情報指向ネットワークを用いた移動オブジェクトトラッキング

大阪市立大学 大学院工学研究科

阿多 信吾ata@eng.osaka-cu.ac.jp

田中達也、Eum Suyong、村田正幸（大阪大学）

電子情報通信学会 ICN 研究会 2018.12

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本研究は NICT 委託研究 (#184, ICN2020) の成果の一部です

情報指向ネットワークとは？

現状のインターネットの利用形態はコンテンツ指向

にもかかわらずネットワークはホスト指向

ネットワーク構成と利用実態の乖離

膨大なコンテンツをいかに効率よく扱うか？という仕組みがネットワークにない

ICN (Information Centric Networking), CCN (Content Centric Networking)

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出典 ：V. Jacobson, et. al, “Networking Named Content,” ACM CoNEXT 2009.

IP ICN/CCN

通信形態 node, host, location 指向 コンテンツ指向

アドレッシング node identifier content identifier

名前解決 DNS あり、なし

キャッシュ アプリケーションごとに用意 ネットワークでサポート (in-

network caching)

マルチキャスト 一部で使用 標準機能

エニーキャスト 一部で使用（運用の設定） 標準機能

セキュリティ レイヤの追加 (SSL, IPSec,

…)

パケットに組み込み

トランスポート TCP 標準は未定

モビリティ ほとんどなし 標準（に組み込みたい）

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情報指向ネットワーク概要

名前によるアドレッシング IP アドレスではなく「名前」をパケットの宛先に

階層型名前構造

/building/floor/room/temperature

名前によるルーティング・フォワーディング順方向：FIB (Forwarding Information Base)

逆方向：PIT (Pending Interest Table)

コンテンツストアによるネットワーク内キャッシュ CS (Content Store) によるパケット単位のキャッシュ

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ICN の基本的な通信プロトコル

Interest/Data 交換 Consumer が Interest を送信

Forwarder が FIB を参照してルーティング

Producer が Data を返送（PIT を用いてルーティング）

CS によるコンテンツキャッシュ別の Consumer が Interest を送信した場合は CS から

Data を返送

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ConsumerA

Producer

ConsumerB

Interest Interest Interest

DataDataData

FIB

PIT

FIB

PIT

CS

Interest

Data

情報指向ネットワークのメリット

名前解決ノードとの不整合性の解消 ネットワークレイヤでコンテンツルーティングを行うことで上位層でのコンテンツ管理が不要に

ステートレス コンテンツごとに（セグメント位置も含めた）独立したパケットの送受信

セキュリティ コンテンツ自体への署名、暗号化

コンテンツキャッシュによる効果 コンテンツ取得性能の向上 トラヒックエンジニアリングの柔軟化 耐障害性の向上 コンテンツモビリティのサポート

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ネットワーク内 (in-network) XXX

当初は静的コンテンツを対象 ネットワーク内キャッシュで資源有効利用と性能向上

ネットワーク内で処理できるのはキャッシュだけではないはず CPU 資源を使ってもっと拡張性のあることができないか

CPU だけではなく他の処理（制御）にも使えないか？

ノードに拡張性を持たせて一括した名前で呼べないか？

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ConsumerA

Producer

Interest Interest Interest

DataDataData

FIB

PIT

FIB

PIT

In-networkProcessing

ICN によるネットワーク層プログラマビリティ

「名前」だけでどれだけプログラマビリティが実現できるの

か？

プログラマビリティは今後重要

特に IoT, M2M デバイス

デバイスのプログラマビリティは期待できない

センシングだけでなくアクチュエーションをどう実現するか

ICN はプログラマビリティの可能性を秘めている

（はず！）

可読性を有する「名前」

名前構造の柔軟性

名前ネイティブなルーティング

In-network processing によるエッジコンピューティング

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ファンクションモビリティとエッジコンピューティング

コンテンツキャッシュができればファンクションキャッシュもできるはず必要な場所に必要な量だけ「処理関数」を設置

人気のある処理、過負荷な処理は他ノードに分散

オンデマンド、動的に処理関数を配置して実行

ネットワーク内処理とコンテンツ（関数）キャッシュの組み合わせ ICN によるエッジコンピューティングを実現できる可能性

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研究の目的と位置づけ

プログラマブルネットワークとしての情報指向ネットワーク Interest-Data 交換 ⇔ API 呼出 による完全分散処理 「名前」を使った柔軟なパケット処理 直感的なコンテンツ取得 動的なコンテンツ取得、デバイスコントロール

