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三国川ダムの広報活動について - hrr.mlit.go.jp ·...

Date post: 22-Aug-2020
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三国川ダムの広報活動について 北澤 大輔 三国川ダム管理所 (〒949-6741 住所 新潟県南魚沼市清水瀬686番地59). 「地域に開かれたダム」として年間25~30万人の観光客が訪れる三国川ダムでは、ラジオやマンガとの メディアミックスによるPR等、多様な広報活動を実施しており、その事例紹介を行う。 キーワード 観光資源、広報活動、メディアミックス 1. はじめに 三国川ダムは、洪水調節や用水供給、発電など必要な 機能の他に、年間25~30万人の観光客が訪れる観光資源 としての側面を強く持つ。 1993年に「地域に開かれたダム」として、ダム湖及び 周辺区域の利用を促進し、地域の活性化を図ることが適 当と認められている。当ダムでは、ダムの役割や魅力を 地域や全国の人々に伝えるために様々な方法の広報活動 を地元と一緒に行ってきた。 -1 三国川ダム位置図 2. 管理所主体の活動 (1) ダム案内 5月から11月までダム案内を行い、監査廊見学や操作 室の説明、情報館では、ダムの目的や役割、建設時の映 像を視聴する。中でも監査廊見学は人気があり、観光放 流の迫力や屋外とは別世界に歓声が上がる。一般の観光 客から団体の見学希望が地元をはじめ、県外からも来る。 南魚沼市の児童は総合学習の場として毎年見学し、観光 団体としては、バスツアーのコースや地元の温泉旅館の ツアー、他にも老人会などが訪れる。人数が多い時は、 職員総出で案内し、昨年度は延べ2139名の案内を行った。 -2 ダム監査廊案内の様子
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Page 1: 三国川ダムの広報活動について - hrr.mlit.go.jp · Youtubeに投稿することで、全世界の人々に動画を配信 することができた。 図-3 越流中プレミアムムービー

三国川ダムの広報活動について

北澤 大輔

三国川ダム管理所 (〒949-6741 住所 新潟県南魚沼市清水瀬686番地59).

「地域に開かれたダム」として年間25~30万人の観光客が訪れる三国川ダムでは、ラジオやマンガとの

メディアミックスによるPR等、多様な広報活動を実施しており、その事例紹介を行う。

キーワード 観光資源、広報活動、メディアミックス

1. はじめに

三国川ダムは、洪水調節や用水供給、発電など必要な

機能の他に、年間25~30万人の観光客が訪れる観光資源

としての側面を強く持つ。 1993年に「地域に開かれたダム」として、ダム湖及び

周辺区域の利用を促進し、地域の活性化を図ることが適

当と認められている。当ダムでは、ダムの役割や魅力を

地域や全国の人々に伝えるために様々な方法の広報活動

を地元と一緒に行ってきた。

図-1 三国川ダム位置図

2. 管理所主体の活動

(1) ダム案内 5月から11月までダム案内を行い、監査廊見学や操作

室の説明、情報館では、ダムの目的や役割、建設時の映

像を視聴する。中でも監査廊見学は人気があり、観光放

流の迫力や屋外とは別世界に歓声が上がる。一般の観光

客から団体の見学希望が地元をはじめ、県外からも来る。

南魚沼市の児童は総合学習の場として毎年見学し、観光

団体としては、バスツアーのコースや地元の温泉旅館の

ツアー、他にも老人会などが訪れる。人数が多い時は、

職員総出で案内し、昨年度は延べ2139名の案内を行った。

図-2 ダム監査廊案内の様子

Page 2: 三国川ダムの広報活動について - hrr.mlit.go.jp · Youtubeに投稿することで、全世界の人々に動画を配信 することができた。 図-3 越流中プレミアムムービー

