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CASE STUDY 中央工科デザイン専門学校keyrise.jp/topics/147_Chuokoka_DS_022212.pdf ·...

Date post: 24-Aug-2020
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CASE STUDY 2012年1月作成 日本のものづくりを支える人材をSolidWorksで育成 CAD操作から「ものづくりの考え方」へ至る総合教育に成功 群馬県前橋市の中央工科デザイン専門学校は、日本のものづくりを支える「若きプロフェッショナル」 の育成を目指して、3次元CAD教育に力を入れている。このメカトロニクス学科 3DCAD技術者コー スでは、教育ツールとしてSolidWorksを採用したことで、CAD操作習得に多大な時間を奪われる ことなく、3次元モデリングから、解析、ものづくりの考え方まで総合的な教育を行うことに成功した。 2年間の教育によって、3次元CAD利用技術者試験1級の資格とともに、「3次元モデリングのDNA」 を身につけた同校卒業生たちは、企業の第一線で活躍しながら、明日のものづくりをしっかりと支え ていく。 「ものづくり教育主眼」が全校コンセプト 1998年に設立された中央工科デザイン専門学校は、全校コンセプトとして「創る 造る 作る」(Creation Product Making)を掲げ、多様な角度からものづくり教育に取り組んでいる。学科は、デジタルデ ザイン学科、メカトロニクス学科、テクニカルエンジニア学科の3学科。実践的な教育が特徴であり、 全卒業生に対する就職率97.2%を誇る。 「 当 校 は、2 0 0 5 年 、『も の づくり』という全 学コンセプトを 打 ち 出して 、学 科・コ ー スを 再 編 成し 3DCADを導入、2008年からメカトロニクス学科に3DCAD技術者コースを新設しました」と、教 務部 統括部長の五十部(いそべ)昌克先生は紹介する。 「ものづくり」をコンセプトにしたのは、これまで日本が蓄積してきた貴重なものづくりの技術を、若 い世代へ確実に継承させたいという強い思いがあったからだ。 「企業が求める3次元CAD技術者」を育成するSolidWorks 2005年当時、ものづくりを主眼にして機械系デザインへ注力することになり、多くの企業にヒアリ ングしたところ、欲しい人材は「3DCAD技術者」であり、「3DCAD技術者なら何人でもほしい」と いう答えを多数得た。 そこで、3DCAD技術者コースを新設することを決断。教育ツールとなる3次元CAD選びが始まった。 評価項目としては、「価格」、「企業での普及率」と「将来性」、「操作性」を重視した。 「専門学校は全員にしっかりした技術を身につけさせることが大切ですから、1人1台環境が必須。 その視点で見たとき、ハイエンド3次元CADは高価すぎますし、パソコン環境の整備にも多大なコス トがかかります。そこでミッドレンジ製品に目を向けると、企業で最も多く使われており、操作性もよ いのが、SolidWorksでした」(五十部先生)。 指導する先生方も短期間で新しいソフトを身につけなければならないなか、SolidWorksは日本語 の教材が市販されていたことも大きな評価ポイントとなった。 非常勤講師として教師陣に加わった木村昇先生も、SolidWorksを高く評価する。 「SolidWorksは、開発の構想段階からWindowsとの親和性の高さを追求しており、これが操作性 のよさとして表れています。パラメータ設定も楽なので、学生にはとっつきやすい。SolidWorksな ら、操作教育に多大な時間をとられることなく、3次元設計やものづくりの考え方を教えるほうへ時 間を確保することができるのです。つまりCADの操作に習熟するだけではなく、『3次元モデリング のDNA』を持った人材を育成できるのです」と語る。 さらに五十部先生は、「SolidWorksは『クセが少ない』のも魅力だという。ある卒業生が就職した 企業ではCATIAを使っていましたが、1週間で使えるようになって周囲を驚かせました。」と語る。 現在では、CAD室の21ライセンスを中心に、合計36ライセンスをさまざまな形で活用している。 解析や自由課題の卒業研究でもSolidWorksを活用 2年制のメカトロニクス学科には、総勢20名が所属している。 カリキュラムは、1年生では、社団法人コンピュータソフトウエア協会が主催するCAD利用技術者試 験制度を活用して、2次元および3次元CADの2級、1級(準1級)取得を目標としながら、設計の基 礎知識を広範囲に身につける。教材には、木村先生が書いた単行本「はじめての3次元CAD  SolidWorksの基礎」(共立出版)を用いている。ちなみに、取材した2011年12月時点で、学生の 75%が3次元CAD利用技術者1級まで取得済みであり、合格率はきわめて高い。 2年生になると、解析、材料力学など、専門知識を深めていく。 そして2年生後期に学生が楽しみにしているのが、卒業研究だ。 卒業研究は、主にSolidWorksを活用して機械系設計に取り組む。 中央工科デザイン専門学校(群馬県前橋市古 市町1丁目48-1)は、中央カレッジグループに 所属するものづくり主眼の専門学校。同グルー プは、群馬県最大規模の専門学校グループ。 70年前に服飾学校として出発したが、現在では、 学校法人有坂中央学園と学校法人中央総合学 園で、専門学校9校を経営。合計で26学科69 コースを設けて、幅広い分野での若きプロフェッ ショナル育成に尽力している。 2011年、中央工科デザイン専門学校が創始した「第1回 3DCADモデリングコンテスト」で、最優秀賞を受賞した作品。 USBハブや携帯電話充電機能を備えた「多機能筆立て」を SolidWorksで設計した。 中央工科デザイン専門学校 操作性に優れ、学生に親しみやすい 操作教育を短時間で終えて、ものづくりの考え方などの総合教育に多くの時間を確保 企業での導入率が高いSolidWorksを習得した「いま社会が求めている3次元技術者」を育成 卒業研究、3DCADモデリングコンテストなど、学生の自主性を伸ばすカリキュラムやイベントを実施
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Page 1: CASE STUDY 中央工科デザイン専門学校keyrise.jp/topics/147_Chuokoka_DS_022212.pdf · 料の『3dcad体験講座』を開催しました」と五十部先生。 作品は、3次元モデルとしての完成度、デザイン性、機能性、独創性のほか、実際に製造可能かなど、

