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Global Reporting Initiative - 生物多様性...謝 辞...

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Reporting on Biodiversity 生物多様性 持続可能性報告のためのGRI参考文書 利益の公正な分配 持続可能な利用 保 全
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Page 1: Global Reporting Initiative - 生物多様性...謝 辞 この文書は、オランダ外務省の支援を得て、 グローバル・リポーティング・イニシアティ ブにより発行された。

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生物多様性持続可能性報告のためのGRI参考文書

利益の公正な分配 持続可能な利用保 全

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謝 辞

この文書は、オランダ外務省の支援を得て、グローバル・リポーティング・イニシアティブにより発行された。

制作関係者 GRIディレクター・製作責任者:Sean Gilbert ([email protected])GRIコンテンツ起稿者:Sandra Vijiコンサルタント:Wijnand Broer、        Jolanda van Schaick

www.crem.nl

編集者:Sandra Pedersonデザイナー:Evelien Philippa、      Beeldig Grafisch Ontwerp

貢献された方々GRIは、ドラフト版へのフィードバックの提供者、ワークショップの企画・運営関係者、そしてワークショップへの参加者など、この資料の発刊に貢献してくれたすべての方々に感謝します。これらの方々の氏名は巻末に記載しています。

GRIの研究・開発刊行物シリーズについてGRIの世界レベルの研究開発プログラムは、報告に関わる挑戦的な課題の調査や、透明性についての過去および将来のトレンドの追跡や、GRIの持続可能性報告の枠組みを他の標準規格と連動させる革新的な方法を導入することで、継続的な改善へのコミットメントを支援しています。

GRIの研究開発シリーズの刊行物は、次の3つのカテゴリに分けられます。

トピックス: 生物多様性やジェンダーなどのテーマに関する報告についての調査やその意味合い

トレンド: 報告書作成の実践例や実施例を追跡調査し、将来的なシナリオを評価する

ツール: 他の標準規格と連動してGRIの報告枠組みを使用するための手引き

本文書“生物多様性 持続可能性報告を行うためのGRI参考文書”は、トピックスに分類される。

著作権この文書は、オランダ非営利法人グローバル・リポーティング・イニシアティブ(GRI)によって著作権が保護されています。GRIからの事前の許可なしに、情報としてや又はサステナビリティレポートの制作に使用するために、複製および配布することが認められています。しかしながら、その他の目的のためには、この文書もこの文書からの抜粋も、GRIからの書面による事前の許可なしには、いかなる形態のいかなる手段(電子、版下、写真複写、文書による記録、その他)によっても、複製、保存、翻訳、譲渡することは許されません。

グローバル・リポーティング・イニシアティブ、グローバル・リポーティング・イニシアティブのロゴ、サステナビリティ・リポーティング・ガイドライン および GRIは、the Global Reporting Initiative の商標です。© 2007 GRI

ISBN 978-90-8866-001-6

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2007年1月

生物多様性持続可能性報告のためのGRI参考文書

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第 2 部

第 3 部

第1部

目 次序 論 71.1生物多様性参考文書の概要 7 生物多様性と組織の関係※ 生物多様性への影響1.2生物多様性参考文書とGRIの指標 9 生物多様性パフォーマンス指標と生物多様性参考文書

生物多様性:生態系サービス、政策の枠組みおよび組織との関係 112.1 生物多様性と生態系サービスとの関係 11 生物多様性とは何か? 生態系サービス2.2 国際的な政策の枠組みと生物多様性 13 生物多様性条約 (CBD) その他の国際的な協定 2.3 生物多様性に関する国および地域の政策と法令 152.4 組織は生態系とどのように関わり、生物多様性にどのように影響を与えているか 16 事象の連鎖 関連性の説明: 生物多様性に変化を引き起こす直接的要因と間接的要因2.5 報告を行うことの意味 19

生物多様性報告への取り組みと課題 213.1 序 論 21 3.2 ステークホルダーの期待と参画 223.3「生物多様性」をどう伝えるか 233.4 取り組みとパフォーマンスに関する報告 24 はじめに 取り組みと活動についての報告

パフォーマンス指標の種類3.5 測定の実際 29 情報の収集 情報の処理: 影響から報告まで

参考文献 32

付属文書 37付属文書Ⅰ GRI について 付属文書Ⅱ 定義 付属文書Ⅲ 生態系と、それが提供するサービス例 付属文書Ⅳ 組織にとって重要な生物多様性条約の条文 付属文書Ⅴ 生物多様性への影響の評価

謝 辞  48

※ 訳者注:「組織」という訳語には、企業・自治体・NGO/NPO・社団法人・財団法人・大学などが含まれる。

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生物多様性に関する報告の課題

生物多様性参考文書はどのように役立つか?報告は、生物多様性に関係する組織の活動、影響、パフォーマンスについての情報をステークホルダーと共有するための手段である。本書は次のことを目的に作成した。

・ 報告組織が、生物多様性に関する課題や組織の活動や事業との関係を理解することを支援する。・ 生物多様性報告に関係する特定の問題や課題にいくつかの考えを提供する。・ 生物多様性に関する報告をするために、GRIの持続可能性報告ガイドラインをどのように利

用できるかを論じる。・組織が生物多様性報告を行う際に役立つ情報源や参考文献を提供する。

この文書の想定読者について本書は、生物多様性についてより一層学ぶことに関心を持ち、生物多様性についての報告を試みようとしている組織を対象としている。読者の生物多様性に関する知識レベルは、生物多様性分野の専門家と、生物多様性の専門家ではないがそれについて報告する責任者との間では、著しい差がある。本書は、双方の読者に役立つ情報を提供することを試みている。

本書の構造本書は、次のような構成になっている。

第1部は、本書の導入部である。生物多様性と組織との関係、および本書とGRIの持続可能性報告ガイドラインのパフォーマンス指標との関係を概説している。

第2部は、生物多様性に関する一般的な知識をより一層学びたいと考えている組織に対し、関連する情報を提供している。生態系サービスが提供するものや生物多様性保全分野の国内および国際的な政策目標、および組織と生物多様性との関係を支援することにより、生物多様性に起因する価値について詳しく説明する。そして、最後に報告を行うことの意味合いで締めくくる。

第3部は、ステークホルダーの参画と、生物多様性への取り組みをどのように伝えるかを扱う。ここでは、報告を行う際に起こるいくつかの実際的な問題やこれらへの対処方法を示す。

参考文献と付属文書は、本書の執筆に使用した情報源を示しており、併せて、追加的な情報や支援が必要な組織のために、報告を行うための関連情報の出典も示している。

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第1部

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生物多様性の価値

第1部において生物多様性とは、あらゆる起源を持つ生物種や生態学的複合体の間

の多様さのことである1)。空を飛ぶ鳥や海洋の魚や地中の微生物から、農作物の遺

伝的な多様さや生態系の多様性までを含んでいる。この多様さは、生態系が効率的

に機能する上で極めて重要である。生態系は、‘生態系サービス’を組織や社会全体

に提供しており、この中には食料、淡水、木材や繊維、医薬品、土地生産力、気候

の調節、建設資材、科学技術の進歩のための創造的刺激、遺伝子資源、洪水の調

節、レクレーション機能などを含んでいる。これらの生態系サービスをひとつも利

用していない組織はなく、自らの活動を通して直接利用するか、サプライチェーン

の構成組織を通して間接的に利用している。

1) 第2部では、生物多様性についてのより詳しい説明を行う。

序  論1.1 生物多様性参考文書の概要

生物多様性と組織との関係

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生物多様性は、その規模や業種や所在地に関わらず、あらゆる組織の現在および将来の事業を行う上で重要である。生物多様性関連の活動を前向きにマネジメントすることで、組織は多くの便益を得ることができる。 (図1.1を参照)

Org

aniz

atio

n Strengthening the license to

operate, grow, and innovate

事業活動を行い、成長し、革新することへの(社会的)ライセンスの強化

Long-term stability of operations

長期の安定した操業

Creating market opportunities

新たな市場機会

Improving stakeholder relations

ステークホルダーとの関係強化

Gaining competitive advantage

競争における優位性の獲得

組 織

事業活動を行い、成長し、革新することへの(社会的)ライセンスの強化。政府、地域社会、金融機関、従業員、社会などの広範なステークホルダーの承認が、事業を成功裡に運営し、長期的に操業を行う前提条件となる。生物多様性に関する企業のパフォーマンスは、この承認を得る上での要因となる。

持続可能で責任ある方法で操業することにより、競争優位を獲得する。生物多様性は、政府や企業やNGOや地域社会といったすべての支持基盤から注目を受けている。組織の行動やパフォーマンスは、これらの支持基盤の意思決定に影響を及ぼし得る。例えばそれは、政府による投資や政策、消費者の嗜好、サプライヤーとの関係、競合他社の戦略、貸付条件などである。

ステークホルダーの期待や要求に応えることで、ステークホルダーとの関係を強化する。ステークホルダーは、組織が、自らの活動やそのサプライチェーンの活動から引き起される生物多様性への直接的または間接的影響に対して、責任を負うことを期待している。また、組織の環境パフォーマンスについても継続的に改善することを期待しており、例えばそれは継続的な投資や組織活動のエコロジカル・フットプリント※を減少させようとする試みなどが該当する。※ 訳者注:「エコロジカル・フットプリント」とは、人間活動により消費

される資源量を分析・評価する手法として、カナダのブリティッシュ

・コロンビア大学のウィリアム・リース教授などが開発した指標で、「人

間1人が持続可能な生活を送るのに必要な生産可能な土地面積(水

産資源の利用を含めて計算する場合は陸水面積となる)」のこと。

環境への悪影響がないように生産された製品への需要が拡大する結果生まれる新たな市場機会。拡大する消費者の嗜好や新しい規制や投資家の要望を先取りする意思決定は、様々な商品や資本市場の中で差別化を図ることに役立つ。

長期の安定した操業。多くの組織は、自社の事業活動で直接的に、またはサプライチェーンを通して間接的に、生物多様性の資源を使用している。生物多様性の資源を保全し持続的に利用することは、長期にわたり資源投入量を安定させ、それにより組織が様々なリスクを回避するのに役立つ。

組織や社会にとっての生物多様性の価値は、便益やリスク回避、あるいは食料資源や水の浄化や海岸線の保護など生物多様性が提供する直接的価値の観点から、よく強調される。これらすべての価値はもちろん重要だが、現世代や将来世代のことを考える時、多くの人が尊ぶに値すると感じる、内在的な価値が生物多様性にはある。

生物多様性への影響

一般的に、組織は2つの方法で生物多様性に影響を与えている。1つは、直接的および間接的に生物多様性資源を利用する場合で、例としては漁業、林業、農業、鉱業などがある。2つ目は、組織が生物多様性の量および質あるいはそのいずれかの変化の原因となる場合で、これには好ましい場合と好ましくない場合があり、当該組織の直接的活動およびパフォーマンスが原因となる場合もあれば、間接的にその組織のサプライチェーンの構成組織の二次的な影響またはパフォーマンスが原因となる場合がある(囲み記事1を参照)。この2つの影響は共に、生物多様性そのもの、および社会が存続する上で依存している生態系サービスにとって重要な意味を持っている。そのためステークホルダーは、組織がその活動の生物多様性への影響を認識し、潜在的な影響を適切に管理することを期待している。

図1.1: 生物多様性保全により企業が得る便益

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3) EN11は環境分野指標のNo.11を参照。

1.2 生物多様性参考文書とGRIの指標

GRIのビジョンは、あらゆる組織が、財務報告と同様に一定のかつ比較可能な方法で、経済・環境・社会性のパフォーマンスについて報告を行うことである。

GRIは、持続可能性報告の枠組みの使用に関わる潜在的な可能性を、開発し、継続的に改善し、育てることで、このビジョンを実現しており、中でも持続可能性報告ガイドライン(これを‘ガイドライン’と呼ぶ)がその中核となっている。報告の枠組みの他の構成要素は、業種別補足文書とプロトコルである。この報告ガイダンスは、開示原則と標準開示の形をとっており、無料の公共財として提供されている。GRIの報告枠組みは、付属文書Ⅰに要約されている。

ガイドラインは、中核指標(ほとんどの報告対象組織に関係がある)と追加指標(ほとんどのステークホルダーが関心を持っている)という2つのカテゴリのパフォーマンス指標を含んでいる。パフォーマンス指標は、分野・側面・指標の階層構造に従って構成されている2)。環境分野の中の1つの側面が、生物多様性である。表1.1は、G3ガイドラインに含まれる生物多様性に関する中核および追加のパフォーマンス指標の概説である。

2) GRIの持続可能性報告ガイドラインは、www.globalreporting.orgで参照することができる。

生物多様性パフォーマンス指標と生物多様性参考文書

指標プロトコルは、各指標に対する組織の理解を促進するためにGRIによって開発された。本書は、パフォーマンス指標と指標プロトコルを補足するものとして、報告に際して直面する生物多様性にまつわる課題の全体像を示すことを意図している。本書を読むことで、組織は組織活動と生物多様性のより幅広い背景と相互関係を理解し、生物多様性に関してより良い構成で報告を行うことに役立つであろう。

G3ガイドラインのGRI生物多様性パフォーマンス指標は、組織が生物多様性について報告するための枠組みとして設計されているが、組織と生物多様性との関係はG3の指標によって捉えられている以上に広範である可能性がある。その他の最も関係の深いG3の指標のいくつかを図3.3にまとめている。 本書を使用する組織は、生物多様性について幅広い視野を持ち、これを報告に盛り込むことが奨励される。

中核指標

EN11 保護地域内あるいはそれに隣接した場所および保護地域外で生物多様性の価値が高い地域に、所有、賃借あるいは管理している土地の所在地および面積

中核指標 EN12 保護地域および保護地域外で生物

多様性の価値が高い地域での生物多様性に対する活動、製品およびサービスの著しい影響の説明

追加指標 EN13 保護または復元されている生息地

追加指標 EN14 生物多様性への影響を管理するた

めの戦略、現在の措置および今後の計画

追加指標

EN15 事業によって影響を受ける地区における生息地域に生息するIUCN(国際自然保護連合)が指定した絶滅危惧種および国の保護対象種の数。絶滅の危険性のレベル毎に分類する。

表1.1: 生物多様性に関する中核指標と追加指標3)

囲み記事1: 直接的影響と間接的影響 組織が活動を行えば、必ず生物多様性への影響が生じる。それらの影響は、次のように引き起こされる。

• �組織の活動が直接的に生物多様性に影響を与える場合を“直接的影響”と呼ぶ。例えば、荒廃地が生産活動のために改変されたり、地表水が灌漑目的で使用されたり、有毒物質が放出されたり、そこにすむ種が騒音や光によって撹乱を受ける場合などである。

• �ある組織のサプライチェーンによって影響が引き起こされる場合を“間接的影響”と呼ぶ。例えば、ある組織がフルーツや野菜を輸入したり、コットンシャツを製造したり、建設資材を販売したり、本を出版する時、これらの商品を製造するために投入される物の生産は生物多様性に直接的な影響を与える。

“間接的影響”には、組織の操業が引き金となって生じる活動からの影響も含まれている。例えば、林業からの生産物を輸送するために建設された林道は、労働者を人の住んでいない地域へと移住させることを促し、道沿いに新しい商業開発を促進するという間接的影響を持っている。間接的影響は、直接的影響に比べて予測・管理することが難しいが、直接的影響と同様に重要であり、組織にも容易に影響を与えることがある。生物多様性への影響は、“好ましくない影響”(生物多様性の質または量を減少させる)と“好ましい影響”(生物多様性の質または量に差し引きでプラスの貢献を産み出す)の2つの場合がある。

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第2部

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2.1 生物多様性と生態系サービスとの関係

生物多様性とは何か?

