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Ⅰ はしがき - University of Hyogo · 2016-06-21 ·...

Date post: 23-Jun-2020
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1 目 次 Ⅰ はしがき ・・2 Ⅱ 韓国編 1.地域共生型学校の模索-韓国忠清南道ホンソン郡ホンドン面の取組みに焦 点をあてて- 尾﨑 公子・・6 2.韓国忠清南道洪城郡洪東面の地域概況とインタビュー調査の概要 佐藤 宏子・・13 3.小規模校政策の日韓の相違点 チェ・ジョンリョル/肥後耕生訳・・50 4.小さな学校教育連帯の活動と現況 ミン・ビョンソン/肥後耕生訳・・62 5.【講演録】韓国における農村の地域教育共同体運動の展開 ヤン・ビョンチャン/キム・ヨギョン訳・・65 6.【資料】小さな学校運動が歩んできた道 ソ・ギルウォン/肥後耕生訳・・72 Ⅲ 国内編 1.中山間地域の山村留学による住民への効果と地域特性 -兵庫県神河町の質的研究より 佐藤 宏子・・78 2.地域コミュニティを活性化させる学校 尾﨑 公子・・96 3.地域力を形にしていく教育プログラムの重要性 尾﨑 公子・・99 4.教材に活きる栗山の地域力 尾﨑 公子・・ 102
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    目 次

    Ⅰ はしがき ・・2

    Ⅱ 韓国編

    1.地域共生型学校の模索-韓国忠清南道ホンソン郡ホンドン面の取組みに焦

    点をあてて- 尾﨑 公子・・6

    2.韓国忠清南道洪城郡洪東面の地域概況とインタビュー調査の概要

    佐藤 宏子・・13

    3.小規模校政策の日韓の相違点 チェ・ジョンリョル/肥後耕生訳・・50

    4.小さな学校教育連帯の活動と現況 ミン・ビョンソン/肥後耕生訳・・62

    5.【講演録】韓国における農村の地域教育共同体運動の展開

    ヤン・ビョンチャン/キム・ヨギョン訳・・65

    6.【資料】小さな学校運動が歩んできた道

    ソ・ギルウォン/肥後耕生訳・・72

    Ⅲ 国内編

    1.中山間地域の山村留学による住民への効果と地域特性

    -兵庫県神河町の質的研究より 佐藤 宏子・・78

    2.地域コミュニティを活性化させる学校 尾﨑 公子・・96

    3.地域力を形にしていく教育プログラムの重要性 尾﨑 公子・・99

    4.教材に活きる栗山の地域力 尾﨑 公子・・102

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    Ⅰ はしがき

    本報告書は、「平成 24~26年度科学研究費補助金」(基盤(C)(1)・尾﨑公子研究代表者、

    課題番号 24531015)の助成を受けて行った「人口減少地域の地域資源を機能させる地域共生

    型学校モデルの模索-日韓比較の視点から」に関する研究成果のまとめである。

    本研究は、日韓比較や学際的観点を導入しながら、過疎地および中山間地域における地域

    資源を機能させる諸要素・条件を抽出し、学校統廃合に代わる地域共生型学校を成立させる

    方法、仕組み、プログラムの開発を目的としている。

    本研究が韓国の事例に着目したのは、社会状況において共通点がありながら、小規模校の

    取り組みにおいて相違点が見いだされ、日本に重要な示唆を与えてくれると考えるからであ

    る。日韓の共通点には、①少子化が進行し、都市化率も高く、農山漁村の過疎化が深刻にな

    っている。②学校の小規模化が進行し、学校統廃合が大きな行政課題・地域課題になってい

    る、がある。しかし、小規模校の取組みについては、A 自律学校:制度 B 教育福祉:政策

    理念 C 小規模校を支える民間の社会運動、教育運動の存在、の 3 点の相違点が見出された。

    日本は、均一のスタンダードを設定して、学区という圏域拡大によって適正規模化を図っ

    ているのに対して、韓国では、統廃合に対して財政支援を行うと同時に、小規模校の活性化

    策にも取組んでいる。その代表的なものに、田園学校事業(2009~2014)があった。これは、

    先進事例調査を踏まえ、農山漁村の負の側面だけでなく、豊かな自然環境や社会関係資本が

    持つポテンシャルに着目して事業化したものであった。そこで、本研究では、田園学校事業

    に着目し、①中央政府と地方政府への聞き取り調査、②田園学校の実態調査を行った。

    ①において、韓国では、学校自由化策を進めて地方や学校に権限を委譲するとともに、自

    由化策によってもたらされる地域や階層間格差を是正するために「教育福祉」を政策原理に

    据え、教育予算の増額を図りながら、小規模校対策に取組んでいることを明らかした。

    ②の実態調査においては、田園学校に選定された忠清南道ホンソン郡ホンドン面のホンド

    ン中学校を分析対象とした。学校関係者や校区住民への聞き取り調査から、同校区において、

    中学校を拠点として、地域・住民がメントリング活動を担うなど、教育・福祉機能を分かち

    合うコミュニティが形成されつつあり、生徒数も増加していた。同事例から、A 自律学校 B

    教育福祉が有効に機能していることが認められた。さらに、A、B を具現化する要因として、

    a 教育、地域づくりの理論的・精神的支柱:オルタナティブスクールの存在 b 豊かな地域

    人材:帰農・帰村者 c 教職員の力量、があった。

    ホンドン地区には、プルム農業高等技術学校(1958 年設立)というオルタナティブスクー

    ルがあり、半世紀にわたり、自然と共生する共同体づくりを学校内外で進め、エコロジーに

    関わる実践を積み重ね、それに賛同する地域住民のネットワークを築いてきた。ホンドン中

    学校の実践は、そうした地域特性があってはじめて可能になったものである。そして、A 自

    律学校 B 教育福祉政策は、プルム学校の実践と公立学校の取り組みを繋ぎ、a, b, c の諸要

    因を機能させる役割を果たしていた。だが、A,B は必要条件であっても十分条件ではないこ

    とも示唆された。小規模校対策としての自律学校政策の有効性に関しては、日本における権

    限委譲が部分的なものに留まっていることからも重要な論点であり、先行研究でも十分に分

    析が進められていない点である。本研究では、自律学校には、一定の人事権・教育課程編成

    権・予算権が付与され、地域特性を生かした教育活動ができるというメリットがある一方で、

    一定期間での成果が要求され、教員の業務負担というデメリットが認められた。また、自律

    学校に指定された小規模校のなかには、子どもの減少が止まらない現状がある。

    そこで注目されるのは、C 小規模校を支える民間の社会運動、教育運動の存在である。韓

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    国の小規模校の存続事例は、政府の取組みである A、B と並んで民間の力に拠るところが大

    きいと考えられる。ホンドン中学校の教職員も深い関わりを持っていた。政府の期限付きの

    事業のみに頼らず、人材や財源を確保し、取組みを持続させてきた原動力、理念、組織、仕

    組みはいかなるものなのか。これらの解明が、残された課題である。

    一方、国内においては、20 年にわたって山村留学を継続させ、留学生を受け入れてきた兵

    庫県神河町新田・作畑、また、広域過疎化し、小規模校を多く抱えるなか、教育活動と地域

    活動を架橋する総合学習や自然体験プログラムを開発している北海道夕張郡栗山や富良野市

    東山を研究対象とした。

    神河町については、プログラムを長期的、継続的に支えてきた地域特性を中心に分析を行

    った。そこで抽出されたのは、①住民の優れた問題解決力-地域課題への迅速な対応と決断

    力、熱意と結束 ②転換期を乗り越えた住民の柔軟でしなやかな判断力と調整力、行動力 ③

    「おせっかい」と「助け合い」の住民気質 ④「よその子」を「うちの子」として預かる里

    親の責任感と教育力、であった。一方、北海道に事例においては、地域資源を活かしたプロ

    グラムの成り立ちや推進体制を中心に考察した。

    いずれの地区においても少子化、高齢化が進行しており、神河町においては、合併による

    行政区域の広域化によって、財政支出の合意形成問題も加わり、プログラムの持続可能性が

    課題となっている。このように財源、人材の確保が課題となる中で注目されるのが栗山町の

    事例である。栗山町の住民は、四半世紀にわたって、自然環境という共有資源の保全・再生

    活動を継続させ、自然体験プログラムに編成して、コミュニティ・ビジネスとして成立させ

    てきた。住民は知恵と資材と労力を出し合い、さらに企業の社会貢献活動も取り込みながら、

    行政依存から脱却した自律的な取り組みを展開してきたのである。こうした取り組みが、政

    策決定プロセスに参画する方途を拓き、全国に先駆けて「議会基本条例」「自治基本条例」を

    制定する牽引力にもなった。栗山町の事例は、地域資源を機能させるプログラムを維持・継

    続させるための財源、人材確保の仕組みにおいて、住民、行政、企業の協働やパートナーシ

    ップのひとつのモデルを提供している。

    日本には、韓国のように小規模校を活性化させるための明確な理念、制度、政策は存在し

    ない。だが、小規模校を維持しようと努力してきた自治体や人々は存在する。本研究では、

    中山間地域の豊かな自然環境や社会関係資本を活かしたプログラムの成り立ち、地域資源を

    機能させている地域特性の分析を進めた。今後さらなる人口減少が予測される中で、循環型

    の、持続可能な社会を構築するための研究はますます重要性を増している。地域共生型学校

    に関する研究においては、持続可能な社会構築のインフラとして学校を機能させていくため

    の仕組みについてさらに分析を進めていくことが課題となる。

    【研究組織】

    研 究 代 表 者 尾﨑公子(兵庫県立大学教授)

