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Term paper - Keio University2009 年春学期 有澤誠 研究会 JRE プロジェクト Term paper...

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2009 年春学期 有澤誠 研究会 JRE プロジェクト Term paper 環境情報学部 2 達誠 70847987 t08798tf
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2009 年春学期

有澤誠 研究会 JRE プロジェクト

Term paper

環境情報学部 2 年 付 達誠

70847987 t08798tf

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目次

1 研究テーマ

2 研究目標と今年の目標

3 問題意識

4 研究の意義

4.1 環境面での意義

4.2 利便さの面での意義

5 研究対象地域とその理由

6 研究成果① 鉄道網の比較

6.1 東京 23 区、名古屋と豊田市の比較

6.2 名古屋市内の地区別比較

6.3 鉄道網と公共交通利用に関する国民意識

事前の注意点

結果と分析 1 新宿

結果と分析 2 中京交通圏

結果と分析 3 名古屋市

結果と分析 4 豊田市

6.4 鉄道網の影響 まとめ

7 研究成果② 人口密度の比較

7.1 人口密度調査の注意点

7.2 東京 23 区、名古屋市と豊田市における人口密度と鉄道利用率の比較

7.3 名古屋市内での人工密度と鉄道利用率の比較

7.4 主要都市における市街化区域の人口密度と鉄道利用割合の関係分析

8 研究成果③ 自動車利用率を促進する要因

8.1 東京都と名古屋における高速道路の渋滞状況の比較

東京都

名古屋

8.2 高速道路における交通渋滞と自動車利用率の関係のまとめ

9 研究成果④ 都市間移動の比較

9.1 研究成果④ 名古屋駅から豊田市駅、立川駅から新宿駅における各交通の所要時間

10 民鉄における 運賃の比較

11 全体のまとめ

12 謝辞

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1 研究テーマ

公共交通促進による持続可能な社会の形成

2 研究目標と今年の目標

京都議定書における日本の温室効果ガス削減目標である 6%の達成とポスト京都議定書

における日本の削減目標の達成、持続可能な社会の形成を目指し、削減目標に貢献する公

共交通利用促進を進める方法を考察する。

まず、今期は公共交通利用を妨げる要因、自動車利用を促進する要因を調査、分析する。

そして、来期に国、企業、国民が実施できる公共交通利用促進策を考察することで公共交

通の利用促進を目指す。

3 問題意識

現在、地球温暖化による被害は年々深刻化してきている。具体的な地球温暖化の被害と

しては、海面上昇や気候変動による洪水と旱魃の回数増加、台風、ハリケーンなどの巨大

化や生物分布図変化による大量絶滅、疫病の範囲増加などが挙げられる。

また人間社会に対しては、気候変動、海面上昇により土地を奪われたことによる紛争、

飢餓等が懸念される。具体的にはアフリカにおける干ばつ問題の深刻化による紛争などが

これまでに指摘されている。よって先進国、開発途上国に関わらず早急に対策をしなけれ

ばならない状態である。

我が国の代表的な対策としては温室効果ガス排出の総量規制、省エネルギー、新エネル

ギー技術の推進が挙げられるがいずれも欠点がある。

具体的には総量規制は確実に温室効果ガスの排出を抑えられるが企業の競争力を奪うと

いう可能性がある。なおかつ企業が規制を回避しようとするために、より規制の緩い海外

へ工場を移転させる可能性がある。そうなった場合国内の経済に打撃を与えるばかりか地

球規模で考えると温室効果ガスが削減されていないという事態になってしまう。特に現在

の経済危機への影響を考えると総量規制は少なからぬ欠点があるといえる。

これに対してエネルギー技術の促進は環境対策だけではなくエネルギー問題への回答と

もなるため非常に有効な対策ではあるものの我が国では世界トップレベルのエネルギー技

術を持っているため、これ以上に技術開発を進めるにはコストが他国よりも多くかかって

しまうという欠点がある。さらに、技術開発の進行する速度、普及する速度に不確定な部

分があり高いコストとも合わさって今後どれだけ温室効果ガスを削減していけるか不確か

である。よってこれらの対策はそれぞれ短所もあるので、それに加えて他の対策もとる必

要があり、私は新たに公共交通の促進策をとることが良いと考える。

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4 研究の意義

4.1 環境面での意義

私が公共交通の推進策を研究理由としてはまず、日本における CO2排出量を産業、家庭、

運輸などの部門別に分けると(注 1)運輸部門は全体のおよそ 20%を占めておりこれは産

業の 35%に次ぐ値である。そして産業は最も CO2を排出している部門ではあるが、すでに

エネルギー効率は高くそれ以上の CO2削減には大きなコストが伴う。

それに対して運輸部門もエネルギー効率は高いもののその(注 2)CO2排出の内訳のうち

半分程度が自家用車の利用が占めている。したがってその利用率を減らせば運輸部門全体

の CO2排出量も減るのである。

さらなる理由としては自動車の CO2 排出量が公共交通機関と比べ非常に高いというのが

ある。具体的に以下のデータが挙げられる。