生物多様性とは、陸上、海洋 および その他の水中生態系を含む、

あらゆる起源の生物種、およびそれらからなる生態学的複合体の多様さのことである。

これには生物種内、種間および生態系の多様性を含む 4)。

4) この定義は、生物多様性条約による(2.2項を参照)

囲み記事2:生物多様性の定義

生物多様性は幅広い側面をカバーしている。付属文書Ⅱでは、組織がこの分野の中心的な話題と定義を熟知できるように、生物多様性に関わる専門用語の一覧を掲載している。

付属文書Ⅱでは、生物多様性に関わる論点の科学的な定義と説明のみを提供している。生物多様性に関する社会的な価値は、科学的な価値とは異なる可能性があり、ステークホルダーによっても違う可能性がある。例えば、ある地域は、科学的または生態学的には生物多様性が豊かでないかもしれなくても、その地域社会にとっては信仰上そして霊性的理由からたいへん価値がある可能性がある。生物多様性に関する活動を適切に管理し、この分野の組織活動の管理とそのパフォーマンスについて報告することを望む組織は、すべてのステークホルダーの見方とそこから読み取ることができた価値を理解する必要がある。一般的に、生物多様性へのある影響が許容できると認められるかどうかは、科学的な評価と共に、ステークホルダーがその特定区域に与えている価値によって決まる。

生物多様性: 生態系サービス、    

政策の枠組みおよび   組織との関係

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生態系サービス

生物多様性の重要な価値は、生態系が機能し、生態系を構成する人間やその他の生命に様々なサービスを提供する能力を保証するその役割にある。生態系や生息地の基盤として、生物多様性は、食料や住まいや薬などの人間の基本的ニーズの供給を支えている。生態系は、大気中の酸素を維持し、土壌を肥沃にし、植物や動物に生息地を提供し、暴風雨の被害から守り、気候を調節している。それゆえ、充分な生物多様性を維持することが、必要不可欠な生態系サービスを享受し続ける上での鍵と言える。

生態系サービスは、人類が生態系から享受する便益であり、それらは生態系内での相互作用から生み出される。森林、草原、マングローブや市街地のような生態系は、社会に対して異なる便益を提供している。生態系サービスは、人々に直接的に影響を与える供給能力や調節能力や文化的サービスを含んでいる。生態系サービスは、他のすべてのサービスを維持するために必要な支援サービスも含んでいる。ある生態系サービスは局所的に機能し(受粉仲介者の供給)、別のサービスは広域的に機能し(洪水の制御や水の浄化)、さらに他のサービスは地球規模で機能している(気候の調節)。生態系サービスは人類の快適な暮らしに影響を与えており、その中には食料・住まい・健康・治安・良好な社会的関係・選択と行動の自由といった基本的かつ重要なニーズが含まれている 5)。

表2.1は、生態系サービスの分類概要を示す6)。

組織が生態系サービスに直接的にどの程度依存しているかは、その組織活動の性質による。例えば、灌漑や冷却水やクリーニングや水を消費する工程を持つ多くの組織にとって、淡水の利用は不可欠である。食料は、食品を製造・販売する組織にとって鍵となる生態系サービスだが、一方で、建設や多くの消費財の供給に関わる組織にとっては木材の利用が不可欠である。

生態系サービスと生物多様性

次に示す生物多様性の3つの側面が、生態系の保全に重要である。

•�生物種間の相互関係の維持生態系内のすべての動植物は相互に関係しており、動植物の種のライフサイクルが途絶すると、生態系全体に影響を与える。例えば、漁場内の捕食種を乱獲すると、被捕食種の過剰増殖が発生し、海洋生態系が悪化する。また、薬を作るために植物を取り去ると、食料や住処として利用していた動物の増殖にマイナスの影響を与える。最終的には、そのような途絶が起こることは、生態系サービスを提供し続ける生態系が持つ能力を危うくする。

•�種内における十分な遺伝的多様性の維持ひとつの個体群内の遺伝資源が多様であることは、生物種が生態系の変化に適応するための能力として不可欠である。例えば牧畜では、遺伝的多様性は異なる種類の疾病に動物が抵抗する上で重要である。ある個体群の中の遺伝的多様性が十分でない場合、新しい種類の疾病に脆弱となり、その結果その個体群の崩壊に繋がる。それゆえ、多様性は生物種が長期的に存続するために不可欠である。

•�生態系の多様性の維持 生物多様性の多様さのバランスは、異なる生態系を維持し、それら固有の生態系サービスを提供する上で重要な要因と言える。

生態系サービス

基盤サービス・ 栄養の循環・ 土壌形成・ 一次生産・ その他

供給サービス・ 食料・ 淡水・ 木材と繊維・ 燃料・ その他

調節サービス・ 気候の調節・ 洪水の調節・ 疾病の調節・ 水質浄化・ その他

文化的サービス・ 審美的価値・ 霊性的価値・ 教育的価値・ 娯楽・保養的価値・ その他

地球上の生命 ― 生物多様性

表2.1: 生態系サービスの概要

6) 生態系とそれが提供するサービスの限定的な概要を付属文書Ⅲに掲載している。

出典:ミレニアム生態系評価

5) この定義は、ミレニアム生態系評価の ‘Ecosystems and human well-being; Opportunities and Challenges for Business and Industry’から引用された。

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生物多様性は、人類の発展にとって重要であり、且つ現在急速に失われていることから、政治、ビジネス、社会、貿易交渉などにおける検討課題として頻繁に議論されている。生物多様性分野における国際的な政策や法律の種類の多さは、国際問題における生物多様性の重要性を際立たせている。この観点で、最も重要な国際条約が生物多様性条約である。国際条約は、レスポンシビリティに関して広く認められた期待の表明として重要であり、生物多様性に関する報告を行う上で 直接的に関連する参考資料である。ステークホルダーは、どの国際協定が企業に適用されるか、協定で示された目標に関してどのような行動が取られるかを知りたいと思っている。国際条約の役割については、本節で簡潔に説明する。

生物多様性条約(CBD)

1992年にリオで開催された地球サミットにおいて、世界150ヶ国の政府首脳により署名された生物多様性条約(CBD)は、持続可能な発展の促進と生物多様性の持続可能な利用のために作られた。“本条約は、生物多様性が植物や動物や微生物や生態系以上のものであり、それは人類、および食料安全保障、医薬品、新鮮な空気や水、住まい、そして生きるための清浄で健康的な環境への我々のニーズそのものであることを認識する” 7)。生物多様性条約の目的は次の通りである。

生物学的多様性の保全、およびその構成要素の持続可能な利用、および遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ公平な分配。

これらの目的の説明を、表2.2に示す。

CBDの目的を国内政策にどう反映させるかは、同条約の締約国それぞれの責任である8)。CBDとその結果導入される国内政策は、組織に幅広い影響を与える可能性がある。自主的であれ法令を通してであれ、CBDの目的に到達するように政府が組織を巻き込むことは十分に可能である。政府が生物多様性(と関連する生態系サービス)を保全し、その持続可能な利用を実現するために、規制による制約を増加させること

がひとつの例である。法規制によって、土地の利用が制限され、組織の操業が原因となって起きる生物多様性のいかなる損失をも補償させ、操業許可を求める際もより多くの厳しい条件につながるかもしれない。

CBDの多くの条項は、付属文書Ⅳに示すように、組織と関連性があり、長年をかけて締約国により採択された多くの決議はビジネスに注意を向けている。CBDの下で開発

生物多様性条約の目的 説明

生物学的多様性の保全 遺伝資源の多様性は、生物多様性の質および量を保全するために重要である。遺伝資源の多様性は、改変された生息地や新たに導入された捕食者、新しい疾病などに適応するための基盤を提供する。組織は、新たな製品やサービスを得るための源泉として、広大な生物学的多様性を活用することもできる。

生物学的多様性の要素の持続可能な利用 生物多様性がこれ以上減少することは、望ましくないと考えられており、したがって人類の新たな活動はこれ以上の生物多様性のレベルの減少をもたらすべきではない(囲み記事3の生物多様性に関する2010年目標を参照)。この声明を支える手段が、生物多様性の持続可能な利用である。‘持続可能な利用’とは、生物学的多様性の要素が長期的に見て減少しないような方法と速度で生物資源を利用することにより、現在および将来世代のニーズや願望に見合う潜在力を維持することを意味している。

遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ公平な分配

遺伝物質とは、遺伝形質の機能する単位※を含む植物や動物や微生物やその他由来の物質である。「遺伝資源」とは、遺伝物質の実際的価値および潜在価値を表す言葉である。生物多様性条約のこの目的は、遺伝資源への適切なアクセス、これら資源に関するすべての権利と技術に配慮した関連技術の適切な移転、そして適切な資金提供を通して、遺伝資源の利用から生じる利益を公正かつ公平に分配することに関わっている。※訳者注:遺伝子など。

表2.2: 生物多様性条約の目的についての説明

7) http://www.biodiv.org8) CBDは現在、189カ国により批准されている。

2.2 国際的な政策の枠組みと生物多様性

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された手引きやツールは、組織がCBDに沿って経営方針や企業活動を調整するのに役立つ。

CBDは、目的を達成する上で、組織が極めて重要な貢献をできることを認識している。2006年3月、民間部門の参画に焦点を絞った決議が採択された9)。なかでも、民間部門参画に関する決議では次の事項が取り上げられている。(1)生物多様性の保全戦略およびアクションプランの策定と実施に、政府が企業を参画させること、(2)CBDの会合に企業を参加させること、(3)生物多様性保全に関わる活動の‘ビジネス・ケース’を発表し普及させること、そして(4)組織がその経営方針や活動を、2010年目標(囲み記事3を参照)を含むCBDの3つの目的とそのゴールおよび目標に適合させることを支援するため、生物多様性保全に関する優れた活動についての情報を集約し開発すること。

その他の国際協定CBD以外には、湿地や絶滅危惧種や移動性の種※などについての協定が、国際的なレベルで取り交わされている。※訳者注:渡り鳥など。

生物多様性に関わりのある条約には、次のものがある10)。

•�ワシントン条約(CITES) 絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約(CITES)は、特定の野生動植物の国際取引が、これらの野生動植物の生存を脅かさないようにすることを目的としている。同条約は、3つの付属書によって、3万種以上の動植物種に異なるレベルの保護を認めている。

•�ボン条約(CMS) 移動性野生動物種の保全に関する条約(CMSまたはボン条約)は、陸海空の移動性動物をその全域を通して保全することを目的としている。CMSの加盟国は、移動性野生動物とその生息地を保全するために、最も絶滅が危惧される移動性種の厳格な保護や、特定の種または種のカテ

囲み記事3:2010年生物多様性目標

生物多様性条約締約国会議は、2002年に戦略的計画を採択した。その目的を宣言する文書中では、各締約国は、貧困の緩和および地球上のすべての生命の利益への貢献を実現するよう、2010年までに地球・広域・国の各レベルで現在の生物多様性の喪失速度を顕著に減少させるために、同条約の3つの目的をより効果的に一貫して推進すること約束した。この目標は、その後、持続可能な発展に関する2002年の地球サミット(WSSD)において、世界のリーダー達によって是認された。

出典:http://www.biodiv.org/2010-target/default.asp

9) 同条約の実施に民間部門が参画することの潜在的メリットは、これまで長らく認識されてきた。技術移転、持続可能な利用、農業や森林の生物多様性、奨励策および生物多様性情報のクリアリング・ハウス・メカニズムを含む特定の仕組みや課題についての数多くの決定は、明確に民間部門の参画を強化することに言及している。(SCBD、生物多様性条約の実施における企業の参画の強化、2005年、

  http://www.biodiv.org/doc/meetings/biodiv/b2010-02/official/b2010-02-02-en.pdf )10) http://www.biodiv.org/cooperation/joint.shtml

ゴリーの保全と管理のための広域的な多国間協定を締結し、共同調査や保全活動をすることにより協力し合っている。

•�ラムサール条約 湿地に関する条約(一般にラムサール条約として知られている)は、湿地およびその資源の保全と賢明な利用のために、加盟国が行うべき事項と国際的な連携の枠組みを提供している。生物多様性の保全一般と人間社会の福利にとって、湿地は極めて重要な生態系であるとの理解から、同条約は湿地の保全と賢明な利用に関するすべての側面を扱っている。

•�世界遺産条約(WHC) 世界遺産条約(WHC)の第一の使命は、世界の文化遺産および自然遺産を特定し保全することであり、そのため、全人類にとって保護すべきかけがえのない価値を持つ遺産のリストを作成し、かつ、国家間のより緊密な連携のもと、遺産の保護を確かなものとすることである。

•�食料農業植物遺伝資源条約

この条約の目的は、持続可能な農業と食料安全保障を実現するために、生物多様性条約と一体となって、食料や農業のための植物遺伝資源の保全と持続可能な利用を図り、その利用から生じる利益を公正かつ公平に分配することである。本条約は、食料および農業のためのすべての植物遺伝資源をカバーする一方で、「遺伝資源へのアクセスおよび利益の分配に関する多国間システム」において、64種の穀物および飼料作物の特定リストを作成している。本条約は、「農民の権利」※に関する条項も含んでいる。※訳者注:「農民の権利(Farmer’s Rights)」とは、

UPOV条約(植物の新品種の保護に関する国際条約)が

規定する権利で、発展途上国の農民が長い歴史の中で生

殖質(germplasm)の発見において果たしてきた重要な

役割を認識し、バイオ多国籍企業(公式の開発者)が発展

途上国の遺伝子資源を利用してバイオテクノロジーを開

発した結果得られる利益は、発展途上国の農民(非公式

の開発者)にも配分されるべきものであるというもの。

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ワシントン条約(CITES)など、いくつかの法律や条約の条文の核となる原則に、「予防原則」がある。生物多様性に影響を与えるプロセスは、特に生態系のレベルで、多くのことが未だにわかっていない。予防原則は、仮に生物多様性への影響が影響評価調査によって十分な確からしさで立証されなくても、十分な情報が利用可能になるまでは予防的にその活動を停止するべきことを意味している。GRIガイドラインは、予防原則に関する情報開示項目を含んでいる。

その報告において、組織は、自らのあるいはサプライチェーンの構成組織の生産地に適用される協定や、それらの協定で求められていることにどのように取り組んでいるか、を報告することができる。

2.3 生物多様性に関する国および地域の政策と法令

生物多様性や生態学的に価値が高い地域を保護するための法令の範囲は、国や地域によって著しく異なっている。国や地域の法令による要求事項が様々な組織の操業にどのように適用されているかを確認し、その結果それが報告する際の重要な参照事項であるかもしれないため、各組織は以下のことを行うと良いだろう。

