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Kobe University Repository : Kernel ·...

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Kobe University Repository : Kernel タイトル Title ストループ現象におよぼす音声単語提示の効果(The Effect of Auditory Presentation of Words on the Stroop Phenomenon) 著者 Author(s) 嶋田, 博行 掲載誌・巻号・ページ Citation 神戸商船大学紀要. 第一類, 文科論集,37:71-80 刊行日 Issue date 1988-07 資源タイプ Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 版区分 Resource Version none 権利 Rights DOI JaLCDOI URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81004307 PDF issue: 2020-11-06
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Page 1: Kobe University Repository : Kernel · そして、多くの研究がこの領域に関して行われるようになっている。 また、感情や情緒のような領域についても認知研究の応用領域として関心が広がっている。

Kobe University Repository : Kernel

タイトルTit le

ストループ現象におよぼす音声単語提示の効果(The Effect of AuditoryPresentat ion of Words on the Stroop Phenomenon)

著者Author(s) 嶋田, 博行

掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸商船大学紀要. 第一類, 文科論集,37:71-80

刊行日Issue date 1988-07

資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文

版区分Resource Version none

権利Rights

DOI

JaLCDOI

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81004307

PDF issue: 2020-11-06

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ストループ現象におよぼす音声単語提示の効果 (61) -80一

ストループ現象におよぼす青戸単語提示の効果

嶋 田 博

The Effect of Auditory Presentation of Words

on the Stroop Phenomenon

Hiroyuki Shimada

1 .序論

1. 1 認知心理学 (CognitivePsychology)とストループ現象 (theStroop phenomenon)

ス卜ループ効果ないしストループ現象とは、色と語との意味が不一致なカラーワードに対して、

色命名反応がなされるとき、反応時聞が増大し、反応が困難であるとしづ認知的葛藤現象ないし干

渉効果である。

例えば、古インクで、かかれた「あか」とし、う単語が提示されるとき、被験者は「あか」というよ

うに単語を読むのではなく、インクの色に対して「あおJと反応しなければならない。この際、被

験者の反応は単なるインクやカラーパッチの命名を行うときよりも困難となる。被験者は反応に詰

まったり、エラー反応が増大し反応時聞が増す。

この現象は発見者の名をとってStroop効果と名づけられている(Stroop,1935)。この干渉現象は伺

人内で安定していることからこの現象はただちに人格の領域でストループ・カラーワード・テスト

として応用された。

この現象がどのようなメカニズムで生じるのかについては古くから考えられてきた。しかし近年

の認知心理学の興隆により、新たな観点から研究がなされるようになってきた。

認知心理学(情報処理心理学)はコンピュータ科学を中心にして勃興した認知科学の一領域とし

て位置づけることができるが、刺激と反応(入力と出力〉との関数関係でとらえる従来の心理学に

比して精神活動を情報処理(informationprocessing)としてとらえる方法論は心理学へ革命的な変革

をもたらしているといっても過言ではない《最近、認知革命 (cognitiverevolution)をタイトルとす

る著書が相次いで発行されている (Baars,B. ]., 1986; Gardner, H., 1985)>。この動きの中で、心理

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-79ー (62) ストループ現象におよぽす音声単語提示の効果

