー半導体デバイスの位置づけと駆動インターフェース回路

    2.5 パワー用高速ダイオー ド

    2.6 ソフ トスイッチング動作モー ド

    2.7 結言

    第3章 高周波誘導加熱の概要

    3. 1 緒言

    3.2 誘導加熱の原理

    3.3 誘導加熱の等価回路

    3.4 誘導加熱の特徴

    3. 5 結言

    第 4章 高周波インバータの基本回路形式

    4.1 緒言

    4. 2 高周波インバータの基本回路形式と特徴比較

    4.3 高周波共振インバータの制御方法

    4.4 MHz帯高周波インバータの現状

    4.5 結言

    第5章 走周波位相シフ トpwM高周波共振形インバータと特性解析

    5. 1 緒言

    5.2 回路構成と動作原理

    5.3 特性解析 と評価

    5.3.1 回路状態方程式と正規化特性パラメータ

    5.3.2 定常動作波形5.3.3 定常動作特性

    5.4 結言

    第 6章 位相シフ トpwM適応形可変周波数制御インバータと特性解析

    (∨)

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  • 6.1 緒言

    6. 2 回路構成と動作原理

    6.3 回路解析 と特性評価

    5.3.1 周波数領域における理論解析

    6.3.2 定常動作波形

    6.3.3 定常動作特性

    6.4 結言

    第 7華 誘導加熱用試作システム

    7.1 緒言

    7.2 主回路構成

    7.3 制御システム

    7.4 SIパワー トランジスタの駆動回路

    7.5 マッチング用高周波 トランスの実用設計例

    7.6 実験結果と検討7.7 結言

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    第8章 改良形ソフトスイッチングpwM高周波インバータの新しい回路 トポロジーと制御方式

    8・1 緒言 (102)

    8・2 ロスレスインダクタスナバとロスレスキャパシタスナバを用いた定周波位相シフトPWM高周波インバータ

    8.2.1 回路 トポロジーと動作原理

    8.2.2 定常動作波形

    8.2.3 定常動作特性

    (102)

    (102)

    (105)

    (131)

    8・3 ロスレスキャパシタスナバを用いた位相シフトpwM適応形可変周波数制御

    ソフトスイッチング高周波インバータ

    8.3. 1 回路 トポロジーと動作原理

    8.3.2 定常動作波形

    8.3.3 定常動作特性

    (136)

    (136)

    (136)

    (151)

    8.4 ロスレスインダクタスナバを用いた位相シフトPWM適応形可変周波数制御

    ソフトスイッチング高周波インバータ

    8.4. 1 回路 トポロジーと動作原理

    8.4.2 定常動作波形

    8. 4. 3 定常動作特性

    8.5 高周波インバータ回路の応用

    8.6 結言

    (vi)

    (155)

    (155)

    (155)

    (177)

    (181)

    (183)

  • 第9章 結論

    付録

    参考文献

    研究業績一覧

    謝辞

    (184)

    (188)

    (204)

    (207)

    (213)

    (vii)

  • 第 1章 緒論

    近年、パワー用個別半導体デバイス/モジュール並びにインテリジェントパワーデバ

    イスの関連技術、パ ワー半導体デバイス周辺駆動回路 ・保護回路 を含むインター

    フェース回路技術、新 しい材料 ・構造設計をとりいれた部品技術や電力回路 ・電子回

    路部品技術 とア ドバンス ト制御理論を導入 したマイクロエレク トロニクスデバイスに

    よるシステム制御技術の進歩に伴って、電力周波数を自在に変換 ・制御 して電気エネ

    ルギー(電力)を有効に負荷機器を介在させて高度化利用する応用システムや電気エネル

    ギーの高品質安定化供給における応用システムにおいてア ドバンス トパワーエレク ト

    ロニクスの基盤としての高周波スイッチング電力周波数変換システム技術を駆使する

    ことは不可欠である。このアドバンス トパワーエレク トロニクス応用システム技術は

    新 しいパワー半導体デバイスや超高速マイクロエレク トロ土クス制御デバイスの技術

    革新 とともに着実な発展を遂げ、新 しい展開を繰 り広げている。 この高周波スイッチ

    ング制御モー ド電力周波数変換システム技術は電動機の制御駆動応用をはじめ、誘導

    加熱あるいは誘電加熱などの熟プロセス用電源、照明バラス ト用電源、情事即通信用高

    品位電源、スペース/エアロスペース用高電力密度電源、家電民生用やオフィスオー ト

    メーション用の電源など広範かつ多様な分野で効果的に導入がはじめられており、電

    力又は電気エネルギーの利用機器の機能を高度化するだけでなく、高性能化すること

    ができ、このア ドバンス トパワーエレク トロニクス技術は最先端技術における重要な

    個別要素技術 となっていることは疑う余地もない。高周波スイッチング制御モー ド電

    力変換回路技術により高度に制御された電力周波数が電気エネルギーの高度な機能性

    を活用 した新 しい技術資源として産業などの各種分野において重要なものであること

    が認識されつつある。 新形パワー半導体デバイス応用の高周波電力周波数変換システ

    ム技術 とこれを基盤 とした応用システム機器技術を含む総合的な見地からの技術開発

    をさらに次世代に向けて急 ピッチで推進する必要がある時期にあるといえよう。著者

    が提示する高周波電力周波数変換システム技術の高度化有効利用により、冒頭に述べ

    たように広範かつ多様な応用分野でこのア ドバンス トパワーエレク トロニクスは新技

    術を導入 しながら21世紀に向けて地球環境的視点や高度情報化社会、産業の構造変

    革といった視点から大 きな成長を遂げている途上にある。

    アドバンス トパワーエレク トロニクスの発展により次のような技術課題が達成可能と

    なる。

    (1)新エネルギー利用cvcF電源による系統連係分散電源応用 ・vvvF電源による電動

    機制御応用の分野では、電力周波数の高周波化による電動機の小型化と電磁騒音の

    静音化、ベク トル制御理論、瞬時空間電圧ベク トル理論、瞬時力率補正などをベー

    スにした高度なアクティブ制御技術導入による高効率化、高速応答による高性能

    化、高精度化、さらに高信頼性化が実現される。

    (2)産業用あるいは家電民生用の金属加熱や調理の目的への新 しい電気加熱応用分野で

    は、数10kHz~数MHzの周波数帯での高周波電力変換回路システムによるダウンサ

    ー1-

  • イジング化、高性能化、高効率化、さらに数100kHzの高周波による誘導加熱が困

    難なアルミニウム ・銅などの金属加熱の実現、温度制御の高精度化などが実現され

    る。 又、数100kHz帯や数MHz帯の高周波プラズマ発生、数10kHz帯の強力超音波

    エネルギー発生、CO2レーザ-電源などの高周波電力変換回路による応用になる新

    応用展開が期待される。

    (3)通信情報用、医療システム用やオフィス機器用などの応用分野では多機能cvcF電

    源によるシステム全体のダウンサイジング化、高効率化、高性能化、無停電化、高

    信頼性化が達成できる。

    電力周波数変換回路技術や応用システム技術対応の従来の半導体式の大電力高周波

    インバータ応用は、逆阻止3端子高周波用サイリスタの登場と共に着実に実用化が進

    められてきた。しかし、高周波サイリスタは自己消弧不可能であるため個別に強制又

    は自然転流回路が必要となり、特に高周波電力変換では負荷共振回路系の現象を利用

    しているため転流は容易とはいえ高周波サイリスタ固有の逆バイアスターンオフ条件

    があるため出力周波数の限界のみならず運転負荷域の制限があり用途が特殊用途分野

    に限定されていた。高周波サイリスタを用いた高周波インバータの回路 トポロジーと

    して、時分割方式高周波共振形インバータが動作周波数限界を打破する画期的な新技

    術として注目され、研究開発がなされ、応用分野を拡大化 してきた。これは高周波サ

    イリスタの逆バイアス転流余裕時間を回路技術で拡大化することができる上に、時分

    割シーケンス運転のため大容量化に通するということで画期的なものであり、特に高

    周波大電力変換用の高周波サイリスタインバータとして現在も賞用されている。しか

    しながら、IGBTやMCTなどの新形MOSゲートパワー半導体デバイス/モジュールを用

    いた高周波インバータが登場して以来、サイリスタ高周波インバータは超大電力応用

    は別として年々影をひそめている現状である。 一方、逆阻止3端子高周波サイリスタ

    の他、高周波GATT(GateAssistedTurn-OffThyristor)、非対称サイリスタ(A-SCR;