《CO2排出量の比較-1人を1km運ぶのに排出されるCO2》

出典 交通量対策課ホームページ

ハイブリッドカーや最新の燃費効率の高い車は多少このデータよりも CO2 排出量が減る

と考えられるがそれでも公共交通と比べるとはるかに CO2 排出量が多いと言える。また、

電気自動車、燃料自動車等の CO2 排出量は非常に少ないと考えられるが現状ではこれらの

車は値段が高く、今後どれほど社会に普及するか不透明な状況である。

よってこれら二つの環境対策面の理由から公共交通の推進策を研究する意義はあると言

える。

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4.2 利便さの面での意義

これまでは環境面での意義を述べてきたが、次に利便性の面での意義を述べる。現在我

が国でも高齢化社会が進んでおり高齢者にとって自動車の運転は安全面などで問題がある

と言える。また、観光客や学生等にとっても公共交通の利用がしやすい状態であるほうが

より移動もしやすい。さらに、鉄道の利用が促進された場合には自動車の利用割合が多少

減るので渋滞も緩和される

よって利便さの面でも公共交通の利用を促進する意義はあると言えその研究をする意義

もあると言える。

5 研究対象地域とその理由

今期は愛知県と東京における鉄道利用割合を調査し比較することによってそれぞれの県

がいかなる要因で交通の利用割合が決められていた考察する。特に愛知県における要因を

様々な角度から考察をする。

愛知県と東京都を対象とした理由としては以下のデータを参考にしながら述べる。

大都市圏輸送機関別旅客人員の推移

出典 数字で見る鉄道 2006 p25 国土交通省 監修 運輸政策研究機構 発行

このデータから読み取れるように愛知県を中心とする中京交通圏が他の交通圏と比べ自

動車の利用率がきわめて高い。それだけではなく昭和 45 年から平成 15 年まで推移として

他の交通圏における鉄道利用割合が横ばいなのに対して中京交通圏のみ鉄道利用割合が

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

自動車

鉄道

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10%以上下がっていることが挙げられる。そして愛知県の中心都市である名古屋における

運輸部門の CO2排出量は(注 3)全体における 30%と全国平均の 20%を 10%も上回って

いる。

それに対して東京都を中心とする首都交通圏は鉄道利用割合が高く、特に東京は全国で

も一番、鉄道利用割合が高い。

よって日本の主要都市がある県、都で鉄道利用割合がかなり低い愛知と鉄道利用割合が

最も高い東京を様々な視点で比較分析することによって鉄道利用が低い要因、自動車利用

割合が高い要因をよりはっきりと浮かび上がらせることができると私は考えたので今期の

研究対象とした。

6 研究成果① 鉄道網の比較

6.1 東京 23 区、名古屋と豊田市の比較

東京 23区、名古屋市、豊田市における鉄道網の状態をグーグルアースの使用により比べ

てみた。東京 23区、名古屋市と豊田市の状況は以下の通りであり、黒い線が鉄道と地下鉄

の線路を表わしている。

東京 23 区周辺

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名古屋市

豊田市 出典 Google earth

上の写真から東京都 23区周辺の鉄道網はかなり充実していることが分かる。それに対し

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て名古屋市の鉄道網は名古屋駅がある辺りに限り鉄道網が充実しており、東京と比べると

中心地を以外の地域は比較的鉄道網が薄い状態であることが分かる。特に名古屋の港区が

ある南西地域の鉄道網はあまり整っていないと言える。

豊田市に関しては名古屋と比べてさえも鉄道網が充実しておらず市の中心部を通る地域

のみに鉄道が通っている状態であるため、東京や名古屋などの主要都市との規模などを考

慮に入れても鉄道網の充実度合いは最も低いといえる。そのため、ある程度郊外に住んで

いる住民が鉄道を利用することは東京や名古屋と比べると断然に不便である。

この鉄道網の状態と東京 23区部、名古屋市、豊田市と豊田市の交通分担率における関係

性を調べてみた結果、大いに相関関係があることが判明した。具体的なデータとしては(注

4)東京都が鉄道と自動車の利用割合比が 8対 2でそれに対して名古屋の利用割合比は 3対

7 である。また、豊田市は鉄道利用割合が 5%しかないことに対して自動車利用割合は何と

83%もあった。

よって鉄道網の状態と交通分担率の比較から東京都が名古屋に比べはるかに鉄道利用率

が高く、鉄道網も充実していることが分かる。そして、それに対する名古屋の鉄道利用率

は低く、鉄道網も同様に充実していないことが分かる。最後に豊田市の鉄道利用率は極め

て低く、鉄道網も三都市の中で最も整っていないことが判明した。

このことから鉄道網が充実すればするほどその地域の鉄道利用率が上がり、鉄道網が整

っていない場合は逆に自動車利用率が上がることが分かり、都市における鉄道網が交通利

用率に影響を与えると分析できる。

6.2 名古屋市内の地区別比較

名古屋市内の地域の内、代表的な地域である中村区、中区、中川区、港区における鉄道

網の状態をグーグルアースにより比べた。名古屋地域内の鉄道網の状態は以下の通りであ

る。

(以下における上の写真で橙色の線で囲まれた地域が中村区、緑色の線で囲まれた地域が

中区であり、下の写真で紫色の線で囲まれた地域が中川区、青い線で囲まれた地域が港区

である)

