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我々の太陽saio/Astronomy/chap3.pdfに薄く、地球表面付近の密度(1:2 10 3g cm の3)...

Date post: 07-Feb-2021
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3 我々の太陽 M = 1.989 × 10 30 kg R = 6.96 × 10 5 km ρ = 1.41 g cm -1 ρ c= 1.5 × 10 2 g cm -3 g = 274 m s -2 25 ( ) 29 (60 ° ) = 2 km s -1 (Luminosity; されるエネルギー) L = 3.85 × 10 26 Js -1 ( ) T eff = 5.78 × 10 3 K T c= 1.55 × 10 7 K * S = 1.37 kW m -2 V = m V = -26.74 M V = 4.82 M bol= 4.75 (B - V ) = 0.68 (U - B) = 0.17 スペクトル = G2 V * に太 から るエネルギー くて 々に するこ きる ある。太 ガスから り、 からヘリ ムが される核 によってエネルギーが している。そ エネ ルギー から されるエネルギーが っていて、 して に安 っている。太 から 46 したこ がわかっている。 されている。太 する して が一 ある。 3.1 太陽の大気 3.1.1 太陽の光球 される太 れる。 いって 6000 ° K ガス ある。 より から する されてしまうため、太 てこ い。 から雲を ろした きに雲 」が える ある。 から しているが、そ く、 (1.2 × 10 -3 g cm -3 ) 3 しか い。 ( ) るために 、太 スペクトルを る。スペクトル さを した ある ()ペクトル に対 する スペクトル 、多 から る。 3-1
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  • 3 我々の太陽

    太陽諸定数質量 M⊙ = 1.989× 1030 kg半径 R⊙ = 6.96× 105 km平均密度 ρ⊙ = 1.41 g cm

    −1

    中心密度 ρc⊙ = 1.5× 102 g cm−3表面重力加速度 g⊙ = 274 m s−2

    自転周期  ≈ 25 日 (赤道) ∼ 29 日 (緯度 60°)赤道自転速度 = 2 km s−1

    光度 (Luminosity;毎秒放出されるエネルギー) L⊙ = 3.85× 1026 J s−1有効温度 (光球の温度) Teff = 5.78× 103 ◦K中心温度 Tc⊙ = 1.55× 107 ◦K太陽定数 ∗ S = 1.37 kW m−2

    実視等級 V⊙ = mV⊙ = −26.74絶対等級 MV⊙ = 4.82全輻射絶対等級 Mbol⊙ = 4.75色指数 (B − V )⊙ = 0.68色指数 (U −B)⊙ = 0.17スペクトル型 = G2 V

    ∗ 地上で単位面積単位時間に太陽から受け取るエネルギー量

    地上の全ての生物の生命維持になくてはならない我々の太陽は、我々に最も近い恒星で、表面の詳細な構造を観測することのできる唯一の恒星である。太陽は高温のガスからなり、中心付近では水素からヘリウムが合成される核融合反応によってエネルギーが発生している。そのエネルギーと表面から放出されるエネルギーが釣り合っていて、全体として長期間非常に安定な構造を保っている。太陽の年齢は、地球上の最も古い化石、岩石の年代測定などから約 46億年前に誕生したことがわかっている。上の表には太陽の諸定数の一部が記されている。太陽の諸量を記するのに⊙を添字として表すのが一般的である。

    3.1 太陽の大気

    3.1.1 太陽の光球

    可視光で観測される太陽表面は光球とよばれる。表面とはいっても固体表面ではなく温度 6000°Kのガスである。光球より内側から出た光は、光球に達する前に吸収されてしまうため、太陽の外には直接出てこない。飛行機から雲を見下ろしたときに雲の「表面」が見えるのと同じ原理である。光球層は内部からの光を全て吸収しているが、その密度は非常に薄く、地球表面付近の密度 (1.2× 10−3g cm−3)の3千分の1程度しかない。