    AsymmetricalSCR)、逆導通サイリスタ(RCT;ReverseConductingThyristor)、高周波

    GTOサイリスタ(Gate-TumOffThyristor)を用いたサイリスタ高周波インバータも大電力

    高周波電力変換応用の分野にはこの新しい時分割方式インバータ回路 トポロジーを駆

    使して現在も重要な回路技術として定着している。 一方、自己消弧形デバイスである

    高周波GTOサイリスタに加え、バイポーラパワートランジスタ(GTR)を用いた高周波

    電力変換回路技術はそのインバータ周波数が10kHz、30kHzといった中間周波数帯にお

    いての高周波電力変換インバータや30kHz以上の超中間周波帯の高周波電力変換ができ

    る時分割方式インバータの回路 トポロジーをもとに特定用途対応のもとで発展を遂げ

    てきている。しかしながら時分割方式サイリスタ高周波インバータを除き数100kHz以

    上の周波数帯で動作する高周波大電力インバータの半導体化はこれらのバイポーラパ

    ワ.-半導体デバイスや高周波サイリスタファミリーでは不可能であった。その後数

    100kHzの無線周波数(RF)帯における高周波スイッチング動作が効率よくかつ安定に行

    えるパワーMOSFETやモジュールの出現によってこの周波数帯でのパワートランジス

    -2-

  • 夕高周波インバータの技術開発が進んだが、パワーMOSFETは取 り扱い容量が小 さ

    く、高効率かつ大電力高周波変換のインバータは製作が比較的困難であり、出力電力

    に容量限界が現れている。その後、パワーMOSFETのモジュール化組み合わせ技術に

    よる大容量化に加えsIパワー トランジスタ(SIT)の登場によって高周波インバータの出

    力周波数が100kHz以上の高周波領域から数MHzで動作できる高周波インバータの新規

    導入が可能となることが確証され、これまでの真空管式高周波発振器の電源システム

    に取って代わりつつある。 これに対 して出力周波数が20kHz前後の高周波インバータに

    は駆動が容易で、スイッチング速度が速く、導通損失の少ないIGBTの導入が始まり、

    数10kHz帯の大電力高周波変換用電源として脚光を浴びているものも登場 している。

    又、sIサイリスタを用いた高周波大電力インバータの特性評価 も始まった。ごく最近

    ではスイッチング速度ではIGBT・SIT・SIサイリスタには及ばないものの、導通損失が

    第3世代のIGBTと比べても大幅に低減できる特性を持つMCT (MOSControlled

    Thyristor)が登場 し、今後数10kHzの周波数帯における高周波大電力インバータ用 とし

    て最も期待されており、この種の新形パワー半導体デバイスによる高周波応用が急速

    に普及するものと思われる。

    このような電力用半導体スイッチングデバイス/モジュール技術の飛躍的な進歩と共

    にこれらを駆使 した高周波インバータ応用技術分野 も急速に拡大かつ新展開 してい

    る。ここで、高周波電力周波数変換回路とシステム技術による高周波インバータの重

    要な応用分野の一つとして、本論文でとりあげる主要な負荷対象である高周波誘導加

    熱用電源システムは古 くて新 しいものであるが、産業界で極めて重要な技術の中核の

    一つとなっている。誘導加熱はファラデーの電磁誘導現象によって金属に流れる誘導

    渦電流のオーム損によるジュール発熱を金属の内部から外部にかけて行わせることが

    できるもので、工業用の電気加熱プロセス処理だけではなく最近は一般家庭用 ・業務

    用の電磁調理器などにも広 く用いられるものである。 周知のように電気加熱の一方式

    としての誘導加熱方式は燃焼による発熱とは根本的に異なってお り、以下のような優

    れた特徴を持つ。

    (1)加熱効率が高い

    (2)急速加熱が可能

    (3)温度制御が容易

    (4)局部加熱が可能

    (5)作業環境が良い

    (6)スペースの減少

    このようにメリットの多い誘導加熱であるが、加熱を実行するためには熱量に応 じた

    制御性の優れた可変周波又は走周波の大電力を供給する必要がある。 そのため新 しい

    自己消弧形パワー半導体デバイスを用いた高性能 ・高機能な高周波インバータの新電

    源システムと負荷の特性を捉えた制御方式の開発が必要となるが、新 しい用途も展開

    されることなる。例えば、電縫管の溶接には出力400kHz・200KW程度の高周波イン

    -3-

  • バータ電源が使用される。又、表面焼入れの場合、必要な焼き入れ深さに応 じて周波

    数は20kHz~400kHzの範囲内で、電力は100KW前後の高周波インバータ電源が使用さ

    れる。これら誘導加熱用の高周波電源システムとして、10kHz以下の周波数帯域では、

    誘導子型電動式高周波発電機が、10kHz以上の周波数帯域の高周波電源には電子管を使

    用 した高周波発振器が、10kHz以上の周波数帯域の大電力用には火花放電式や電子管式

    の高周波発振器が使用されてきた。しかし、現在では設置環境の点から電動式高周波

    発電機と火花放電式の高周波発振器は使用されなくなっており、電子管式高周波発振

    器も目下急速に新形パワー半導体デバイスを用いた特定用途向けの半導体式高周波イ

    ンバータ電源に置き換えられつつある。 いうまでもなく、これは半導体式高周波イン

    バータは

    (1)高効率

    (2)長寿命

    (3)低騒音

    (4)低EMIノイズ

    (5)メンテナンスフリー

    (6)ウオームアップ時間が短い

    (7)高電圧の直流電源を使用 しない

    (8)冷却系が簡単

    などの優れた特徴を持つことによる。このように半導体式高周波インバータ電源は負

    荷機器システムに対する負荷適応化を制御により実現 している他、高効率化によりダ

    ウンサイジング化を図り、かつ最近の新技術として脚光を浴びているソフトスイッチ

    ング化技術の導入により低EMIノイズを実現 し、良好な設置環境条件を達成 してい

    る。

    高周波電力周波数変換方式に使用される負荷共振による半導体式高周波インバータ

    の基本回路 トポロジーは、並列共振 ・電流形と直列共振 ・電圧形に大別される。

    並列共振 ・電流形インバータは、直流電圧源に直流リアクトル(DCL)を接続し、高イン

    ピーダンスの電流源をフルブリッジ又はセンタタップの回路構成のインバータに供給

    する形式であり、高周波インバータ出力電圧が正弦波状となる。 この方式はスイッチ

    ング用パワー半導体デバイスの転流はゼロ電圧ソフトスイッチング方式で保護制御が

    容易であるため周波数が10kHz以下の大容量高周波インバータすなわち電流形プッシュ

    プル トポロジーや電流形フルブリッジ トポロジーが導入されている。この トポロジー

    では高周波サイリスタが利用できるが、新しい高周波用自己消弧形パワー半導体デバ

    イスは逆耐圧がなく、高速ダイオー ドを直列にしたパワースイッチ構造のパワー半導

    体デバイスが必要となるためこれを用いた電流形高周波インバータは数kHzの周波数帯

    の高周波インバータに導入されてはいるもののその研究開発はあまり高周波大電力変

    換応用を対象として進んでいないのが現状である。先に述べたようにこの方式は直流

    リアクトルがあるため負荷短絡には強いが、開放時には過電圧が発生する。di/dtが大

    -4-

  • きいため配線のス トレーインダクタンスの影響が大きく、大容量化のためスイッチン

    グ用パワー半導体デバイスの並列接続が必要な場合においては電流バランスをとるこ

    とが難しい。さらにスイッチング用パワー半導体デバイスの最大定格が高くなりすぎ

    る点も実用上問題が多いので、高速サイリスタを用いた数kHzの周波数帯の大容量高周

    波インバータとして注目され、応用分野も定着している。

    これに対 して電気回路論的に双対となる回路 トポロジーとしての直列共振/直並列共

