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貿易政策
1.消費者余剰と生産者余剰
2.部分均衡分析と一般均衡分析
3.小国と大国
4.貿易政策の種類・分類
5.関税の経済的効果
6.輸出補助金の経済的効果(略)
1.部分均衡分析と一般均衡分析
• 部分均衡分析(partial equilibrium )– ある財、つまり1つの財の市場に需要と供給を考え、その財の価格決定をあつかう分析方法(マーシャル)。
• 一般均衡分析(general equilibrium)– 多くの財、つまり複数の財の需要・供給・相対価格の同時決定をあつかう分析方法(ワルラス)。
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2.消費者余剰と生産者余剰• 消費者余剰(consumer surplus)
– ある財に関して、消費者が買ってもよいと考える価格(MU)から、その財の価格を引いた金額。
– 財を買うことによって、個々の消費者が得る純便益。
– 需要曲線より下側で、価格より上側の面積に等しい。
– 市場価格の下落は消費者余剰を増加させる。
• 生産者余剰(producer surplus)– ある財に関して、生産者が売ってもよいと考える価格(MC)から、その財の価格を引いた金額。
– 財を売ることによって、個々の生産者が得る純便益。
– 供給曲線より上側で、価格より下側の面積に等しい。
– 市場価格の上昇は生産者余剰を増加させる 。3
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消費者余剰
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消費者余剰
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3.小国と大国
•小国(small country)の仮定=price taker「ある国の需要」の、「世界全体の需要」に占める割
合が小さいために、その国が輸入制限をしても、国際価格に影響を及ぼさない。→ある国が関税などの輸入制限を行って、国内価格を(関税分だけ)引き上げたとしても国際価格に変化はない。
•大国(large country)の仮定=price maker「ある国の需要」の、「世界全体の需要」に占める割
合が大きいために、その国が輸入制限すると、国際価格に影響を及ぼす(国際価格が下落する)ケース
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4.貿易政策の分類
価格規制 数量規制
輸入 (輸入)関税 数量(輸入)制限
輸出 輸出補助金 輸出(自主)規制
消費 消費税 配給制
生産 生産補助金 生産調整
国際価格
関税の賦課
生産補助金の付与
国内価格1
2 3
4 5
Q
a
b
c
d
e
f g h
ij
P5.関税の経済的効果(小国のケース)
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関税の経済的効果(小国のケース)1.自給自足=消費者余剰+生産者余剰
=a+(b+c+d)2.自由貿易
=(a+b+e+c+f+g+h)+d=1+(e+f+g+h)3.関税の賦課=(a+b+e)+(c+d)+g=1+(e+g)
=2-(f+h) 4.生産補助金の供与
=(a+b+e+c+f+g+h)+(d+i+j)-(i+j+f)=1+(e+g+h)=2-f
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結論① 最善の策(first best)は、自由貿易。消費者に有利、生産者
に不利。消費者が自由貿易から受ける利益は広いが浅く、生産者が自由貿易によって被る損失は狭い範囲に集中。
② 保護貿易(関税)は総余剰を縮小。消費者に不利、生産者に有利。消費者が保護貿易から被る損失は広いが浅く、生産者が保護貿易によって受ける利益は狭い範囲に集中。
③ 次善の策(second best)は、生産補助金。ないしは、損害を被った生産者への直接的な補償。
(a)しかし補助金の財源をいかに確保が問題。理論的には恩恵を受けた消費者から被害を被った生産者への所得移転(所得の再分配)であるが、社会的合意を得られにくい。
(b)また生産補助金によって、生産効率が改善し、SS曲線が下方シフトするかどうかも問題。
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2-(2) 関税の経済的効果(大国のケース)
関税
S
S
D
外国(輸出国)自国(輸入国)
S*
S*
D
D*
D*
P
D,S
輸入
国際価格=国内価格(P)
国内価格 (P2)
輸出
国際価格 (P1)
a bc
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関税の経済的効果(大国のケース)1. 自国(大国)が関税を賦課することによって、 国際
価格(外国の輸出価格)を引き下げることができ(P↓P1)る。自国の交易条件は改善する。
2. 関税の賦課による自国の厚生は、交易条件の改善による関税収入の増加分(c)と、関税による消費者余剰の減少分(a+b)に依存する。〈c-(a+b)〉を最大にする関税率を「最適関税」という。
3. このモデルは、「買い手独占」による国際価格の引き下げであるが、この分析は、 「売り手独占」によ
る国際価格の引き上げ(例えば、OPECによる石油価格の引き上げ)にも適用できる。