・�国および広域的な政策と法令についての情報を得るために、国の関係当局と連絡を取る。

・�入手可能であれば、国の生物多様性保全のためのアクションプラン(CBDのすべての締約国が作成している)を確認する。

・�国の政策と法令に関する議論に精通するために、問題になっている国の著名な環境団体にコンタクトを取る。

・�国際連合が2003年にまとめた保護地域のリストを調べて、自社もしくはそのサプライチェーンの活動がそれらの地域の中または隣接地域で行われていないか、あるいはそれらの地域に影響を与える可能性がないかを評価する。

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資源の利用による収益

影響を受ける地域のその他のステークホルダー

組織の活動

直接利用できる潜在量および 供給サービスの変化

生物多様性条約 :保全と持続可能な利用

生態系サービスの変化

生物多様性の変化

生物多様性条約 :利益の公正かつ公平な分配

以下を通じた、土壌、水、大気、動植物との相互作用 :・ 土地利用(事務所、プランテーション、インフラ、その他)・ 採取(天然資源の利用:木材、鉱物、その他)・ 放出量(肥料、放出物、農薬、その他)

影響

影響

影響を与える地域

事象の連鎖

生物多様性への自社の影響を測定しそれを報告するには、まず初めに、組織が生物多様性に対してどのような好ましい影響と好ましくない影響を産み出しているかを理解する必要がある(図2.1を参照)。これは、組織の活動と操業が、ある生態系における生物多様性の量と質に一連の影響を産み出す“事象の連鎖”として理解することができる。図2.1は、事象の連鎖の簡略な概要を示し、その構成要素をCBDの目的と関連付けている。

連鎖は、組織の活動と操業から始まっており、これらは組織の事業プロセスの推進や製品・サービスの供給に関わるものである。これらには通常、様々な天然資源の利用や、汚染物質の放出や、環境の質に影響を与えるその他の排出物(例:大気汚染)などを含んでいる。影響の性質とレベルは組織により異なるが、あらゆる活動は、土壌や大気や水や動植物などの質と有用性に、直接または間接的に何らかの影響を与

えている。それらの影響は、大きいか小さいか好ましいか否かに関わらず、不可避的なものである。ある種の組織では、これらの活動が収入を生んでいる。この利益が遺伝資源の利用から生ずるものである場合、CBDの最も重要な目的の1つは、遺伝資源から生じる利益を公正かつ公平に分配することをサポートすることにある。

生態系内での通常の相互作用は、次のような要素によって、生物多様性に変化を生じさせることがある。

・�土壌や水や大気や動植物などとの相互作用の性質

・ 影響を与えている地域内の生物多様性のレベル・�好ましくない影響から生物多様性を保護

するために用いられる計画の質

生物多様性が変化すると、続いて、生態系サービスの利用可能性に変化をもたらす。生態系が生態系サービスを提供する潜在力に変化が現れると、影響を与えている地域に所在する、もしくは関わりを持つステークホルダーと、組織の活動に影響を与えることがある。したがってCBDのもう1つの目的は、生物多様性の持続可能な利用とその保全を確かなものとすることにある。

図2.1は生物多様性に関する報告を行い、組織の活動と生物多様性への影響を説明するための参考資料として役立てることができる。この図は、異なる段階と種類の生物多様性の変化についても説明しており、これは組織や他の当事者に使用される報告指標の核心部分となる。報告指標に関して重要な問題の1つが、相互作用を観測し測定できるところを決定することであり、かつまた組織のパフォーマンスを反映していると特定するのに十分な影響がある場所を決定することである。第3部では、生物多様性に関する組織のパフォーマンスの報告について述べる際に、図2.1を参照する。

図2.1: 組織と生物多様性との関係

2.4 組織は生態系とどのように関わり、生物多様性にどのように影響を与えているか

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11) http://www.maweb.org/en/index.aspx

図2.2に示しているが、すべての組織は好ましいか否かに関わらず、何らかの形で生物多様性の変化に関係している。ミレニアム生態系評価(MA)11)は、生物多様性の変化を生じさせる活動を分類したり、説明することを試みるための枠組みを提供している。

生物多様性に変化を引き起す直接的要因

・�局所的な土地利用や植生の変化(例:不動産開発に伴う土地の改変、劣化した土地での集約的な耕作)

・�生物種の導入もしくは除去(例:植物の病気に対抗するために農業生産に導入された侵入種の昆虫、遺伝子工学)

・� 技術の適応と使用(例:混獲を減らすための漁法の改良、放出物を減らすためのフィルター)

・�外部からの投入(例:肥料の使用、害虫駆除、生産増加のための灌漑)

・� 収穫と資源の消費(例:天然資源、水産資源、野生動物の肉の過剰な開発/利用)

・� 気候変動(例:森林破壊や化石燃料の使用などの地球温暖化につながる人間活動)

・�自然の、物理的な、あるいは生物学的な要因(例:進化、火山噴火)

生物多様性の変化を引き起す間接的要因

・�人口動態(例:新たな生産活動の結果としての労働者の移住、人口増加)

・�経済的要因(例:グローバリゼーション、国際的なサプライチェーン、市場、政策の枠組み)

・�社会的政治的要因(例:統治、制度的・法的な枠組み、生物多様性条約などの条約)

・�科学技術(例:研究結果、環境影響評価(EIA)、技術革新) ・�文化的宗教的要因(例:信仰、生物多様性への影響を減少さ

せるための消費選択、グリーン電力)

生態系サービス

・�供給サービス(例:食料、水、繊維、燃料)・�調節サービス(例:気候の調整、水、疾病)・�文化的サービス(例:霊性的価値、審美的価

値、娯楽・保養的価値、教育的価値)・�基盤サービス(例:一次生産、土壌形成)

間接的要因

・�連鎖的影響

図2.2: 生態系サービスと生物多様性に変化を及ぼす要因との関係

出典:ミレニアム生態系評価

関連性の説明:生物多様性に変化を引き起こす直接的要因と間接的要因

人類の活動とその影響(気候変動や食料の減少など)が例え全世界的に起こっているように感じられたとしても、生態系サービスの枯渇は、一般に地域レベルで述べられるということを認識しておくことはたいへん重要である。

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組織の視点からは、生物多様性に好ましくない影響を与えるもっとも一般的な要因―したがって、それらは報告されるべきもっとも関連性がある問題や活動でもあるが―には以下のようなものがある。

•�土地の改変 ほとんどの活動が、それが商品の生産や住宅施設や社会基盤の整備などのいずれであれ、様々な種類の施設を設置するために土地を必要とする。消費レベルの向上や世界人口の増加による需要を満たすためには広大な土地の利用拡大が必要とされる。この土地の改変は、しばしば生物多様性の損失を伴う。

•�生息地の劣化 生息地の劣化は、資源の採取や、汚染物質や他の物質の放出や、様々な土地利用の結果起こる。これは、物質の導入や除去により直接起こることもあれば、酸性雨などの副産物により間接的に起こる場合もある。別の問題としては、例えば、社会基盤が自然地域を横断して建設されることで、生息地が減少することがある。生息地の大きさが減少すると、個体群を孤立分断する結果を産み、再生産や多様な遺伝子プールを維持する生態系サービスの能力に影響を及ぼす。

•�新たな種の導入 組織は、意図的あるいは意図せずに(例:貨物用コンテナに巣をつくった昆虫)、新しい生物種を導入してしまうことがある。その結果、時々、それらの生物種は、その土地の生態系に生息していた個体群を絶滅させ、生態系のバランスを失わせてしまうことがある。

•�資源の過剰な開発 資源は、異なった再生サイクルに従った(再生産分のみの)有限の量が利用可能である。木材や水産物やその他の生産物などの資源を過剰に開発すると、多くの場合、生物多様性に深刻な損失をもたらす。

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2.5 報告を行うことの意味

生物多様性は重要であるにも関わらず、サステナビリティレポートでは必ずしも明確には述べられていない。生物多様性の複雑さ、組織にとって生物多様性の重要性への誤解、情報の欠如、などはすべてその理由である。

報告を行う際の観点から、第2部では3つのキーポイントを取り上げる。

�] 国際的な目標と期待、特に生物多様性条約の目的を踏まえて、組織は生物多様性を報告する体制を構築すべきである。

これらの国際的な目標は、活動を行い、報告する際に組織が注意するべき参照点となっている。なぜなら、これらの目標は標準的な社会の期待を表しているからである。報告を行う組織は、特に、次の質問に答えるとよい。

・�組織は、どのように生物学的多様性の保全と持続可能な利用に寄与するか?・�生物資源から得られる便益の公正かつ公

平な分配について、注意を払ってきたか? ・�組織および/またはそのサプライチェー

ンの構成組織は、これらの目的を戦略上または事業のマネジメントの中に折り込んでいるか?

2] 生物多様性への影響を管理し報告を行うために、組織は、どの生態系サービスが自社の活動とステークホルダーの関心にとって重要かを特定すべきである。

重要な生態系サービスへの依存は、その組織自身の活動、または主要なパートナー(例:サプライヤー)にとってのそれらのサービスの重要性のどちらかに由来している。例えば、製紙会社は明らかに木材の安定供給に依存している。綿花の生産は非常に多量の水を必要とし、淡水の安定供給に依存している。

生態系サービスへの依存は必ずしも直接的ではない。使用可能な水の量は、スーパーマーケットそのものにとっては問題ではないかもしれないが、食料の供給業者にとっては必須かもしれない。食料生産国での水不足は、食料の供給に影響を与え、その結果、スーパーマーケットの売上にも影響を与えることがある。言い換えれば、サプライチェーン上のいかなる部分であれ、重要

な生態系サービスに好ましくない影響が発生すると、組織の(将来にわたる)操業を危うくするかもしれないのである。

�] 報告組織は、生物多様性と生態系を変化させる直接的および間接的要因の両方に焦点をあてて、理解すべきである(すなわち、事象の連鎖)。

一旦、組織が自社の活動と操業に最も重要な生態系サービスを特定したら、生物多様性のどの側面が最も重要で、どの相互作用が生物多様性に影響を与えるかを特定するために、事象の連鎖を逆向きにたどるべきである。関連する活動は直接的活動(例:製紙プラントの操業)かもしれないし、間接的活動(例:綿花の供給業者による水の使用)かもしれない。しかし、組織がそれらの影響について報告を行う時は、それが直接的であれ間接的であれ、重要な影響が反映されることが期待されている。

第2部は、生物多様性について報告を行う組織のために、基礎知識と一般的な枠組みを提供することを目的とした。実際のパフォーマンスについて報告を行うためのガイダンスは第3部で提供する。

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第3部

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3.1 序 論

生物多様性は重要な課題として認められつつあるが、組織が生物多様性についての

理論を実践(生物多様性について読み学ぶことから始まり、生物多様性の保全と持

続可能な利用という目的に沿って適切に管理し、一貫して行動するための手段を実

際に講じるまで)に移すことは容易ではない。

組織の活動から引き起こされた生物多様性への好ましくない影響にどう対応する

か、好ましい影響には何があるか、といった報告を行うことで組織は、組織と生物

多様性との関係について説明することができる。第3部は、生物多様性に関して、

実際のパフォーマンスを報告する試みを始めるためのガイダンスを提供する。

生物多様性報告への 取り組みと課題

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ステークホルダーは、組織の進むべき方向を定め、成功に導く上で極めて重要である。生物多様性との関係では、ステークホルダーの価値観は、ある地域でどの生態系サービスが重要であるかを判断し、したがって生物多様性へのどのような影響が許容できるかを決定するために、科学的な評価と結びつけられる。また、ステークホルダーは組織にとって不可欠で、かつ地域の情報源でもある。GRIガイドラインは、報告期間中に組織によって行われたステークホルダーの参画について特に言及している12)。GRIガイドラインで示された公開項目は次の通りである。

・�参画したステークホルダー・グループのリスト・�参画するステークホルダーの特定および

選定の基準(これには組織がステークホルダーのグループを定義し、どのグループを参画させ、どのグループを参画させないかを決定するプロセスが含まれる)・�ステークホルダーの種類毎やグループ毎

の参画の頻度を含む、ステークホルダー参画の取り組み、および、

・�ステークホルダーの参画を通じて提起された重要なテーマや懸念事項、およびそれらに対して報告を通してのものを含めて組織はどのように対応したか。

生物多様性について報告する時、下記の項目についてはステークホルダーを参画さ せ る こ と が 重 要 で あ る 場 合 が あ る 。

•�組織と生物多様性との関係についてのステークホルダーの関心 組織にとっての生物多様性の価値とは何か。生物多様性資源は持続可能な形で利用されているのか。生物資源に由来する利益は、公正かつ公平に分配されているか。組織は資源(淡水など)が先細りまたは減少すること、もしくは規制が強化されることに、直面または直面することを予期しているか。組織の活動の結果、生物多様性の変化がどこで発生するか。生物多様性への好ましくない影響を緩和し、もしくは好ましい影響を強化するために、どの生産工程や製品を変更することが可能か。ステークホルダーは、生物多様性と組織との関係についての自らの考えや懸念が、どの程度取り組まれてい

るかを知りたがるだろう。かれらの関心は、企業が重要と考えるリスクに置かれることもあるが(例えば投資を守りたいと考えている株主)、組織にとって「重要」でなくても他のステークホルダー(地域社会など)にとっては価値がある生態系サービスの喪失にも置かれているのである。

•�生物多様性に関するステークホルダーの知識 サプライチェーンを通じて、また、単一組織内においてさえ、複数の生産地がある場合がある。生物多様性の観点から特に注意すべきはどの工場であろうか?地域の動植物のニーズとの対立要因はどこにあるだろうか。生物多様性に影響を与えない、あるいは有益な生産プロセスはどれか。ステークホルダーは特定の地域の生物多様性の状態や、地球規模の生物多様性の問題に広範な知識を持っている場合がある。ステークホルダーはまた、組織が生物多様性への影響を記録し、情報を照合し、生産プロセスを認証し、あるいは生産方法を改善するうえで役に立つネットワークやツールや人材を有していることもある。

•�サステナビリティレポートのレビュー 組織と生物多様性との関係や生物多様性に関する方針やパフォーマンスを報告することで、ステークホルダーとの信用と信頼を構築し、付加的な価値のある評価を生み出すことができる。しかし、この目的を達成するには、報告書に読者の関心事に取り組み、さらなる対話やパフォーマンス改善の効果的な手段として役立つ報告になっている必要がある。1つの選択肢は、ステークホルダーの期待に応えたものとなっているかを確認するために、レポート発行前に、ステークホルダーが参画するレビューの機会を設けることである。

ステークホルダーは固定的なものではなく、ステークホルダーの構成と数は地理的に異なり(それぞれの拠点、製品、サービスには、各々ステークホルダーが存在する)、時間と共に変化する。組織の活動に関わるかもしれないステークホルダーの範囲の例を、囲み記事4に示す。

囲み記事4:ステークホルダーの特定13)