    振 ・電圧形高周波インバータは、リプルの少ない低インピーダンスの直流電圧源をイ

    ンバータに供給する形式で、出力電流波形が直列共振又は直並列共振のため正弦波状

    となる。この方式では負荷開放時に過電圧は発生しないが、短絡時には過電流が流れ

    る。一般に負荷短絡保護が難しいが、短絡時には周波数制御することにより速応的に

    保護することができる特性があり、この間題を軽減できる。di/dtが小さいため配線イ

    ンダクタンスの影響が少なく、さらに配線のス トレーインダクタンスが負荷共振回路

    の一部となるため高い周波数においても実装上の制約が少ない。さらに、スイッチン

    グ用パワー半導体デバイスを並列接続したときの電流バランスが良くなり、このアセ

    ンブリでは全体としての導通抵抗も低下し、スイッチング用パワー半導体デバイスに

    印加される最大電圧は基本的に電源電圧にクランプされる。一般にこの種の回路方式

    は共振電流がスイッチング用パワー半導体デバイスを流れるので低電圧降下形のパ

    ワー半導体デバイスを選択することが不可欠となる。 この方式はさらに起動 ・停止が

    前者の方式に比べて極めて容易であることは見逃せない。

    以上の理由から出力周波数が約100kHz以上の高周波インバータには小容量から大容量

    にいたるまで電圧形いわゆる電圧給電形が適しているといえる。

    この他、この電圧形高周波直列共振インバータにおいて、負荷回路系を含めた共振回

    路構成であるため次のような特徴がある。

    (1)スイッチング用パワー半導体デバイスの電流波形が正弦波の一部となるため、高調

    波、EM ノイズやRFIノイズが少ない。

    (2)負荷共振におけるゼロ電流ソフトスイッチング、あるいは部分共振を併用すればゼ

    ロ電圧のソフトスイッチング動作が利用でき、高周波領域においてスイッチング損

    失とEMIノイズの低減が可能となる。

    (3)共振点付近では負荷力率や電力変換効率が高く、直流電源電圧の利用率が高い。

    (4)スイッチング用パワー半導体デバイスや高周波マッチングトランス、配線のス ト

    レーインダクタンスの寄生LC回路パラメータを共振回路要素に取り込むことがで

    きる。

    最近の高周波誘導加熱では被加熱物の熱処理に、供給周波数として100kHz以上の高周

    波交流が要求される場合が多くなっている。半導体式高周波インバータにおいてはこ

    のような周波数帯域ではパワー半導体デバイスのオンオフ動作に伴うスイッチング損

    失をはじめ、高導適時の損失、スナバ回路の高周波損失、高周波インバータからの

    EMIノイズやRFIノイズの発生といった設置環境に関連する問題が新たに生じてくる。

    -5-

  • このような技術背景から各種応用分野では新形パワー半導体デバイス応用のソフトス

    イッチングモー ドで動作する高周波インバータの新しい回路 トポロジーと新しい制御

    方式に関する研究開発がテーマとしてとりあげられている。これらを解決するため、

    スイッチング用パワー半導体デバイスの特性改善はもとより、スイッチング用パワー

    半導体デバイスのもつ特性限界以上の能力を発揮させることができるゼロ電圧又はゼ

    ロ電流でソフトスイッチング動作を行う新しいソフトスイッチング回路技術をとり入

    れた電圧形高周波インバータの研究と開発がパワーエレクトロニクス分野においても

    トピックにあがっている。 負荷ACタンク共振以外の手段でソフトスイッチングを実現

    する方法として、著者はこれまでに共振スイッチ方式、共振DCリンク方式、共振ポー

    ル方式、部分共振方式、ロスレスキャパシタスナバ及びロスレスインダクタスナバ方

    式などいくつかの方式を考えているが、一般にゼロ電圧又はゼロ電流スイッチング遷

    移を利用 してソフトスイッチング動作を実現する主なメリットは下記のようにまとめ

    られる。

    (1)スイッチング用パワー半導体デバイスのスイッチング動作時の電圧 ・電流軌跡が第

    一象限能動領域を通過しないため、スイッチング損失が小さい。

    (2)スイッチング用パワー半導体デバイスのASO(AreaofSafetyOperation)の問題がなく

    なるため超低電圧降下型のパワー半導体デバイスが使用でき、大電流伝達時にも導

    通損失が少なくできる。

    (3)スイッチング用パワー半導体デバイスのスイッチング動作時のdv/dt及びdi/dtが小さ

    く、電圧サージや電流サージが抑制され、スナパレス構造化が可能となる。

    (4)スイッチング損失の減少によりスイッチング周波数が高 くできるため高周波イン

    バータ電源及びこれをサブシステムとした新形電源のさらなる小型軽量化が可能。

    (5)SIゲー ト構造及びMOSゲー ト構造のパワー半導体デバイスのもつ寄生容量あるいはバイポーラモードパワー半導体デバイスに特有のテイル電流による過渡損失発生

    の問題がソフトスイッチング回路技術により解決できる。

    しかしながら、このソフトスイッチング方式高周波電力変換回路技術には優れた特徴

    があるものの、実用化にあたっていくつかの問題がある。すなわち、

    (1)スイッチング用パワー半導体デバイスの電圧又は電流ピークス トレスが大きくな

    り、パワー半導体デバイスの電圧又は電流の有効利用率が悪くなる。

    (2)装置、機器の回路部品点数が増加し、これらの損失が新たに加わる。

    (3)回路内の無効循環電流が生じるので重負荷時はともかく軽負荷時に固定損失が増加

    する。

    (4)スイッチング損失とEMIノイズを最小化できるが、ソフトスイッチング動作可能な

    制御範囲や負荷範囲に制約がある。

    (5)動作モー ドが多 く、回路設計法が十分確立していない。

    (6)回路 トポロジーの相互比較が十分なされておらず、選択にあたって現在自由度が多

    すぎる。

    -6-

  • (7)回路自体での出力制御が一般に難 しい。

    これらの技術課題に対 して特定用途向けとしての新 しいパワー半導体デバイスの開発

    や新 しい回路 トポロジーの開発、コンピュータシミュレーション解析技術 と最適設計

    法の開発、回路 トポロジーの相互比較と新 しい制御方式の研究や技術開発などが重要

    である。これらの研究と開発は国内外の国際会議において トピックにとりあげられて

    おり、目下パワーエレク トロニクス技術のなかで最 も脚光を浴びている新技術 となっ

    ている。

    このような技術背景のもとで、著者は早 くから高周波誘導加熱応用の半導体式高周

    波電源システムの中枢 となるソフ トスイッチング回路技術を導入 した各種高周波イン

    バータの基本回路 トポロジーと独特の制御方式の研究と開発を行ってきている。 なか

    でも出力電力が約5KW以上で、周波数が約20kHz以上から数MHzの小容量から大容量

    の高周波インバータには電圧形フルブリッジ直列共振の トポロジーの高周波インバー

    タカミ最適であることを検討 し、又制御方式に対する新考案を行い、受動素子の付加に

    よりソフ トスイッチング動作が可能となる新 しい回路 トポロジーの提案はこれらの問

    題を大幅に低減するのに役立っいる。

    本研究は以下の項 目にポイン トを置いて推進 しているものであることを主張 してい

    る。

    (1)電圧形フルブリッジ直列共振インバータに補助回路を使用せず、スイッチング損失

    の低減が可能な新 しい適応周波数制御方式の提案とインバータ特性の評価。

    (2)走周波位相シフ トpwM制御高周波インバータに受動素子のみで構成されるロスレスインダクタスナバとロスレスキャパシタスナバをスイッチングブリッジアーム内

    に付加するのみのシンプルな構成でソフ トスイッチング動作を実現 した新 しい高周

    波インバータ回路 トポロジーの提案と特性解析。

    (3)ロスレスインダクタアーム 1つを持つ位相シフ トpwM適応形可変周波数制御方式及びロスレスキャパシタアーム 1つを持つ位相シフ トpwM適応形可変周波数制御