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中村区 中区

上下ともに黒い線が鉄道、地下鉄の線路を表す。

港区と中川区

出典 Google earth

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二枚の内、上の写真からは中村区、中区が共に鉄道網が充実していることが分かる。実

際にこれら 2 つの地域が名古屋市の中心に最も近くなっており、鉄道網も最も充実してい

る。それに対する各地区に流入における鉄道と自動車利用率は中村区、中区が共に名古屋

市の中で(注 6)数少ない鉄道が自動車よりも利用率が高い地域である。

また、下の写真からは港区、中川区がともに鉄道網が発達していないことが分かる。特

に、港区は北から南に一本鉄道の線路が伸びっているのみであり、区の西の地方は鉄道を

利用するのは不便だと分かる。それに対する各地区に流入における鉄道と自動車利用率は

(注 7)中川区、港区が共に自動車利用割合が高い水準を表している。特に港区は名古屋市

の中でも最も自動車利用率が高い地区という結果になった。

下のグラフからも上の写真の地域における鉄道利用率が高く、下の写真の地域における

自動車利用率が高いと分かる。

図 6-5 各区へ流入する移動の代表交通手段構成(公共交通と自動車の比較)

出典 名古屋市ホームページ

よって名古屋区内の比較においても鉄道網の充実度合いが鉄道、自動車利用率に大きな

影響を与えるといえる。

6.3 鉄道網と公共交通利用に関する国民意識

事前の注意点

鉄道や他の公共交通利用に対する国民意識を新宿区の区民意識調査(平成 15、20年度)、

中京交通圏の出勤時における交通アンケート調査(平成 10年)、名古屋市の市民意識調査

(平成 18年)と豊田市の市民意識調査(平成 19年)によって比べた。

これらの国民意識調査は全てアンケート形式で行われているが、私は調査前にいくつか

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の点に注意した。まずアンケート調査において私はランダムサンプリング(アンケート対

象の無作為抽出)によって行われているのかを重視した。

その理由としてはランダムサンプリングが行われていないアンケートの場合、回答した

対象がある特定の層に偏る関係でデータとして信頼できないというのがある。他には標本

数、有効回収率も重視した。その理由としては、標本数が低すぎることや有効回収率が低

い場合も対象が偏ってしまうためデータの信頼性が落ちるからである。

私は以上の点について注意をしたが市が実施しているアンケートである関係でデータの信

頼性には特に問題はなかった。

具体的にはすべてのアンケート調査は無作為抽出で

新宿区の調査は

平成15年度版が標本数 2,500人 有効回答率 49.1%

平成20年度版が標本数 2,500人、有効回答率 44.1%

中京交通圏の調査は

標本数4650世帯、有効回答数 6,300人

名古屋市の調査は

標本数 2,500人 有効回答率 72%

豊田市の調査は

標本数 6,500人 有効回収率 66%

と基本的に標本、回答率ともに問題はないと考えられる。ただ中京交通圏のデータが少し

古い点が気になったが最近に劇的に意識が変化したとは考えにくいのでデータとして使え

るという前提で分析をした。

結果と分析 1 新宿

新宿区の区民意識調査では(注8)区民の要望(複数回答可)の所における「道路・交通

政策」と答えている人は僅か6.5%しかいなかった。さらに道路・交通とは首都高速等をは

じめとする道路の渋滞改善の要望が大部分であると考えられるため、公共交通に対する要

望はさらに大きく下がると考えられる。

また、(注9)満足できる所に「通勤、通学に便利」が61.6%でトップである。新宿の面積

が狭い、首都等を考慮する必要があるが、それでもなお、新宿区における鉄道網を含めた

公共交通網が整っていると間接的に分析できる。

結果と分析 2 中京交通圏

中京交通圏の出勤時における交通アンケート調査では(注10)自動車をやめない理由で

「自宅から最寄りの駅まで遠い」と答えた人が第1位、「通勤地の近くに駅がない」と答え

た人が第3位を占めている。このことからも自動車利用率が高い要因には鉄道網の整ってい

ない、駅の利便性が低いという要因から来ているが分かる。

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また、(注11)公共交通に転換しても良い理由で運行回数が多くなればと答えている人