In-network processing による情報処理 取得したデータの加工・集計 動的な処理の追加・配置

ネットワーク層による最適化 コンテンツだけでなくファンクションも

プログラマブルフレームワークの有用性？ アプリケーション（ユースケース）を考える

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これまでの取り組み

プログラマブルフレームワークとしての情報指向ネットワークの実現に向けて自律移動型ルータ（Flying Router）による情報取得

ルータ制御自体も ICN で

名前付き関数の実現手法

名前空間によるスライシングと仮想化技術の組み合わせ

移動物体トラッキングシステム

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NFD/

/abc

/def

NFDabc+

NFDdef+

ICN で移動体のトラッキング機能を提供 車両からのメッセージをもとにネットワークが位置を把握

移動体の位置をもとに柔軟にカメラを決定・切替 映像を要求する Interest をマルチキャスト

車両を撮影しているカメラが Interest に応答

ICN ではフレーム単位で迅速にカメラの切替が可能

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ICN による移動体トラッキングシステムの実現

車両A

要求コンテンツ「車両Aを撮影している路

上カメラの映像」

車両情報のネットワーク登録

マルチキャスト

Interest

InterestInterest

data

Register

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概要

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詳細

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ICN のストラテジ層でメッセージ受信時の処理を定義 TrackingCar-strategy : 移動体トラッキングとカメラの判断

Multicast-strategy : Interest のマルチキャスト

サービス提供に必要な新たなデータ構造を追加 Car-List : エリア内の車両情報を格納

ノードでアプリケーションを実行するプログラムを作成 Consumer : 映像要求・受信、 Producer : 映像配信

Register : 車両の登録

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設計システムの構成

システムの構成図

*NFD : NDN Forwarding Daemon

*

Consumer program

Multicast-

strategy

NFD

data

Interest

Multicast-

strategy

NFD

User node

Interest

data

Router

Interest

data

TrackingCar-

strategy

NFD

Car-List

Producer program

dataInterest

Camera node

Register program

Multicast-

strategy

NFD

Interest

Interest

Car

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設計したシステムを NDN を用いて実機に実装 カメラノード 3 台：Raspberry Pi にカメラを接続

車両 1 台：ラジコンカーの荷台に Raspberry Pi を搭載

ラジコンはリモコンによって手動操作

中継ノード 1 台： Raspberry Pi

ユーザノード 1 台：ノートPC

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トラッキングシステムの実装

Raspberry Pi を搭載したラジコンカー

使用した機器 / ツール 用途

Raspberry Pi 3 model B 小型コンピュータ

RPi Camera Module V2 カメラモジュール

TAMIYA 1/24RC Heavy Dump ラジコンカー

ndn-cxx 0.6.0 NDN ライブラリ

NFD 0.6.0 NDN 転送デーモン

mjpg-streamer 画像フレーム生成

C++ システムの開発言語

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Raspberry Pi(192.168.2.115)

User Node(192.168.2.110)

Consumer

Raspberry Pi(192.168.2.114)

Raspberry Pi(192.168.2.113)

Raspberry Pi(192.168.2.109)

Router

Camera ACamera BCamera C

Car トラッキングによりカメラが動的に切り替わることを検証

ネットワーク構成 (右上図) カメラノード

右下図のように配置

Interest を受信したらカメラ映像から Data を生成・送信

ラジコンカー

リモコン操作により走行

現在地を手動で指定して、ネットワークに送信

ユーザノード

車両名を含んだ Interest を送信

/TrackingCar/RoadCamera/

CarA/<frame number>

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デモンストレーション環境

デモンストレーション環境 (A 棟 6F 廊下)

ネットワーク構成 (2.4GHz 帯 Wi-Fi により接続)

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Raspberry Pi(192.168.2.111)

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デモンストレーション動画

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In-Network Processing による柔軟なサービスの提供 例：複数カメラからの映像を 1 フレームにマージ

NFD の strategy で In-Network Processing を実装 二台のカメラの撮影領域をフレームが進むにつれて変更

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In-Network Processing の活用

ConsumerRouter Data Processing

z

In-Network Processing を行って取得した映像

Camera ACamera B

カメラと車両の配置図

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まとめ ICN でサービス機能を提供し動的なサービスを実現 機能として移動体のトラッキングに着目 移動体に応じてカメラを動的に切り替える映像配信サービスを設計

設計した移動体トラッキングシステムを実機を用いて実装 ICN 基盤で動的なサービスを実現 In-Network Processing を活用することで、より柔軟なサービス提供の可能性が向上

今後の課題 設計したシステムの実車両や実規模への展開 実規模におけるシステムの数値的評価を含めた詳細な分析

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まとめと今後の課題