学はコンピュータ科学と共通のタ ームを持つことにな った。アメリカ心理学会 (A.P. A.)の発行し

ている代表的心理学雑誌である Journalof Experimental Psychologyをみても、その中に現われるの

は、コンピュータ用語である (resource.register. buffer. access等〕。

なによりも、この動きの中から生まれた変化は、従来の心理学では問題にもならなかった事柄が、

心理学的問題になるということがわかったということであり、最大の収益であったD

たとえば、記憶の領域では、従来の研究では、記憶材料を記銘し再生することが中心的課題であ

り、単純に記憶過程を一連の入力から出力に至る過程であると考えられていたが、記憶の方略その

ものも記憶されていなければ記憶することができないことが分かったことは大きな進歩であった。

あるいは、再生の結果がたとえ同じであっても、処理の方法は何とおりもあることもある。処理の

方法についての手続も記憶に入っているといういわゆるメタ記憶の問題は、コンピュータのメモリ

の管理のプロセスのアナロジによりはじめて心理学の問題領域になった。まさに記憶の問題は片仮

名でメモリと言い換えた方が適切であろう。

また、日常の行動について、従来は条件づけを基礎とした学習によって刺激と反応との関係でと

らえられていたが、コンビュータ制御のロボットの行動から分かった点は日常の行動は記憶内の知

識を参照しながら行なっていることであった。

また、単語の読みについては、認知心理学によって、はじめて研究の途についたと 言っ ても過言

ではなL、。従来の心理学では、人間の知覚過程はゲシタルト心理学から図形についての視覚を中心

として研究が行われていた。さらに、記憶研究は無意味緩りを中心に意味記憶を排除する形で研究

が行われていたこととあいまって、 言語材料の知覚についての研究はあまり行われてこなかった。

単語の読みは従来の図形知覚の研究で得られた結論から類推することはできない。つまり 単語の読

みは単なる知覚過程だけではなく、読みについての意味記憶をも含む過程なのである。最後の考察

で触れるプライミング課題を用いた研究は、このような単語の読みの研究に対して大きな貢献をし

たと言える。

また思考の研究は意識を排除しようとしていた行動主義の時代には研究の対象から除外されてい

たが、研究の対象として、ふたたび取上けーられるようになった。

このように、知覚は記憶、思考といった過程と相互に関連しあっていることがますます明らかに

なるにつれて知覚、記憶、思考すべての上位概念としての認知 (cognition)とし寸術語が用いられる

頻度が増してきたのである。そして、多くの研究がこの領域に関して行われるようになっている。

また、感情や情緒のような領域についても認知研究の応用領域として関心が広がっている。

したがって現在、コンピュータに関する知識は、心理学にとって必須の事項となっている。

1. 2 Stroop現象に関する干渉理論

ストループ現象の研究は古くて新しい研究領域であると言える。

最近、 Stroop現象は情報処理の観点から新たな研究がなされるにL、たった。つまり、単語情報処

理の自動性と並列処理を示す例として注目されたのである。この間の事情は先の報告(嶋田.1985)

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ストループ現象におよぽす音声単語提示の効果 (63) -78-

に詳しいので今回は簡単に触れる。

つまり、ストループ課題では色と単語という 2つの次元が同時に提示され、被験者は色次元のみ

に注意、を向けるが、注意をうけていないはずの単語次元までも、意味的処理がされるのである。こ

の結果は単語の読みの自動的処理を示す例として注目を受けた (LaBerge, 0., 1981)。

単語や文章をわれわれが読むとき、 一語一語逐次注意をしていな くて も、文章が理解される。そ

れは単語の読みが過剰学習された結果、注意を要せずに処理がなされてしまうのであり、ストルー

プ現象はまさにこの自動的処理の根拠として、考えられた。

単語の自動性 (automaticity)とは LaBerge (1981)によると、処理の不可避牲と限界容量(注意)

欠如の特性を有すると定義している。つまり、ストループ効果においては、色のみに被験者が反応

しなければならない課題であるため、単語の処理はこの課題では本来処理されるべきでない次元で

ある。にもかかわらず、色と単語が一致しているときには色の命名反応時聞が速く、色と単語が一

致してし、ないときには反応時聞が遅くなるということは、単語の意味処理を被験者は避けることが

できないからであると考えられた。

さらにこの議論は単語次元と色次元とを時間的に分離し、 単語を知覚できないほど短い時間で提

示したときにも(闘下提示)、ストループ効果が生じることを示す結果が得られている (MarceI.A.