製紙産業は製造時に使用する水を取水するために小さな川を利用している。製紙工場で使用される水の取水は、川の水環境を変える。地域の境界を明確にして生態系サービスを特定すれば、すべての関係するステークホルダーに告知することが可能になる。取水流域の直接的なステークホルダーとは、製紙工場、製紙工場で生計を立てている人、そして恐らくは製紙工場の製品の顧客など、取水から利益を得ている人々である。流域(洪水氾濫原)にあり影響を受けるステークホルダーには、潅漑のために地下水に依存している農家(経済的価値)、近接都市の公営上水道会社(社会的価値)、豊富な湿地帯や高水位に依存している漁業組合(経済的価値)、レクリエーション目的の釣り人、自然保護グループ(渡り鳥のための生態学的価値)、旅行者や日帰りの行楽客からの収入の喪失を恐れる地方のレクリエーション会社(貸しボート、レストラン、ホテル)、などがいる。

12) G3ガイドラインのプロフィールのカテゴリのガバナンスの項を参照。

13) 生物多様性評価の枠組み2004

3.2 ステークホルダーの期待と参画

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効果的な報告を行うには、生物多様性と組織との関係や、生物多様性への影響を管理するための取り組みや、その結果達成された成果を伝えるべきである。図3.1は、生物多様性について報告する際に考慮すべき重要な要素を示している。

生物多様性と生態系サービスとの関係生物多様性についての報告で伝えるべき最初の要素は、組織の活動と生物多様性との関係の性質についてである。これは、組織に対する期待の性質と、その結果実施された取り組みと達成された目標を明確にするだろう。その報告を行う際、組織の活動が生物多様性、言い換えると生態系サービスにどのように影響を与えているかについて理解していることを伝えることができるだろう。この組織と生態系サービスとの相互作用がどのようなものかを決定するには、組織とステークホルダーにとって重要な生態系サービスと、それらの生態系サービスが依存している生物多様性についての分析が必要となる(この点の議論は第2部を参照)。 役割と責任への理解2つ目の要素は、組織の取り組みやパフォーマンスが、組織が果たすべき役割と責任への理解に基づいているという点である。多くのステークホルダーにとって、生物多様性条約の目的は、国際協定や国内法で表明されている他の目的と同様に、組織が自らのパフォーマンスを説明する際の、重要な参照項目となるだろう。特に、組織は生物多様性の保全と持続可能な利用、および利益の公正かつ公平な分配という生物多様性条約の目的に関する自らの役割と責任について報告することを十分に考慮すべきである。

方針およびマネジメント・アプローチ生物多様性と生態系との関係および組織の役割と責任が特定されると、組織は日々の活動を導く具体的な方針やマネジメント・アプローチについての報告を開始することができる。これらの報告を行う上で重要なことは、それらの方針やマネジメント・アプローチがどのようにエコシステム・アプローチ(保全および公平な方法での持続可能な利用を促進する、土地、水、生物資源の統合的管理のための戦略14))と関連付けら

れているかである。

パフォーマンスと成果最後の要素は、達成された成果を伝えることである。生物多様性に関する組織のパフォーマンスを報告するには、報告すべき共通の情報と組織固有の生物多様性に関する指標を定めたGRIの環境パフォーマンス指標を含め、指標の活用が必要である。ほとんどの組織にとって、パフォーマンスの報告は政策目標に関連して達成した成果と、影響を与えた主要な地域で見られた明らかな変化についての記述の組み合せになるだろう。

上記4つの要素を組み合わせたものが、「生物多様性」についての報告を行う上での重要な骨子となる。第3部の残りの項では、マネジメント・アプローチや活動とパフォーマンスについての報告を行う際に直面する課題についてより詳細な情報を提供する。

14) 生物多様性条約(CBD)による定義

活動パフォーマンスと成果

生物多様性と生態系サービスとの関係

方針とマネジメント

役割と責任への理解生物多様性に関する報告

図3.1: 「生物多様性」の伝え方

3.3 「生物多様性」をどう伝えるか

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はじめに

第2部で説明したように、生物多様性との関係や生物多様性への期待は、組織が自らのパフォーマンスを理解する上で重要な背景情報である。これらを理解することができれば、良いマネジメント方法を構築するための取り組みや、その結果、生物多様性への取り組みの成果について、報告することができるはずである。

取り組みと活動についての報告

活動についての報告は、過去を振り返るだけでなく将来に向けた行動でもある。これには、過去の取り組みが成功したかどうかの評価に加えて、新しい取り組みが将来のパフォーマンスをどのように推進するかということも含まれる。

組織が広範な生物多様性戦略のひとつとして取り組み、一般的には組織を取り巻くステークホルダーも関心を持つようなイニシアティブや活動には、いろいろなものがある。

ビジネス慣行を変えるビジネス慣行とは、操業の仕方、使われている生産方法、調達された原材料、などのことであり、それらは組織が生物多様性に与える影響を決定する。事業の中核的なプロセスの変更は、潜在的に最も大きな影響があるため、一般にステークホルダーが最も強い関心を持つ活動である。

多くの組織は、生物多様性への好ましくない影響を最小化するために、自発的または法令に基づいて、所定の管理方針や管理を既に実施している。例えば、有毒な放出ガスを削減するための浄化フィルターの設置や、有毒成分が地表水に流入することを防ぐための廃水要件や、生物多様性の影響を受けやすい地域で環境影響評価(EIA)を義務付けることなどである15)。

生物多様性に対して新たに潜在的で好ましくない影響があると評価された場所では、組織は生物多様性への影響をさらに小さくするか将来の影響を回避するために、新しいマネジメント戦略や生産工程の検討を行うだろう。生産工程を少し変えるだけで生

物多様性に好ましい影響を生み出すことができる場合もあれば、別のケースでは、生物多様性への便益を実現するために大幅な変更や投資が必要になる場合もある。このような意思決定には二律背反の要素やビジネスチャンスが含まれているが、これらは生物多様性への組織の取り組みをうまく伝える上で有用である。

操業上の慣行を変えるということは、製品設計や生産プロセスやマネジメント戦略を改変することであり、これには次のことが含まれる。

•�好ましくない影響の防止 これには、組織の活動が原因でこれ以上生物多様性に害を与えないように、標準的な商習慣を調整することを含んでいる。例えば、 ・�新しい調達方針や慣行の実施(サプライ

ヤー、製品、生産地など)。・�生産工程の再設計(滴下灌漑※への変

換、自然エネルギーの使用、有機肥料の使用、代替技術など)。・�新しい活動に対する計画変更(例えば、

道路建設計画の中止、生物多様性への脅威を引き起こす可能性のある新たな活動の抑制)。

※訳者注:ビニールパイプにあけた点滴ノズルから作

物の根元に直接給水する灌漑方法。蒸散による水分の

逸失が少なく、塩類集積も比較的起こり難い。

•�好ましくない影響の緩和 生物多様性への潜在的で好ましくない影響を最小化にするために緩和措置が用いられることがある。緩和措置の例は、次の通りである。・�新しいインフラに、野生生物に優しい

機能を取り入れる(新しくつくった道路の影響を相殺するために、野生生物用の通り道をつくる)。・�生産地に(地上および上空の)動物が進

入するのを阻止する障害物の設置。

•�好ましい影響の強化 好ましくない影響を打ち消すだけでなく、好ましい影響を強化するために、組織の慣行を変えることも可能である。そのような変更事例は、次の通りである。

3.4 取り組みとパフォーマンスに関する報告

15) 生物多様性と環境とは緊密な関係があるため、環境側面への積極的な配慮は生物多様性の保全につながることがある。

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・�緩衝地域として機能するように、既存の農業生産地域の周辺に在来植物を植える。・�土地の状態と生息地の復元の見込みに

基づいて、活動と土地利用を計画する。

サプライチェーンにおける影響の活用サプライチェーンの構成組織は、様々な度合いで相互に依存している。ある組織にとって、特定のサプライヤーまたは購入者を失うことは操業停止を余儀なくさせる一方、サプライヤーまたは購入者にそれほど依存しない組織では日常業務に軽微の支障をきたすだけである。

サプライチェーンにおいて生物多様性へ著しい影響を持つ組織は、しばしばビジネスパートナーの活動を綿密に調査される。報告を行う観点からは、報告の対象範囲は、サプライチェーン内のパフォーマンスの開示にまで及ぶだろう。実際的には、次の項目を含む場合がある。

・�契約時の選択基準に生物多様性を含める。・�既存のサプライヤーに、特定の基準を順

守、または特定の工程を適用するよう求める(例:特定の成分または原材料を受け入れない)。・�生物多様性に配慮した操業を行っている

ことの検証を求める。

さらに、影響力を持つ組織は、自らが指導的地位にある業界の標準規格を作るために影響力を行使することもある。生物多様性に配慮し、ステークホルダーにそのことを伝えようとするマーケット・リーダーは、競合他社にも追随を余儀なくさせるだろう。このような影響力を行使することで、最終的には生物多様性への悪影響を低減することができるかもしれない。

新しい生産工程や技術の研究開発生産工程における生物多様性への配慮についての関心が年々高まってきたことにより、生物多様性に配慮した生産工程に関する研究開発が進んだ。研究開発は、組織活動に変化をもたらし、あるいはサプライチェーンにおける生物多様性への影響を減少

することを目指した新しい技術を開発する上で重要な役割を果たすことができる。いくつかの例を以下に示す。

・�節水型の滴下式潅漑への転換・�土壌保全型農法・�水のリサイクル手法 ・�混獲を低減する漁業技術・�製造時の放出物の回収と処理

ラベル、ガイドライン、行動規範の活用生物多様性の問題に適切に対応したラベルやガイドライン、行動規範は、それらが組織の生産や調達方針に反映されると、生物多様性の強化に繋がるであろう。第三者による認証は、信頼性を高め、基準に達していることを裏付ける手間を省くことができる。認証された(半)製品の使用や製造は、消費者をひきつけ、その他のステークホルダーの要求も満たすことができる信頼性と実用性を兼ね備えた戦略である。

生物多様性保護活動をサポートする資源の提供生産工程やサプライチェーンの構成組織を見直すこと以外に、組織は以下に示すような多くの方法で生物多様性を高めることができる。

・�自然保護団体を財政的に支援する。・�既存の生物多様性保全の基金に拠出する

か、または新しい生物多様性基金(例:組織が属する業界用にあつらえた基金)を創設する。・� 既存の保護地域の管理を支援する。・�生物多様性関連の研究に資金を提供する。・�従業員が環境関連のボランティア活動を

行える機会を提供する。

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パフォーマンス指標の種類

組織のマネジメントアプローチは、何が生物多様性に関する組織活動を導いているかを理解するために重要である。一方、達成された成果と結果に関する実際の取り組みを伝えるためには指標が必要である。指標には、例えば以下のようなものが考えられる。どの地域で、何ヘクタールの土地が活動に利用されたのか?生産地で生物多様性を強化するために取り組まれているのは、どの活動か?新規事業や事業の拡大に着手する前の段階で、環境影響評価(EIA)が何回実施されたか?ある地域のキーストーン種※の個体数にどのような変化があったか?どのステークホルダーが活動に参画し、どのような頻度で対話が行われたか?※訳者注:生態系における生物量が比較的少ないにも関

わらず、その生態系に大きな影響を持つ生物種のこと。

パフォーマンスを明らかにする上で、生物多様性とそれに関わる生態系サービスの状態の変化を示すためには、事象の連鎖の全域に適用できる様々な種類の指標がある(図3.2参照)。変化の全体像は、連鎖の各段階を把握している様々な当事者によって提供される指標と測定法とを組み合せて使用することで明らかになる。これには、次の

ような指標が含まれる。

・ 環境への投入量/放出量・ 生物多様性の状態の変化・ その地域における生態系サービスの質と

利用可能度・ 生態系と地域の生息地の長期的な健全性

と安定性・ 環境への変化の社会・経済への影響

生物多様性に関するパフォーマンスを測定し、データを収集する責務は、役割や能力に応じて異なる関係者間で分担される。政府機関は企業とは異なり、特定の管轄権限により生物多様性と生態系の状態に関するデータを収集する機会(と義務)を持っている。組織のパフォーマンス報告は、著しい影響が存在し、生物多様性や生態系サービスに著しい影響もしくは著しい因果関係があると同定される活動、に関する指標に焦点を絞ることになるだろう。パフォーマンスを明らかにすることを目的としている指標については(静的な環境の状態についてのベースラインとなるデータを提示することとは反対に)、同じ指標を用いて報告を行っても、組織毎に異なる成果を報告することが期待される。

G3ガイドラインの指標は、環境への投入量/放出量や、組織が測定可能な生物多様性への影響や変化に焦点をあてている。これらの指標は、測定可能な影響がある地域に関して組織が与える影響を理解するのに役立つと共に、他の情報と併用して使用されれば最も有用となる。また、必要なその他の種類の指標や、組織が行う報告が指標を発展させるという役割を果たすことができるような方法について理解するために、かなりの量の作業が進行中である。

これらの指標を使うときには、常にその解釈の仕方や比較のための基準について疑問が投げかけられる。一般的に、どちらかひとつですべてを伝えることはできないため、報告を行うには定量的情報と記述情報の両方が必要となる。定量的情報は、定量的情報の背景にある傾向・そのような結果をもたらした要因・そして事実について、解釈の助けになるような説明を補足することで価値が高まる。 資源の利用による収益

影響を受ける地域のその他のステークホルダー

組織の活動

直接利用できる潜在量および 供給サービスの変化

生物多様性条約 :保全と持続可能な利用

生態系サービスの変化

生物多様性の変化

生物多様性条約 :利益の公正かつ公平な分配

以下を通じた、土壌、水、大気、動植物との相互作用 :・ 土地利用(事務所、プランテーション、インフラ、その他)・ 採取(天然資源の利用:木材、鉱物、その他)・ 放出量(肥料、放出物、農薬、その他)

影響

影響

影響を与える地域

図3.2: 組織と生物多様性との関係

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生物多様性条約の指標生物多様性を経年で測定することの難しさを認識しながらも、生物多様性条約は生物多様性の2010年目標に向けた進歩を評価するための指標の開発を進めている(囲み記事3を参照)。組織の状況によっては指標のすべてが使用できるとは限らないが、このような指標は、組織の直接・間接的な生物多様性への影響を評価するための独自のパラメーターを設計するのに役立つかもしれない。この文書作成時点で提案されている指標は表3.1に列挙してある。

GRIのパフォーマンス指標と生物多様性G3のガイドラインは、生物多様性に関する一連の指標を提供しているが、それらは土地の利用に伴う生物多様性の変化を含めて、生物多様性への組織の影響についての報告を含んでいる。しかし、これらだけが生物多様性に関する報告に関連があるGRI指標というわけではない。

原材料の利用や、生産のためのエネルギー消費、生産地の建設に関わる土地の改変、製品を配送するための輸送などを通じて、すべての生産工程が、生物多様性に対して何らかの好ましい、あるいは好ましくない影響を与えている。したがって生物多様性と他の環境パフォーマンス指標との間に関連性を見い出すこともできる。関連性がある場合の例を以下に示す。

•�水:水は生物多様性の3つのすべての要素(生態系の多様性、種の多様性、種内の多様性※)を維持するために不可欠である。水の不足や過多は地域の生物多様性の水準を大きく変化させることがある(例:生き残ることができる生物種)。従って、水の消費や排水についてのGRI指標のパフォーマンスは、生物多様性についての意味あいももっているであろう。

※訳者注:種内の多様性とは遺伝的多様性のことを示す。

•�大気:大気への放出は、汚染物質が広範囲に運ばれて、水域や土壌に影響を与えるのと同様に、動植物にも影響を与える。G3に基づいて大気への放出について報告する際、組織はこれらの放出物が生物多様性に影響を与える可能性がないか考慮することもできる(例:水銀の放出)。