    研 究 分 担 者 佐藤宏子(兵庫県立大学教授)

    連 携 研 究 者 貞広斎子(千葉大学教授)

    海外研究協力者 チェ・ジュンリョル(公州大学教授)、肥後耕生(同大学講師)、

    ミン・ビョンソン(ホンソン中学校教諭)

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    Ⅱ 韓国編

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    地域共生型学校の模索

    -韓国忠清南道ホンソン郡ホンドン面の取組みに焦点をあてて-

    尾﨑 公子

    はじめに

    地域の生産構造が崩れ、人口が流出したまま高齢化が進み、共同自治組織の維持もままな

    らない状況に至っている集落が日本各地で増加してきており、学校統廃合がそれに追い打ち

    をかける状況にある。過疎地域自立促進特別措置法(2010)の適用要件に該当する過疎地を抱

    える基礎自治体は 46%にのぼり(2010 年国勢調査)、自治体のなかには、通学距離が長くなり、

    適正配置・適正規模論に則った統廃合がすでにできなくなっているところ、あるいは地域の

    入会地的な機能を重視し、小規模校を存続させるための方策を探っているところもあり、統

    廃合に代わる施策が求められるようになっている。

    筆者は、こうした人口減少地域の現状を踏まえ、日韓比較の観点を導入して、過疎地及び

    中山間地域における地域資源を活かすための諸要素・条件を抽出し、地域と学校の持続可能

    性を確保する地域共生型学校を成立させる方法、仕組みを探っている。韓国を比較研究の対

    象とする理由は、韓国でも、日本と同様、非都市部において少子化と過疎化が進行し、小規

    模校対策が喫緊の課題1となっており、政府も「田園学校」や小中一貫校を導入して小規模校

    の活性化策に乗り出す一方で、小規模校を存在させる社会運動も存在しているからである。

    そこで、本稿では現地調査を続けている忠清南道のホンソン(洪城)郡ホンドン(洪東)

    面(面:日本の村に相当)を取り上げる2。ここに、半世紀にわたって、自然や住民同士の共

    生を追究する教育実践を積み重ねてきたプルム農業高等技術学校(以下、プルム学校と略)

    と田園学校に指定されたホンドン中学校が存在する。双方の取組みがリンクすることによっ

    て、学校と地域の持続可能性を確保するような実践が生み出され、学校と地域住民が教育福

    祉機能を分かち合うコミュニティも形成されつつある。本稿は、ホンドンの取組みを可能に

    している諸要因・条件を明らかにし、地域共生型学校を構想する上での示唆を得ることをね

    らいとする。

    1. プルム学校の取組み-ホンドン地域の理論的・精神的支柱

    ホンドン面は、ソウルから 160キロ南西にある忠清南道のホンソン郡にある純農村地域で、

    14 カ里(里:日本の大字)からなる。1965 年に 16,242 名あった総人口が、現在 3,831 名に

    減少している典型的な人口減少地域でもある。面には、中学校が 1 校、小学校が 2 校あり、

    約 300 人の小中学生がいる。

    同地区は、韓国で最初に合鴨農法を取り入れ、生態農業(有機農法)3の先進地として知ら

    1韓国全土において 100 名以下の小学校が 30.3%、中学校が 19.8%、我々が調査対象にしている忠清南道では 100 名以下

    の小学校が 51.8%、中学校が 28.4%という状況にある(2012 年4月1日現在)。 2現地調査は、①2012年9月 14日~15日、②2013年3月 28日~31日の2回実施した。①の調査対象は、教育科学技術部、

    忠清南道教育庁、ガナム小学校、ホンドン中学校で、インタビュー調査および資料収集を行った(尾﨑・貞広 2013)。②

    は、ホンドン面を対象に、ホンドン中学校及びプルム学校の教員、保護者、住民 15 名に対してインタビューを行った。

    本稿は以上のデータや資料に基づいて考察を行う。 3プルム学校の前校長ホン氏は、「生態」という用語について、「人も生態系の一部であり、生態のルールに従わなければ

    ならない」とし、「『環境』とは人を中心に考えた言葉であり、生物や自然は周辺的なものという考えに基づいた概念であ

    る」として、環境教育という用語も使用せず、生態教育と呼んでいる(ホン 2008、96 頁)。また、ホン氏は、プルム学

    校の教育理念を生態教育だと規定し、「生態の 6 つの法則」として、「多様性」「重層性」「循環性」「流動性」「発展性」「均

    衡性」をあげ、教育の原理に据えている(尾花 2005、47 頁)。

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    れている。なかでもムンダンリ(文堂里)には、農民の拠出金によって、200 名を収容でき

    る宿舎を備えた環境農業教育館が建設され、生態農業の研修者や見学者を受け入れている。

    また、農産物の産地直場所(都農交流拠点)なども設け、利用者は 1 年間で 2 万名に及び、

    生態農業の最大拠点となっている。ソウル大学の協力の下で作成された「21 世紀文堂里発展

    百年計画」(2000)では、環境的持続性、経済的持続性、社会的持続性を目指すことによっ

    て安定・自立・多様・循環性を持った農村社会を実現するとしている(降旗 2012)。

    こうしたビジョンは、まさにプルム学校の精神から生み出されたものである。

    プルム学校とホンドン地域については、日本でも学際的に研究が進められてきたが(浅岡

    他 2010;坂下他 2011)、尾花清(2011)は「『プルム学校』の教育実践と学校づくりは、地

    域の農民を主体とした有機農業-中略-と協同組合運動を車の両輪とした、壮大な地域づく

    りと密接不可分の形で有機的に結合されて展開」(337 頁)されてきた過程を明らかにし、鈴

    木敏正(2011)は「キーワードは『教育と労働と協同』であり、そこから生活・環境・福祉・

    文化の全体にひろがる『持続可能な包摂型地域づくり教育 Sustainable and Inclusive

    Community Development Education』」(1 頁)だと分析してきた。また、降旗信一(2011)

    は、プルム学校と地域の関わりを「学校から住民への貢献アプローチ型」という概念で捉え、

    ①地域の担い手育成 ②産業発展への科学的課題の解決 ③新しい事業と組織の創出、とい

    う 3 つの特徴点を指摘している。

    プルム学校は、1958 年に高等公民学校(中等部)、1963 年に農業高等技術学校(高等部)、

    2001 年に高等部の延長課程である専攻部(2 年課程)を開設してきた。中等部は、公立のホン

    ドン中学校が設立されたのを受けて 1980 年に廃止されている。高等部は 1983 年から学力認

    定校となったが、それまでは、同校の理念・長所を活かすために、政府からの財政支援を受

    けない各種学校として存在していた。専攻部は今日でも学歴認定が受けられない一種の社会

    教育機関の位置づけになっている。

    高等部は、1993 年から全寮制となっており、1 学年 30 名の小規模校で、10 名は住民や農

    民子弟枠、20 名は一般選考枠、1 名は障害者を含めた社会的脆弱者層枠4となっている。校

    訓に「共に生きる平民」が掲げられている。理念のベースにはキリスト教があるが、さまざ

    まな人や自然と共に生き、生涯、自己形成をしながら、所属する共同体のなかで自分の役割

    を見出すことが目指されている。決して、競争や序列のために学校があるのではない。これ

    まで約 1200 名の卒業生を輩出しているが、その 1 割がホンドンに残り、地域の担い手とな

    っている(ホン 2014)。

    前校長のホン・スンミョン(洪淳明)氏は「学校での人づくりが村づくりのはじめであり、

    また帰着点」(ホン 2010、25 頁)と述べているが、合鴨農法を取り入れ、ムンダンリの活動

    を牽引しているのも本校の卒業生である。このように地域のイノベーションを牽引する若い

    担い手に加えて、プルム学校から、農協、生協、信用組合が生みだされてきた。プルムが関

    わっている地域の機関は表 1 の通りである。協同組合は、「生徒にとっては学びの現場であ

    り、卒業生にとっては地域における働く場所」に位置づけられている(ホン 2008、92)。組

    合員は、約 4000 人の住民の内 800 人である。

    表1 プルム関連機関

    分野 機関団体名

    金融/流通/生態農業 ホンドン農業協同組合、プルム信用協同組合、ホンソン有機農

    4脆弱階層として捉えられているのは、低所得者層、単親家庭、祖孫家庭(祖父母と孫)、少年少女家庭(未成年者のみあ

    るいは保護者の扶養能力がない家庭)、脱北者、多文化家庭などである。

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    営農組合、プルム牛乳(平村ヨーグルト)、文塘里環境農業マウル、

    プルム消費者生活協同組合

    研究機関 カッコル生態農業研究所

    文化関連機関団体 カッコル木工所、パルマク図書館、カッコル小さな店(プルム学

    校生活協同組合)、ヌティナム(ケヤキ)古本屋、クムルコ(網目)

    出版社

    教育関連機関団体 カッコル保育園、夢が育つ庭(知的障害児・生徒対象の庭園芸

    教室)、教育農研究所(田んぼの学校、畑の学校などの教育支援)、

    ノンベミ(1枚の田:都市部児童生徒対象の生態教育指導)

    福祉施設 ハヌル(神)共同体(障害者施設)