    方式ソフ トスイッチング高周波インバータの提案と特性評価。

    (4)スイッチング速度が速 く、単機容量が大きくできる新 しい静電誘導(sI)パワー トラ

    ンジスタを使用 した新 しい高周波インバータの試作機による実証試験 と特性評価。

    (5)高周波インバータ内高周波 トランスの具体的な設計法などソフ トウェア ・ハー ド

    ウェアの両面から焦点をあてて詳述する。

    以上のようない くつかの観点を踏まえ本論文は次の各章にとりまとめられている。

    第 1章では、本研究の技術背景、研究の意義 ・目的と位置づけ、特色についてまと

    めている。 (1)

    第2章では本研究の対象 となる数10kHzから数MHzの周波数帯で動作する高周波イ

    ンバータの構成実現上不可欠な新 しいSIゲー ト及びMOSゲー トの高周波スイッチング

    用新形パワー半導体デバイス/モジュールを取 り上げ、これらの適用可能域を電圧 ・電

    -7-

  • 流及びスイッチング周波数との関係で位置づけを明確にし、体系的に整理 ・分類し、

    各項目に対する優位性を考えた特性比較を行っている。 そして試作実験器に使用した

    高周波応用上優れたsIトランジスタ及びsIサイリスタの位置付けを示 し、駆動回路及

    び周辺インターフェース回路技術について述べている。 又、近年急速に成長している

    MOSゲー トパワー半導体デバイスファミリーをとりあげ動作原理 ・特徴を述べ、駆動

    回路方式についての検討をしている。 さらに高周波電力変換回路には必要不可欠なパ

    ワー用高速ダイオー ドの問題点 ・現状について述べている。 次に最近の主要な研究課

    題として脚光を浴びているゼロ電圧又はゼロ電流ソフトスイッチング動作モードにつ

    いて定義し、その重要性を言及し、スイッチング用パワー半導体デバイスとの適性に

    ついて述べている. (2)~(15)

    第3章では、本研究において応用対象の一例に選定している高周波誘導加熱の概要

    と新 しい高周波電源システムの必要性について述べている。 (16)-(22)

    第4章では基本的な高周波共振形インバータ回路 トポロジーの分類と特徴比較を行

    い、さらに出力電力のいくつかの制御方法についても議論 している。 (23)~(27)

    第5章では本研究の基礎となる新しい提案の定周波位相シフトpwM高周波インバー

    タをとりあげ、その動作原理を述べ従来の制御方式に対する優位性を示し、特性解析

    と得られた結果について述べている。 この定周波位相シフトpwM制御方式はインバー

    タ回路自体が電力制御機能を持つもので、電源システムの簡素化や制御応答速度の改

    善に有効であることを述べている。しかしながら、この高周波pwMインバータ方式は

    数100kHz以上の無線周波数帯においては高周波動作時のハードスイッチング動作モー

    ドによるスイッチング損失が大きくなるといった大きな問題があり、パワー半導体デ

    バイスの高速化 ・共振回路の導入だけではこの間題が解決できないことを強調してい

    る。 この問題は高速ダイオー ドの動特性と高周波インバータ回路 トポロジーと位相シ

    フトpwM制御 との関連により詳述されている。 (2S)~(32)

    第6章では、定周波位相シフトpwM高周波インバータに新 しくpwM適応形の可変

    周波数制御機能を導入し、電圧サージや電流サージを抑制する制御をとりいれスナパ

    レス化構成とし、スナバ回路の損失をはじめスイッチング損失やEMIノイズの大幅な

    低減が可能となることを明らかにし、第5章の回路方式では不可能であった無線周波

    数帯での高周波出力周波数領域において高効率大電力変換動作を可能とし得る新しい

    高周波ソフトスイッチングインバータ回路における適応制御法について述べている。

    この高周波インバータは走周波位相シフトpWM方式と同一の簡単な主回路構成で制御

    回路を一部変更するのみで新規対応できる。 本章ではこの新電源方式の定常動作特性

    についても走周波位相差pwM方式と同様良好な結果が得られることを明らかにしてい

    る。 なお、出力周波数が若干変動するとはいえ、その変化範囲も狭 くなることを示

    し、応用負荷範囲も制約されないことから優れた回路方式であることを示している。(33)-(37)

    第7章では、位相シフトpwM適応形可変周波数制御方式の高周波インバータの設計

    例及び試作機による実験結果について述べている。 本章における設計例では、イン

    -8-

  • バータの駆動インターフェース回路などを示 し、高周波整合 トランスについては損失

    推定によってコアの選定に関する設計法を紹介 している。 更に、試作高周波インバー

    タの動作波形及び各種動作特性の実測 結果について評価を行っており、提案の高周波

    インバータの実用可能性を明らかにしている。(38)~(40)

    第8章では、ブリッジアーム内の全てのスイッチング用パワー半導体デバイスが

    ターンオン ・ターンオフ両時点においてゼロ電圧又はゼロ電流のモー ドでソフ トス

    イッチング動作が可能となる各種の新 しいインバータ回路 トポロジーすなわちロスレ

    スインダクタアームあるいはロスレスキャパシタアームを用いた回路 トポロジーを紹

    介 し、これらの動作原理と特徴を述べ、各種新形パワー半導体デバイス対応のもとで

    は高周波インバータの新 しい回路 トポロジーのファミリーとなり得ることを言及 し、

    誘導加熱以外の高周波インバータ技術の新 しい応用に対 しても重要なものであること

    を述べている。 これらの新 しい高周波インバータは次世代のパワーエレク トロニクス

    応用において十分価値あるものとして位置づけすることができる方式であることを明

    確化 している。 (41)~(46)