C A S E S T U D Y

2012年1月作成

日本のものづくりを支える人材をSolidWorksで育成 CAD操作から「ものづくりの考え方」へ至る総合教育に成功

群馬県前橋市の中央工科デザイン専門学校は、日本のものづくりを支える「若きプロフェッショナル」

の育成を目指して、3次元CAD教育に力を入れている。このメカトロニクス学科 3DCAD技術者コー

スでは、教育ツールとしてSolidWorksを採用したことで、CAD操作習得に多大な時間を奪われる

ことなく、3次元モデリングから、解析、ものづくりの考え方まで総合的な教育を行うことに成功した。

2年間の教育によって、3次元CAD利用技術者試験1級の資格とともに、「3次元モデリングのDNA」

を身につけた同校卒業生たちは、企業の第一線で活躍しながら、明日のものづくりをしっかりと支え

ていく。

「ものづくり教育主眼」が全校コンセプト

1998年に設立された中央工科デザイン専門学校は、全校コンセプトとして「創る 造る 作る」(Creation

Product Making)を掲げ、多様な角度からものづくり教育に取り組んでいる。学科は、デジタルデ

ザイン学科、メカトロニクス学科、テクニカルエンジニア学科の3学科。実践的な教育が特徴であり、

全卒業生に対する就職率97.2%を誇る。

「当校は、2005年、『ものづくり』という全学コンセプトを打ち出して、学科・コースを再編成し

3DCADを導入、2008年からメカトロニクス学科に3DCAD技術者コースを新設しました」と、教

務部 統括部長の五十部(いそべ)昌克先生は紹介する。

「ものづくり」をコンセプトにしたのは、これまで日本が蓄積してきた貴重なものづくりの技術を、若

い世代へ確実に継承させたいという強い思いがあったからだ。

「企業が求める3次元CAD技術者」を育成するSolidWorks

2005年当時、ものづくりを主眼にして機械系デザインへ注力することになり、多くの企業にヒアリ

ングしたところ、欲しい人材は「3DCAD技術者」であり、「3DCAD技術者なら何人でもほしい」と

いう答えを多数得た。

そこで、3DCAD技術者コースを新設することを決断。教育ツールとなる3次元CAD選びが始まった。

評価項目としては、「価格」、「企業での普及率」と「将来性」、「操作性」を重視した。

「専門学校は全員にしっかりした技術を身につけさせることが大切ですから、1人1台環境が必須。

その視点で見たとき、ハイエンド3次元CADは高価すぎますし、パソコン環境の整備にも多大なコス

トがかかります。そこでミッドレンジ製品に目を向けると、企業で最も多く使われており、操作性もよ

いのが、SolidWorksでした」(五十部先生)。

指導する先生方も短期間で新しいソフトを身につけなければならないなか、SolidWorksは日本語

の教材が市販されていたことも大きな評価ポイントとなった。

非常勤講師として教師陣に加わった木村昇先生も、SolidWorksを高く評価する。

「SolidWorksは、開発の構想段階からWindowsとの親和性の高さを追求しており、これが操作性

のよさとして表れています。パラメータ設定も楽なので、学生にはとっつきやすい。SolidWorksな

ら、操作教育に多大な時間をとられることなく、3次元設計やものづくりの考え方を教えるほうへ時

間を確保することができるのです。つまりCADの操作に習熟するだけではなく、『3次元モデリング