    ミン(2013)を基に筆者作成

    ホン氏は、広範囲に活動を展開しているプルム学校の歩みについて、第一期:学校の設立

    と協同組合の運営、第二期:有機農業の導入と拡大による村づくりへ、第三期:生涯学習の

    段階へ、と 3 期に分けられるとしている(ホン 2010、28)。また、プルム学校を‘College of the

    Village, by the villagers, for the villages’と表して次のように述べている。

    水田、庭園、販売所、加工所、畜産場、エネルギー施設、図書室など、集落のさまざま

    な機能・設備を設置した。-中略-学校の敷地に店も作る、加工もする、販売もする。

    美術も学ぶ、音楽も学ぶ。学校は地域の人によって支えられ、地域の人が教師にもなり、

    生徒になる-中略-学校は学校のためにあるのではなく、地域のためにある。これは学

    校自体が集落に支えられながら集落の構造を持つことであり、集落民による学校、集落

    のための学校(2008、97 頁)

    ホンドンの住民は、こうした活動をどうみているのか。ホンドンに移り住み、パルマク図

    書館で働く女性は、「ホンドンに来て,教育が地域を変えていくという手応えを感じて、自分

    も携わりたいと思った」と図書館で働くようになったいきさつを語ってくれた。同館は、プ

    ルム学校創立 50 年を記念して設立されたもので、寄付金によって設立され、今も公的支援

    を受けず、後援者の会費や寄付金で運営されている。

    以上のように、生産、加工、消費が循環し、その担い手を育てる教育機関が、就学前から

    高等教育まであるというのが、ホンドンの特徴にあげることができる。つまり、地域づくり

    のインフラとして教育・学校が位置づいており、プルム学校がその理論的・精神的支柱の働

    きをしているのである。

    2.田園学校ホンドン中学校の取組み

    ホンドン中学校は、教育科学技術部(日本の文部科学省に相当)から 2009 年~2011 年に

    田園学校に選定され、17 億₩の助成を受けた。田園学校とは、小規模校維持・育成事業であ

    るとともに農山漁村教育福祉支援事業5の一環として 2009 年に導入された施策である。学校

    に自律的な経営を認める一方で、格差是正を促す教育福祉理念6を据えている点に特徴がある。

    田園学校事業の柱は、①自然と先端が調和された教育環境(ハードウェア)、②特色ある教育

    プログラム(ソフトウェア)、③優秀な人材の配置・活用(ヒューマンウェア)、④学校経営

    の自律性の強化、⑤地域社会との緊密な連携、の5つであり、田園学校には、人事、教育課

    52005 年に「参画型福祉五カ年計画」が策定され、非都市部の教育改善が謳われた。これを受けて 2007 年に教育科学技

    術部の予算に「農山漁村構造調整費」が確保され、農山漁村教育福祉支援事業が打ち出されていった(Im2011)。 6教育福祉という政策原理は日韓比較の分析軸の一つになる。この点については、紙幅の関係で別稿に譲る(尾﨑 2014)。

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    程編成、予算に関わる裁量権が与えられている(尾﨑 2013)。

    ホンドン中学校は、同財源で、施設の整備やタブレットの配置等の教育条件整備を進める

    一方、各種プログラムを実施して教育機会の充実を図るとともに、通学費や夕食費を補助し

    て生活支援機能を強化していった。

    プログラムには、放課後プログラム、全員参加の学習プログラムと特技適性プログラム、そして選

    択的に提供される基礎学習支援プログラムと夜間の特技適性プログラムで構成されている。さらに

    週末スポーツクラブ、地域連携作業場学校(学びの場)プログラム、青少年生活メントリング活動も行

    われている(尾﨑 2013)。メントリング活動は、「面で子どもたちを育てる」をスローガンにし

    て、要支援家庭の内 22 家庭 30 名の小中学生に対して 20 名の住民がメンターを担っている

    (2013 年現在)。メンターは、子どもたちの話し相手になり、食事や家の掃除等の生活支援、

    読書や映画鑑賞等の文化的支援をする一方、専門機関や地域につなぐ働きをしている。

    こうした取組みの結果、生徒数は 2009 年度 97 名から 2013 年度 166 名となり毎年ほぼ 1

    割増え、また基礎学力未定着生徒数も減少する等の目に見える成果をあげている(ミン 2013)。

    生徒数の増加は、校区外の市街地から通ってくる生徒の増加を意味している。既述の通り、

    田園学校には、自律的な経営が認められており、校区外の生徒の受け入れも認められている。

    以上の各種プログラムは、保護者や地域住民と連携しながら実施されている。助成金によ

    って、地域連携の拠点となる地域社会教育文化センターを建設し、また生涯学習担当者を配

    置して、連携活動を促進させていったのである。

    しかし、ホンドン中学校と保護者・住民との協働関係の歴史は浅い。先にプルムの学校づ

    くりと地域づくりを取り上げたが、公立学校であるホンドン中学校がそうした活動に関わる

    ことは近年までなかった。その様は、「あたかもエアーポケットの如く存在していた」(尾

    花 2005、38 頁)と表現されている。学校と地域連携を阻む要因には、受験志向、地域住民

    との摩擦や校外活動に伴う事故を回避しようとする学校管理職の意向があった(ミン 2014)。

    3.プルム学校とホンドン中学校を架橋する帰村・帰農者たち

    では、いかに協働関係が構築されていったのだろうか。その架け橋となったのは、子育て

    世代の帰村・帰農者であった。

    彼/彼女らは、エコロジーの地域づくりに賛同して移住し、様々な経験、スキルを発揮して、

    自ら地域づくりの担い手たらんとする人々であり、地域の刷新力の一因ともなっていた。こ

    うした人たちのなかから、地域づくりとは無縁に存在する学校に批判の目を向ける動きが出

    てくる。さらに批判のみに止まらず、2003 年に「ホンドン子ども愛」というグループを結成

    し、ホン氏を講師に呼ぶなど定期的な会合を持ち、読み聞かせ等の活動に乗り出していくの

    である。

    一方、ホンドン中学校は、学校5日制の全国的な実施に先駆けて、道教育庁の研究指定校

    として、2002 年度より、地域における体験活動のプログラム化に取り組んでいた。しかし、

    学校はプルムを核として地域に構築されてきたインフラや諸施設を活用する態勢がなかなか

    取れずにいた。そうした中で、2003 年に赴任してきたミン・ビョンソン(閔 丙 盛)教諭を

    中心にホンドンに居住する教員たちが、地域との連携を模索しはじめ、2005 年にホンドンの

    公立小・中学校教員、プルム高等部・専攻部教員、地域住民らによって「ホンドン地域汎教

    科教育課程研究会」(以下、地教研と略、会長ミン教諭)が設立されるに至る(尾花 2005)。

    地教研は、保護者・地域住民とともに地域で体験できる生態プログラムを開発して、森体験、

    河川探索、植生調査等の生態体験活動をプログラム化していった。それらは、5日制(2006

    年導入)によって教育空白日となった土曜日プログラム(「日差しの学び舎」)として子ど

    もたちに提供されていくことになる(ミン 2013)。

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    こうした取組みが、学校の在り方を変えていくことなった。2007 年に、4 年任期の公募校

    長イ・チョンロ(李貞魯)氏7が着任する。彼は、教育福祉と地域連携の学校経営方針を打ち

    出し、教職員、保護者、地域とともに教育課程についての議論を重ね、地域資源を学校の教

    育課程に取り込む枠組みを作っていった。韓国では、1997 年の教育課程の改定によって、小

    学校では週 2 時間、中学校では週 4 時間を学校の裁量時間に設定しており、限られた時間と

    はいえ独自の教育課程を編成できる余地がある。そうした裁量を活かした取組みが推進され

    ていったのである。そして、脆弱者層の生徒を支援するために、学校基金への募金を呼びか

    け、また教育庁の助成金を獲得して放課後プログラムの充実を図っていった。

    一方、地教研は、2008 年にサムソン夢奨学財団の助成を受けて、週末のみならず、中学生

    向けの放課後プログラムも手掛けていった。

    以上のように、学校、保護者、地域のネットワークが築かれるなかで、ホンドン中学校は、

    2009 年に田園学校と年中ケア学校8(5600 万ウォン/年)に選定された。この財源で、学校

    と保護者・地域の連携がさらに強化され、既述のような教育福祉プログラムが実施されてい

    ったのである。

    こうした取組みは、田園学校指定期間終了後も続けられている。指定期間中は各種プログラ

    ム、スクールバス、夕食が無償で提供されていたが、指定期間が終了した 12年度から、受益者負担

    となっている。それを補うために、2012 年度にサムソン公益財団の事業に応募し、1 億ウォンの

    助成金を獲得している。ネットワーク事業を対象とするもので、この助成枠に応募するため

    に、地域の9団体で「ホンドン教育支援ネットワーク・お日様の学び舎」を結成し、ホンド

    ン中学校を代表機関とし、本部を田園学校予算で付設されたホンドン地域社会教育文化セン

    ターに置いて申請した。中学校が、プロジェクトを企画・運営する地域ネットワークの要と

    なっていることがわかる。

    表2 学校、保護者、住民の協働関係構築過程

    まとめ

    以上のように、ホンドンでは、自然環境や人的資源を活かして、学校と保護者・住民が教

    育・福祉機能を分かち合うコミュニティが形成されつつある。そうした土壌を築いたのは、

    自然や住民同士の共生を追究してきた半世紀にわたるプルム学校の教育実践であるが、それ

    が学校教育とリンクすることによって、面地域の子どもたちの教育福祉プログラムとして体

    系づけられていった。そして、田園学校事業を通して地域のネットワークが強化され、中学

    校がプログラムの推進主体となって、持続可能な取組みとなるよう努力が続けられていると

    ころである。

    このような取組みを可能にしている条件を列挙すると以下の通りとなる。

    7 2000 年に設立された忠南教育研究所の所長で、全国教職員労働組合の初代委員長。同研究所は、農村型教育・文化共同

    体を形成する場として廃校を利活用し、農村の公立学校教員や大学教員が、農村文化をプログラム化して、地域住民や青

    少年に提供している(趙 2011)。 8年中ケア学校事業は、2009 年度から 2011 年度までの 3 カ年事業で、2012 年からは田園学校事業に統合されている。