•�土壌:土壌の質は、土壌が持つ様々な生態学上の機能を生み出す能力に影響を与える多くの環境中への放出物に影響を受ける(例:劣化した生態系は種の多様さを減少させる)。

•�生息地:生息地の断片化は、遺伝的基盤を弱めるため、個体群の存続を危うくする(例:道路などの新たなインフラ整備による生息地の断片化)。

分野 直ちに試用することができる指標

生物多様性の構成要素の状態と傾向  ・�特定の生物圏、生態系および生息地の規模の傾向

 ・�特定の種の個体数および分布の傾向 ・ 絶滅の恐れのある種の状況の変化 ・ 社会経済的に重要性の高い、家畜、栽培

植物および魚類の遺伝的多様性の推移 ・�保護地域の範囲

生態系保全(Ecosystem integrity)と生態系の財サービス

 ・�海の富栄養化指数 ・�生態系の連続性/断片化・ 水界生態系における水質

生物多様性に対する脅威  ・�窒素集積 ・�侵略的移入種の傾向

持続可能な利用  ・�持続可能な管理下にある森林、農業、および水産養殖に関わる生態系の面積

・�エコロジカルフットプリント※と関連する概念

            ※ 8ページに訳者注

伝統的な知識、革新および慣習の状況  ・�言語学的多様性の状態と傾向、および固有の言語を話す人の数

(遺伝資源への)アクセスおよび利益分配に関する状況

開発が必要な指標

資源移転の状況 ・�条約の支援のもとで提供された公的な開発援助

出典:生物多様性条約事務局(2006)地球規模生物多様性概況第2版、モントリオールhttp://www.biodiv.org/gbo2/default.shtml

表3.1: 生物多様性の2010年目標に向けた進捗評価のための指標案

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側面:水

EN8 水源からの総取水量

EN9 取水によって著しい影響を受ける水源

EN10 リサイクルおよび再利用された水の総量と割合

側面:放出物、排水および廃棄物

EN16 直接および間接的な温室効果ガスの総放出量(重量ベース)

EN17 その他の関連ある間接的な温室効果ガス放出量(重量ベース)

EN19 オゾン層破壊物質の放出量(重量ベース)

EN20 NOx、SOx、およびその他の著しい影響を及ぼす排気物質の種類と放出量(重量ベース)

EN21 水質と放出先ごとの総排水量

EN22 種類および処分方法ごとの廃棄物の総重量

EN23 著しい影響を及ぼす漏出の総件数と漏出量

EN25 報告組織の排水および流出水により著しい影響を受ける水界および関連する生息地の場所、面積、保護状況、水域および関連する生息地域の生物多様性の価値

側面:エネルギー

EN6 エネルギー効率の高いあるいは再生可能エネルギーを使用した製品およびサービスを提供するための自発的取り組み、およびこれらの自発的取り組みの結果としてのエネルギー消費量の削減量※。

側面:輸送

EN29 操業で使用される製品、その他物品、原材料の輸送、および従業員の移動からもたらされる著しい環境影響。

側面:製品およびサービス

EN26 製品およびサービスの環境影響を緩和する自発的取り組みと、影響緩和の程度。

生物多様性の変化

種の多様性 生態系の多様性 種内の多様性 (遺伝的多様性)

※ バイオマスは再生可能なエネルギー源として利用が増えている。エネルギー作物の耕作は、例えば、広大な自然の生息地を占有したり、大量の水を使用することで、生物多様性に著しい影響を与えることがある。組織は、再生可能なエネルギー源としてバイオマスを利用する時に起こりうる損害を考慮する必要があり、理想的には使用したバイオマス原材料の出所を報告する必要がある。

図3.3: 生物多様性とGRIのその他の環境パフォーマンス指標との関係

これらの関係の類型は図3.3に反映されており、これは、例えば水と放出物に関するGRI指標は、GRIが実際に生物多様性の指標としているものと同様に、組織の生物多様性のパフォーマンスに関する報告と関連性がありうる、ということを示している。

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3.5 実際の測定

情報の収集

生物多様性の価値および生物多様性への影響の評価、そしてその影響を追跡する試みについて、報告組織によって用いられる情報収集プロセスと関連付けて、以下で議論することにする。

生物多様性の価値の評価ある地域の生物多様性の価値やステークホルダーにとっての生物多様性と生態系サービスを評価することは手間のかかる作業である。結局、特定の地域の生態系サービスの価値は、関係するステークホルダー(例:政府、NGO、地域社会、研究機関)によるであろう。確定された価値を基礎にして、ステークホルダーは生物多様性へのある特定の影響が受け入れられるものであるかどうかを決めることができるのである。

ある地域における生物多様性の価値は、以下のような要因と関連付けられる。・�その地域の劣化の程度(例:原生林に対

する人工林)・ 種の多様さと個体数・ 生態学的サービス(例:渡り鳥の主要な

生息地)を含む、その地域が提供する生態系サービス

組織およびサプライチェーンの様々な構成員が、事業活動を行おうとする地域の生態系の多様性を考慮することや、事業活動によって直接的・間接的に影響を受ける地域の生物多様性の価値を評価することは、かなりの努力を要するかもしれない。その上、生物多様性のデータを集めるという単純な手段すら存在しない。定量的に測定することができる生物多様性の側面は以下のようにわずかである。・�種の多様さと個体数の傾向・ サプライチェーンで利用されている生物

多様性資源の遺伝的多様さの水準・ 生産サイトの中および隣接した地域にある、

生物多様性の価値が高い地域の面積(ha)

そこで、定量的なデータを得て、得られたデータを解釈する方法を見つけるために、組織には工夫が求められる。データ収集の

手法やツールに関する専門家的アドバイスは、自然保護団体や地域の生態学者から得ることができるかもしれない。

生物多様性への影響の評価組織の事業活動は、いつ生物多様性に影響を与えているのか。どのようにすれば、影響の範囲を見極めることができるのか。

生物多様性への直接的・間接的影響を報告することは、報告組織がサプライチェーンを通して起こる生物多様性の変化について知識をもっていることを前提にしている。生物多様性への間接的な影響についてのデータをサプライチェーンをたどって集めるよりも、報告組織自身の活動による直接的な影響を管理し測定することの方が、一般的に容易である。

組織のマネジメントや報告のためのデータを収集するために、多くの評価手法が開発されている。CBDのガイダンスから引用すると、付属文書Ⅴでは、生物多様性を環境影響評価にどのように組み入れるかについて、広範にわたる情報が提供されている。

組織にとってサプライチェーンを通した生物多様性への影響を完全に評価して報告することは困難かもしれない。代案のひとつに、生物多様性に重大な影響を及ぼすリスクがあるとわかっている生産プロセスをモニタリングしたり、影響に対して脆弱であるとわかっている地域、または保護価値が高いとわかっている地域をモニタリングするという方法がある。ここで、組織がどの生産地をモニタリングするかを選択するときに、ステークホルダーからの意見が役にたつ。さらに、ある特定の地域の生物多様性の価値を評価するときには、専門的な知識が必要となることもあるだろう。

囲み記事5:生物多様性の評価の事例

生産地の中や周辺地域の生物多様性のレベルに関するデータを集めるひとつの方法は、指標となる生物種や重要な生息地を選び出すことである。集められたデータは次のような観点で分析される必要がある。例えば、生物多様性の新しいマネジメント方法によって重要な生物種が恩恵を得ているか、重要な生息地で起こった劣化はどのように説明できるのか、などである。

組織は、以下について報告することもできる。・ 指標生物種や生息地を決定するために

使用した基準・ データの分析結果・ 生物多様性の価値を評価するときに協

力を得た専門家や地域のステークホルダー

・ ステークホルダーはどのような形で参画したか

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生物多様性の変化報告組織は、生態系が長年安定していると期待すべきではない。ある地域にある年存在した動植物種が翌年そこにいるとは限らない。動植物種は常に変化しており、その分布もある地域に限定されるものではない。食物や繁殖、なわ張りの問題によって、植物種や動物種は生息域を広げたり移動したりすることがある。これは、ある地域の特定の種の周期的な変化を示している場合もあり、必ずしも生物多様性の重大な変化を示しているとは限らない。それゆえ、包括的な報告を行うには、潜在的で重要な影響が生じていないかを定期的に調査することが必要である。

影響を受ける地域生物多様性への影響を評価・報告する時、報告組織は生物多様性への影響が事業活動を行っている地域を越えて及んでいる可能性を考慮する必要がある。例えば、汚染物質が、大気や地表水によって広がったり、他の地域を維持する上で不可欠な生物多様性の機能に悪影響を及ぼしているかもしれない。実際、ある活動の結果、影響を受ける地理的範囲は、しばしば実際の生産地域の面積よりも何倍も大きい。これは、生物多様性の価値の高い地域の中や隣接地域に所在しているかもしれないサプライチェーンの中に生産地を計画する時に考慮すべき重要な要素である。生物多様性への影響ははるか遠くにまで及び、その影響範囲は操業エリアから何マイルも離れているかもしれない。

影響の持続期間生物多様性への影響を評価するとき、報告組織はその影響の持続期間を考慮する必要がある。ここで、生物多様性への影響を引き起こす活動を行っている期間と、影響そのものの持続期間との間には違いがあることもある。

・�生物多様性への影響を引き起こす活動の継続期間:その影響を起こす活動は、何週間、何ヶ月、何年間、続くのか(例:殺虫剤の散布)。あるいはその影響が起こるのは1度だけか(例:土地の改変)。

・ 影響の持続期間:影響が及ぶ範囲は、その活動を行う期間を超えてしまうことがある。例えば、核廃棄物の長い寿命など。

自然に起こる変化の範囲を超えた生態学的なプロセスの変化(例:塩分、地下水位の変化)は、すぐには生物多様性に影響を及ぼさない場合があるが、長期的には動植物種の構成に影響を及ぼすことがある。報告を行う際は、生物多様性への影響を特定し管理するために、どのような手続きを踏んだかを明らかにする必要があり、この影響には直接的な操業地域を越えて及ぶ影響や、非常に長期間継続して起こる影響を含む必要がある。

トレーサビリティの欠如多くの組織が、生物多様性への間接的な影響を理解し把握しようと試みているが、サプライチェーンから有益な情報を集める能力において限界に直面している。例えば、報告組織は使用しているいくつかの製品がどこから由来しているかを把握していないことに気づくかもしれない。影響を追跡・把握する能力に限界があれば、組織が生物多様性に与えている影響のすべてを報告することはできないだろう。この場合、組織(もしくはサプライチェーンの構成組織)のパフォーマンスそのものについて報告するよりも(つまり実際の影響)、問題のある製品と関連がある課題について報告することも(つまり潜在的な影響)、ひとつの選択肢となるだろう。

潜在的な影響について報告することは、一般に、問題の製品について以下の情報のいくつかが入手できれば可能となる。

・�原産国や原産地(例:その地域の生物多様性の価値に関する情報、適切な法令の存在、その地域での生物多様性への影響に関する出版物)

・ 必要な資源についての情報(例:水の消費量、土壌の種類)

・ 生産慣行(例:モノカルチャー、作業工程での要求事項、土地開拓の慣行)と関連する影響

インターネットによる調査からは、特定の製品やその生産方法を理解する上で役立つ情報を得ることができる。ラベルや関連する行動規範からも追加情報を収集できる。専門家が支援することもできる。

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詳細なパフォーマンスよりも課題について報告することで、組織は生物多様性への潜在的影響やパフォーマンスを向上させる上で直面しているジレンマについて、ステークホルダーに報告することができる。しかし、このように報告する時には、パフォーマンスを測定するのに必要な客観的データへのアクセス方法を改善することを含めて、将来その課題にどのように取り組むかという計画について伝えることも重要である。

情報の処理:影響から報告まで

様々な地域に生産地やサプライチェーンの構成組織のネットワークを持つ組織は、以下のような項目について、地域毎に異なる状況に直面するかもしれない。

・�適用される環境法令・ 地元のステークホルダーからの期待・ 生物多様性への地域的な影響の種類

さらに、情報を処理する時、組織は以下のことを考慮しなければならない。

・�異なる地域や異なる時期に起こった地域的な影響は、他の種類のデータ(例:財務データ)と同じように、単純に数字を合計することでとりまとめることはできない。

・ 地域で収集されたデータは 包括的で体系的な報告につながるような方法で処理し、まとめられなければならない。

・ 生物多様性は地域的な課題であり、とても変化しやすいものであるため、報告を行う優先順位は現場毎に異なることがある。

報告を目的として情報を処理する際に組織が直面する主な課題は、生物多様性との関係や生物多様性への影響に関する情報を統合し、これをサステナビリティレポートの構成要素とすることである。組織は、以下を行うことで、効果的な報告プロセスに対応することができる。

・�組織の活動から生じる生物多様性への主要な圧力ついての情報を共有すること(このような圧力の範囲、圧力の影響、組織によって取られた対策)。

・ サプライチェーンを通じて必要な情報を

蓄積するために、生物多様性の側面に取り組むための標準的な手順、ひな形、質問票を設計すること。これは、組織が生物多様性の課題に関する情報を集める上で役立つ。事例を表3.2に示す。

・ 実際に起こった影響を事例とともに記載する。

・ すべての種の目録を作るよりも、組織によって潜在的な影響を受けるかもしれない重要な指標生物種の移動パターンや数、あるいは重要な生息地の経時的な変化を記載する。

・ マネジメント手順がどの程度深く履行されているかについて記載する(例:生物多様性に関する行動計画を策定した生産地の割合)。

・ 生産地の生物多様性のパフォーマンスに関する比較可能な情報を収集する(例:生物多様性への好ましくない影響が減少した拠点の数)。

・ データを集約することが困難な場合は、全操業範囲にわたって見られる影響の傾向を示す(例:操業を始めてから、生産地の45%で地域におけるキーストーン種※の個体数が改善した)。

・ 企業のサステナビリティレポートに加えて、サイト毎に個別のサステナビリティレポートを提供する。

※26ページに訳者注あり。

題目 側面

土地の改変 ・ 事業活動に使われている土地の面積はいくらか。

・ どのような種類の土地が事業活動のために改変されたか。

・ 生物多様性のレベルは土地改変の前後またはそのいずれかで測定されたか。測定されていた場合、最も意味のある発見は何か。

・ 土地改変を行う前に環境影響評価 (EIA:Environmental Impact

Assessment)は実施されたか。実施されていた場合、生物多様性はどのよう扱われたか。

表3.2: 情報を集めるための質問の例

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参考文献この参考文献は3部構成となっている。

第1部では本書を作成するにあたり使用した出典を示している。第2部と第3部では、本書で扱ったいくつかのテーマに対して様々な考え方を提示している生物多様性に関連する組織やイニシアティブを選んで紹介している。

注:組織やイニシアティブが提供する情報は、それぞれのウェブサイトから引用されたものであり、GRIの見解を示すものではない。また、これらの出典を含めることはGRIによる推薦を意味しているわけではない。ほかにもここで紹介する出典と同様に有益で信頼性がある出典があるであろう。