のDNA』を持った人材を育成できるのです」と語る。

さらに五十部先生は、「SolidWorksは『クセが少ない』のも魅力だという。ある卒業生が就職した

企業ではCATIAを使っていましたが、1週間で使えるようになって周囲を驚かせました。」と語る。

現在では、CAD室の21ライセンスを中心に、合計36ライセンスをさまざまな形で活用している。

解析や自由課題の卒業研究でもSolidWorksを活用

2年制のメカトロニクス学科には、総勢20名が所属している。

カリキュラムは、1年生では、社団法人コンピュータソフトウエア協会が主催するCAD利用技術者試

験制度を活用して、2次元および3次元CADの2級、1級(準1級)取得を目標としながら、設計の基

礎知識を広範囲に身につける。教材には、木村先生が書いた単行本「はじめての3次元CAD 

SolidWorksの基礎」(共立出版)を用いている。ちなみに、取材した2011年12月時点で、学生の

75%が3次元CAD利用技術者1級まで取得済みであり、合格率はきわめて高い。

2年生になると、解析、材料力学など、専門知識を深めていく。

そして2年生後期に学生が楽しみにしているのが、卒業研究だ。

卒業研究は、主にSolidWorksを活用して機械系設計に取り組む。

中央工科デザイン専門学校(群馬県前橋市古

市町1丁目48-1)は、中央カレッジグループに

所属するものづくり主眼の専門学校。同グルー

プは、群馬県最大規模の専門学校グループ。

70年前に服飾学校として出発したが、現在では、

学校法人有坂中央学園と学校法人中央総合学

園で、専門学校9校を経営。合計で26学科69

コースを設けて、幅広い分野での若きプロフェッ

ショナル育成に尽力している。

2011年、中央工科デザイン専門学校が創始した「第1回 3DCADモデリングコンテスト」で、最優秀賞を受賞した作品。USBハブや携帯電話充電機能を備えた「多機能筆立て」をSolidWorksで設計した。

中央工科デザイン専門学校

操作性に優れ、学生に親しみやすい

操作教育を短時間で終えて、ものづくりの考え方などの総合教育に多くの時間を確保

企業での導入率が高いSolidWorksを習得した「いま社会が求めている3次元技術者」を育成

卒業研究、3DCADモデリングコンテストなど、学生の自主性を伸ばすカリキュラムやイベントを実施

Page 2: CASE STUDY 中央工科デザイン専門学校keyrise.jp/topics/147_Chuokoka_DS_022212.pdf · 料の『3dcad体験講座』を開催しました」と五十部先生。 作品は、3次元モデルとしての完成度、デザイン性、機能性、独創性のほか、実際に製造可能かなど、

W W W . S O L I D W O R K S . C O . J P

〒108-0022 東京都港区海岸 3-18-1 ピアシティ芝浦ビル TEL.03-5442-4001(代表) FAX.03-5442-6256(代表) E-mail:[email protected] URL:http://www.solidworks.co.jp

ソリッドワークス・ジャパン株式会社

SolidWorksは米国ソリッドワークス社の登録商標です。 また、それ以外に記載されている会社名及び商品名も各社の商標又は登録商標です。 SWJ-CSD-147-0112