    太陽 (恒星)の光球の温度を知るためには、太陽光のスペクトルを分光器で得る。スペクトルは各波長での光の強さを表したものである (右図)。恒星のスペクトルは、光球温度に対応する黒体放射に近い連続スペクトルと、多数の吸収線からなる。

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  • 太陽の連続スペクトルは、約 6000°Kの黒体放射のスペクトルに近い。我々はこのスペクトルの光のもとで進化してきたので、我々の目は黄色い光に敏感である。吸収線は光球よりも外側にあるガスを構成する原子、イオン中の電子が特定のエネルギーの光を吸収することにより形成される。太陽の光球には黒点が観測され、より解像度の高い観測では、黒い縁で囲まれた粒状の模様

    (粒状斑)がみられる。黒点の大きさは大小様々で、地球の直径を大きく上回るものもまれではない。黒点は中心部の暗部と周辺の半暗部からなる。黒点には強い磁場が存在し、太陽表面下で熱の輸送を担っている対流運動が妨げられ、下からの熱の輸送が妨げられるため、黒点では周りよりも温度が2千度程度低くなっている。そのため黒点は黒く見える。中心部の暗部は磁力線がほぼ表面に垂直で磁力線の密度が高く、半暗部では磁力線が広がっていて磁力線の密度が低くなっている。

    黒点に強い磁場が存在することは、一つの吸収線がゼーマン効果によって分裂することからわかる。右の左側のパネルは黒点の拡大写真で、縦に走る黒い細い直線はスリットをあらわし、そこから分光器に光が投入される。右のパネルは、スリットから入った光を分光し吸収線の付近の波長に対する光の強度を表したものである。縦方向は左のパネルの写真の位置に対応し、横方向が波長を表す。黒点の部分の吸収線が分裂しているのがみてとれる。 M.E. Seeds (2001)

    黒点はペアで現れ、一つの黒点から出た磁力線は、一方の黒点を通過して内部に入る。逆に言えば、磁力線の束が表面に出る場所と内部に戻る場所が黒点のペアになる。従って、磁力線の出て行く場所の黒点は磁場の N極であり、もう一方は S極となっている。

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  • 一つの粒状斑の地球から見た視直径はおよそ1角度秒、実直径はやく千 km程度で、寿命は 10分程度で消滅、出現が起こっている。一つの粒状斑で、中心部が明るく縁が暗いのは、中心部の温度が縁に比べて 300度ほど高いためである。また、スペクトル線のドップラー効果による波長のずれの観測により、粒状斑の中心部はガスが浮き上がってきており、逆に縁では沈みつつあることがわかっている。このことから粒状斑は、温度の高いガスが上昇し、温度の低くなったガスが下降する対流 (convection)現象を上から見ている現象であると理解する事ができる。

    3.1.2 彩層 (Chromosphere)

    彩層は光球のすぐ上にある厚さ 2000km程度の層であり、温度は光球との境界あたりが最低で、彩層の中では上に向かって温度が上昇している。光球よりも高温ではあるが、密度が非常に小さいため彩層から出る光は光球からの光に比べて格段に弱い。通常は彩層の光は見られないが、日食の際に光球が月によって隠される際に、ピンク色に輝いて観測される。それが彩層の名前の由来である。彩層の構造は、水素のバルマーα吸収線 (Hα)の中心付近の狭い波長域だけを通すフィルター、または紫外線の観測によって知る事ができる。前者の場合、Hα吸収線の波長では非常にガスによる光の吸収が非常に強いため、光球からの光は吸収されてしまってそれより外側にある彩層の光だけが我々に届くからである。紫外線は 6000度の光球からは殆ど放出されず、温度の高い彩層からの紫外線が強いからである。

    彩層には二つの黒点を結ぶ磁力線のループが存在し、そこにとらえられたガスがプロミネンス(上から見るとフィラメント)といわれる構造を作る。プロミネンスには静的なプロミネンスと噴出的 (eruptive)プロミネンスとがある。静的プロミネンスは何日間も存在し、ガスが磁力線に沿って降りてくる場合もある。噴出的プロミネンスでは、黒点からガスが吹き上げられ、数時間上部に滞在して降りてくる。また、光球との境界付近には、針の林立したような構造、スピキュールが観測される。それ