    第9章では、本研究で得 られた主な成果を総括 しており、高周波パワーエレクトロ

    ニクスの中枢技術としての高周波インバータの新 しい応用技術動向について言及して

    いる。

    -9-

  • 第 2章 新 しいパワー半導体デバイスとソフ トスイッチング動作モー ド

    2.1 緒言

    従来、パワー半導体デバイスとしてはサイリスタが広 く使用されてきた。 しかし、

    サイリスタは自己消弧不可能なデバイスであるため、転流回路が必要となるなど適用

    範囲が限定される。 その後、自己消弧可能なデバイスである、ゲー トターンオフサイ

    リスタ(GTO)の出現とバイポーラ トランジスタの大容量化により応用範囲が急激に広

    まった。最近ではsIパワー半導体デバイスやMOSゲー トパワー半導体デバイスの進歩

    により導通損失の低減やより高い周波数領域での使用が可能となった。本章では、こ

    れら新形パワー半導体デバイスの分類並びに相互比較を行い、更に1デバイス当たり

    の電力容量が大きいSIパワー半導体デバイスと近年急速にフアミリが増えているMOS

    ゲー トパワー半導体デバイスについて特徴 と駆動方法について述べている。 次に、電

    力変換回路に必要不可欠なパワー用高速ダイオー ドの問題点と現状を明らかにしてい

    る。 さらに、現在電力変換回路研究の主要なテーマとなっているソフ トスイッチング

    動作の定義を行い、パワー半導体デバイスとの適性について述べている。

    2.2 パワー半導体デバイスの位置づけと評価

    自己消弧形のパワーデバイスは構造からバイポーラ系、MOS系、sI系に分けられ、

    さらにこれらは トランジスタ群 とサイリスタ群に分けられる。 このように自己消弧形

    のパワー半導体デバイスを分類 したものを表 2.1に示す。MOSFET・SITなどのユニポーラデバイスはスイッチング速度が速 く、テイル電流も存

    在 しないため、スイッチング損失が最 も少ないが、導通損失が大きい0

    IGBT、MCT、ち-SITなどのバイポーラデバイスは電圧降下が小 さく、周波数が数

    10kHzの領域での適用が拡大 している。このうち、 もっとも普及が進んでいるのは

    IGBTである。

    MCTは最近市場に登場 したばかりであり、応用技術、駆動技術が確立 していないが、

    電圧降下が非常に小さいため、大電流用途に有望である。

    表 2.1 自己消弧パワー半導体デバイスの分頬

    バイポーラ系 MOS系 SJA

    トランジスタ群 バイポーラトランジスタ MOSFET SIT

    -10-

  • B-SITは製品の供給が十分でなく、駆動技術も確立していない。

    図2.1は最新のパワー半導体デバイスの適用範囲を示している。 又、各種パワー半

    導体デバイスの特徴を表2.2に、特性を比較したものを表2.3に、総合評価を1

    から5までの点数で行ったものを表2.4に示す。

    1K IOK IOOK IM

    周波数(Hz)

    図 2.1 パワー半導体デバイスの適用可能範囲

    表 2.2 自己消弧パワー半導体デバイスの特徴

    パワー半導体デバイス 駆動電力 直列接続 並列接続 過電流保護 過電圧保護 PWM周波数

    GTOサイリスタ 大 ○ ○ △ ○ 3kHz

    バイポーラ トランジスタ 中 × ◎○ ○ 10kHzバイポーラ トランジスタモジュール 中 × ◎○ ○ 10kHZ

    パワーMOSFET 小 × ◎◎○ 500kHzパワーMOSFETモジュール 小 × ◎◎○ 70kHz

    IGBT 小 × ◎○ ◎20kHzMCT 小 × ◎○ △ 10kHz

    Slサイリスタ 小 ○ ○ △ ○ 10kHz

    -ll-

  • 表 2.3 各種スイッチングパワー半導体デバイスの特性比較

    GTOサイ リスタ Slサイリスタ バイポーラトランジスタ パワーMOSFET lGBT SIT MCT

    最大定格 6000V-500A 2500V-600A 1400V-400A 500V-150A 1700V-300A 1500V-180A 1000V-100A4000A-4500V 800A-1200V 800A-300V 150A-500V 800A-600V 180A-1500V 100A-1000V

    オン電圧 2.5V 2.5V 2.5V 6.5V 2.5V 30V 1.1V

    ゲー ト駆動 電流 電圧 電流 電圧 電圧 電圧 電圧

    ターンオン時間 8.0LlS 3.OLJS 2.oils 1,OpS 1.0ト応 0.3ーlS 0.2トlS

    ターンオフ時間 14pS 3.2pS 14LLS 0.7トlS 2.0LlS 0.3ーS 2.OpS

    di/dt耐量 200A/PS 300JVLLS - - - - 2000叫 S

    dV/dt耐量 600V小S 2000V小S - - - - 20000V小S

    表 2.4 各種スイッチングパワー半導体デバイスの総合評価

    GTO バイポーラトランジスタ .̂r7-MOSFET lGBT MCT Slサイリスタ SIT

    耐圧 5 4 2 4 4 4 3

    dV/dt耐量 2 3 4 4 5 4 4

    電流容量 5 4 1 4 5 4 2

    導通時飽和電圧 5 4 1 3 5 4 1

    入力インピーダンス 1 1 5 5 5 3 4

    ターンオフに必要なエネルギー 1 2 5 5 5 2 4

    許容周波数 1 2 5 4 3 3 5

    コス ト 1 5 4 4 2 2 4

    供給状況 3 5 4 4 1 1 2

    -12-

  • 2.3 SLパワー半導体デバイスの位置づけと駆動インターフェース回路

    静電誘導(statichduction:SI)デバイスは国内で発明されたパワー半導体デバイスで、

    SIパワー トランジスタ(SIT)、SIサイリスタ(SITh)、バイポーラモー ドsIトランジスタ

    (B-SIT)がある。 図2.2にSIT、SIサイリスタの構造とシンボルを示す。図2.3にはsIパワー半導体デバイスの電力と周波数に関する適用範囲を示す。なお、B-SITはsIT

    と不純物濃度が異なる程度で構造は同様である。

    sITの特徴は、次のようにまとめられる。

    (1)ユニポーラデバイスであり、テイル電流がなく、高速スイッチング動作ができる。

    (2)高耐圧大容量の製品が製作可能で、電力密度が高くすることができ、単機容量を大

    きくすることができる。

    (3)パワーMOSFETと比べてもオン抵抗が大きく、導通損失が多い。しかしながら、

    sITはゲー ト電圧を正にバイアスすると導適時の電圧降下による損失が低減でき

    る。又、SITは並列接続は容易で、並列合成抵抗を低下させることができ、しかも

    大電流化することができる。

    (4)パワーMOSFETに比べチャネル部分の構造が単純であるため、電流サージに強い。

    (5)ノーマリオンのデバイスであるため、駆動回路 ・保護回路が複雑となる。

    sITのこのような特徴により、定格の大きいデバイスは周波数が100kHz~400kHz帯の

    大電力のインバータに使用され、特に高周波特性を改善 したデバイスはMHz帯の高周

    波インバータに使用可能である。 又、sIトランジスタモジュールも市販されており、

    使いやすい状況にある。

    0 0 0 0 0

    n

    D

    G

  • sIサイリスタはMOSFETに対するIGBTと同様sITの ドレイン側にpn接合を追加した構造となっており、sITに比べスイッチング速度は遅いものの、導通損失が少ない。しか

    し、駆動回路が複雑で、デバイスの製造が難しく、製品化例は少ない0

    B_SITはsITのチャネル付近の不純物濃度を変え、ノーマリオフとしたパワー半導体デ

    バイスであり、ゲー トを正の電圧で駆動しバイポーラモー ドで動作させるもので、ス

    イッチング速度はsITよりも遅いものの、導通損失がsITと比較して非常に少ない。こ

    れはバッテリ駆動の大電力のスイッチモード電力変換装置への応用がみられ、小容量

    高周波インバータ-の応用も期待されている。

    sITの駆動回路の例を図2.4に示す。sITは導通損失を減少させるため、高導適時に

    ゲー トをわずかに正の電圧にすることが望ましい。又、速断時には電圧サージにも余

    裕をもって遮断状態を維持するためゲートに-48Vを与える。 次にSIサイリスタの駆動

    回路の例を図2.5に示す。 sIサイリスタはターンオンは容易であるが、ターンオフ

    時にはアノード電流値と同じ電流をゲー トから時間変化率100叫 sec以上で引き抜く必要があり、電流供給能力を非常に大きくする必要がある。

    (NH

    )痴漢匪

    10 100 1k lOk 一ook lM

    電力(W)

    匡 ]高周波SIT

    Eヨ sITEヨ B-SIT

    図2.3 Slパワー半導体デバイスの応用範囲

    -14-

  • 図 2.4 SJTの駆動回路の例

    一 ㌔⊥

    Q1 5VR1

    Q2R2R3T cl R4 D1

    R5 Q3 Dz1

    R6

    OFFON

    図 2.5 Slサイリスタの駆動回路の例

    -15-

  • 2.4 MOSゲー トパワー半導体デバイスの位置づけと駆動インターフェース回路

    現在パワースイッチング用に使用されているMOSゲートパワー半導体デバイスには

    パワーMOSFET、IGBT、MCTがある。この他にMOS-SIThは現在開発されているが、

    まだ市販されていない。MOSゲートパワーデバイスは、スイッチング速度が速い、駆

    動電力が小さく駆動回路が簡略化できる、インテリジェント化しやすい、などの特徴

    を持ち、数十kHz以上の周波数帯域において小容量から大容量のパワー半導体デバイス

    がシリーズ化されている。 これらMOSゲートパワー半導体デバイスの構造とシンボル

    を図2.6に示す。

    これらのうちパワーMOSFETの特徴は次のようにまとめられる。

    (1)スイッチング速度が最も速く、周波数が100kHz以上の領域で使用可能である。

    (2)2次降伏がなく、As°(AreaofSafetyOperation)が最も広い.