J.. 1983)。このように Stroop効果はこのような自動性の研究において注目を受けるようになった。

他方でこの考え方と対立する理論がある。それは、特徴統合理論(featureintegration theory)で、あ

る。この理論では白動的処理の考え方は全面的に批判されている (Treisman,A. M., & Gelade, G.,

1980; Kahneman, 0., & Treisman. A., 1984)。

つまり、単語がストループ課題において、意味処理されているのは、注意を受けなかったためで・

はなしむしろ注意を受けたためで、あって、自動的に単語が処理されるということはないと考えら

れている。

特徴統合理論によると、色、方向、空間周波数、明るさのレベル、運動方向のような特徴

(feature)は、注意を受ける前に 自動的にレジス タに入れられるが (前注意的処理〕、この レジスタに

登録されるま では、自動的に処理されるとはし、え、現実の知覚きれる刺激はこれらの特徴がある空

間内に融合されており、知覚は特徴の融合された刺激としての視野内の特定の位置に注意すること

によ ってはじめて生じるとされている。

つまり、単語のような形態的にも一定の空間を占有する刺激は特徴の統合が行われたのちにはじ

めて意味処理が行われるのであり、単語の意味的情報のみが例外的に注意を要さずに白動的に処理

されることはあり得ないと主張する。

つまり、ストループ課題では色次元と単語次元が同時に提示され、色だけでなく課題に関係のな

し、単語まで、が意味的処理されてしまうが、それは単語に注意が向けられなかったのに処理されたの

ではなく、むしろ色次元だけに注意を向けることができなかったために、単語次元にも注意が向け

られた結果、処理されてしま ったと考えるのである。

それは、同一の空間的位置に色情報と単語情報が提示されているからであり 、したがって色情報

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-77ー (64) ストループ現象におよlます音声単語提示の効果 ー'‘

だけに注意を向けたとしても、色情報だけを分離して処理できないためであると考えられた。

したがってこの理論によると、干渉効果の原因は入力段階で並列に情報が取込まれてしまうこと

にあると強調されている。どちらかというと知覚よりの考え方である。そして、色情報と単語情報

を空間的に分離して提示するとストループ効果が減少することを示したのである (Kahneman,D.,

& Henik, A., 1981; Kahneman, D., & Chajczyk, D., 1983; Kahneman, D., & Treisman, A., 1984)。

しかし、特徴統合理論でストループ効果を説明するには、弱点がある。それは、空間的に色次元と

単語次元を分離しでもストルー プ効果は減少したとはいえ、残存していたからである。

したがって、特徴統合理論が自動的処理理論に置き換わるかどうかを確かめるためには、単語次

元のモダリティを変化させ聴覚提示した場合にストループ効果が完全に消失するかどうかを確かめ

る必要がある。

2 実験

序論で述べたように、ストループ効果における注意の機能に関しては議論が対立している。一方

は自動的処理論であり、他方は特徴統合理論である。

自動的処理論では、ストループ効果は単語次元が注意を受けずに自動的に処理されるために、生

じると考えるが、逆に特徴統合理論では、注意が単語にも及んだために処理されると考えた。

しかし、現在のところどちらが正しいのか決めがたい状況にある。

単語を知覚できないほど短い時間で提示 しても、干渉効果があらわれると いうデータ (Marcel,

1983)は自動的処理論に有利であり、逆に空間的に色次元と単語次元とを分離すると干渉効果が減

少するというデータは特徴統合理論に有利である (Kahneman,D., et al., 1984)。

しかし、この結果はストループ干渉が減少 したが、ま ったく消滅したのではなかったので、空間

的に離れた位置に刺激が提示されたために、注意、が及ばなくなったにもかかわらず、ストループ効

果がなお生じているとも解釈できるのである。

序論でも述べたようにこの議論に決着をつけるためには、空間だけでなく、モダリティ問での分

離を行なう必要がある。つまり、単語を音声提示することである。

2. 1 目的

本実験は単語情報を音声提示することによって、 Stroop干渉が見られるかどうかを検討する。音

声情報と視覚情報との間でストループ効果がみられるかどうかを検討する実験は従来つぎの理由か

ら行われて来なかった。つまり、音声刺激と視覚刺激を正確に時間的にコントロールして提示しな

ければならないが、技術的に困難であったのである。

しかし、コンピュータ技術の進歩は正確な時間制御を可能とし、しかも安価で実現可能となった。

音声刺激と色刺激との聞にストループ効果が見られるかどうかは、日本のみならず著者の知る限り、

諸外国においても行われていない。

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ストループ現象におよぼす音声単語提示の効果 (65) -76-