  • 11

    ①プルム学校の存在:教育、地域づくりの理論的・精神的支柱の働き

    ②豊かな地域人材:帰農・帰村者

    ③自律的学校運営(ガバナンス):各種プログラムを実施することができる学校の教

    育課程編成権、人事権、予算権の付与

    ④ ①、②、③を活かすことができる教職員の力量

    プルムを核として地域に構築されてきたインフラや諸施設とホンドン中学校を媒介したの

    は、子育て世代の帰村・帰農者であった。同地区は、プルムの卒業生ばかりでなく、こうし

    た人々が、地域の刷新力の一つの要因となっている。放課後プログラムの講師やメンターと

    して、それぞれの知識やスキルを地域やホンドン中学校に提供し、それによって地域や学校

    の魅力が増し、新たな移住者を呼び寄せるというシナジー効果が起きている。帰農・帰村者

    がリタイア層だけでなく、子育て世帯が多いこともこの地の特色となっている。

    そして、①や②の地域資源を機能させる条件に③の自律的学校運営がある。ホンドン中学

    校は教育課程編成の裁量を活かして、エコロジーを基本とする学習活動を特性教科としてカ

    リキュラムに取り込み、また、公募校長が、地域連携、教育福祉の学校運営のビジョンを明

    確に掲げて、保護者・住民のニーズを汲み取っていくなど、自律的学校運営が有効に機能し

    たと見ることができる。

    しかし、自律的学校運営は新自由主義政策の一環として導入されたものである。競争資金

    による財源確保という形態にその性格が如実に表れており、すべての学校に必要な財源が分

    配されるわけではなく、教育格差、地域格差をもたらすことになる。また、財源獲得に伴う

    教職員の負担も大きく、上記の条件が揃わなければ、裁量権を付与されても活かすことがで

    きない。自律的学校運営はもろ刃の剣である。

    こうした両面を捉えつつ、自律学校運営というガバナンスのあり方を吟味していくことが、

    地域と学校の持続可能性を確保する地域共生型学校を成立させる方法、仕組みを考究してい

    くための基本的作業となると考える。今後の課題としたい。

    主な参考文献

    朝岡幸彦他(2010)「韓国における農山村型 ESD の可能性−洪城郡洪東面プルムを事例に」東京農工大学『持続可能な

    開発のための教育(ESD) 研究』第 8 号。

    尾﨑公子・貞広斎子編(2013)『韓国の学校適正規模化政策と田園学校事業に関する資料集』。

    尾﨑公子(2013)「韓国の小規模校対策-田園学校事業に着目して」教育の境界研究会『教育の境界』第10号。

    尾﨑公子(2014)「韓国の教育福祉政策の展開-田園学校プロジェクトに焦点を当てて」小島優生他編『多様化する家族

    の肖像-グローバル化と韓国社会の変容』亜紀書房、近刊予定。

    尾花清(2003)「韓国プルム学校の生態共同体づくりの今日的局面」『教育』。11 月号

    尾花清(2005)「韓国における地域づくりと連携したカリキュラム改革の試み」。『2003-2005 年度科学研究費補助金・基

    盤研究(A)(一) 成果報告書 教育改革時代における教師の位置と文化―その再編の社会学的・歴史的・比較論的研究(課

    題番号:15203032)』。

    尾花清(2011)「韓国の自生の『もう一つの学校』としての『プルム学校』-解説にかえて」民主教育研究所年報第 12

    号。

    坂下明彦他(2011)「プルム学校を起点とした有機農業の展開と農村協同組合-韓国忠清南道洪城郡の事例」北海道大学

    農学部『農経論叢』Vol,66。

    鈴木敏正(2010)「韓国農村再生と地域教育共同体運動—— 第1次「プルム調査」の経過 —」東京農工大学『持続可能

    な開発のための教育(ESD) 研究』第 8 号。

    鈴木敏正(2011)「『持続可能な包摂型社会』への教育と労働と協同」北海道大学大学院教育学研究院社会教育研究室「地

    域と教育」再生研究会調査研究報告書第1号『韓国農村教育共同体運動と代案学校・共同組合の展開-忠清南道ホンドン

  • 12

    地域における『プルム学校』発の地域づくり協同』。

    趙誠姫(2011)「忠南教育研究所農村教育文化共同体活動の事例-地域住民の生活から生み出された文化芸術教育」『京

    都大学生涯教育学・図書館情報学研究』vol. 10.

    降旗信一・元鐘彬(2012)「韓国農村における共生型教育共同体の現状と課題-「学校から住民への貢献アプローチ型」

    教育共同体としてのプルム学校の特徴」共生社会システム学会『共生社会システム研究』Vol.6 No.1.

    ホン・スンミョン(2008)「共に生きる『平民』を育てる学校-プルム学校と地域共同体」山西優二他『地域から描くこ

    れからの開発教育』新評論。

    ホン・スンミョン(2010)「洪淳明講演-農村再生洪東地域調査団御一行皆々様をお迎えして」鈴木(2010)に採録。

    ホン・スンミョン(2014)「プルムの取組み-インタビューから」尾﨑公子編『2012-2014年度科学研究費補助金・基盤研

    究(c)(一) 成果中間報告書 人口減少地域の地域資源を機能させる地域共生型学校モデルの模索』3月発行予定。

    民主教育研究所(2011)小特集「教育改革の力と思想-韓国プルム学校に学ぶ」『民主教育研究所年報』第 12 号。

    北海道大学大学院教育学研究院社会教育研究室(2011)『韓国農村教育共同体運動と代案学校・共同組合の展開-忠清南

    道ホンドン地域における『プルム学校』発の地域づくり協同』「地域と教育」再生研究会調査研究報告書第 1 号。

    ミン・ビョンソン(肥後耕生訳)「韓国の農村地域小規模校における地域共生及び教育福祉事例-忠清南道ホンソン郡ホ

    ンドン面のプルム農業高等技術学校とホンドン中学校を中心に」尾﨑公子編(2014)。

    ミン・ビョンソン(2014)「学校と地域連携を阻んだ阻害要因について」尾﨑公子編(2014)。

    Im,Youn Kee.,2011,New Directions and Tasks for rural Educational welfare Policy in Korea, New Directions for

    Educational welfare in Rural Schools (2011 Korea-Japan Society of Educational administration Symposium

    Proceedings of ISFIRE2).

    (初出 学校の境界研究会『年報 教育の境界』第14号、2014、pp.49-60)