2年生後期の卒業研究で、あるグループが設計・製作した電気自動車。 SolidWorksで設計し、ホームセンターで購入した木材や釘を使って作り上げた。

例えば、2~3人でグループを作り、ロボットや飛行機などのプラモデルを買ってきて、部品を計測し、

So l i dWo rksに入力して設計するのだ。その際、プラモデルは実物を縮小したものだが、

SolidWorks上では実物大の設計を行う。実物大にすれば誤差が出て干渉なども生じるので、それ

はなぜか、どこをどう直せばよいのか、どうすれば動くようになるのか、学生自身に考えさせるので

ある。また、グループでテーマを相談して決めることから始まり、締め切りに間に合うようなスケジュー

ルの立て方、仕事の分担、コミュニケーション力など、さまざまなノウハウを学ぶ。

昨年は、オリジナルの電気自動車設計をテーマに据えて、実物大で動くものを木工で作り上げたグルー

プもあった。

「電気自動車を作りたいと相談されて、『お金をかけずに作る方法を考えてごらん』とアドバイスした

ら、ホームセンターへ行って木材を買ってきたのには驚きました。苦労していましたが、最後には、人

間の重量を支えて動くものをちゃんと作り上げました」と五十部先生は目を細める。

「ホームセンターへ行っても、ものづくりが目的だと、木材やネジ・金具などの部材を選ぶ目の色が違

います。予算が限られているので、コストをかける部分とかけない部分を自分たちで厳しく切り分け

ていました。最後には学生のほうから、『低コスト、短納期、高品質を意識したものづくりを学べました』

と言ってくれて、うれしかったですね」と木村先生は語る。

学生のモチベーションを高める「モデリングコンテスト」を創始

2011年、中央工科デザイン専門学校は、「3DCADモデリングコンテスト」を創始した。同校学生の

みならず、県内外の高校・高専・専門学校の生徒・学生に広く門戸を開き、SolidWorksをはじめとす

る3次元CADで設計した作品を総合的に評価するコンテストをスタートさせたのである。

発案したのは、コンテストという目標があると生徒の士気が上がり、技術も大きく伸びるからだ。一般

の高校生、高校の先生に、3次元CADをもっと周知してもらうために、イベントとして盛り上げたいと

いう思いもある。

第1回は、「楽しいオフィス機器」をテーマに、6月30日から9月2日の約2カ月間を応募期間として

実施。筆立て、椅子、電気スタンド、カッター、USBブロックなど、内外から40作品の応募を得た。

「幅広い高校生からの作品を募りたかったので、広報に苦労しました。また、挑戦したくても

SolidWorksを持っていない学校もあります。そこで、夏休みには、当校以外の高校生を対象に、無

料の『3DCAD体験講座』を開催しました」と五十部先生。

作品は、3次元モデルとしての完成度、デザイン性、機能性、独創性のほか、実際に製造可能かなど、

多面的な角度から評価し、総合的に優れたものを表彰した。

「思った以上によい作品がたくさん寄せられました。また、夏休みにも自主的にCAD室へ通い、真剣

に取り組む学生たちの姿には驚かされました」と木村先生は振り返る。

中央工科デザイン専門学校は今後も、「いま社会から求められている技術」および「これからのもの

づくりの中核となる3次元設計の考え方」を学生たちに確実に身につけてもらうために、さまざまな

SolidWorks活用へチャレンジしていく方針である。

チャレンジ:中央工科デザイン専門学校は、時

代のニーズに機敏に対応しながら、コースを充

実させてきた。2012年度は、デジタルデザイ

ン学科に「プロダクトデザインコース」を新設

する。

これはデザイン系のコースであり、教材に何を

使うか、先生方は慎重に検討した。

ソリューション:まず先駆けとして、現在のメカ

トロニクス学科3DCAD技術者コースの学生

たちに、SolidWorksを使ってプロダクトデザ

インの作品を作らせてみたところ、優れた作品

をきちんと作り上げることができた 。

Illustratorを使っての仕上げは先生方が担当

したが、見栄えもなかなかよい。

そこで、次年度新設の「プロダクトデザインコー

ス」でも、教材にはSolidWorksを採用するこ

とに決定したのである。

http://www.chuo.ac.jp/cit/

学校法人有坂中央学園 中央工科デザイン専門学校

所在地:群馬県前橋市古市町1丁目48-1

教務部 統括部長 五十部 昌克先生

非常勤講師 木村 昇先生 (キーライズテクノ 代表)

「第1回 3DCADモデリングコンテスト」最優秀賞作品のレンダリング画像。中央工科デザイン専門学校のメカトロニクス学科1年生が受賞した。電卓、携帯ホルダーはスライドして格納可能。ペンホルダーは回転、LEDライトは上下スライド可能。

「第1回 3DCADモデリングコンテスト」最優秀賞作品は、3次元プリンターによる造形の栄誉を得た。

卒業研究で作り上げた「木工電気自動車」は、人を乗せて走ることができた。


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