単語を音声提示することは特徴統合理論からはストループ効果の必要条件としての空間内での同

一位置での色次元と単語次元の融合という条件を満たさない。 したがって特徴統合理論からは、音

声単語提示条件ではストループ効果は生じないであろうと予測される。

他方、 自動的処理によれば、単語情報は注意を受けずに、 意味的処理までされるとい うことから、

当然音戸単語は恵;味処理されるはずであり、 干渉が生じるはずである。

2. 2 方法

2.2.1. 被験者および実験者

実験を受けた被験者は本学の学生10名(男子 8名;女子 2名)である。

実験装置の監視、被験者の反応のモニターを行う実験者は著者と数名の実験助手(学生)があ

たった。

2.2.2. 装位

実験装置は写良司 1, 2と岡 Hこ示すよ

うにパーソナルコンピュータを中心にし

ている。 2つの実験宅のうち一室を暗室

とし、被験イ告は陪室で実験を受けた。本

実験は被験者が課題にどれだけ注意、を集

中できるかが、絶対の条件であるため、

陪宰に被験者のみが入札 実験者は隣室

の実験宅から被験者に対して教示を行う

とともに被験者の反応をモニタした。暗

室にはフード付のディスプレイとマイク

を置き、カラーパ ッチはコンピュータ・

ディスプレイ 上に提示した。と同時に、

隣室の実験室 (以ドモニタ室という)の

コンピュータ・ディスプレイにも同時提

示し、モニタ可能とした(関西電気製

ディスプレイ分配器と延長器を使用〕。

聴覚刺激及び視覚刺激の組合せと時間

制御、刺激の提示、及び被験者の反応時

E 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 圃 園田園園田園田園醐醐幅制必s轍灘鵬結:部部窓銭懇繋機で繋懇糠

間測定はコンビュータ (NECPC980 1)内の1/0タイマボード (アルファ ・システム製)を用いておこ

なった。

本ボードは A/D, D/Aコンバータ及びタイマが内蔵されており最大の特徴は何種類もの音声を記

録しておき、あらかじめ決められたタイミングでそれらの提示を行うことができる点である。但し、

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-75-(66) ストループ現象におよぽす音声単語提示の効果

プログラムは自作する必要がある。

被験者の反応、は音声で行い、マイクから入力され,反応時聞がコンピュータ内のタイマーボード

で ms鈴ec単位で

刺激はタ一ゲゲ、ツトとなる視覚見期刺司可j激と妨害刺激としての聴覚刺激からなつている。視覚刺激は、カ

ラーパッチがディスプレイ上に凝視点の点滅の後、提

示される。色の種類は赤、青、緑の 3種類である。被

験者はこの刺激に対してできるだけ速くかっ正確に命

名反応しなければならなL、。

妨害刺激の提示はあらかじめ音声刺激を作成してお

く必要がある。-図 2は今回の音声刺激のうち、「あかJ

について音声波形 (fあ」音)を表示したものである。

また、被験者の音声反応はコンピュータに入力され

るとともに隣安のスピーカ上でモニタされる。

また、被験者が間違って反応したり、マイクから音I音声 データの作成l

古 音 声データ の波形 表示

図 1 実験装置

※実験・械査課題作成 ンステム※声がコンピュータに入力されていな

いときは(反応時間を被験者には見

えない位置に提示している)、実験

者は隣室のコンピュータのキーを押

すことで誤試行の試行番号をコンピ

ュータに記憶させ、一つの試行ブロ

ックが終わるとその刺激のみを自動

的に再提示できるようになっている。

1番目のデー夕、録音時聞は 1秒です 。

また、被験者への実験者の教示は 5c.le 1 (100 Sec 慌の倍率 =

隣室のマイクから暗室のスピーカに図2 音声波形

一一丁 一下 7

-lJ Li 中止 E 5 C

より、提示された。したがって実験者が行うことは教示をマイクから行うことと、エラー反応の監

視をするだけであり残りはすべてコンピュータが自動的に行う。

2.2.3. 刺激

2.2.3.1.提示位置

視覚刺激はディスプレイ上で直径 7皿のカラーパッチであり、被験者との視覚距離42cm、視角

O. 27'で提示された。なお、被験者への刺激提示用ディスプレイは、黒のケント紙で刺激提示さ

れるごく少量の領域を除いて、マス クされている (3.5cm x 3. 5cm)。これは、マスクされた領域に反

応時間と、試行番号が表示され、隣室のそニタで、確認することができるようにするためで‘ある。

当然ながら、反応時間の表示はマスクされているため、被験者からは確認できない。

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ストループ現象におよぽす音声単語提示の効果 (67) -74ー