本書作成にあたり使用した出典

GRIバウンダリー・プロトコルグローバル・リポーティング・イニシアティブ, 2005年1月[ http://www.globalreporting.org/Services/ResearchLibrary/GRIPublications/ ]※訳者注: 本URLは表示されません。下記のページをご参照ください。

[ http://www.globalreporting.org/NR/rdonlyres/CE510A00-5F3D-41EA-BE3F-BD89C8425EFF/0/BoundaryProtocol.pdf ]

世界生物多様性概況第2版、2006年生物多様性条約事務局(モントリオール)[ http://www.biodiv.org/gbo2/default.shtml ]

ミレニアム生態系評価、2005年生態系と人類の福利:ビジネスと産業にとっての機会と課題世界資源研究所(ワシントンDC)[ http://www.wri.org/business/pubs_description.cfm?pid=4155]

生物多様性評価フレームワークSlootweg en van Schooten/CREM, 2004年4月[ http://www.bothends.org/strategic/Dutch%20import%20of%20biomass.pdf ]

選んだ組織

コンサベーション・インターナショナルコンサベーション・インターナショナルの使命は、地球の生命ある自然遺産、すなわちグローバルな生物多様性を保全し、人間社会と自然が調和できることを具体的に示すことです。[ http://www.conservation.org]

生物多様性条約(CBD)[http://www.cbd.int]

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地球規模生物多様性情報機構(GBIF)生物多様性に関する情報(自然史コレクション、図書館資料、データベース)は、世界的には偏在しています。生物多様性に関する情報の4分の3以上が先進国にあるにも関わらず、デジタル化されていないことや、デジタル情報を扱うための基盤が整備されていないこと、などによりほとんどの情報が発展途上国に伝達することができません。すべての人が情報利用の恩恵を受けるために、生物多様性に関する一次情報のデジタル化および地球規模での普及を促進することが、地球規模生物多様性情報機構(GBIF)の使命です。[http://www.gbif.org]

グリーンピースグリーンピースは国際的な組織として、地球の生物多様性や自然環境にとって最も危機的な脅威に焦点をあて、以下の目的のために活動しています。・�気候変動の防止・ 原生林の保護・ 捕鯨の中止・遺伝子操作への反対・ 生物多様性への境法令・ 核の脅威を止める・ 有害化学物質の廃絶・ 持続可能な貿易の促進[ http://www.greenpeace.org/international ]

国際影響評価学会(IAIA)国際影響評価学会(IAIA)は、政策、プログラム、計画、プロジェクトについて情報に基づいた意思決定を行うために影響評価を用いるにあたりベストプラクティスについて主導的な役割を担う世界的権威です。当学会は、様々な種類の影響評価の研究者、実務家、利用者と共に、地方、各地域やおよびグローバルな世界の影響評価の能力をさらに発展させるために、あらゆる形態の影響評価の改革やベストプラクティスの共有の促進を目的とした国際フォーラムを開催しています。[ http://www.iaia.org ]

レインフォレスト アライアンスレインフォレスト アライアンスの使命は、土地利用や商習慣、消費者行動のあり方を変えることによって、生態系とその生態系に依存する人々と野生生物を守ることです。私たちのプログラムに参加する企業や協同組合、土地所有者は、生物多様性を保全し、持続可能な暮らしを提供するための厳しい基準を満たしています。[ http://www.rainforestalliance.org ]

ネイチャー・コンサーバンシーネイチャー・コンサーバンシーの使命は、生きる上で不可欠な土地や水資源を保護することにより、地球上の生命の多様性を象徴する動植物や自然生態系を保全することです。[ http://www.nature.org ]

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国際自然保護連盟(IUCN)IUCN(国際自然保護連盟)は世界最大の自然保護ネットワークです。世界82ヵ国、111の政府機関、800以上のNGOと、181ヵ国から約1万人の科学者および専門家が、世界規模の協力関係を築いています。IUCNの使命は、自然の健全性と多様性を保全し、天然資源の公正かつ生態学的に持続可能な利用を確保するため、世界中のあらゆる社会に、影響を及ぼし、励まし、支援していくことです。IUCNは、世界中の自然保護地域のリストと絶滅危惧種のレッド・リストを作成しています。 [ http://www.iucn.org ]

国連環境計画(UNEP)国連環境計画(UNEP)の使命は、将来世代の生活の質を損なうことなく現在の生活の質を高められるよう各国および人々の意識を高め、情報を提供し、力を与えることによって、環境への配慮を先導し、またパートナーシップを育むことです。世界自然保全モニタリングセンター(WCMC)は、UNEPの生物多様性および関連情報評価機関です。[ http://www.unep.org ] and [ http://www.unep-wcmc.org ]

持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)は、経済発展、生態系のバランスおよび社会的進歩の3つの柱を通じた、持続可能な発展へのコミットメントを共有する175の国際的な企業からなる連合です。[ http://www.wbcsd.org ]

世界資源研究所(WRI)世界資源研究所(WRI)は、地球環境を保護し、人々の生活の質を向上させるため、単なる研究を超えて実用的方法を探るための環境シンクタンクです。WRIの使命は、現在および将来世代の基本的要求と望みを満たすことができるように、地球環境および環境収容力を保護する生活様式に、人類社会をシフトさせることです。 [ http://www.wri.org ]

世界自然保護基金(WWF)WWFの究極の目標は、自然環境の悪化を食い止め、ひいては逆転させ、人類が自然と調和して生きる未来を以下の3つの方法で築くことです。・�世界の生物多様性を保全する。・ 再生可能な天然資源の持続可能な利用が確実に行われるようにする。・ 環境汚染と浪費的な消費の削減を進める。[ http://www.panda.org ]

選んだイニシアティブ

生物多様性の経済学生物多様性の経済学は、生物多様性に関する経済学に特化したウェブサイトです。このサイトは、IUCN(国際自然保護連盟)とWWF(世界自然保護基金)によって支援されており、重要文書や行事予定、世界中の実務者のデータベースへのアクセスを提供することにより、経済学的アプローチによる自然保護を促進することを目的としています。 [ http://www.biodiversityeconomics.org ]

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バイオセーフティ・クリアリングハウス(BCH)バイオセーフティ・クリアリングハウス(BCH)は、バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書よって設立された情報交換のための仕組みで、カルタヘナ議定書の締約国が同条約を実施することを支援し、LMOS※に関する情報と経験の共有を促進することを目的としています。※訳者注:Living Modified Organisms:現代のバイオテクノロジーの利用によって得られた新たな遺伝物質の組み合

わせを持つあらゆる生きている生物

[ http://bch.biodiv.org ]

ビジネス&バイオダイバーシティ・リソースセンター (BBRC)ビジネス&バイオダイバーシティ・リソースセンター(BBRC)は、生物多様性がビジネスに果たす重要な役割を明らかにすることにより、組織を支援しています。センターは、様々なセクターがどのように野生生物や自然に影響を与えるのか、またどのような組織が生物多様性を保全し管理するのを支援しているか、といった情報を提供しています。センターは、イングリッシュ・ネイチャー※と英国環境・食糧・農村地域省(DEFRA)の支援を受け、アースウォッチ・インスティチュート(ヨーロッパ)により運営されています。※訳者注:野生生物・自然環境の保護を目的としたイギリスの政府機関

[ http://www.businessandbiodiversity.org ]

生物多様性条約クリアリングハウス・メカニズム生物多様性のクリアリングハウス・メカニズムは、国内および国家間の生物多様性に関する技術的、科学的連携を促進・容易にし、生物多様性に関する情報を交換し集積するための世界規模の仕組みと、人的・技術的ネットワークを展開することを目的としています。 [ http://www.biodiv.org/chm/ ]

コンサベーション・コモンズコンサベーション・コモンズは、それが生物多様性の保全に関する成果の向上に貢献するとの信念のもと、生物多様性の保全と持続可能な利用に関するデータや情報や知識への自由なアクセスを向上させための、NGO、国際的あるいは多国間組織、政府、学界、民間セクター※による共同の取り組みのことです。※訳者注:民間セクターとは、公共セクターに対する言葉で、主に民間企業を意味しています。

[ http://www.conservationcommons.org ]

コンサベーション・メジャーズ・パートナーシップ(CMP)コンサベーション・メジャーズ・パートナーシップ(CMP)は、自分達の保全活動の影響を取りまとめ、管理し、測定するより良い方法を追求している環境保全に関するNGO達のパートナーシップです。CMPは、産業界やその他のセクターが、自らの保全活動や管理運営とその影響を評価するのに役立つ標準的な分類法を開発しており、これには直接的な脅威と保全活動についての分類法が含まれています(この2つの分類法はCMPのウェブサイトで利用できます)。[ http://www.conservationmeasures.org ]

世界生物多様性フォーラム(GBF)世界生物多様性フォーラム(GBF)は、IUCN、WRI(世界資源研究所)、UNEP、ACTS(アフリカ技術研究センター)によって1993年に設立され、その他のいくつもの団体がGBFのセッション議長として参加しています。GBFは、誰でも参加可能な独立した機関であり、生物多様性に関する重要な生態学的、経済的、社会的、制度上の課題についての分析、対話、パートナーシップを促進しています。GBFは、生物多様性条約(CBD)、ラムサール条約、気候変動枠組条約(UNFCCC)、国連砂漠化防止条約(UNCCD)、その他の地方や国や広域や国際レベルの生物多様性に係る協定をさらに発展させ、推進することに貢献しています。[ http://www.gbf.ch ]

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国際金融公社(IFC)の生物多様性ガイド国際金融公社(IFC)は世界銀行グループの民間部門対応機関です。その使命は、発展途上国における民間部門への持続可能な投資を促進することで、貧困の削減と人々の生活を向上させる支援を行うことです。IFCは「民間部門のための生物多様性ガイド:生物多様性がなぜ重要で、どのように事業価値を生み出すか」を作成しました。このウェブ上のガイドは、新興市場で事業を行う組織が、組織と生物多様性に関する問題との関係や、事業パフォーマンスと生物多様性から得られる利益を向上させるためにどのように生物多様性に関する課題を効果的に管理できるかについてより良く理解できるように意図されています。[ http://www.ifc.org/BiodiversityGuide ]

ミレニアム開発目標(国連)ミレニアム開発目標(MDGS)は、2015年の目標年までに極度の貧困の半減、HIV/AIDSの防止、初等教育の完全普及の達成するなどの8つの目標からなり、世界中のすべての国々と主要な開発機関によって合意された計画です。これらの開発目標により、世界の最貧層の人々のニーズを満たすというかつてない取り組みが推進されています。7番目の目標が、環境の持続可能性を確保することです。[ http://www.un.org/millenniumgoals ]

ミレニアム生態系評価(MA)ミレニアム生態系評価(MA)は、国際連合により始められた国際的イニシアティブであり、世界の生態系の状態を評価するために、国連環境計画(UNEP)と世界資源研究所(WRI)によって主導されています。[ http://www.millenniumassessment.org ]

自官民連携 (PPP)公共部門と民間部門のパートナーシップが、ますます高まりつつあります。このようなパートナーシップを通じて多様な問題の解決が図ることが可能であり、生物多様性という課題もその一つとなっています。生物多様性は、複合的な課題であり、特に以下のような場合にそうです。・�操業が単一の事業拠点に限定されない。・ 事業活動が、潜在的に生物多様性に好ましくない影響を与えることが知られている。・ 保全価値の高い地域が特定されていない。

パートナーシップは、影響の記録と情報収集を行い、生物多様性管理計画を策定し、環境影響評価を実施し、知識を移転させることで、支援を行うことができます。

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付属文書

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付属文書Ⅰ

GRIについて

Global Reporting Initiative は、世界数十ヶ国からの数千人もの専門家からなるマルチステークホルダーのネットワークであり、これらの専門家は公式または非公式な形で、GRIのワーキンググループや統治機構に参加したり、報告のためにGRIガイドラインを使用したり、GRIをもとにした報告書から情報を入手したり、もしくは様々な方法で報告枠組みの開発に寄与している。

GRIのビジョンは、すべての組織による経済、環境、社会の3側面についてのパフォーマンスの報告が財務報告と同様に通常のものとなり比較可能となることである。

GRIのネットワークは、持続可能性報告の枠組みの利用環境を開発し、継続的に改善し、能力を育成することにより、このビジョンを達成する。その中核をなすものが持続可能性報告ガイドラインである。報告枠組みのその他の構成要素は、「業種別補足文書」と「プロトコル」である。この報告指針は、報告原則と指標からなり、無料で誰でも使用できる公共財として提供されている。

最高水準の技術的品質、信頼性、適合性を確保するため、GRIの報告枠組みは、マルチステークホルダーの徹底的な参画を通して、開発され、継続的に改善されている。このマルチステークホルダーには、報告組織と情報を必要としている人が含まれており、共同して報告枠組みの中身の開発とレビューを行っている。

GRIの報告枠組み

報告枠組みには、プロトコルおよび業種別補足文書だけでなく、持続可能性報告ガイドライン(これを‘ガイドライン’と呼ぶ)の中核となる成果物が含まれている。

A.GRI報告枠組み

ガイドラインは、あらゆる報告の基礎として使用されるべきものである。ガイドラインは、他のすべての報告ガイダンスの基盤であり、規模や業種や操業地域に関わりなくあらゆる組織に広範に適用することができる報告のための中心的内容を概説している。このガイドラインには、-指標を含

む-標準開示事項に加えて、報告原則とガイダンスが含まれている。それにより、組織が自発的、柔軟かつ段階的に取り組むことができる情報開示の枠組みを概説しているのである。

プロトコルは、ガイドライン内の各指標をどのように使用するかの‘レシピ(調理法)’であり、この中には指標の中の重要な用語の定義、編集方法、指標の対象範囲、その他の技術的な参考資料が含まれている。

業種別補足文書は、(ひとつのガイドラインであらゆる組織をカバーする)汎用アプローチの限界に対処するものである。補足文書は、鉱業、自動車、金融、公的機関など、様々な業種が直面する持続可能性に関する固有の課題を捉えることで、中核となるガイドラインの使用を補完(代替ではない)している。

B.追加資料

研究・開発刊行物GRIの研究開発刊行物は、GRIガイドラインの利用者が関心を持つ話題や傾向についての背景情報を提供することで、GRIの報告枠組みをサポートしている。研究題目には、GRIの報告枠組みで扱っているものも、直接扱っていないものも含まれている。研究刊行物は、個々の利用者や今後のGRIワーキンググループを活性化させるためのアイデアや専門的知識や知見についての情報源である。

GRIに基づいた報告を行うことを希望する組織にとって、研究刊行物は報告にまつわる話題や傾向についての見識を得る上で有用な手段だが、報告を行うためにGRIの報告枠組みを使用する上で特定の項目を調べるのであれば、G3ガイドラインと、補足文書またはプロトコルを参照すべきである。GRIの報告枠組みのアプリケーションレベルを宣言する時は、参照先はガイドライン、補足文書、プロトコルのみに限られている。GRIの報告枠組みは、以下のホームページで無料でダウンロードすることができる:www.globalreporting.org

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付属文書Ⅱ

定義

この付属文書では、アルファベット順に、生物多様性に関する主要な話題や用語の定義について概説する。

生物多様性生物多様性は、陸上、海洋およびそのほかの水中生態系を含め、あらゆる源からの生物、およびそれらからなる生態学的複合体の多様さのことであり、これには生物種内、種間、生態系における多様性が含まれる。