が第1位、自宅から最寄り駅が近くなればと答えた人が第2位を占めていることからも鉄道

網と運行回数が鉄道の利用率を下げているのだと分かる。

加えて、公共交通に転換しても良い理由では「運行回数が多くなれば」と答えた人が第1

位、「自宅から最寄りの停留所・駅が近くなれば」が第2位を占めている。満足度において

も公共交通は不満と答えている人が満足と答えている人より15%以上多く、それに対して

自動車は不満と答えている人が満足と答えている人よりも40%以上も少ない結果となって

いる。

これらのことから中京全体でも鉄道網が充実していないということと、鉄道網の充実を

市民は望んでおり、充実を図った場合鉄道率が上がることが分析できる。

結果と分析 3 名古屋市

名古屋市における意識調査では(注12)名古屋市の良いところに「公共交通が整ってい

る」と答えた人が特にいないのに対して、(注13)名古屋の悪い所には「公共交通網が整

っていない」が18、7%を占めている。

この結果から愛知県で最も公共交通が整っている名古屋市でさえも不満が出ていること

がうかがえる。

結果と分析 4 豊田市

豊田市における意識調査では(注14)豊田市の良いところ、好きなところの「公共交通

の便が良い」と答えた人が最下位に近い4.2%、それに対して豊田市の良くない所、嫌いな

ところの「公共交通の便が悪い」と答えた人が二位の「道路の整備状況が悪い」の23%を

三倍近く高い65%になっている

また、(注15)「あなたはお住まいの周囲の生活環境にどの程度満足していますか(各

項目に○は1つ)」に対して(14)の質問「公共交通機関の便利さ」に対して満足、まあ満足と

答えた人が合わせて9%であるのに対してやや不満、不満と答えた人が合わせて68%もいる。

この調査から豊田市における鉄道網が整っていないことがうかがえる。

6.4 鉄道網の影響 まとめ

以上のグーグルアースによる各地域における鉄道網調査とその地域における交通利用割

合調査、国民意識からの鉄道網に対する意識調査によって全ての地域において鉄道利用割

合と鉄道網の充実度の相関関係が見られ、国民の公共交通に対する要望、満足度が共に鉄

道網に関係していることから、鉄道網の充実度が鉄道利用率に対して直接的に最も大きな

影響を及ぼすということであり、鉄道利用率の増加に鉄道網の充実はなくてはならない重

要な手段ということが分析できた。

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7 研究成果② 人口密度の比較

7.1 人口密度調査の注意点

人口密度の観点からみた要因の調査の注意点として挙げられる点としては単純に数字の

みで比べてはならないということである。なぜ比べてならないかというと、ある地域で人

口密度が低い時、それは単純に人がまばらに住んでいるという時の場合に加え、その地域

の何割かが山などをはじめとする地形的な要因により人がほぼ住めないという場合もある。

このケースの場合、人口密度はそういった地形も土地として考慮に入れるので全体の人口

密度が下がってしまう。こういったケースの場合、都市部の人口が表示上の人口密度より

も上昇するので公共交通利用などに対する相関関係を調べる際考慮にいれる必要がある。

具体的な例としては、神戸市等がある。

また、人口密度を調べる際に対象とした地域の土地の面積が小さい時にも注意する必要

がある。土地の面積が小さいということはすなわちその地域に何か人口密度に影響を与え

るものがある時の効果が土地の広い時よりも大きいということになり結果として数値がよ

り極端になる。逆に土地が広い場合前述した人が住めないところなどに気をつければ比較

的にそのまま信頼できる。そういった理由により土地の狭いところと広い所を比較すると

きに十分注意する必要がある。よって具体的に私は地区と地区、都市と都市を比べるよう

にした。

7.2 東京 23 区、名古屋市と豊田市における人口密度と鉄道利用率の比較

東京 23区に関してみると(注 15)人口密度は 13,663 人/km2と非常に高く鉄道利用割合

も交通機関全体の 8割程度である。それに対して名古屋市全体の(注 16)人口密度は 6775

人/km2となっており、東京 23区部と比べると半分近くの人口密度である。またそれに対す

る鉄道の利用割合も 2割程度であるので東京と比べかなり低いと言える。なお、名古屋市、

東京 23区共には基本的に人が住めないところが少なく人口密度はそのまま信頼できるとい

える。

豊田市に関してみると(注 17)人口密度はなんと 462人/km2で名古屋市と比べても、十

分の一未満と驚くべき程の低い数値となっている。それに対して豊田市の鉄道利用割合は

4,5%極めて低い数値を表わしている。ただし、豊田市は非常に人口密度の少ない地区との

合併があった上に人が住めない地域が多いために見かけの人口密度は都市部の人口よりも

かなりに低いといえる。だが豊田市の人口の 8割を占め、人の住めない地域が少ない豊田

地区の(注 18)人口密度でさえ 1,307 人/km2しかなく名古屋や東京と比べ豊田市の人口密

度がはるかに低いことは変わりないといえる。

したがって都市における人口密度と鉄道利用割合は比例とまでは言えないものの相関性

は大いにあると言える。

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また、グラフで表すと以下のようになり東京 23区、名古屋市、豊田市の人口密度と鉄道

利用割合の関わりがよく分かる。

7.3 名古屋市内での人工密度と鉄道利用率の比較

名古屋市の地区別にみれば、市内で鉄道利用割合が最も低い地域の一つである港区は人

口密度も名古屋市内の最も低い水準で(注 19)3,353人/km2である。

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

人口密度

東京23区

名古屋

豊田

豊田の豊田地区

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

鉄道利用率

東京23区

名古屋

豊田

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これに対して鉄道利用割合が名古屋市で一番高い中村区は人口密度が(注 20)8,173 人