2.2.3.2.種類と組合せ

視覚刺激として用いたカラーパッチの種類は「あかJ(R)、「あおJ(B)、「みどりJ(G)の 3種

類である。

音声刺激は「あかJ(r)、「あおJ(b)、「みどりJ(g)、「しろJ(w)、「無音J(c)の4種類で

ある。

したがって音声刺激と視覚刺激との組合せばつぎのとおりとなる。

a)一致条件 (Rr,Gg, Bb)

b)不一致条件 (Rg,Rb, Gr, Gb, Br, Bg)

c)無関係条件 (Rw,Gw, Bw)

d) コントロール条件 (Rc,Gc, Bw)

《なお、( )内の大文字はカラーパッチを表し、小文字は音声単語を表している。》

2.2.3.3.提ぷ時間条件

タイミングは図 3に示すとおりである。

最初にディスプレイの中央に凝視点と

してO印が 1000msecの間提示される。

その後 1000msecして、音声先行提示の

場合は、妨宵TI(背声による色名)がヘ

ッドフォンから、提示される(モニタ室

ではモニタ可能〕。百戸提示のスタート

から一定時間をおいて (200msec,または

悦覚刺激

聴覚刺激

!ぇ/,i:.'

t挺f見1,1,I カラーハ yチ

音声単語

lOOO I 1刷JO行lsec 口lsec

100 msec)、ディスプレイとにカラーパ 図3 時間条件(カラーパッチ先行条件の場合)

ッチが提示されるこの色名を被験者は音声で反応する。反応と同時にディスプレイのカラーパッチ

は消える。

カラーパッチ先行条件の場合、カラーパッチが提示されてから一定時間後 (200msec,または 100

msec)に妨害音(音声)が提示される。被験者はこの場合にも音声で反応し、反応と同時にディスプ

レイ上のカラーパッチが消える。

いずれの提示時間内においても、反応時聞はカラーパッチが提示されてから、音声反応までの時

間間隔としている。

2.2.3.4.エラー処理

被験者はカラーパッチをできるだけはやくかっ正確に音声により命名反応するように要求される

が、隣室で実験者は、被験者の声をモニタしており、エラー反応または反応が 1000msec (待ち時

間)以上の時はFUNCTIONキーを押す。コンピュータはエラーのあった試行番号を記憶しており、

試行ブロックのあとで、再提示するようになっている。

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-73ー (68) ストループ現象におよぽす音声単語提示の効果