(2) ホームページ ホームページ更新は職員で行い、イベント情報などを

掲示している。また、動画の配信を積極的に行っており、

小型無人機(ドローン)で撮影した上空からのダムの様

子や、2016年4月には、ダムの非常用洪水吐からの越流

の瞬間を撮影した動画(図-3参照)をアップした。例年

4月中旬に雪どけ水の放流を見ることができ、今回の動

画で貴重な越流の瞬間をとらえることに成功し、大きな

反響を呼んだ。また、ダムのホームページだけでなく、

Youtubeに投稿することで、全世界の人々に動画を配信

することができた。

図-3 越流中プレミアムムービー

3. しゃくなげ湖畔を楽しむ会による活動

2004年に制定された「三国川ダム水源地域ビジョン」

を受け、当ダムを利用した地域づくり活動を継続的に発

展させていく組織として「しゃくなげ湖畔を楽しむ会」

が設立され、様々な活動を行っている。 (1) しゃくなげ湖畔新緑ウォーク・紅葉ウォーク

毎年5月に新緑ウォーク、10月に紅葉ウォークを開催

する。四季が変わる頃に自然を感じながらダム湖を1周するイベントである。ウォーキングが終わると、名物の

ダムカレーを参加者が食して、次回再会を期して終了と

なる。

図-4 ダムカレー

(2) 酒の貯蔵・お披露目会

ダム監査廊内の気温は年間を通して10℃前後に安定し、

酒の貯蔵に適している。そのため、南魚沼市の酒蔵メー

カーが監査廊の一部を利用し、約半年熟成させ、秋には

市民にお披露目するイベントを行っている。

図-5 酒蔵メーカーによる蔵入れの様子

(3) しゃくなげ湖まつり

毎年7月に森と湖に親しむ旬間の活動の一環としてし

ゃくなげ湖まつりを開催している。当ダムでは、案内は

もちろん、特別に巡視船の体験会を行うため毎年人気で

ある。

図-6 しゃくなげ湖まつりの様子

4. 地域と連携した活動

(1) 美女旅とコラボ

美女旅とは、2012年9月から新潟県南魚沼市で制作さ

れている地域密着型観光パンフレットである。「さあ、

素敵な旅のはじまりです。」を合い言葉に、南魚沼市在

住の女性が地域の素晴らしさを紹介するのがコンセプト

である。 当ダムでは、2015年の広報活動として、この美女旅と

コラボし、同年12月に「美女旅×三国川ダム」の観光パ

ンフレットが発行された。このパンフレットは基本的に、

南魚沼市内の観光案内所や飲食店などに設置し、観光客

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や地元の人々に提供されている。 パンフレット中では、美女と共にダム周辺の美しい自

然や観光施設の紹介、そして、当ダムの監査廊や操作室

が紹介され、その見学の様子が掲載されている。

図-7 美女旅の表紙

図-8 ダムの監査廊や操作室紹介ページ

(2) ラジオによるPR

当ダムは、地元南魚沼市のラジオ局である、「FMゆき

ぐに」を利用し、ダムの役割や洪水情報の他、監査廊の

見学希望の案内、ダム周辺で開催されるイベント内容や

日程の告知を行っている。大型連休の期間やイベントが

開催される前に放送することで、より観光客を呼ぶこと

ができる。ラジオは車内など移動しながら聴くこともで

きるため、地元の方はもちろん、放送エリア(図-9参照)

を通行する多数の人にも当ダムの情報を伝えることがで

きる。 また、ラジオによる「美女旅」の紹介もしている。美

女旅パンフレットの紹介CMや美女旅モデルの当ダム撮影

時の印象などを語ったインタビューが放送された。また

「美女旅気分コンテスト」という企画も行い、これは、

実際に美女旅に掲載されている写真と同じアングルで撮

った写真を募集し、FMゆきぐにのフェイスブックで紹介

するという企画である。最優秀賞には美女旅オリジナル

グッズが贈られる。

図-9 FMゆきぐにの放送エリア

図-10 美女旅気分コンテストのポスター (3) ダム×マンガ!? 当ダムは、少年画報社が発行する「ダムマンガ」とい

う作品に取り上げられた。この漫画は、ダムを愛する女

子高校生が日本各地のダムを巡り紹介する物語である。

当ダムは第2巻の12基目として紹介され、前任者をモデ

ルにしたキャラクターが現れ、監査廊を案内している様

子が描かれている。実際の監査廊見学の案内時と同様に

観光放流の様子、ダム周辺施設で提供されているダムカ

レーの情報などが掲載されており、非常に詳しい内容と

なっている。 漫画による宣伝効果として、「伝わりやすさ」が挙げ

られる。どんなダムでどんな見た目をしていて、どんな

特徴や機能があるのかを、見やすい絵と共に読者に伝え

ることができる。地元の方々のみならず、全国に当ダム

の魅力を伝えることができた。

放送エリア

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図-11 ダムマンガ第2巻

ⓒ井上よしひさ/少年画報社〔ダムマンガ〕

図-12 三国川ダムの紹介シーン

5. 課題・提案

ここまで、当ダムが行った広報活動を紹介してきたが、

図-13は当ダムの監査廊の見学者数のグラフである。

2011年の東日本大震災や新潟・福島豪雨の影響により減

少した見学者数が年々増加傾向にあることが分かる。こ

のように見学者が増えつつあることは、当ダムが様々な

方法で広報活動をしているためだと考えられる。 観光客が増えることは、ダムが観光資源としての機能

を果たしていることが分かり、非常に良いことだが、課

題も浮き上がってくる。それは、土日祝の見学対応であ

る。通常休日のダム案内は、委託事務員が行う。しかし、

人数が多い団体客が来ると人手が足りなくなる。そのた

め、休日の観光客の団体予約は取らないことにしている。

しかし、広報活動の末、見学に来た人たちを受け入れな

いのは本末転倒である。普段の職員の業務とどう区別し

ていくのか考えなければならない。 そこで、提案するのは、当ダムに農作物の直売所を作

ることである。地元の農家や当ダムに勤めていたOBの方

にボランティアとして直売所を営業してもらう。営業日

は集客が見込める土日祝日とし、当然、利益は販売した

方に振り分けられるが、団体の見学希望が入ったときは、

ダム案内をしてもらうことを条件とする。米や地酒は全

国的にも有名であり、特産品目当てで当ダムを訪問する

方も増えると考えられる。それによって、ダム見学と直

売所の相乗効果で観光客をさらに増やせると期待できる。

図-13 ダム監査廊見学者の年間推移

6. おわりに

ここまで述べたとおり、当ダムは監査廊案内を始め、

美女旅や地元ラジオ局と連携した広報活動を行い見学者

数を増やしてきた。近年、ダム案内では南魚沼市内の団

体だけでなく、他の市町村もしくは県外の団体からも申

し込みがあり、少しずつではあるが、当ダムの認知度が

上がって来ているのではないかと考えられる。地域活性

化に貢献できる広報活動は様々な方法があり、さらに活

動を繋げていくことで、認知度が上がっていくと考えら

れる。地元を代表する観光資源として人が訪れる場所を

担うのが当ダムの役割の一つではないだろうか。

図-14 三国川ダム全景


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