/km2と高い。また、人口密度の特に高い地区である昭和、瑞穂、北区の鉄道利用割合も名古

屋市比較的高水準である。

中区に関しては(注 21)人口密度が多少低い 7,457 人/km2であるが、中区の面積が 10km2

もないのと行政機関の集中などが要因となっておりそれが人口密度を下げている。それは

東京の千代田区の人口密度が 23区の中で極端に低いのとも一致している。

これらのことから名古屋の区内で見ても人口密度は鉄道利用率に大きな関係性があると

言える。

7.4 主要都市における市街化区域の人口密度と鉄道利用割合の関係分析

まず以下のグラフにおける市街化区域の人口密度を参考にし、名古屋と東京に加え、名

古屋の次に人口密度の低い神戸、東京に近い横浜とも比較して分析をした。

出典 名古屋市交通局 名古屋市交通事業経営健全化検討委員会 第 1 回資料 平成 20 年

22 ページ

横浜、神戸などの地域に関しても、もともと仮説としては市街化区域においても人口密

度の低い都市ほど鉄道利用率が下がり反対に人口密度が高い国ほど鉄道利用率は高くなる

と考えており実際にこれまで行った東京と名古屋、名古屋区内人口密度の比較等において

は仮説通りであった。

しかし横浜と神戸の交通利用割合を調べてみたところ市街化区域における人口密度は横

浜のほうが神戸より2000人/km2ほど高いに関わらず、(注22)鉄道利用割合が28%、自動車

利用割合が30%と(注23)神戸の鉄道利用割合39%、自動車利用割合20%よりも横浜におけ

る鉄道の利用割合が少なく、自動車の利用割合が高いという結果になった。

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

各都市比較 市街化区域面積当たり人口

(平成18年10月)

市街化区域面積当たり人口

(人/km2)

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それに対してさらに疑問を突き詰めていった結果、いくつかの要因が判明した。第一に

横浜市における市街化区域の人口密度は確かに高いが市街化区域全体の面積が広く(注24)

市全体の75%もあることが分かり、さらにそれら全てに人が満遍なく住んでいることが分

かった。また、西の区域は比較的鉄道網が薄いこともある。

それに対して神戸市は市街化区域における人口密度、神戸市の全体の人口密度はともに

低いが山に囲まれた区域等も多く含んでいるために起こる。また、海に面している地域に

は人が集中して住んでいるという横浜とは人口の分散が逆である。さらに人の集中区には

鉄道網が充実している。

横浜、神戸市における地形は以下のグーグルアースで見るとよくわかる。

横浜市 緑の線で囲まれた地域にも人が満遍なく住んでいる。

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神戸市 紫の線で囲まれた地域は市街化区域ではあるが人の数が少なく人口密度を下げ

ている。赤の線で囲まれたところに人口が集中している。

第二に横浜市の徒歩、自転車率は34%と神戸の15%に対して倍以上の割合がありそれが

鉄道による近距離の移動に影響与えていると分かった。

これらの要因を名古屋市にも適用したところ名古屋の市街化区域も(注25)市全体の93%

を占めており人が分散していることが確認できた。しかし第二の理由はデータが見つから

ずに断念した。

まだこの分析はデータ不完全な関係により2つ目の要因が本当にあるか不透明ではある

が論理的に考えると正しいと私は考える。よって以上の2つの要因が横浜市と神戸市との比

較において市街化区域の人口密度に対する交通利用割合の相関関係に影響を与えたといえ、

それは名古屋に関してもいえる。

7.4 人口密度と鉄道利用割合の関係におけるまとめ

これまでに都市と都市、地区と地区で分析した判明したこととしては地形などを考慮し

た上で人口密度の高さは鉄道利用率の高さに大きく影響するということである。ただし、

人口密度が高い地域は調べた範囲では必ず鉄道網が整っており、逆に人口密度が低くなお

かつ地形などによって影響を受けていない場合には必ず鉄道網が薄くなっているという傾

向にあった。

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このことから人口密度が直接的に鉄道に影響するのではなく人口密度の低さが鉄道網整

備に障害となり、その結果として鉄道利用割合も下がるという間接的な影響を鉄道利用率

に対して与えていると私は分析した。

8 研究成果③ 自動車利用率を促進する要因

鉄道利用率と自動車利用率とはちょうど相反する関係にあり鉄道利用率が上がると自動

車利用率は下がり、逆に鉄道利用率が下がると自動車利用率は上がる。ゆえに自動車利用

率を上げている要因を分析することによって鉄道利用率を下げている要因が分かる。

ただこの分析は高速道路の渋滞と比較的限定された範囲でしか分析が出来なかったので

今後もっと様々な地域、道路などを対象として分析していく必要がある。

8.1 東京都と名古屋における高速道路の渋滞状況の比較

東京都における高速道路の渋滞状況は渋滞予測情報を参考にした。

各地域の一日における渋滞が起きている時間を表示する

東京都(注 26)