    (3)高耐圧になると急激にオン抵抗が高くなり、電流容量の大きい品種は耐圧500V以下に限られる。

    (4)入力容量が大きく、MOSゲー トパワー半導体デバイスの中では駆動電力が大き

    い 。

    (5)耐圧が100V以下の品種ではオン抵抗が非常に低く、IGBT、MCTよりも導通損失が少なくなる。

    (6)オン抵抗は負の温度係数を持つため、並列接続時に電流集中が起こらない。

    圭 ≒

    ii iiii i iiiD

    基 軸

    P

    rwq"qJtlq"++"C

    - d E

    n

    wh++"/+JiwJhmJjK

    G埠

    (a) ∩チャンネルMOSFET (b) ∩チャンネルIGBT (C) p形MCT

    図2.6 各種MOSゲー トパワー半導体デバイスの構造とシンボル

    -16-

  • IGBTには次のような特徴がある。

    (1)MOSゲー トパワー半導体デバイスであるため、駆動が電圧源で容易に行え、同定

    格のパワーMOSFETよりもゲー ト容量が小さく、駆動電力が小さい。

    (2)高電流領域において電圧降下は負の温度係数を持つため、並列接続時に電流集中が

    起こらない。

    (3)導通損失がパワーMOSFETよりも小さい。

    (4)スイッチング速度はパワーMOSFETより遅いが、バイポーラトランジスタよりは速い。

    (5)ターンオフ時にテイル電流が存在するため、ターンオフ損失が大きい0

    (6)ASOが広い。

    (7)電圧定格が1700Vのものまでシリーズ化されている。

    (8)ソフトスイッチング用IGBTは150kHzまでの周波数帯で動作できる。

    IGBTはスイッチング速度とオン電圧の間で トレードオフの関係があるが、年々特性が

    改善されており、現在は第3世代のものが製品化されている。IGBTの世代別スイッチ

    ング速度とオン電圧の トレー ドオフの関係を図2.7に示す。

    MCTは最近市場に登場 したばかりの新 しいパワー半導体デバイスで、特徴 としては

    IGBTよりさらに導通損失が小さく、駆動電力も小さいが、駆動波形に対する規定が厳

    しいため駆動が難しく、共振DCリンクインバータによるVSCF(VariableSpeedConstant

    Frequency)への応用例があるものの、新しいデバイスであるため応用技術が十分確立していない。

    (>)出師最盛匝SFL〃

    H

    6

    6n

    n

    5

    4

    3

    0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9

    ターンオフ時降下時間(LLS)

    図2.7 世代別IGBTの飽和電圧とターンオフ速度の トレー ドオフ

    -17-

  • MOSゲー トパワー半導体デバイスの駆動回路について、パワーMOSFETとIGBTにつ

    いでは同一の回路が使用可能であるが、IGBTの場合ゲート電圧に対するコレクタ・エ

    ミッタ間飽和電圧がパワーMOSFETに比べ高い電圧まで不飽和傾向を示すためオン時

    のゲー ト電圧を高くすることが望ましいo具体的な駆動回路例を図2・8に示す.図

    2.8(a)の回路はパルス トランスで信号を絶縁するもので、駆動信号のデューティサ

    イクルが約50%の場合にのみ使用可能であるo これは部品点数が少なく補助電源が不

    要で、さらに高い周波数において使用可能である特徴があるo 又、ターンオフ時に

    ゲー ト電圧が負になるのでターンオフ速度を遠くできるo 図2・8(b)の回路は信号を

    フォトカプラで絶縁 し、ゲー トを単電源で駆動するもので、デューティサイクルが

    50%でなく、ターンオフ速度が遅くてもよい場合に使用できるo 図2・8(C)の回路は

    停号をフォトカプラで絶縁 し、ゲー トを正負に駆動するもので、デューティサイクル

    が50%でなく、ターンオフ速度を遠 くする必要がある場合に使用するo MCTはゲート

    駆動波形の規格が厳 しく、図2・9のようになっている。図2・ 10にはMCTの駆動

    回路の例を示す。これは 信号をフォトカプラで絶縁し、パワーMOSFETでゲートを駆

    動するものである。

    ー18-

  • (a)パルス トランス絶縁 ・正負駆動

    (b) フォ トカプラ絶縁 ・単電源駆動

    (C) フォ トカプラ絶縁 ・正負駆動

    図2.8 MOSFET・lGBTの各種駆動回路

    -19-

  • 図2.9 MCTの駆動信号規格

    図 2.10 MCTの駆動回路

    -20-

  • 2.5 パワー用高速ダイオー ド

    パワー用高速ダイオー ドは、自己消弧形のパワー半導体デバイスに比べると地味で

    はあるが、常に改良が続けられている。スイッチング用ダイオー ドで問題となるの

    は、リカバリと順方向電圧降下である。 リカバリ特性はpn接合ダイオー ドの転流時

    に、小数キャリアが消滅するまでの間逆電流が流れるものである。 この現象を図2.

    11に示す.ダイオー ドに順方向電流左を流しておき、時間変化率di/dtで減少させてい

    くと電流が逆方向に流れはじめる。 この逆電流はピーク値IRMとなった後減少 してい

    く.この逆電流が流れる時間tnを逆回復時間といい、逆方向に流れる電荷量Qqを逆回

    復電荷量という.tu,Qnはdi/dtによって大幅に変化する。例えばブリッジ形インバータにおいて電流進みモー ドとなるとパワー半導体デバイスのターンオン時にこのリカバ