  • 13

    韓国忠清南道洪城郡洪東面の地域概況とインタビュー調査の概要

    佐藤 宏子

    1.はじめに

    近年、韓国では急速な少子化と都市部への人口集中が進み、農村地域では急激な人口減少、

    高齢化、経済活動の衰退が深刻な問題となっている。韓国における有機農業の先進地域であ

    る忠清南道洪城郡洪東面では、農村地域の小規模校を対象とした農村教育福祉支援事業と農

    漁村田園学校育成事業による大規模な財政支援を得て、学校、保護者、地域住民が「教育と

    地域の接続」「教育と農業との融合」「地域社会とともにある学校づくり」に取り組み、教育・

    家庭環境の改善と帰農できる村づくりに大きな成果をあげている。本稿では、韓国の人口動

    態・都市化・産業化について概観したうえで、洪東面の地域概況と洪東面で実施したインタ

    ビュー調査の結果を明らかにする。

    2.研究方法

    韓国の人口学的状況について、韓国統計庁「2010 高齢者統計」、東京大学社会科学研究所

    「東アジア雇用関連資料データ集」を用いて概観する。また、本調査の対象地域である洪城

    郡洪東面の人口の推移と地域産業の現状を明らかにするために、Korean Statistical

    Information Service 国家統計ポータルサイトから「邑面別住民登録人口」、韓国統計庁サイ

    トから閲覧可能な「洪城統計年報 2011 年版」と「洪城統計年報 2012 年版」を入手し、分析、

    検討した。さらに、洪東面の教育活動や地域活動において中心的役割を果たしている者を対

    象としたインタビュー調査を実施した。

    3.韓国の全体的状況

    韓国の総人口は 1960 年の 2507 万人、1980 年の 3746 万人、2000 年の 4599 万人、2010

    年の 4818万人と増え続け、この 50 年間に2倍弱となった。今後も人口は増えていくが、2030

    年頃をピークとして減少に転じることが予測されている。韓国の人口動態を若年人口(0~

    14 歳)、生産年齢人口(15~64 歳)、高齢人口(65 歳以上)に区分してみると、1972 年ま

    では 40%を超えていた年少人口比率が、1986 年には 30%を下回り、2003 年には 20%を下

    回り、2010 年には 16.4%まで減少している。一方、生産年齢人口比率は年々増加し、2010

    年には 72.4%に達している(図表1)。しかし、これまで増え続けてきた生産年齢人口比率

    は 2013 年の 72.6%をピークとして減少に転じ、1965 年から始まった人口ボーナス期間は

    48 年間で終了するとみられている(図表2)。

    現代の韓国社会において注目されるのは、第 1 に急激な少子化が進んでおり、出生率が

    OECD 加盟国 34 か国のなかで最低水準となっているという問題である。図表3によると、

    1人の女性が生涯に産む子どもの平均数を示す合計特殊出生率は、1950 年代には6を超える

    高い水準を維持していたが、1984 年には 1.74 まで低下した。そして、1990 年代以降、景気

    の低迷、養育費や教育費の負担増加、結婚や子どもに対する価値観の変化などから出生率は

    低下し続け、2005 年には 1.08 まで落ち込んだ。その後、出生率は 2010 年に 1.23、2012 年

    に 1.30 といったん回復したが、2014 年 2 月の韓国統計庁の発表によると 2013 年には 1.18

    と再び深刻な超低出生率となった。図表4は、世界主要国とアジアの合計特殊出生率を示し

    ている。これによると、韓国の合計特殊出生率は短期間で著しい減少を示しており、香港、

    シンガポールに次いで低率となっている。

    次に、韓国社会の第2の問題として注目されるのが、大都市への著しい人口集中である。

  • 14

    国連が発表している都市化率(世界の国々の総人口に占める都市人口の割合)をみると、2010

    年の韓国の都市化率は 82.96%と高水準である。アジア地域の都市化率は、香港とシンガポ

    ールの 100%を除くと、韓国が唯一 80%を超えている。今後も韓国の都市化率は上昇し続け、

    2040 年には全人口の約 90%が都市部に居住すると予測されており(図表5)、都市部への極

    端な人口集中は種々の深刻な問題を引き起こすことが予想されている。

    さらに、韓国社会の第3の問題は人口高齢化である。高齢化率(65 歳以上人口の割合)は

    国際高齢者年の 1999 年に7%を上回り、2012 年には 11.8%と日本の 1980 年代後半の水準

    にある。しかし、韓国統計庁「2010 高齢者統計」によると、高齢化率は 2020 年に 15.6%、

    2030 年に 24.3%、2040 年に 32.5%と急上昇し、2050 年には 38.2%に達すると予測されて

    いる注1)。仮に、少子化が予測を超えて進展すると、高齢化は一層速いスピードで進み、高

    齢化の水準も一段と高くなる。従って、韓国では今後極めて短期間に高水準の人口高齢化が

    進展することが必至となっている。こうした中で、家族構造は核家族が約 65%、単身が約

    20%で安定推移しているが、徐々に「夫婦のみ」の世帯が増えている(図表6)。

    次に、韓国の労働力基本統計をみると、15 歳以上人口に占める経済活動人口の割合を示す

    労働力率は、韓国全体で 61.0%、男性で 73.0%、女性で 49.4%となっており、男女差が大

    きい。また、産業別就業者の割合を 2000 年と 2010 年について比較すると、農林漁業者の割

    合は 10.6%から 6.6%へと減少し、サービス業の就業者割合は 69.0%から 76.4%へと増加し

    ている(図表7)。さらに、就業者の学歴別割合を 2000 年と 2010 年について比較すると、

    小中学校卒が 31.3%から 20.7%と減少しているのに対して、大学卒以上が 17.2%から 26.7%

    へと増加している。大学卒以上の者に専門学校・カッレジ卒の者も加えると約4割を占めて

    いる。このように韓国経済に占める農業部門の重要性が徐々に縮小する一方で、学歴上昇が

    急速に進展している(図表8)。

    さらに、韓国の農業についてみると、総就業者に占める農業従事者の割合は 1963 年の 63%

    から低下し続け、2010 年には 6.6%まで低下している(「韓国統計庁 2012」)。また、農家1

    戸当たりの平均耕地面積は 1.46ha(2010)と小規模経営であり、農家人口の高齢化率は 2006

    年の時点で 30%を超えている。日本の農業経営と大きく異なる点として、韓国では専業農家

    率が高く、2009 年の全農家に占める専業農家の割合は5割を超えている(樋口、2012)。

  • 15

    表1 韓国の人口動態:若年人口、生産年齢人口、高齢人口の割合 1950-1989

    出典:東京大学社会科学研究所「東アジア雇用保障資料データ集」,図表 8-2-1-1-2

  • 16

    出典:東京大学社会科学研究所「東アジア雇用保障資料データ集」,図表 8-2-1-1-2

    図表2 東アジア諸国の人口ボーナスの期間

    出典:東京大学社会科学研究所「東アジア雇用保障資料データ集」,図表 2-9

  • 17

    図表3 韓国の合計特殊出生率、死亡率、平均寿命、結婚率、離婚率、1980-2010 年

    出典:東京大学社会科学研究所「東アジア雇用保障資料データ集」,図表 8-2-2-1

  • 18

    図表4 世界主要国とアジアの合計特殊出生率 1960-2025(国連 2010 年版)

    出典:東京大学社会科学研究所「東アジア雇用保障資料データ集」,図表 2-7

  • 19

    図表5 世界とアジアの都市化率の推移 1960-2040(国連、2010 年予測) (単位:%)

    出典:東京大学社会科学研究所「東アジア雇用保障資料データ集」,図表 2-12-1

  • 20

    図表6 韓国の家族構造の変化 1980-2015

    出典:東京大学社会科学研究所「東アジア雇用保障資料データ集」,図表 8-2-2-3

    図表7 韓国の労働力基本統計:産業別、男女別就業者数 2000-2010

    出典:東京大学社会科学研究所「東アジア雇用保障資料データ集」,図表 8-2-5

  • 21

    図表8 韓国の労働力基本統計:教育歴別、男女別就業者数の比率の推移 2000-2010

    出典:東京大学社会科学研究所「東アジア雇用保障資料データ集」,図表 8-2-5

    4.忠清南道洪城郡洪東面の地域概況

    4.1 人口学的特徴

    本研究を実施した洪東面は、忠清南道洪城郡の西部、黄海に面した中山間地域に位置して

    いる(図表9)。忠清南道には9つの郡があるが、このうち洪城郡は2つの邑と9つの面から

    構成されている。2012 年における洪城郡の住民登録人口は 88,415 人であるが、洪城郡庁の

    ある洪城邑に 50.3%、廣川邑に 12.0%の人口が集中しており、洪東面の人口は 3,772 人で、

    洪城郡全体の人口のわずか 4.3%である。

    図表9 忠清南道洪城郡洪東面の位置

    出典:洪城郡ホームページ http://hongseong.go.kr/japanese/ より

    洪東面

    廣川邑

    洪城邑

    http://hongseong.go.kr/japanese/

  • 22

    洪東面の地域状況を把握するために、Korean Statistical Information Service の国家統計

    ポータルサイト、韓国統計庁サイトから「洪城統計年報 2012」を入手した。「洪城統計年報」

    は、ネット上でデータを入手できるのが 2011 年版と 2012 年版に限られること、国家統計ポ

    ータルサイトと「洪城統計年報 2012」は、邑面別のデータが非常に少ないことから、洪東面

    の地域状況に関して作成することができた図表は、図表 10~16 である。

    まず、国家統計ポータルサイトから 2012 年の洪城郡における邑面別・年齢階層別の住民

    登録人口を入手して図表 10 を作成した。これによると 1965 年に 16,242 人であった洪東面

    の人口は、1980 年には 11,719 人、1990 年には 6,279 人、2000 年には 4,495 人、2005 年に

    は 3,871 人、2010 年には 3,464 人と減少し続け、この 45 年間に2割強まで減少した。しか

    し、2012 年には洪東面の人口は増加に転じ 3,772 人となった。

    次に、洪東面の人口構成割合の変化をみると、0~14 歳の年少人口比率が減少しているの

    に対して、65 歳以上の老年人口比率(高齢者率)は 1990 年の 11.6%、2000 年の 23.3%、

    2010 年の 35.0%と増加しており、急激なスピードで高齢化が進展している(図表 11)。さら

    に、国家統計ポータルサイトの「忠清南道邑面別の住民登録人口」から 2012 年の洪東面の

    年齢階級別人口を詳しくみると、9歳未満が 4.9%、10 代が 8.9%、20 代~30 代が 17.9%、

    40 代~50 代が 29.7%、60 代が 14.1%、70 歳以上が 24.5%となっている(図表 12)。洪城

    郡には、人口が約 3,500~3,900 人の洪東面と同規模の面として、金馬面、長谷面、西部面が

    ある。そこで、洪東面の年齢階級別人口の構成割合をこの3つの面と比較すると、洪東面は

    9歳未満、10 代、20 代、30 代、40 代、50 代の若年人口および中年人口の割合が最も高く、

    60 代と 70 歳以上の人口比率が最も低いという特徴が認められる(図表 12)。

    図表 10 洪東面の人口推移

    資料: Korean Statistical Information Service ,統計庁国家統計ポータルサイト,

    忠清南道総調査人口総括より佐藤が作成

  • 23

    図表 11 洪東面の人口構成割合の変化(1980-2010)

    資料: Korean Statistical Information Service ,統計庁国家統計ポータルサイト,

    忠清南道総調査人口総括より佐藤が作成

    図表12 忠清南道洪城郡の邑面別住民登録人口(韓国人)2012年

    合計 0~9歳 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70歳以上洪城邑 44,373 4,794 6,612 5,010 6,692 7,991 6,214 3,436 3,624廣川邑 10,645 487 966 1,055 988 1,371 1,973 1,641 2,164洪北面 4,903 312 457 496 520 642 877 654 945金馬面 3,803 142 252 365 302 435 710 628 969洪東面 3,772 184 334 386 291 440 680 533 924長谷面 3,420 126 240 279 224 365 550 571 1065銀河面 2,774 99 177 258 187 274 504 466 809結城面 2,481 96 158 246 147 266 445 396 727西部面 3,706 148 279 354 278 416 699 617 915葛山面 4,094 153 253 417 317 443 759 675 1077亀項面 4,444 289 383 423 491 568 770 611 909