首都高速が他の高速よりはるかに渋滞頻度が高いのに加えほかの高速の渋滞頻度も少な

くない関係で調べきれなかったので首都高速のみで比較をする。

首都高速において渋滞は車の走行速度が 20km/h 以下と定義されている。

首都高速の渋滞状況

竹橋 JCT

平日 8 時間程度 最長 土曜日 15 時間

三宅坂 JCT

平日 1~3 時間程度 最長 土曜日 9 時間

谷町 JCT

平日 1~5 時間程度 最長 土曜日 8 時間

池尻

平日 3~7 時間程度 最長 土曜日 12 時間

浜崎橋 JCT

平日 8~9 時間程度 最長 土曜日 10 時間

小菅 JCT

土曜日のみ 6 時間

6 号下り 箱崎 JCT

平日 3~10 時間程度 最長 土曜日 12 時間

両国 JCT

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平日 7~10 時間程度 最長 土曜日 16 時間

9 号上り箱崎 JCT

平日 4~8 時間程度 最長 土曜日 12 時間

芝浦 JCT

平日 7~10 時間 最長 土曜日 12 時間

となっており毎日様々な所で相当な時間、渋滞が起きていることが分かる。

首都高速が他の高速よりはるかに渋滞頻度が高いのに加えほかの高速の渋滞頻度も少な

くない関係で調べきれなかったので首都高速のみで比較をする。結果として首都高速のみ

でも名古屋の高速における渋滞頻度より高いことが判明した。

名古屋(注 27)

東名阪自動車道

上り

平日 2 日と土日 2 時間 名古屋西料金所付近

平日 3 日と土日 平日は 2~4 時間 名古屋西料金所付近

土日は 3~4 時間

下り

平日 0~2 日と土日 平日は 5 時間

地点は四日市 IC

名神高速道路

上り

毎週日、時々土曜日も

土曜日は 2 時間程度

日は 3~5 時間程度

地点は一宮 IC

下り

特になし

他の名古屋市を通る高速道路

上り下りともに

特になし

これらのことから名古屋の高速道路は東京と比べはるかに渋滞が少ないと言えるので自

動車が利用しやすくなる。

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ただ、愛知県における高速道路は都市間の移動で利用されるのに対して東京都の首都高

速の場合は非常に狭い区内での移動で利用されるため一概に比べられないという問題があ

る。また、愛知県では市内移動が少なく、その結果として自動車渋滞が少ないとも考えら

れるため名古屋において渋滞の少なさが自動車利用率を上げるというのは他の要因と比べ

ると限定的な影響だといえる。

しかし前述した通り中京交通圏における自動車満足度は高いことから、ある程度影響は

あるといえる。

8.2 高速道路における交通渋滞と自動車利用率の関係のまとめ

高速道路における渋滞頻度は名古屋においては自動車利用率に限定的な影響を与えると

言え、東京においては渋滞の規模、頻度がかなり多いことから名古屋より自動車利用率に

大きな影響を与えるといえる。ゆえに渋滞が少ないことは自動車の便利性、満足度を上げ、

結果として間接的に鉄道利用率を下げているといえる。

9 研究成果④ 都市間移動の比較

ここでは全体の鉄道網に対して愛知県の人口が最も多い名古屋市から人口の第 2位の豊

田市への交通状況が鉄道、自動車でそれぞれどういう状況なのか名古屋駅から豊田市駅ま

での経路をそれぞれ比較し分析をする、また同じ程度の距離である東京の立川駅から新宿

駅までの距離とも比較をする。

9.1 研究成果④ 名古屋駅から豊田市駅、立川駅から新宿駅における各交通の所要時間

まず名古屋駅から豊田市駅までの各交通機関の所要時間を比較する。

結果として

自動車は(注 28)

名古屋駅→豊田市駅

高速道路優先の場合

総距離 40km

所要時間 約 40分

料金 1800円

高速道路を利用しない場合

総距離 31km

所要時間 約 1時間

となった。

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それに対して鉄道では(注 29)乗り換えありで 1時間程度である。また運賃は最低片道 740

円である。

これに対して立川駅から新宿駅における各交通機関の所要時間は

立川駅→東京駅 高速道路優先利用の場合(注 30)