反応時聞はエラーのあった試行番号のデータと自動的に置き換わるので、実験者は煩わしさから完

全に解放されている。

2.2.4. 手続き

暗室のディスプレイ上に凝視点が提示されたあと、カラーパッチの視覚刺激が提示され、聴覚刺

激の提示の有無に関わらず被験者がこれに反応して l試行とした。

この試行が一定回数繰り返されて、試行ブロックを形成する。

試行ブロックは、練習試行30回と本試行60回で l試行ブロックとし、休憩をはさんで 5試行ブ

ロックから構成されていた。 1試行ブロック内と練習試行の提示時間は一定とした。

さらに、この 5つの試行ブロックに移る前に、 30回の練習試行を 2ブロック(以下練宵ブロック

という〉行なった。したがって、被験者は合計60+90X5 =510凶の反応を行うことになる。 l回の

実験には約 1時間要する。

練習試行は「練習 1Jと「練習 2Jからなっている。練習 1では、カラーパッチの命名をできる

だけはやくかっ正確に行なうことが要求された(音声は提示されなしう。練習 2では、妨害百ーが提示

されるが、その声には関係なく、カラーパッチの命名を行なった。

本試行ブロックの 5試行ブロックはつぎの順で提示される。提示順序は 5条件設けることにより

カウンターバランスされた。

b一一→ e-一→ a一一→ d一一→ C 条件 la 音声先行 200 msec

e一一→ a一一→ d一ー→ C一一→ b 条件 2b 音声先行 100 msec

a-一→d一一→ c一一->b一一→ e 条件 3c 音声色同時提ノド

d一一→ c一一→ b一一→ e一一→ a 条件 4d 色先行 100 msec

C一一→ b一一→ e一一→ a一一→ d 条件 5e 色先行 200 msec

各条件毎に 2人ずつ割当てた。したがって被験者は計10人となる。

2.2.5. 教示

被験者に対する教示は以下のとおりである。モニタ宝からマイクをとおして、暗室内の被験者に

提示した。

練習ブロック

練習試行実験が始まるとディスプレイ上に白色の小さい点が出ますのでその点をじっと且

てください。しばらくするとその点は消えて代りに色のついた丸印が表示されます。その色名をで

きるだけ早くかっ正確にいってください。これが何度か繰返されます。もし、間違えてもし、し、なお

す必要はありません。色名は赤、青、緑の 3種類です。なにか質問はありませんか。J(つづいて練

習試行15試行、休憩〕

練習試行 2: Iそれでは練習を続けます。今度はつぎの点を除いて先の実験と同じです。色のつ

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ストループ現象におよl:fす音声単語提示の効果 (69)ー72ー

いた丸印が表示されますが、その際にヘッドフォンから妨害音がきこえます。

妨害音に関係なく丸印の色名をできるだけ速くかっ正確にいってください。これが何度か繰返さ

れます。もし間違えてもし、し、なおす必要はありません。色名は赤、育、緑の 3種類です。なにか質

問はありませんか。J(つづいて練習試行15試行、休憩)

本試行ブロック

練習試行今度は声のでるタイミングが違う点を除いてさっきの練習と同じです。では練習を

行います。J(つづいて練習試行15試行、引続き本試行の教示に移る)

本試行では本実験に移ります。」

(練習試行と本試行とをブロックにして 5回行う)

2要因分散分析法実験計画法により配置された。

5試行ブロックを同ーの被験者が実験される。したがって、被験者内を 2要因(刺激条件および

提示時間要因)とする分散分析法によって結果は分析された。

2. 3 結果

結果は図 4に示すとおりである。提

示時間の効果は有意であった [F

(4, 36) =6.675, p <. 01]が、音

声による干渉効果は有意ではなかった

[F (3, 27) = 2.082, p =. 125J。

交互作用も有意でなかった [F 02,

108) = 1. 381. p =. 186J。

、由、J・~.・.、へ.

父--N・.

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1

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5印)

450 ー200 ー100 。 ハU

Ul

200 meec

図4 結果

2. 4 考・察

本結果は、モダリティ間ではストループ効果は生じないことの一例を示すと解釈されるであろう。

特徴統合理論からは、同ーの空間的位置に単語と色次元が存在していることがストループ効果の

必要条件であり、単語次元と色次元の融合している刺激に注意が向かうために、並列処理が行なわ

れるとされていた。

しかし、空間的に色次元と単語次元を分離するとストルーフ。効果は減じたが、残存するという問

題が残されていた。今[illの実験で、は、単語次元を聴覚提示することにより、空間から完全に分離す

ることが可能となった。その結果、ストループ効果は、完全に消失したのである。

したがって、もし単語情報が自動的に処理されるのであれば、当然干渉効果は残存するはずであ

り今回の結果は自動的処理に対する反証となった。

本結果は、特徴統合理論の優位をしめすものである。しかし、特徴統合理論だけではストループ

効果は説明され得ない。

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-71一 (70) ストループ現象におよぽす音声単語提示の効巣

つまり、特徴統合理論はあくまで知覚レベルで、の並列処理に至る過程であり、メモリ・アクセス、

及び決定のプロセスがストループ効果が生じるために必要であるからである。

すなわち、カラーと単語が一致しているときには、反応が速く、カラーと単語が不一致のときに

は反応が遅いという問題それ自体は知覚レベルだけで、は考えることはできない。

メモリ・アクセスに関して現在盛んに研究されているのが、プライミング効果である。プライミ

ング効果は意味的処理において、あらかじめ単語を提示しておくとそれが手がかりとなって意味記

憶の検索が促進され、その結果反応時聞が促進されるという結果である。

今後はメモリ・アクセス過程、決定過程をも含んだストループ干渉の統合モデ‘ルを構築する必要

があるであろう。

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