生物資源生物資源には、遺伝資源、生物またはその一部、個体群またはその他生態系の生物的なあらゆる構成要素、が含まれ、現に利用され若しくは将来利用されることがある、または人類にとって現実の若しくは潜在的な価値を有するものをいう。

生態系生態系とは、植物、動物および微生物の群集とこれらを取り巻く非生物的な環境(土壌、大気、水)とが相互に作用して一つの機能的な単位を成す動的な複合体をいう。生態系は人類の存続に不可欠なサービスと財を提供する。生態系とそれが提供するサービスには様々な種類がある。生態系とそれが提供するいくつかのサービスについての概説を付属文書Ⅲに示す。

生態系アプローチ生態系アプローチは、保全および公正な方法での持続可能な利用を促進する、土地、水、生物資源の統合的管理のための戦略と定義される。ここでは、文化的な多様性をもった人類も生態系に欠くことのできない構成要素として認識される。16)

外来種侵入種を参照。

生息地生息地とは、生物の個体もしくは個体群が自然に生息している場所またはその類型をいう。

生息地の劣化生息地の劣化とは、生息環境の質の悪化であり、動植物種を維持する能力の減少をもたらす。生息地の劣化を招く人間活動には、汚染行為や侵入種の持ち込みがある。悪影響はすぐに顕在化する場合もあれば、蓄積する性質を持つ場合もある。生物種がもはや生存できない状態にまで生息環境が劣化すると、生物多様性はついに失われる。

生息地の断片化生息地の断片化は、連続した生息地が、分断され、しばしば孤立化し、他の生息地とともに散在する小さな区画に分けられた時に起こる。断片化された小さな生息地は、維持できる動物種の個体群の規模が小さく、絶滅の危険性を高める。このような分断された島状の生息地は、もとの分断されていない生息地にいた生物種にとっては、もはや生息に適さないことがある。また生息地の断片化は個体群間の移動もしばしば妨げる。

生息地の断片化は、物理的環境がゆっくりと変化していく地質学的過程や、開墾や道路建設などの人間活動に起因する。悪影響は、しばしばすぐには顕在化せず、表面上は十分な生息地が維持されているように見える。しかし、小規模になった個体群には、近親交配、なわばりの不足、エサ不足、などの問題が発生する。それゆえ、生息地の断片化は、長期的には生物多様性の喪失をまねくと考えられる。

生息地の喪失生息域の喪失は、自然地域を生産地に改変するなど、「自然の」生息地タイプが取り除かれ、別の生息地タイプと置き換えられるような土地利用の変化の結果生じる。このような過程において、その土地を以前から利用していた動植物種は追いやられるか滅ぼされる。一般的に、このような生息地の喪失は、生物多様性の減少という結果をもたらす。

16) 生物多様性条約(CBD)(リオデジャネイロ、1992年、 セクション2.2を参照)で、「生態系アプローチ」は導入された。この「生態系アプローチ」は、生物多様性条約第5回締約国会議で採択された。生態系アプローチの適用は、生物多様性条約の3つの目的(保全、持続可能な利用、遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ公平な分配)のバランスを保つ上で有効である。

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影響(重大な/著しい)生物多様性への重大な影響は、ある地域全体の生態学的な特徴や構造や機能を長期間にわたり大幅に変化させることで、その地域の本来の自然状態に影響を与える活動(それ自身で、もしくは他の影響と共に)の結果生じる。これは、生息地や個体数、および/またはその地域を重要な生息地としている生物種が生存できなくなることを意味する。影響というと、一般に好ましくない変化と捉えられているが、ある地域の生物多様性に好ましい影響をあたえる変化にも用いられる。

生物多様性は、生態系および生息地の基盤を形づくっている。したがって生物多様性への悪影響は、生態系サービスの持続的な供給を脅かすことになる。重大な悪影響は、生きる上で必要最低限もしくは商業的な資源の利用に対して、利用者の福利が長期間にわたって影響を受けるような影響を与えることもある。

組織のもたらす影響には、直接的影響と間接的影響がある。

• 直接的影響 直接的影響とは、組織活動の結果、生物多様性に直接影響を与えることである。例えば、生産地をつくるために組織が所有、賃借、管理する土地を改変することや、ある地域の動植物種に影響を与える生産工程や、収穫高を増やすための化学物質の使用などがある。

• 間接的影響 組織は、たとえ組織活動が直接的に生物多様性に影響を与えていなくても、組織が属するサプライチェーンを通した別の結び付きによって引き起される影響があるため、間接的影響を抱えている。例えば、ある地域の生物多様性に影響を与える方法で生産されている製品を輸入している組織など。間接的影響は、組織の操業によっても引き起される、例えば、森林伐採により空き地ができることで開発を誘発することや、雇用の提供により新しい地域への移住を促進すること(人の移動や人口増加は土地や天然資源の利用を増やすことで生物多様性に影響を与える)などがある。

侵入種侵入種とは、意図的または非意図的に、本来生息しない生態系に導入された生物種のことである。これらの生物種は、高い繁殖速度により、また在来種と競争し、それらに取って代わることで侵略的となる。侵入種は、外来種とも言われる※。侵入種は、事故(例:逃げ出した生物)や運輸(例.船のバラスト水から)の結果として導入されたり、遺伝子組み換え生物(GMOS)の形で導入されることがある。※訳者注:正確には、侵略的外来種(侵略的移入種)が侵入

種と呼ばれる。

土地の改変土地の改変とは、ある区域が、高レベルの劣化(好ましくない土地の改変)や低レベルの劣化(好ましい土地の改変)を伴う区域へと改変されることである。好ましくない土地の改変には、しばしば非生産区域から生産区域への改変が含まれる。

土地利用土地利用とは、ある特定の土地をどのような使用目的、必要、使用方法などに割り当てるか、ということである(例:農地、工業団地、住宅地、または自然状態)。

緩和措置緩和措置とは、生物多様性への好ましくない影響を有する活動は容認するものの、提案された活動の規模、設計、所在地、立地場所、工程、順序、管理方法、および/またはモニタリング方法の変更を検討することにより、現地での影響を低減させることである。緩和措置は、実用的な最善の環境措置が選択されるように、提案者、計画立案者、技術者、生態学者、その他の専門家の共同の努力が必要となる。緩和措置の例:ある道路建設は、生物多様性に受け入れがたい影響をもたらすと考えられた。道路は計画通りに建設されるが、野生生物用の高架橋も建設されることになった。

在来種在来種とは、ある区画や地域に自然に生息している動植物種のことである。

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非点源汚染非点源汚染は、ある特定の、あるいは特定可能な、もしくは個別の汚染源によるものではなく、むしろ広く散らばった土地利用活動により引き起される。非点源汚染は広範にわたるため、特定もしくは正確な位置を把握することが難しく、それゆえ汚染物質を容易に制御することができない。報告組織は、この種の汚染が生物多様性に直接的(例:汚染がある植物種に害を与える)もしくは間接的に影響を与える(例.汚染が、ある生物種の環境を、結局生存できなくなるまでの影響を及ぼす)可能性を認識すべきである。

乱獲乱獲は、野生の動植物の捕獲が生物の再生産パターンとのバランスを逸脱し、結果的に生物種を絶滅に追いやる可能性がある場合を指す。

点源汚染点源汚染とは、パイプ、排水路、井戸、船舶、廃棄物容器などの明確に特定され、位置がわかる発生源から排出される汚染のことである。報告組織は、汚染が生物多様性に直接的(例:汚染がある植物に害を与える)もしくは間接的に影響を与える(例:汚染が、ある生物種の環境を、最終的に生存できなくなるまでの影響を及ぼす)可能性を認識すべきである。

予防措置予防措置とは、生物多様性への特定の影響を予防もしくは回避するためにとられる。

予防措置の例:道路建設が生物多様性に受け入れ難い影響を持つので、道路の方向を変更すること。

保護地区保護地区とは、特定の保全目的を達成するために、指定もしくは規制および管理された地理的に明確に規定された地区のことである。

復元地域修復地域は、操業の間に、使用もしくは影響を受けていたが、修復措置により健全に機能する生態系として、元の状態にまで環境が復元された地域のことである。

ステークホルダーステークホルダーとは、利害関係を持ち、あるいは特定のもしくは一連の活動の結果により影響を受ける可能性のある、特定の人々、グループ、政府組織、民間組織のことである。ステークホルダーは対象となる活動によって異なり、株主や経営者、従業員、供給業者、政府、監督機関、NGO、地域社会などが含まれる。責任ある意思決定を行うには、関係するすべてのステークホルダーへの影響に配慮する必要がある。ステークホルダーは、活動の結果生じ、あるいは生じると予測される影響と、その結果生じる生物多様性の変化に基づいて特定される。

サプライチェーンサプライチェーンとは、供給業者から製造者、卸売業者、小売業者、そして消費者へと連なる物質と情報と資金の一連の流れとして表される。サプライチェーンは、原材料の加工に始まり、おそらく一連の中間材料生産に続き、最終組立と流通・販売に終わる。生物多様性の価値と影響を受ける範囲は、個々のサプライチェーンの中で行われる活動による。例えば、果物や野菜の生産工程は、ガラス瓶の製造工程よりも生物多様性との相互の関連性は高いと思われる。

持続可能な利用持続可能な利用とは、生物多様性の長期的な減少につながらない方法と速度で、生物多様性の構成要素を利用することにより、現在及び将来世代の必要及び願望を満たすように生物多様性の潜在的可能性を維持することをいう。

廃棄物廃棄物とは、最終製品の一部分となることなしに組織から出ていく原材料および他の投入資材のことである。これには、最終製品には含まれない未使用原材料、副産物、包装材、操業に必要な資材が含まれる。ここでいう廃棄物には、外部から持ち込まれて加工されなかった物質だけでなく、リサイクルされた(加工された)物質も含んでいる。

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付属文書Ⅲ

下表には、代表的な生態系と各生態系が提供するサービス例を示している。これらのサービスを供給する生態系の能力は、複雑な生物学的、化学的、物理的な相互作用に依存している。

生態系 生態系サービス

山地と極地 ・�食料・�繊維・ 淡水・ 土壌侵食の制御・�気候調整・ レクリエーションとエコ

ツーリズム・�審美的価値・ 霊性的価値

森林地帯 ・�食料・�木材・ 淡水・ 薪炭材・�洪水の制御・ 疾病の制御・�炭素吸収・ 局地的な気候調整・�医薬・ レクリエーション・�審美的価値・ 霊性的価値

沿岸域 ・�食料・�繊維・ 燃料・�気候調整・�廃棄物処理整・�栄養循環・�暴風や高波からの保護・ レクリエーションとエコ

ツーリズム・�審美的価値

海洋 ・�食料・�気候調整・�栄養循環・ レクリエーション

生態系 生態系サービス

陸水域(河川、その他の湿地)

・ 淡水・ 食料・�汚染の制御・洪水の制御・�堆積物の維持と輸送・�疾病の制御・�栄養循環・ レクリエーションとツー

リズム・�審美的価値

耕作地 ・�食料・�繊維・ 淡水・ 染料・�木材・ 疾病の制御・�バイオ燃料・ 医薬・�栄養循環・�審美的価値・ 文化遺産

乾燥地帯 ・�食料・�繊維・ 薪炭材・�局地的な気候調整・ 文化遺産・ レクリエーションとエコ

ツーリズム・ 霊性的価値

都市(公園と庭園)

・�大気質の調整・ 水の調整・�局地的な気候調整・ 文化遺産・ レクリエーション・ 教育

島嶼 ・�食料・ 淡水・ レクリエーションとツー

リズム

表3.生態系と、それが提供するサービス例

出典:世界資源研究所(ワシントンDC)、「ミレニアム生態系評価『生態系と人類の福利、ビジネスと産業にとっての機会と挑戦』」、2005年 http://www.wri.org/business/pubs_description.cfm?pid=4155

生態系と、それが提供するサービス例

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付属文書Ⅳ

生物多様性条約(CBD)は、生物多様性の保全と持続可能な利用、および遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ公平な分配を促進する。本付属文書の表には、組織にと

って重要と思われる生物多様性条約の条文を掲載する17)。

17) 「ビジネスと生物多様性、民間部門のためのガイド」(Stone, D., Ringwood, K., Vorhies, F.1997)は、組織が生物多様性条約の文脈を理解し、自社の方針において実践することを支援する。

   http://biodiversityeconomics.org/document.rm?id=144

生物多様性条約の条文

主題 企業との関連性

第六条 生物多様性国家戦略および行動計画(NBSAPS)、並びに生物多様性関連施策の展開

生物多様性国家戦略および行動計画(NBSAPS)は、企業が自社の生物多様性行動計画を、より広範な国家レベルの計画と関連づけ、生物多様性が特定の産業分野および分野横断的な計画、プログラム、政策に統合されるための枠組みを提供している。

第八条 生息域内保全 生息域内保全は、政府に対し、生態系とそこに生息する野生生物を保護するために、保護区を設置し、保全活動に着手することを求めている。これらの行動は、企業が操業できる地域とできない地域を示し、また、企業に対して、操業地域内およびその周辺で保全活動に着手することで生物多様性保全に貢献するための理由を提供する。

さらに、第8条(g)では、バイオテクノロジーによる遺伝子組み換え生物の放出に関わるリスクを規制、管理、制御する手段を求めている。この条文は、特に農業、林業および医薬産業に関係がある。

第8条(h)は、生態系や生息地や生物種を脅かす移入種を導入することを防止し、管理するかまたは根絶することを求めている。この条文は、特に外来のペットを扱う業界、水産養殖、園芸業界にとって重要である。

第九条 生息域外保全 生息域外保全は、自然環境外での自然資源の保護を求めている。

第十条 持続可能な利用 第十条(e)は、生物資源を持続可能な形で利用のするための方法を開発するにあたり、政府機関と民間部門間の協力を奨励している。

第十一条 奨励措置 奨励措置は、ラベリングなどの市場手段を使って、生物多様性保全に貢献する商品やサービスの新たな市場を創出するための機会を産み出すことや、新興経済国の責任ある中小企業を支援する革新的な金融の仕組みを構築するものである。

第十四条 影響評価 第十四条の1は、環境影響評価(EIA)の過程に生物多様性を統合することを奨励しており、その結果、政府は、影響評価の手続きに今までとは異なる新たな要求基準を導入することになるかもしれない。

第十四条の2では、生物多様性に与えた損害に対して、原状回復と補償を含む損害賠償責任と救済措置に関する課題を扱っている。このことは、生物多様性に有害な影響を与える可能性のある企業に対してリスクを提起するものである。

第十五条 遺伝資源へのアクセス

生物多様性条約における遺伝資源へのアクセスに関する議論は、‘双方が合意できる条件’‘事前の情報に基づく同意’‘利益の公正かつ公平な分配’などの企業にとって重要な課題を提起している。

第十六条 技術へのアクセスおよび移転

本条文は、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する技術へのアクセスや、遺伝資源の利用を円滑にすることを促進することを述べている。新技術を開発している企業は、国家間の技術移転に関する新たな枠組みが、新しいビジネスチャンスをもたらすことに気づくかもしれない。