    リ特性が発生し、スイッチング損失 ・EMIノイズが大幅に増加するため、約100kHz以

    上の周波数帯には通用できない。

    近年はtnを特に短 くしたファース トリカバリダイオー ドが一般に使用されているが、パ

    ワー半導体デバイスの特性に比べて十分ではない。また、リカバリ時間と順方向電圧

    降下は トレー ドオフの関係にあり、一般にファース トリカバリダイオー ドは導通損失

    が多い。ファース トリカバリタイプで、順方向電圧降下を小さくした高効率ダイオー

    ドも製品化されているが、耐圧が約200VLかなく、大電力インバータ回路には適用 し

    がたい。現在市販されているファース トリカバリダイオー ドで、最も高速である製品

    は、定格600VIOOA,t"=50nS、定格1200V75A,tn=100nSとなっている。

    パワー用高速ダイオードにはこの他にショットキバリアダイオー ド(SBD)があり、原理

    的にリカバリ特性がなく高速で、順方向電圧降下が小さいが、耐圧が低 く、漏れ電流

    が多 く、また電極間容量が多いため転流時にリカバリ電流 と同様な充電電流が流れ

    る。 耐圧についてはシリコンを使用した大電流用のもので100V程度 しかなく、GaAsを

    使用したものでも定格が180V14A、350V2Aであり、DC-DCコンバータの2次側整流に

    しか使用できない。

    図 2. 11 ダイオー ドのリカバリ現象

    -21-

  • 2.6 ソフ トスイッチング動作モー ド

    ハー ドスイッチング方式の電力変換回路では、パワー半導体デバイスがスイッチン

    グ動作を行うときの電圧 ・電流波形は図2.12(a)のように台形波状で重なりを生

    じ、スイッチング損失が発生する。すなわち、スイッチ電圧 ・電流の干渉があり、そ

    の軌跡が図2. 12(b)のように第一象限能動領域を通過し、オン ・オフ動作点でス

    イッチング損失を生じる。これは高速スイッチングデバイスを用いた場合でもこの重

    なり期間が短 くなるだけでスイッチング損失は周波数に比例 して増加 し、高周波動作

    時は発熱が問題となる。 この状態でスイッチング損失を減少させるにはスイッチング

    時間を短 くすればよいが、その場合di/dtが大きくなるため回路の浮遊インダクタンス

    によって大きな電圧サージ発生する。 さらにパワーMOSFETなど出力容量の大きいデ

    バイスを使用 した場合、dv/dtが大きくなると電流サージも大きくなり、パワー半導体

    デバイスのス トレスが増加するため信頼性が低下し、EMIノイズを発生する。

    このようなパワー半導体デバイスのスイッチング損失を減少させるソフトスイッチン

    グ転流方式は次のように分類される。

    (1)スイッチング動作時のスイッチ電圧がゼロ値で遷移する形式(zvs)。

    (2)スイッチング動作時のスイッチ電流がゼロ値で遷移する形式(zcs)0

    (3)スイッチング動作時のスイッチ電圧 ・電流が共にゼロ借で遷移する形式(zvs・

    ZCS)o図2.13にZVS動作時の電圧 ・電流波形を、図2.14にZCS動作時の電圧 ・電流

    波形を、図2.15にZVS・ZCS動作時の電圧 ・電流波形を示す。図2.13-図2.

    15の(a)~(C)のそれぞれに対応するⅠ-V軌跡を図2.15に示す。図2.13(a)~図

    2.15(a)では電圧 ・電流波形にわずかな重なりがあるが、図2.12のハードス

    イッチング方式に比べるとスイッチング損失が減少していることがわかる。 この動作

    (a) 電圧 ・電流波形

    I:A I-=-=-

    (b) トV軌跡

    図2.12 ハー ドスイッチング動作時の電圧 ・電流波形とトV軌跡

    -22-

  • パターンは共振タンク方式などにみられる。 図2.13(b)~図2.15(b)、図2.1

    3(C)~図2.15(C)は共振スイッチを用いたコンバータにみられるが、スイッチ電

    圧 ・電流はほとんど重なりを生じないためスイッチング損失は非常に少ない。

    ここで、ソフトスイッチング動作とスイッチングデバイスの関係について考える。パ

    ワーMOSFETやSITなどのユニポーラデバイスにはターンオフ時のテイル電流が存在 し

    ないが、出力容量が大きいためzvs動作が適する。バイポーラトランジスタ ・IGBT・

    MCTなどのバイポーラデバイスにはテイル電流が存在 し、出力容量は比較的小さいた

    めzcs動作が通する。

    l I l巴≡ 5 巴≡き

    ターンオフ ターンオン

    期間 期間

    工 qq血

    ターンオフ期間

    「 ハ 了

    ターンオフ ターンオン

    期間 期間

    (b)

    ターンオン期間

    (C)

    図 2.13 ZVS動作時の電圧 ・電流波形

    -23-

  • 」 .:.-・!;̂1-、了弓コ≡き ∈:≡き

    ターンオン ターンオフ期同 期間

    ターンオン

    期間

    二 二

    ター ンオン期間

    (b)

    ターンオフ

    期間

    (C)

    図 2.14 ZCS動作時の電圧 ・電流波形

    Vsw EJ〝 Vsw

    / 、 I、:,_=-I

    二 もll l)H PLC,,

    ターンオン

    期間

    ターンオフ

    期間

    ターンオフ期間

    Vsw lsw Vsw

    .;,.二 !ターンオン

    期間

    (b)

    (C)

    図 2.15 ZVS・ZCS動作時の電圧 ・電流波形

    ー24-

    ターンオフ

    期間

  • o".l上 w oU v,w

    oト

    図 2. 16 ソフ トスイッチング動作時のト∨軌跡

    -25-

  • 2.7 結言

    本章では、高周波スイッチング用パワー半導体デバイスを体系的に分類 し,特性比

    較を行った結果について述べ、高周波電力変換応用に適したパワー半導体デバイスに

    ついて整理 した。従来、自己消弧形のパワー半導体デバイスとしてはGTOサイリス

    タ、バイポーラパワー トランジスタが主流であったが、MOSゲー トパワー半導体デバ

    イスが登場 し、その性能上の特長から急速に普及していることを強調 した。

    MOSゲー トパワー半導体デバイスファミリーに対 しSIパワー半導体デバイスのうちsI

    トランジスタはスイッチング速度が速 く、高耐圧大容量品が製品化されており、これ

    はソフトスイッチングモー ドで動作させる場合、100kHz以上の周波数帯で大容量の高

    周波インバータに十分使用可能であることを指摘 した。又、特殊用途の高付加価値シ

    ステムとして重要であることを示 した。

    MOSゲー トパワー半導体デバイスはすでに普及しているパワーMOSFETとIGBTの他に

    今後期待されているMCTはソフトスイッチング高周波電力変換用として最も優れたも

    のであることを指摘 した。パワーMOSFETはスイッチング速度が速い特長があり、

    100kHz以上の小容量インバータに適し、特にIGBT、MCTは導通損失が小さいという

    特長があり数10kHz帯の中大容量機に適していることを述べた。

    また、sIパワー半導体デバイスとMOSゲー トパワー半導体デバイスの駆動回路を示

    し、駆動回路技術 としてSIパワー トランジスタは導適時ゲー ト電圧を正にバイアスす

    ると低電圧降下動作をし、導通損失が最小にできるものであることを示した。

    さらに電力変換回路では地味ながら必要不可欠なパワー用高速ダイオー ドの問題点を

    示 し、使用には注意が必要であることを指摘 した。

    最後にスイッチング用パワー半導体デバイスに特性能力以上の性能を発揮させる方法

    として活発に研究が行われているソフ トスイッチング動作モー ドの明確な定義を行

    い、スイッチング用パワー半導体デバイスの特性により最適なモードで動作させる必

    要があることを述べた。

    -26-

  • 第 3章 高周波誘導加熱の概要

    3.1 緒言

    本論文で取 り扱う高周波電力周波数変換技術の重要な応用分野の 1つとしての誘導

    加熱電源システムは、産業分野では、電縫管加熱、金属溶解、表面焼 き入れ、鍛造加

    熱などに利用され、民生分野では、電磁調理器、IHジャーなどに利用されている。 な

    かでも新 しい試みとして誘導加熱を基本とした電磁温水器、電磁ボイラー、電磁熱交

    換器に関する最近の技術開発には目を見張るものがある。誘導加熱は燃焼加熱に比べ

    様々なメリットを持ち、新形パワー半導体デバイスを用いた高周波インバータ技術 と

    制御技術の進歩と共に新 しいユニークな応用分野-の適用例が考えられている。本章

    では、誘導加熱の特徴並びに加熱のメカニズムについて概要を述べている。

    3.2 誘導加熱の原理

    周知のように誘導加熱は、ファラデーの電磁誘導現象を利用 したもので、誘導子す

    なわちワークコイルで作 られる高周波交流磁界中に導電性の物質を置 くと誘導渦電流

    が流れ、ジュール損失により発熱する。 図3.1のようなソレノイドコイル中に置い

    た金属円柱に流れる誘導電流の表面から深さx(m)の位置の電流密度i(A/m)はソレノイ

    ドコイルと金属円柱の長さ及び直径が十分大きいとすると次式のようになる。

    EoEo

    X α

    8

    図3.1 誘導加熱の原理 図3.2 金属円柱内の電流分布

    -27-

  • I

    l= loe6

    ただし、

    io:金属円柱表面の電流密度 (A/m)であり、又∂は次式で与えられる。

    ∂=5.03×102Pp,・f

    (nl)

    (3. 1)

    (3. 2)

    ただし、

    p:金属の固有電気抵抗 (L2・m)