総距離 31km

所要時間 32 分

料金 1300 円

高速道路を利用しない場合

総距離 30km

所要時間 1 時間

となった。

それに対して鉄道では(注 31)乗り換えなしで中央線特快では 25分程度、中央線快速では

40分程度である。また、運賃は片道 450円である。

結果として分析できたこととしては高速道路を利用する場合さえにおいても東京は車と

鉄道の所要時間がほぼ変わらないことが分かるので、料金が安い鉄道を利用する人が増え

ると言える。

それに対して名古屋の場合は高速を利用する場合、多少回り道する分お金がかかるが電

車よりは確実に早く着ける。よってお金を使っても良いと考える場合、多くの人は自動車

を利用すると言える

だたし 1800円はバカにできない料金ということを前提にして高速利用をしない場合、車

と鉄道の所要時間が 1時間とほぼ同じである。この状況だけでは自動車と鉄道を利用する

人の割合は特に考えられないが費用の面でみるとは鉄道利用が自動車利用の倍近くかかっ

てしまう。

具体的には、名古屋→豊田に電車で行った場合の運賃が最低片道 740円程度かかってし

まうが、自動車で一般道の場合ガソリン代のみでおおよそ 360円となる。一日でもこれだ

け料金差があるので多くの人は結局料金的な面での利用へのインセンティブもあり、自動

車を利用すると言える。

よって名古屋→豊田についてまとめると、基本的にかなりの場合で自動車が鉄道より有

利で鉄道を利用するインセンティブが名古屋→豊田間では低くむしろ逆インセンティブが

働いているということがいえる。

車の燃費についての計算は(注 32)国土交通省の自動車燃費情報を参考にし、一般的な

車よりやや燃費の低い 1リットル当たり 10km走れる車で、一般道路で見た名古屋駅→豊田

市駅の距離である 30kmを走った場合を想定し、その時のガソリン料金は今では高めの 1リ

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ットル当たり 120円と設定し 3×120=360円と計算した。また、走る速度の増減による燃

費の変化は計算できなかったが、そこまで大きく変わらない前提で計算した。

なお、さらに掘り下げて調べていった結果、名古屋市、豊田市間の移動自体が非常に少

ないことが判明した。具体的には従業者の名古屋から豊田への移動は(注 33)全体の 1%

程度と非常に少なかった。また、豊田市から他の市への通勤、通学での移動は一番高い地

域でも(注 34)5%程度にとどまる結果となった。

よって言えることとしては名古屋、豊田における都市間移動はかなり少なく全体の交通

利用率に対して限定的な影響にとどまると言える。ただやはり自動車が利用しやすいので

鉄道利用のインセンティブを何かしら考えていく必要があると言える。

10 民鉄における 運賃の比較

民鉄の運賃から見た東京と名古屋の違いを調べた。これにより次のことが判明した。

(注 35)

運賃の比較

運賃計算は初乗り運賃を定め、これにキロ数にほぼ比例した運賃を加算していく

対キロ区間制

東京都周辺の民鉄

東武鉄道 4kmまで 140円

西部鉄道 4kmまで 140円

京王線 4kmまで 120円

小田急線 3kmまで 120円

東京急行電鉄 3kmまで 120円

京浜急行電鉄 3kmまで 130円

相模鉄道 3kmまで 140円

名古屋周辺の民鉄

名古屋鉄道 3kmまで 160円

愛知環状鉄道 3kmまで 170円

となっている。

このことから東京に比べ名古屋地域における鉄道利用は若干運賃が高いことが分かる。

また先ほど述べた中京交通圏において平成 10年に実施したアンケートにおいて「公共交通

に転換しても良い理由」においてもう少し運賃が安くなればと答えた人が第 3位を占めた。

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それらの事から名古屋周辺の鉄道における運賃の高さが、鉄道の利用に一定の効果を及

ぼしているのだと分析できる。それに加えて、現在の経済状態、原油が安いということも

考えあわせると鉄道の運賃の影響も低くないといえる。例としてゴールデンウィーク期間

中において高速値下げで鉄道の利用状況が(注 36)去年の 94%になったことからも言える。

ただし、JRなどは対キロ区間制をとっていないので比較分析できなかった関係もあり要

因調査としては不十分な点がある。

11 全体のまとめ

今回の研究では名古屋をはじめとする愛知県の鉄道利用割合がなぜ低いのかその要因を

東京と比較しつつ研究していったが結果として言えることとしては鉄道網の充実度が最も

鉄道利用割合に影響を与えるということである。

それは鉄道網の充実は鉄道の本数、駅の増加につながり、結果として住民の鉄道利用に

対する最も大きなインセンティブになることを各都市の実情の比較、アンケートから考察

できる。実際、鉄道利用が非常に少ない豊田市の鉄道網は比較対象の中でも最も充実して

いない状態で、全国の中核市でただ一つの JRの駅がない都市である。

よってまず何よりも鉄道網の整備が重要ということである。しかし、鉄道網の整ってい

ない都市には共通の要因があることも判明した。それとは人口密度が低くなおかつ地形な

どの影響をあまり受けず見かけだけの数値だけではないということある。この場合、基本

的に住民は分散して住むことになってしまうので鉄道網の拡張がしにくい。それは実際、

名古屋の港区、豊田市全体等から言えることである。また、日本だけにとどまらず海外で

もシドニー等をはじめとする様々な都市にもこの現象がみられる。ゆえに人口密度が低い

場合は鉄道だけに頼らずバス、路線電車、自転車、パークライド等を組み合わせて対策す

る必要がある。

また、その今後の都市計画にも人口分散と公共交通の利用をどう合わせていくか考えて

いく必要があると言える。

加えて比較都市以外の主要都市もデータを調べたが東京、名古屋等に限らず近年ではほ

ぼ全ての都市において自動車利用率が上がってきており、それは神戸、横浜などの大都市

も含まれる。これは由々しき問題であり対策を打っていかなければならないと私は考える。

12 謝辞

今回の研究では浜中裕徳教授、有澤誠教授と両方の研究会のメンバーの皆様の助けなし

ではここまで研究できませんでした。特に、浜中教授、有澤教授には研究の方向性、内容

で助けていただきました。

この場をお借りしてお礼を申し上げます。

ありがとうございました。

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今後も公共交通利用の促進を目指して研究していきたいと思います。