第十六条の2は、知的所有権のある技術の移転に触れている。

第十六条の4は、開発途上国と先進国双方の民間部門が協力する機会を提供することで、自国の民間部門が開発途上国の政府機関と民間部門両者の利益のために、技術へのアクセスを容易にすることを確実にするよう、生物多様性条約の締約国が、立法上、行政上、又は政策上の措置をとるように求めている。

第十九条 バイオテクノロジーの取扱い および利益の配分

本条文は、バイオテクノロジーを利用したビジネスと特に関連がある。

表4.ビジネスにかかわる生物多様性条約の側面

組織にとって重要な生物多様性条約の条文

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付属文書Ⅴ

環境アセスメントは、報告組織の活動から生じる環境影響についての情報をもたらし、これにより報告を行うための情報を提供する。

環境アセスメントは、意思決定を行う前に、意思決定により生じる環境影響について考慮することを確実にするための手続きである。この影響評価プロセスには、起こりうる環境への影響を調べる分析プロセスが含まれている。環境と生物多様性は表裏一体の関係にあるが、環境アセスメントを行えば、生物多様性のすべての側面を自動的に調べることができるわけではない。多くの国が、環境影響評価に関する法律上の措置を定めている。

環境アセスメントの種類

原則として、環境アセスメントは、ダム、高速道路、空港、工場などの個別のプロジェクト(「環境影響評価」)や、計画、プログラム、方針(「戦略的環境アセスメント」)に対して用いることができる。同時に、環境アセスメントは、産業一般(あらゆる産業に適用できる)に対してでも、もしくは特定の産業部門に対象を絞ってでも行うことができる。

環境影響評価(EIA)への生物多様性の統合

環境アセスメントに生物多様性に関連する配慮をより一層統合することが、ここ数年注目を集めている。生物多様性条約のもと、生物多様性を包含した環境影響評価(EIA)や戦略的環境アセスメント(SEA)についての自主ガイドラインが設計されている。18)

環境影響評価

これらのガイドラインにおいて、EIA(環境影響評価)の定義は以下の通りである。“環境影響評価とは、目的とする計画や開発について、相互に関係がある社会経済的影響、文化的影響、人の健康への影響の観点で、利益と不利益の双方を考慮に入れながら、起こる可能性が高い環境への影響を評価する手続き(プロセス)である。”

これらのガイドラインによると、環境影響評価の基本的構成要素は次の段階に分けられる。

a.�スクリーニング(ふるい分け):どの計画または開発に対し、包括的もしくは部分的な影響評価が必要かを決めること。

b.�スコーピング(対象範囲のしぼり込み):生物多様性への悪影響を回避・緩和・補償する代替案を特定し(この中には、開発を中止する、影響を回避するために設計や立地場所の代替案を見つける、悪影響への補償を提供する、などの選択肢が含まれる)、影響評価の基準条件を導き出すため、どの影響を調査対象とすべきかを(法的要求事項、国際条約、専門的知見、市民参画に基づいて)特定すること。

c.�影響の評価と代替案の開発:詳細で綿密な代替案を含めて、提案された計画や開発により起こり得る環境影響を予測し、特定すること。

d.�報告:環境管理計画(EMP)と一般向けの要旨を含む環境影響評価書(EIS)もしくは環境影響評価報告書が該当する。

e.�レビュー:基準条件(スコーピング)と市民参画(専門家を含む)に基づいた環境影響表明書の見直し。

f . �意思決定:計画に賛成するか否か、およびいかなる条件のもとでか、についての意思決定。g.�監視、遵守、施行、環境監査:予測され

た影響や提案された緩和策が環境管理計画で明示された通りになっているかどうかを監視し、環境管理計画を遵守していることを検証し、予測できなかった影響や緩和策の失敗を特定し、タイムリーに対処することを確実にすること。

18) http://www.biodiv.org/doc/publications/imp-bio-eia-and-sea.pdf (英語)  http://www.biodiv.org/doc/publications/cbd-ts-26-fr.pdf (フランス語)  http://www.biodiv.org/doc/publications/cbd-ts-26-es.pdf (スペイン語)

生物多様性への影響の評価

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これらのガイドラインは、生物多様性の問題がどのように組み入れられるかを、各段階で次のように考慮している。

サブa.スクリーニング(ふるい分け)生物多様性に関する基準は、スクリーニングの基準の中に含まれるべきである。そうでないと、生物多様性への潜在的に重要な影響に関する提言が選別されて除かれる危険性がある。生物多様性の項目を含むスクリーニング基準には、次の項目が関連しているかもしれない。・�生物多様性に影響を与えることが知られ

ている活動の種類。これには影響を与えている地域の大きさや、活動の規模や期間や頻度に関する閾値も含む。

・ 活動の結果生じた生物・物理的変化の規模。・ 生物多様性にとって重要な地域を示す地

図で、当てはまる場合には、その地域の法的な位置付けも記載されているもの。

サブb.スコーピング(対象範囲のしぼり込み)もし、計画のスクリーニングで、提案されている活動が、生物多様性に潜在的な悪影響を与える可能性があることが特定された場合、(影響調査の基準条件を導き出すために)下記の項目について取り組むとよいだろう。・ 計画の種類の説明。例えば、性質、規

模、場所、時期、期間、頻度など。・ 規模、配置、敷地、場所、技術に関し

て、選択可能な代替案を特定する(影響調査の実施前に、直ちに代替案を特定することはできないかもしれないが)。

・ 計画している活動の結果生じると予期される生物・物理的変化(土壌や水や大気や動植物)、およびそれらの変化から派生する社会・経済的変化によって誘発される生物・物理的変化についての説明。

・ それぞれの生物・物理的変化の影響の空間的・時間的規模の決定。

・ 生物・物理的変化の影響範囲内にある生態系および土地利用の形態に関する説明。

・ 個々の生態系や土地利用の形態毎に、生物・物理的変化に起因する生物多様性へ

の潜在的な悪影響についての評価。・ 影響を受ける地域に関して影響がない場

合の基準となる状態についての情報と、計画されている活動が行われなかった場合の生物多様性に関して予想される動向についての情報の収集。

・ ステークホルダーとの協議による、影響を受ける生態系または土地利用の形態により生み出される現在および潜在的な生態系サービスの特定と、それらの生態系サービスまたは土地利用形態の社会にとっての価値の決定。

・ 計画中の活動によって著しい影響を受ける生態系サービスの特定。

・ 生物多様性を高めるか、もしくは生物多様性および/または生態系サービスに与える著しい損傷を回避し、最小化し、埋め合せるための可能な対策の特定。

・ ステークホルダーとの協議による、考えうる様々な代替案のもとで予測される影響の重要性の評価。

・ 知識の重大な欠如および、意思決定を支援するのに要する情報を収集する上で必要な調査の特定。

・ 必要な方法論および時間的尺度についての詳細な情報の提供。

サブc.影響の評価と代替案の開発環境影響評価(EIA)のこの段階は、影響の評価と代替案の再設計を含んでいる。課題には以下のことが含まれよう。・ 間接的かつ累積的な影響や起こりそうな

因果関係の連鎖の特定を含めて、環境影響評価(EIA)の前の2つの段階で特定された潜在的な影響の性質についての理解を精緻化する。

・ 意思決定に関する基準の特定および説明。・ 影響の評価結果や緩和措置、強化措置、

補償措置についての配慮と共に、代替案を検討し再設計する。

サブd.報告計画されている活動により生じる潜在的な影響について報告することは、次の人々の助けとなる。

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・ 残っている潜在的な悪影響を除去もしくは最小化するような方法で、活動を計画し、設計し、実施している組織。

・ 計画されている活動で実施してよいかどうか、および実施する場合に適用されるべき条件を決定する権限を有する当局。

・ 影響の範囲を理解し、計画されている活動へコメントする機会を得る市民。

サブe.レビュー(見直し)レビューは第三者により行われることが望ましいが、環境影響評価(EIA)が十分かつ技術的に正確な情報を提供していることを保証するのに役立つ。このことは別にしても、レビューでは、とりわけ次の事項についての評価を行うべきである。・ 潜在的な影響は、環境の観点から受け入

れられるか。・ 関連する基準や方針が遵守されているか。・ 計画されている活動について、間接的、累

積的な影響を含めて、すべての関連する影響が特定され、適切に対処されているか。

・ すべてのステークホルダーの関心事や意見が、適切に考慮されているか。

サブf.意思決定活動を中止するかまたは承認するかについての最終決定に至るまで、意思決定は環境影響評価(EIA)のすべての段階で行われる。意思決定に生物多様性の観点を組み込むためには、生物多様性を考慮に入れる明確な基準が開発されることが重要である。最終意思決定は、生物多様性のみを考慮して行われるべきではないが、経済的、社会的、生態学的側面への対応はもちろん、生物多様性の保全と持続可能な利用をうまく両立させることを模索するべきである。

サブg.監視、遵守、施行、環境監査この段階は、活動後の実際の影響と実施前の予測とを比較することに役立つ。加えて、環境管理計画が遵守されているかを検証するのに役立つ。

戦略的環境アセスメント(SEA)

生物多様性を包含した戦略的環境アセスメント(SEA)19)のガイドラインは、以下の点から、SEAに生物多様性の観点を統合

することに組織は注意を向けるべきであるとしている。・ 法的または国際的義務。法的義務の例: ―保護地域、保護種 ―価値のある生態系サービス ―国際協定、国際条約、国際合意 ― 先住民や地域社会が伝統的に占有

または使用してきた土地や水域・ステークホルダーからの指摘の促進・ 生活手段の保護措置・健全な経済的意思決定・ 累積的な生物多様性への影響・ 将来の機会のために進化の遺伝的基盤を

維持すること

戦略的環境アセスメント(SEA)では、生物多様性は、生物多様性によって提供される生態系サービスの点から定義されている。組織は、自らの方針・計画・プログラムを分析することで生態系サービスへの潜在的な影響を評価することができる。方針・計画・プログラムが、生物多様性に潜在的な影響を与えるかを判断するためには、次の2つの要素が重要となる。1. 影響を受けている地域と、この地域に関

連する生態系サービス2. 生態系サービスに変化をもたらす要因と

なりうる計画されている活動の種類

生物・物理的、社会的影響を引き起す人間による干渉(活動)は、生物多様性と関連する生態系サービスに変化を引き起す直接的要因であることが知られている。変化の間接的要因は、生態系サービスに影響を与える可能性がある社会的変化である。

方針・計画・プログラムの評価を行う際は、組織はその活動が生態系サービスに対して、その構成の変化、その構造の変化、またはその重要なプロセスの変化に影響を与えるかどうかを特定すべきである。加えて、間接的影響もこの手法を用いて評価されるべきである。

19) https://www.biodiv.org/doc/reviews/impact/SEA-guidelines.pdf

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謝 辞

ワークショップの主催者• Instituto Ethos• Fundación Getulio Vargas• F&C Asset Management

ステークホルダーからの情報提供下記の企業、業界団体、NGO、メディア、学会、財団・基金、公的機関からの有志から、本書の内容に対して多大な貢献をいただいた。

アドバイザリーグループのメンバー• Peter Coombes, Anglo American• Henk Simons, IUCN Netherlands• Ian Dutton, The Nature Conservancy• Peter Nelson, Eskom• Ismid Hadad, Kehati• Robert Barrington, F&C Asset Management• Madeleine Garlick, DEFRA Department for Environment Food and Rural Affairs• Richard Caines, International Finance Corporation• Terry Vogt, Gordon and Betty Moore Foundation• Nicolas Bertrand, CBD• Erica Dholoo, IPIECA International Petroleum Industry Environmental Conservation

Association

ワークショップ参加者• Ms. Mary Allegretti, Amapaz• Ms. Daniela Gomes Pinto, Amigos da Terra• Ms. Helene Marcel, Beraca Ingredients• Ms. Maria Tereza F. R. de Campos, Camargo Corrêa• Ms. Isabella Freire, Conservação Internacional• Mr. Canhos Vanderley, CRIA• Ms. Cristiane Derani, Derani Advogados• Ms. Cristina Simonetti, ERM• Mr. Ângelo Santos, FBDS• Ms. Carmen Weingrill, FGV-CES• Ms. Rachel Biderman, FGV-CES• Mr. Fabio Feldman, Fórum Paulista de Mudanças Climáticas Globais e de Biodiversidade• Ms. Maria Cecília Wey Brito, Fundação Florestal• Mr. AndréRocha Ferretti, Fundação O Boticário• Mr. Frank Guggenheim, Greenpeace• Mr. John Butcher, Instituto Ethos de Empresas e Responsabilidade Social• Ms. Suzana Pádua, Instituto de Pesquisas Ecológicas (IPE) • Mr. Ricardo Valente, Instituto Totum• Ms. Karla Aharonian, Leo Madeiras• Ms. Maura Campanilli, Maura Campanilli• Mr. Bráulio Ferreira de Souza Dias, Ministério do Meio Ambiente• Mr. Ricardo Martello, Natura• Ms. Maria Claudia Grillo, Petrobrás• Mr. Clayton Lino, Reserva da Biosfera da Mata Atlântica• Mr. Joaquim Machado, Syngenta

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• Ms. Sonia Loureiro, Sonia Loureiro• Ms. Ana Cristina, Barros, TNC• Mr. Estevão do Prado Braga, WWF• Ms. Helio Hara, WWF• Mr. Samuel Barreto, WWF• Mr. Marcelo Vespoli, Takaoka, Y. Takaoka Empreendimentos• Ms. Glaucia Terreo, Instituto Ethos• Ms. Anna Lucia de Melo Custodio, Instituto Ethos• Mr. Richard Caines, IFC• Mr. Nick Bertrand, CBD Secretariat• Mr. Robert Barrington, F&C Asset Management• Mr. Hubald Ark, Rabobank• Mr. Andrew Parsons, ICMM• Mr. Dave Richards, Rio Tinto• Ms. Erica Dholoo, IPIECA• Mr. Toby Croucher, BP• Mr. Roberto Smeraldi, Amigos de la Terra• Mr. Ismid Hadid, Kehati• Mr. Henk Simons, IUCN Netherlands• Ms. Giulia Carbone, IUCN• Ms. Madeleine Garlick, DEFRA Department for Environment Food and Rural Affairs• Ms. Tamara Miller, DEFRA Department for Environment Food and Rural Affairs• Mr. Arthur Eijs, Dutch government• Ms. Marni Robinson, HSBC• Mr. Mark Eckstein, Sustainable Finance• Mr. Ben Vivian, HOLCIM• Mr. Ian Emsley, Anglo American

監 修

後藤 敏彦(サステナビリティ日本フォーラム代表理事)

足立 直樹(理学博士、株式会社レスポンスアビリティ 代表取締役、サステナビリティ日本フォーラム運営委員)

松尾 敏行(株式会社リコー 社会環境本部スペシャリスト、サステナビリティ日本フォーラム運営委員)

制作関係者

翻訳ディレクター&翻訳:荒木 茂善(株式会社クレアン)

翻 訳:永石 文明(株式会社クレアン)

    古谷 昌史(株式会社クレアン)

    藤井 聡子(株式会社クレアン)

和訳版発行:2008年4月 サステナビリティ日本フォーラム

       http://www.sustainability-fj.org/

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