    合計 0~9歳 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70歳以上洪城邑 100.0 10.8 14.9 11.3 15.1 18.0 14.0 7.7 8.2廣川邑 100.0 4.6 9.1 9.9 9.3 12.9 18.5 15.4 20.3洪北面 100.0 6.4 9.3 10.1 10.6 13.1 17.9 13.3 19.3金馬面 100.0 3.7 6.6 9.6 7.9 11.4 18.7 16.5 25.5洪東面 100.0 4.9 8.9 10.2 7.7 11.7 18.0 14.1 24.5長谷面 100.0 3.7 7.0 8.2 6.5 10.7 16.1 16.7 31.1銀河面 100.0 3.6 6.4 9.3 6.7 9.9 18.2 16.8 29.2結城面 100.0 3.9 6.4 9.9 5.9 10.7 17.9 16.0 29.3西部面 100.0 4.0 7.5 9.6 7.5 11.2 18.9 16.6 24.7葛山面 100.0 3.7 6.2 10.2 7.7 10.8 18.5 16.5 26.3亀項面 100.0 6.5 8.6 9.5 11.0 12.8 17.3 13.7 20.5

    資料:Korean Statistical Information Service ,国家統計ポータルサイト,忠清南道邑面別の住民登録人口2012

    一方、「洪城統計年報 2012」の統計データをみると、図表 10~12 に示した国家統計ポー

  • 24

    タルサイトの統計データとは異なる値が示されており、洪東面の高齢化率は 2010 年が

    29.1%、2011 年が 30.0%となっている。また、「洪城統計年報 2012」によると、2011 年の

    高齢化率は、韓国全体では 11.1%、洪城郡全体では 20.8%、郡庁のある洪城邑では 10.9%

    であることから、洪東面の高齢化率は高く、高齢化が進展した地域と言える。ただし、前述

    した3つの面の高齢化率は、金馬面が 32.3%、長谷面が 37.5%、西部 31.2%であり、人口

    規模が同程度の面と比較すると、洪東面の高齢化率は低い水準であることが分かる(図表 13)。

    次に、「洪城統計年報 2012」の邑面別人口統計によると、洪東面の平均世帯人員数は 2.35

    人であり、洪城郡の中で、洪城邑の 2.57 人、洪北面の 2.38 人に次いで世帯規模が大きい。

    これに対して、洪東面と人口規模が同程度の面は、金馬面が 2.15 人、長谷面が 2.10 人、西

    部面が 2.25 人と、洪東面の世帯規模よりも小さい。すなわち、高齢化率がおおよそ 30%を

    超えている面は、平均世帯人員数が少なく世帯規模が小さい傾向が認められる。これは、過

    疎化・高齢化の進展に伴って、高齢夫婦世帯や高齢単身世帯が増加し、世帯規模が縮小する

    ためであろう。国家統計ポータルサイトと「洪城統計年報 2012」には、邑面別の世帯構造の

    データが掲載されていないため断定はできないが、洪東面の世帯構造は、人口規模が同じ水

    準の面と比較すると、高齢夫婦世帯や高齢単身世帯の割合が若干低く、中年期の夫婦と未婚

    子から構成される核家族の割合が若干高いことが示唆される。

    さらに、洪東面における 2011 年の外国人国籍登録者数は 35 人、洪東面人口の 0.9%であ

    り、洪城郡の中で最も低い割合となっている(図表 13)。35 人を国籍別にみると、ベトナム

    が 16 人と最も多く、次いで中国が 12 人、日本が4人の順である。

    以上から、洪東面の人口学的特徴としては、韓国の中山間地域の一般的傾向である人口規

    模の縮小と高齢化の急激な進展が認められる。しかし、洪東面では 2010 年以降、人口増加

    がみられること、洪城郡における人口規模が同程度の面と比較すると、洪東面は若年層と中

    年層の人口比率が高く、高齢化率が低いこと、世帯規模が若干大きく、外国人国籍登録者が

    低率であることが明らかになった。

    図表13 洪城郡の邑面別統計データ(2011)

    人口 高齢化率 世帯数 平均世帯人員数 外国人登録者数 外国人登録者率

    洪城邑 44,832 10.9 17,201 2.57 708 1.6廣川邑 11,014 25.9 4,852 2.23 206 1.9洪北面 4,526 26.6 1,880 2.38 57 1.3金馬面 3,907 32.2 1,782 2.15 83 2.1洪東面 3,831 30.0 1,614 2.35 35 0.9長谷面 3,531 37.5 1,648 2.10 67 1.9銀河面 2,930 35.2 1,247 2.26 111 3.8結城面 2,596 35.2 1,184 2.13 70 2.7西部面 3,793 31.2 1,668 2.25 35 0.9葛山面 4,259 31.9 1,878 2.21 112 2.6亀項面 4,520 25.6 2,013 2.17 147 3.3

    資料:洪城統計年報2012より佐藤が作成

    人口 世帯 外国人

    4.2 農業経営の状況

    洪東面の地域産業の現状についてみてみよう。ます、「洪城統計年報 2012」のデータをも

    とに、2010 年の農家率(2010 年における総世帯数に占める農家戸数の割合)を算出すると、

    洪城郡全体では農家率が 30.4%であるのに対して、洪東面は 64.6%に達している(図表14)。

    2011 年の洪城郡で農家率が 60%を超える面は、唯一、洪東面だけである(図表 15)。また、

  • 25

    2010 年の総世帯数に占める専業農家戸数の割合を算出すると、専業農家率は洪城郡全体では

    17.3%に対して、洪東面では 40.1%と全世帯の4割が専業農家を営んでいる(図表 14)。さ

    らに、洪東面の農業耕作地は 1,641ha で、総面積の約 42.2%を占めており、典型的な農業中

    心地域といえる。次に、邑面別の耕地面積をみると、洪東面の農家が所有している耕地面積

    は、0.5ha 未満が 28.4%、0.5~1ha が 25.0%で、1ha 未満が 53.5%と零細な規模が過半

    数を占めている。また、1~2ha 未満が 30.3%と高率である(図表 15)。作物は稲作と野菜

    栽培が中心であるが、和牛、豚、鶏の大規模酪農も発達している。

    さらに、洪東面の農民活動家たちは 1990 年代以降 20 年間にわたって、環境にやさしい有

    機農業を実践し、洪東面は韓国における有機農業の先進地域、帰農できる村づくりのモデル

    地域として高い評価を得ている。ミン・ビョンソン(閔丙盛)は、環境にやさしい農業の状

    況について、洪城郡全体で 3,008 戸の農家が 1,169ha を耕作しているが、そのうち洪東面で

    は 146 戸の農家が 454ha を耕作しており、洪城郡の有機農業による耕作地全体の 38.8%を

    占めていると述べている。また、ミンは洪東面が環境にやさしい農業に熱心に取り組み、環

    境にやさしい農業が集中する先進的な地域となっている背景として、「これまでの 55 年間、

    農業と農村の重要性を強調しながら、地域社会とともに様々な住民組織をつくり、農業に新

    たな機運をもたらしたプルム農業高等技術学校の存在がかなり大きかった」と指摘している。

    そして、「1995 年頃から韓国では、代案学校(Alternative School)設立運動が始まり、2000

    年を境に活発化している帰農・帰村現象により、洪東面地域は全国的に注目を集め始めた。

    特に、プルム農業高等技術学校の農業・農村中心の教育哲学と地域社会の環境にやさしい農

    業生産流通、自発的な住民組織の活性化などは、都市から農村へと戻りたい人々にはとても

    魅力的な洪東の長所となっている」と述べている(閔丙盛,2014)。

    図表14 洪城郡と洪東面の農家戸数と農家比率(2010)

         戸数

    洪城郡 総世帯数 36,490 100.0農家戸数 11,082 30.4

    専 業 6,325 17.31種兼業 1,551 4.32種兼業 3,206 8.8

    洪東面 総世帯数 1,619 100.0農家戸数 1,046 64.6

    専 業 649 40.11種兼業 200 12.42種兼業 197 12.2

    資料:洪城統計年報2012,「6.農林水産業 農家及び農家人口」より佐藤が作成

       割合(%)

  • 26

    図表15 洪城郡の邑面別農家率と耕地規模(2010)

    農家率 専業農家率 農家戸数(注) 0.5ha未満 0.5~1ha未満 1~2ha未満 2~3ha未満 3ha以上

    洪城邑 12.4 4.0 2105 53.5 26.9 12.6 2.9 4.1廣川邑 22.7 13.1 1077 40.9 29.3 20.8 4.4 4.5洪北面 46.8 31.2 867 27.2 25.8 29.0 11.3 6.7金馬面 51.6 32.1 899 28.5 29.4 28.9 6.2 7.0洪東面 64.6 40.2 1027 28.4 25.0 30.3 9.2 7.1長谷面 59.7 43.8 970 25.8 24.2 31.6 9.6 8.8銀河面 56.5 40.2 684 21.3 31.3 34.9 7.7 4.7結城面 55.5 42.2 642 28.0 28.0 24.1 9.3 10.4西部面 49.9 19.5 824 35.9 24.2 24.2 9.1 6.7葛山面 51.4 31.4 957 28.8 28.9 23.4 8.0 10.8亀項面 42.8 27.3 850 34.9 29.9 26.0 5.1 4.1