参考資料

注 1 注 2 http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h19/index.html

環境省 環境白書 平成 19 年版 第 3 章 第四節

注3 注4

http://www.kotsu.city.nagoya.jp/dbps_data/_material_/localhost/_res/about/keiei_co

mmittee/data1-1.pdf

名古屋市交通局 名古屋市交通事業経営健全化検討委員会 第1回資料 平成20年 (注3)14ペ

ージ (注4)19ページ

注 5 http://www.city.toyota.aichi.jp/ex/pc/h18/13/gaiyou.pdf

豊田市ホームページ 公共交通基本計画 2 ページ

注6 注7

http://www.city.nagoya.jp/kurashi/anzen/anzen/shinokoutsu/sogokotsu/senryaku/nagoy

a00003684.html

名古屋市ホームページ 交通の地域特性

注8

http://www.city.shinjuku.tokyo.jp/about/yoron2008/yoron2008.pdf

新宿区ホームページ 新宿区区民意識調査(平成20年) 214ページ

注9

http://www.city.shinjuku.tokyo.jp/about/yoron2003/yoron2003_outlook.pdf

新宿区ホームページ 新宿区区民意識調査(平成15年) 9ページ

注10 注11

http://www.chukyo-pt.gr.jp/persontrip/pdf/h15_pt.pdf

中京都市圏 第4回パーソントリップ調査 共に12ページ

注12 注13

http://www.city.nagoya.jp/_res/usr/38071/9QUI_a1H18eCl_OWKWHP1owA.pdf

名古屋市ホームページ 市民意識調査(平成18年)(注12)3ページ(注13)5ページ

注14

http://www.city.toyota.aichi.jp/division_n/aa00/aa03/tanto/siminisikityousa/1

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7/01.html

豊田市ホームページ 市民意識調査(平成19年)

注15 注16

http://www.stat.go.jp/data/nenkan/backdata/02.htm

統計局ホームページ

注17 注18

http://www.city.toyota.aichi.jp/division_n/ab00/ab01/tanto/toukeijinkoukongetu/

豊田市ホームページ 豊田市の今月の人口

注19 注20 注21

http://www.city.nagoya.jp/shisei/toukei/web/jinkou/suikei01/h17/nagoya00061923.html

名古屋市ホームページ 平成 17 年 6 月 1 日現在の世帯数と人口(全市・区別)

注 22

http://www.city.yokohama.jp/me/toshi/toshiko/koutuuseisaku/pdf_files/plan.pdf

横浜市 都市整備局 横浜都市交通計画 11ページ

注 23

http://www.city.kobe.lg.jp/information/project/traffic/stepup/img/honbun1.pdf

神戸市ホームページ

交通事業を取り巻く社会経済情勢 および 神戸市交通事業の現状 3ページ

注 24

http://www.city.yokohama.jp/me/machi/guid/takuchi/news/iinkai/opinion/summary

1-1.pdf

横浜市 市街化調整区域あり方検討委員会 中間とりまとめ概要

注 25

http://www.city.nagoya.jp/shisei/jigyoukeikaku/machizukuri/toshikeikaku/na

goya00007818.html

名古屋市ホームページ 市街化区域 市街化調整区域

注26

http://www.shutoko.jp/service/convenience/traffic

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首都高ホームページ 今月の渋滞予測

注27

http://www.jartic.or.jp

日本道路交通情報センター

注28 注30

http://www.mapfan.com

Map Fan ウェブ

注29 注31

http://transit.yahoo.co.jp/search/result?from=%E7%AB%8B%E5%B7%9D&to=%E6%96%B0%E5

%AE%BF&via=&shin=1&ex=1&al=1&hb=1&lb=1&sr=1&ym=200907&d=08&hh=21&m1=3&m2=6&type=

1&ws=2&s=0&ost=0&ei=utf-8&x=0&y=0&kw=%E6%96%B0%E5%AE%BF

Yahoo Japan 運賃探索結果

注32

http://www.mlit.go.jp/jidosha/nenpi/nenpilist/nenpilist0703.pdf

国土交通省 自動車燃費一覧

注33

名古屋市公式ホームページから パーソントリップと検索

http://www.city.nagoya.jp/_res/usr/52654/se2105.pdf

注34

豊田市ホームページ 豊田市の交通流動の現状 7ページ

http://www.city.toyota.aichi.jp/ex/singikai/ta_line/057/1701siryou038.pdf

注 35

数字で見る鉄道 2006 国土交通省 監修 運輸政策研究機構 発行 p102、p116

注 36

http://www.jreast.co.jp/press/2009/20090501.pdf#search='ゴールデン'

東日本旅客鉄道株式会社

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注 35

数字で見る鉄道 2006 国土交通省 監修 運輸政策研究機構 発行


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