    FL,:比透磁率

    ∫:周波数 (Hz)ここで、金属円柱内部の電流密度分布は図3.2(a)のようになる。 この図の斜線で示

    す全電流が表面部分の電流密嵐 Oのまま図3・2(b)のように一様に分布 していると仮

    定するとその幅は∂(m)となる。 この∂を電流の浸透深さといい、誘導加熱の周波数を

    選定する重要な催となっている。又、この幅∂内の発熱量は仝発熱量の約87%になる。

    一方、図3.1の金属円柱に発生する電力p(l叫 ま電磁誘導加熱理論によれば

    p=47r2・f・Ho2・L・FL,・A・Q・10-7 (W) (3.3)ただし、

    Ho:円柱表面の磁束の強さ(A/m)

    i:金属円柱の長さ(m)

    A:金属円柱の断面積 (m2)

    a:円柱半径 (m)

    Q:2a/Sで決まる関数で、a/6-3.5付近で最大値約0.37をとる

    ここで、効率よく誘導加熱するための条件としてα/∂≧3.5を式(3.2)に代入すると

    f≧7・75×105石器 (3・ 4'

    となり、これが周波数を決定する一つの条件となる。この周波数は最低許容周波数と

    いわれている。 なお、高周波交流発生の高周波インバータの周波数選択により電流浸

    透深さ∂の指定がなされる。

    3.3 誘導加熱の等価回路

    図3.1に示 した加熱コイルと被加熱金属は図3.3に示す変圧器モデルによる等

    価回路で示される。 この回路を基本とした交流理論によれば

    vl=(Rl+j叫 )I.- ja)I2●

    0--jaMIl'(R2'j叫 )I2

    -28-

    (3.5)

    (3.6)

  • RI LIM L2 R2

    式(3・6)からI28ま

    ja w

    図3.3 誘導加熱の等価回路

    ● ● ●

    Jl=AJlR2+jaL2

    これを式(3.5)に代入して整理すると

    号-(Rl+A2R2)・jw(U A2ら)

    但し、

    aM M三三一-電磁結合因数

    凍 て両 -L2

    又、金属を加熱する電力pは

    p=I22R2=A2I12R2

    (3. 7)

    (3. 8)

    (3.9)

    (3.10)

    又、1次コイルとしての加熱コイルの電力損失はI12R.であるから、加熱効率rlは

    り-為 -竜 3̀・ll)

    すなわち77は1次コイルの抵抗を少なくするほど、電磁結合因数を大きくするほどよく

    なることがわかる。

    3.4 誘導加熱の特徴

    高周波の電気エネルギーによって被加熱物体としての金属を非接触電気加熱する誘

    導加熱は産業用の分野では電子管式高周波発振器の時代から使用されてきた。近年で

    は、高周波スイッチング用パワー半導体デバイスの進歩により、小型 ・軽量かつ高効

    率高性能、メンテナンスフリーの高周波インバータが小容量から大容量に至るまで産

    -29-

  • 業分野で実用化される他、家電民生の分野でも電磁誘導加熱が利用されるようになっ

    た。本章の冒頭に述べた誘導加熱応用の電磁熱交換装置など魅力ある新しい応用も考

    えられている。

    誘導加熱の長所は次のようにまとめられる。

    (l)加熱効率が高い

    エネルギーを一次エネルギーで比較した場合でも一般に燃焼加熱に比べて加熱効率

    が高い。

    (2)局部加熱が容易

    必要な箇所を必要な温度に加熱できる。投入エネルギー密度が大きいため必要部分

    のみの加熱が容易で不必要なエネルギーを消費しない。

    (3)急速加熱が可能

    投入エネルギー密度が大きく、短時間加熱ができるので放熱損失が小さい。

    (4)雰囲気加熱が可能

    不活性ガスや真空中で加熱できるため、酸化の防止や特定の気体と反応させること

    が可能。

    (5)高温加熱が可能

    金属の溶解、精錬、炭素の黒鉛化等は電気エネルギーによる加熱でなければ不可能

    である。

    (6)制御が容易

    電力の制御が簡単で、温度調整が容易であり、加熱後の加工、熱処理においても品

    質を維持することが容易である。

    (7)起動 ・停止が簡単

    必要な時だけ通電して加熱でき、不要な時に通電する必要がないため損失が少な

    い 。

    (8)炉の熱容量が小さい

    炉体の熱容量が小さいため消費エネルギーが少なく、熱応答性が早い。

    誘導加熱には少ないながらも以下のような短所がある。

    (1)エネルギー単価が高い

    現状では、化石エネルギーよりも単価が高い。

    (2)専用の発熱体の開発が必要である

    加熱する材料 ・形状 ・温度等の条件によって発熱体に相当する部分の開発が必要で

    ある。

    (3)電力系統への障害対策が必要である

    サイリスタを使用した整流回路方式やキャパシタ入力のダイオード整流回路方式

    は、入力系統に遅れ力率の歪み波電流や高調波障害電流が流れノイズを発生し、力

    率も悪 くなり電源設備容量も大きくなる。 この他、高周波の漏洩対策も必要であ

    る。

    -30-

  • (4)安全対策が必要である

    高周波インバータにはLC共振現象による高電圧を発生する箇所があり、安全対策

    が必要である。

    表3.1に誘導加熱の様々な応用分野と適用周波数を示す。

    表 3.1 誘導加熱の応用分野と適用周波数

    周波数(Hz)1 10 100 1k lOk 一ook lM IOM IOOM

    誘導炉

    鍛造用ビレットヒータ

    熱処理

    ろう付

    電縫管溶接

    ジャケットロール -電磁調理器 ■■■

    鉄鉱プロセス誘沸加熱 ■■--『■-薄板加熱

    エピタキシャル

    高周波熟プラズマ

    131-

  • 3.5 結言

    本章では、電力周波数変換技術の応用分野の1つである、誘導加熱について、その

    原理、等価回路を明らかにし、それから生じる特徴を述べた。誘導加熱は多くの長所

    を持ち、インバータ技術の進歩と共に産業用だけではなく家電民生の分野にも使用さ

    れるようになった。誘導加熱の原理より、希望する深さを効率良く加熱するためには

    材質により高周波の周波数を最適に選び、加熱コイルも最適に製作する必要があるこ

    とがわかる。

    ー32-

  • 第 4章・高周波インバータの基本回路形式

    4.1 緒言

    本章では、誘導加熱用電源として使用される高周波インバータの諸回路 トポロジー

    分類を体系的に行っている。高周波インバータの基本回路は直流側電源の形式により

    電圧給電形と電流給電形、負荷共振回路の形式により並列共振現象を利用 した電圧共

    振形と直列共振又は直並列共振現象を利用 した電流共振形、スイッチング用パワー半

    導体デバイスの数で 1石形から4石形のフルブリッジ形、制御方式からpwM制御、

    pFM制御、部分共振回路を付加する方式さらにシステム形式からチョッパ ・インバー

    タ構成形式、pwMコンバータ ・インバータ形式などの分類法が考えられ、代表的な方

    式について検討を加えている。

    4.2 高周波インバータの基本回路形式と特徴比較

    高周波共振形インバータは直流電源給電方式、負荷を含む共振タンク回路の構成形

    式、出力電力制御方式、スイッチング用パワー半導体デバイスの数や逆導通 ・逆阻止

    構造スイッチ、共振電圧クランプ方式、部分共振モー ドソフ トスイッチング方式など

    によって分類される。直流電源給電方式は電圧源制御方式を使用する電圧形と電流源

    制御方式を使用する電流形とに大別される。 ここで、電流給電形の例 としてフルブ

    リッジ電流形高周波インバータの構成、出力電圧形、出力電流波形を図4.1に示

    す。また、これと双対の回路 トポロジーとなる電圧給電形の例 としてフルブリッジ電

    圧形高周波インバータの構成、出力電圧形、出力電流波形を図4.2に示す。

    高周波電力周波数変換に使用される高周波インバータの基本回路 トポロジーには、

    大きく分けて並列共振 ・電流形と直列共振 ・電圧形とがある。

    並列共振 ・電流形インバータは、直流電圧源にリアクトル(DCL)を接続し、定電流源と

    してインバータに供給するもので�


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