    資料:洪城統計年報201「4.耕地規模別農家世帯」より佐藤が作成

    注)耕地を持たない農家を除いた農家戸数

    農家 耕地面積

    4.3 洪東面における事業体、代表的な機関と団体

    2010 年の洪東面における事業体数は 103、従業員数は 429 人である(図表 16)。これを洪

    城郡の邑面別事業体数および従業員数と比較すると、洪東面の事業体数は洪城郡の邑・面の

    中で最も少なく、従業員数は長谷面の 329 人に次いで少ない。しかし、洪東面の教育サービ

    ス業の事業体数8と従業員数 100 人は、洪城邑と廣川邑を除く9つの面の中で最も多く、洪

    東面の特徴として教育サービス業が極めて盛んな地域であることが指摘できる。

    また、洪東の特徴は、地域住民によって自発的に組織・運営されているさまざまな機関や

    団体が設置されていることである。まず、協同組合の形態で運営されている機関・団体には、

    プルム信用協同組合、地域で生産した農産物を都会の消費者に直接届ける生産者組合、製菓

    製パン施設、工房、木工場、出版社、村のカフェなどがあげられる。また、住民たちの募金

    と政府の支援金により住民が自治的に運営している代表的機関には、パルマク保育園、カッ

    コル保育園、カッコル生態農業研究所、ムンダンリ環境農業教育館がある。この他に地域住

    民によって自発的に組織・運営されている代表的な機関・団体として、パルマク図書館、地

    域センターマウル活力所、洪城女性農業人総合支援センター、体験学習機関の「教育農業研

    究所」、特殊教育職業教育課程「夢が育つ庭」(野菜園芸実習農場)、町の庭園づくり事業「ガ

    クム」、ヌティナム古本屋、日差しの学び舎、マウル共同体研究所、洪東中学校内に設置され

    ている「地域社会教育文化センター」、ゲストハウスなどがある。そして、洪東の中心部の半

    径 500 メートル内に遊び場、保育園、幼稚園、小学校、中学校、プルム農業高等技術学校、

    ジョンゴンブ(2年制社会教育機関)などの教育機関が設置されている。このような地域環

    境が「農村の生活を夢見る都会の人たちに代案的社会の姿を提示しており、帰農あるいは帰

    村を希望する人々が好む場所」(閔丙盛、2003)となり、1990 年代後半から帰農人口が徐々

    に増加し、洪東地域は有機農業の先進的地域・帰農のモデル地域として注目され、高く評価

    されるようになっている。

  • 27

    図表16 洪東面の事業体数と従業員数(2010)事業体数 従業員数

    農業、林業、漁業 1 10製造業 20 98建設業 2 6卸売および小売業 27 77運輸業 6 6宿泊及び飲食店業 12 26出版、映像、放送通信 2 5金融及び保険業 3 22公共行政、国防及び社会保障行政 2 32教育サービス 8 100保健業および社会福祉サービス業 5 25芸術、スポーツ、余暇関連サービス業 1 1協会及び団体、修理及び個人サービス等 14 21

    合 計 103 429

    資料:洪城統計年報2012,「5.企業体 産業別邑面別事業体数および

    従業員数」より佐藤が作成

    4.4 帰農者・帰村者による問題提起から始まった公立学校の変革と生徒数の増加

    韓国では 1995 年頃から代案学校(alternative School)設立運動が始まり、2000 年を境

    に帰農・帰村注 3)が社会現象として活発化するのに伴って、洪東面は全国的に注目をあびた。

    そして、1990 年代後半からの帰農・帰村人口の増加は、洪東面の公立学校における教育プロ

    グラムに変革をもたらした。すなわち、帰農者・帰村者が洪東面の小学校と中学校の保護者

    となり、学校教育に対して問題提起をしたのである。彼らの問題提起について、ミンは「問

    題提起の核心は、洪東は生態中心、共同体中心の時代に先駆けた先進的地域であるのに、洪

    東の小学校や中学校の教育内容と教育方法は、入試重視の競争教育で数十年前と変わりがな

    い」というものだったと説明している。彼らは、子どもの教育に積極的に関わり、親として

    の役割を果たしたいと真剣に考えていた。こうした帰農人・帰村人たちと、地域住民であり

    公立学校に勤務する情熱と力量あふれる教員たちは、2005 年に洪東地域汎教科教育課程研究

    会を組織し、生態親和的体験学習プログラムの開発に取り組み、2006 年からは月1回の生態

    親和的体験学習プログラムを運営した。そして、生態親和的体験学習プログラムの成果を地

    域社会と共有するために 2006 年に「洪東通り祭り」をスタートさせ、洪東地域の学校と地

    域社会が連携した新しい学校づくりを実現していった。その後、洪東中学は洪東地域汎教科

    教育課程研究会による教育実践が高く評価され、2008 年にはサムスン夢奨学財団共同学びの

    庭事業費の獲得、2009 年には韓国政府による全国の農村地域の小規模校を対象とした教育福

    祉支援事業と農漁村田園学校育成事業に、洪東小学校と連携して応募して採択された。2009

    年から 2011 年のわずか3年間で 17 億 5600 万ウオンという潤沢な財政支援を受けて、洪東

    中学校では教育課程の特性化、多様な放課後の講座開設、生徒の通学支援と夕食支援、設備

    の改善と地域社会教育文化センターの建設、青少年生活メントリング活動などを実施した。

    2008 年には5学級 97 人まで減少した洪東中学の生徒数は毎年 15%ずつ増加し、2012 年4

    月時点で 10 年前の水準である 150 人まで回復した。現在は学区外からも入学を希望する生

    徒が増えており、2013 年の生徒数はさらに増加し 166 人となっている(閔丙盛,2014)。こ

    の結果、洪城郡内にある 12 の中学校のうち、洪城邑と廣川邑にある3つの中学校を除く9

    校の中で、洪東中学の生徒数が最も多くなっている(閔丙盛,2013)。

    5.洪東面におけるインタビュー調査の概要と調査結果

    5.1 インタビュー調査の目的・方法・対象者

  • 28

    洪東面でのインタビュー調査は、農村地域の小規模校を対象とした農村教育福祉支援事業

    と農漁村田園学校育成事業による大規模な財政支援を経済的基盤として、学校、保護者、地

    域住民の3者が連携・協働し、地域共生型学校の実現、「共に生きる地域づくり」に取り組ん

    でいる実態を明らかにすることを目的として、2013 年3月 28~31 日に実施した。

    調査対象者の 12 名は、次の3つのグループに分けることができる。第 1 のグループは、

    洪東面における代表的教育機関であるプルム農業高等技術学校、洪東中学校等において指導

    的役割を担っている地域住民である(事例1~4)。第2のグループは、地域住民によって組

    織・運営されている代表的機関および団体であるパルマク図書館、マウル共同体研究所、パ

    ルマク保育園、カッコル保育園、地域センターマウル活力所、洪城女性農業人総合支援セン

    ター、夢が育つ庭、日差しの学び舎において、管理・運営などの中心的役割を担っている地

    域住民である(事例5~10)。第3のグループは、洪東中学校学父母会の会長、要支援児童・

    生徒のメントリング・プログラム支援住民、洪東中学校所属生涯学習・放課後講師、洪東中

    学校水田生物調査プログラム講師など、教育機関の取り組みを支えている地域住民である(事

    例 11~12)。

    調査対象者 12 人の基本属性は図表 17 に示した。事例3の閔丙盛氏については、インタビ

    ュー調査に加えて、「農村における小規模学校の教育福祉プログラムの事例」(2013)、「韓国

    の農村地域小規模校における地域共生及び教育福祉事例-忠清南道洪城郡洪東面のプルム農

    業高等技術学校高等技術学校と洪東中学校を中心に-」(2014)を資料として用いた。

    5.2 インタビュー調査の結果

    5.2.1 洪東面における代表的教育機関において指導的役割を担っている地域住民

    事例1:ホン・スンミョン氏(洪淳明)、78 歳、洪東パルマク図書館長・プルム学園後援会

    長を務める。

    ホン・スンミョン氏は、1936 年江原道横城に生まれ、中学校を中退した。小中高教師資格

    試験により教員資格を取得後、17 歳で小学校の教師になった。20~23 歳は朝鮮戦争で兵役

    に就いた。この頃、内村鑑三の著作を読み、深い出会いとなった。1958 年にプルム学校(当

    時は、プルム農業高等公民学校中学校課程)が創設されたという噂を耳にし、軍隊除隊後、

    1960 年に 23 歳で洪東に移住し、プルム学校で韓国語、中国語、聖書の教師を務めた。1969

    年にはプルム信用共同組合の設立に当たって主要な役割を担い、1970 年代にはデンマーク共

    同組合を韓国に紹介した。1979 年にはマウル住民によって自発的に開設された幼児教育機関

    「カッコル保育園」の初代理事長兼園長に就任した。また、1980 年にはプルム消費者共同組

    合(プルム生活消費者共同組合の前身)を立ち上げ、販売所開設に主導的な役割を果した。

    1991 年には韓日交流を通じて、韓国に環境にやさしい鴨農法を紹介した。その後、プルム農

    業高等技術学校の校長を歴任したのち、2001 年に草の根マウル大学プルム農業高等技術学校

    専攻部生態農業科を設立し、代表教師を務め 2002 年に定年退職した。さらに、定年退職後

    もプルム農業高等技術学校専攻部の講師を務め、2011 年に(社)パルマク図書館を設立し、

    今日まで理事長兼図書館長を務めている。2013 年よりプルム学校後援会長に就任した。

    著書には『ともに生きる平民を育てるプルム学校物語』(1998)、『野草が聞かせる偉大な

    百姓の物語 1・2・3』(2003)がある。ホン氏は日本語も堪能であり、翻訳書として『友愛

    の政治経済学』(賀川豊彦、2009)、『百姓百作‐農夫は 100 の仕事をして、100 の作物を育

    てる』(古野隆雄、2006)、『生物多様性を生かす有機水田農業』(稲葉光国、2007)、『いただ

    きます‐大地と子どもたちを生かす食べ物教科書』(吉田俊道、2007)、『鴨農法‐農業を楽

    しくやる総合技術』(古野隆雄、2006)、『農夫の道』(小谷純一、2006)などがある。

    家族は、妻(74 歳、ハルモニ(おばあさん)共同組合で活動中)、長男(私立高校英語教

  • 29

    師)、次男(製薬会社研究員)、長女(公立小学校特殊教育教師)、次女(看護師)、三女(公

    立中学校国語教師)、四女(大邱大学校教授特殊教育専攻)である。

    プルム学校は 1958 年に設立され、現在ではこの地域の中に保育園から専攻科までの1セ

    ットがある。プルム学校のモットーは「共に生きる平民」、小規模の学校、学校と農村が一体

    になることを理念とした。地域活性化とは、人づくりであり、インフラとしての教育を育て

    ることである。国のための教育ではなく、ひとりひとりを大切にして共に生きる教育、地域

    の実情に合わせた教育をしなければならない。韓国ではソウルに人口の半分が一極集中し、

    ソウルで知的エリートになることが主流となっている。学ぶことは大切だが、みんなが知的

    エリートになるのではなく、地域に生き、地域を支え農業をする人、平和な共同体の中で、

    農村や自然を守ることに自分の役割を見出す人も大切である。積極的なリーダーだけでなく、

    リーダーを支える人も必要である。平民とは「自覚した市民」になることである。社会を支

    える平民こそが、社会・歴史の主体者である。また、地域には大人も子どもも必要である。

    子どもがいなければさびしいし、子どもがいないとみずみずしさがなくなってしまう。だか

    ら、保育園は大切であり、子どもたちが自然のなかですごすこと、安全な食べ物を食べるこ

    と、村人に可愛がられること、多文化家族・障害者が共に仲良くすごすことが重要である。

    ここには図書館もある。パルマク図書館で、子どもたちは本を読み、創造力を育み、未来の

    社会に対する美しい夢を持つ。村の人たち、若い人、主婦たちも地域の歴史や環境や有機農

    業などの勉強をしている。『畑の教室』などの出版もしている。こうしたプルムの考え方が、

    この 50 年間で地域に根付いてきた。

    また、プルム学校の創立者は設立当時から、どうやって農村に人々を残すかを考えて、様々

    な組合を作り、選挙によって役員を選んだ。現在、村人 3700 人が、自分の判断で入りたい

    組合に入って共存している。村人のなかに緊張関係や反目、村八分がないのは、プルムの教

    育効果だろう。現在では約 40 の組合があり、組合員 800 人が有機農業をやっている。ロー

    カルフードは消費者が使ってこそ循環する。プルムの卒業生 120 人以上が洪東に残って有機

    農業や地域活動の担い手となっており、「共に生きる地域づくり」というプルムの考え方を地

    域で培養する役割を果たしている。「共に生きる」という考え方・生き方が根付くと、地域は

    命と平和と環境を大切にするようになる。

    さらに、教育は学校だけでするものではない。教育は地域でするものである。田んぼも図

    書館も教室、地域が現場教室である。村全体が学校である。村が実践空間となったとき、学

    校は学校になるのである。学校は村の胃袋でもあり心臓でもある。すなわち、村が学校にな

    って、地域が学校教育に住民教師と現場(フィールド)を供給する、地域にはそのような教

    育力がある。また、「農業は単なる産業ではなく生活である」という考え方も重要である。農

    業は農業者だけの生活の糧ではない。農業は青少年教育において重要な役割を果たし、健康

    を考えるすべての人たちにとって、生活に密着したものになっている。また、何かを育てる

    ことはヒーリングにもなる。

    20 年先を見通して学ぶことが必要である。また、学ぶことを国の中だけに閉じ込めずに、

    アジアという視点で学ばなければならない。だから、プルムでは創立から 50 年間、日本語

    と中国語を教えてきた。そして、村は生きもので、色々な細胞からできている。障害者たち

    は朗らかで楽しく、純粋さを持っていて、彼らがいるとやさしい風が吹く。村にはどんな人

    も必要である。障害者、高齢者なども排除することなく、また、プルム関係者だけでなく皆

    が共生し、お互いの良いところを活かしていくことが大切である。誰もが人として尊敬され、

    自分の持っている役割をそれぞれに果たしていくことが大切である。

  • 30

    事例2:オ・ホンソプ氏(呉弘燮)、57 歳、プルム農業高等技術学校校長

    オ・ホンソプ氏は、公州大学校大学院を修了した後、1979 年からプルム農業高等技術学校

    に園芸と農業機械の担当の教師として赴任した。2012 年からプルム農業高等技術学校長を務

    め、プルム農業高等技術学校と専攻部の農業実習、地域との連携、各種行事などを総括して

    いる。家族は、妻(57 歳、前洪城女性農業人総合支援センターの保育教師)、息子2人(プ

    ルム学校高等部を卒業したのち大学卒業、プルム高等部 2 年生在学中)、娘(プルム学校高

    等部を卒業したのち大学卒業し、現在は会社員)の5人家族である。

    プルム農業高等技術学校には年間 5000 人から 1 万人の訪問者がある。高等部の卒業生は

    1021 人、中等部は洪東中学校ができた時に閉校したので、卒業生は 514 人である。現在、

    プルム農業高等技術学校の生徒数は 87 人(1 年生 30 人、2年生 29 人、3年生 28 人)であ

    る。校訓は「共に生きる平民」で、入試のための勉強ではない「頭」、キリスト教精神の「心」、

    農作業を行う「手」による体全体の教育を行っている。

    プルム農業高等技術学校は地域との関わりが深く、地域と緊密な連携をしている。1960

    年代初めにプルム学校内で生徒が中心となって、消費者組合、信用組合をつくり、無人販売

    を始めた。これが後にプルム信用組合となった。1970 年代後半になると、洪東面にも消費者

    組合と信用組合が設置された。このため洪東面は韓国における協同組合の発祥の地といわれ

    ている。そして、1975 年に卒業生が有機農法を導入した。その後もプルム学校の卒業生たち

    が地域に残り、中心となって洪東面で有機農法を盛んにした。1981 年には「カッコル子ども

    の家」(幼稚園)を設立した。カッコルとは、自然集落の意味である。1983 年には地域教育

    館が建設され、2階には発達障害者のための「夢をかなえる学びの庭」の事務室が置かれた。

    また、83 年には図書組合がプルム学校内と地域にできた。専攻部の卒業生が中心となって地

    域の農民たちに農民教育を行ったり、研究所や図書館の運営をしてきた。現在、プルム農業

    高等技術学校は、生態教育研究所、マウル研究所、本屋などと連携している。プルム農業高

    等技術学校の授業には、1年生が地域の機関や施設を巡って調査するプログラム、2年生に

    は農業進路教育を行い、夏休みにキャンプや地域での農業実習をするプログラムがある。農

    業進路教育は、農業の精神教育や進路教育をするプログラムである。農業実習は、専攻部の

    農場で生産から販売までのプロセスを学んだり、地域の農家で実習をしたり、保護者や地域

    の人に学校に来て講演してもらったりする。3年生は、卒業論文を書くことが必修である。

    卒業論文の内容は地域の歴史調査、地域で活躍した人・活躍している人の生育史などであり、

    地域で活動している人へのインタビュー、地域の機関や施設などについて調べる。また、土

    曜日には全校生徒が自己啓発学習や選択活動を行い、地域で活動したり、農産物の販売を学

    んだり、一人暮らし高齢者の世話などのボランティア活動をしている。

    また、プルム農業高等技術学校では生態教育に力を入れており、太陽光発電を国の支援を

    受けて 1998 年に設置した。また、排水を地域から外に出さないように敷地内で浄化してい

    る。プルム学校では徹底したエコ教育をしており、学友会の生態部は全校生徒に対して、シ

    ャンプー、ビニール袋は使わない、髪の毛を染めないことを決めている。また、給食での食

    べ残しも認められていないので、残飯入れは置いていない。給食の食材は学校で生産した農

    産物である。夏はエアコンは使用せず、扇風機を使っている。また、生徒たちは段ボールな

    どを売って年間 300 万ウォンを集め、ゴミ袋を購入している。

    事例3:ミン・ビョンソン氏(閔丙盛)、52 歳、洪城中学校教師、元洪東中学校教師、忠清

    南道教育庁革新学校ネットワーク常任代表

    ミン・ビョンソン氏は 1961 年生まれ、公州師範大学国語教育学科を卒業し、洪城郡にお

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    いて中学校国語科教師になった。ミン氏は、全国教職員労働組合洪城支会長として全教組活

    動を担い、洪東中学に在職していた 1989 年 9 月から4年 6 か月にわたって解職処分を受け

    た。復職後、再び洪東中学校に勤務し 2013 年2月まで教務部長、洪東地域汎教科教育課程

    研究会の代表として生態親和的体験学習プログラムの開発、「洪東通り祭り」の創設・企画・

    運営、教育福祉支援事業や農漁村田園学校事業等への応募、採択後の教育プログラムの充実、

    農村地域の小規模校の劣悪な施設環境の改善、学校と地域との連携などにおいて中心的な役

    割を果たした。2012 年には公州大学大学院を修了し、2013 年3月から洪城中学校に勤務し

    ている。また、2014 年には忠清南道教育庁より革新学校ネットワーク常任代表に任命された。

    家族は、妻(プルム農業高等技術学校国語科教師)


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