    らは、彩層下部から上部に向かってガスが噴き出している構造だと考えられている。一つのスピキュールの寿命は 5 ∼ 15分である。

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  • いくつもの黒点が集まっている場所では、黒点を貫く磁力線のループが複雑にからまり、方向の異なる磁力線が reconnection (つなぎかえ) を起こして非常に大きなエネルギーが発生するフレアという現象がおこる。(そのように黒点が数多く集まっている領域は活動領域といわれる)

    フレアは、数分で最も盛大な現象となり、一時間程度でおさまっていく。フレアによって、多量のX線、紫外線、可視光が放出されると同時に、高エネルギーの電子、陽子が放出される。大きなフレアが発生すると地球にも影響が及ぶ。地球の電離層が乱されて、短波による通信が阻害される。また、フレアで放出された電子、陽子の一部は地球付近で地磁気にとらえられ、地球の磁力線に沿って移動してゆき磁極付近で地球の大気と衝突する。それによって上層の大気粒子が高いエネルギーに励起され、それらがもとの低いエネルギーに戻る際に発する光がオーロラである。 また、大量の荷電粒子が移動する (電流が流れる)ことにより、地球磁場が乱されて磁気嵐が発生する。

    3.1.3 コロナ

    太陽大気の最も外側に広がっているのがコロナである。コロナの温度は百万度以上であるが、ガス密度が非常に小さいので、肉眼では皆既日食の際にしか見えない。高温であるために、エネルギーの高い遠紫外線、X線を主に放出する。これらは地球大気に吸収されてしまうので、紫外線、X線の観測は人工衛星による大気圏外から行われる。コロナがなぜ光球の温度よりも格段に大きな温度を持っているかについては、詳細はまだ議論がなされているが、太陽内部からコロナにいたる磁力線によって磁場のエネルギーが内部からコロナに伝えられてそこで解放されるために、コロナが高温になっていると考えられている。

    皆既日食時に観測された太陽コロナ (NASA)

    コロナからの質量放出:コロナにおけるガスの分布は一様でなく、磁力線の影響を強く受けている。磁力線がループとなって閉じている場合は、ガスが閉じ込められているので比較的密度が高い。しかし、コロナの中には磁力線が放射状になっていて閉じてない場所があり、そこではガスが妨げられることなく空間に放出されるので、そこではガスの密度が非常に低くなっており、その部分はCoronal hall ともよばれる。また、コロナの空間分布は時間的にも一様でなく大規模なフレアによってガスが放出される現象も起こる (右図)。このように、コロナからガスがでてゆくので、太陽は平均として年間 10−14M⊙(3× 10−9地球質量)の質量を失っている (太陽風)。太陽の年齢は、4.6× 109年なので、これまでおおよそ、地球質量の 10倍程度の質量を失ってきたことになる。 コロナから質量が放出される様子 (太陽本体は

    隠されている: SOHO衛星による観測)

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  • 3.2 黒点周期

    太陽黒点数の年平均の変化。 最近の黒点数周期 (credit; NASA)

    太陽面上に見られる黒点数は一定ではなく、11年周期で増減する。この現象を黒点周期という。太陽黒点の存在はガリレオの時代 (17世紀)から知られていたが、黒点数に 11年の周期がある事は、1843年にアマチュア天文家の Samuel Heinrich Schwabe によって発見された。黒点が多数現れる期間は、太陽面活動の活発期で大きなフレア等が多発する。原因は明らかにされていないが、各黒点周期の最大黒点数はサイクル毎に異なり、長期変動

    を示す。特に、1645–1715年の 30年間は黒点がほとんど観測されず、マウンダー極小期といわれる。その時期は、小氷河期と言われる、北ヨーロッパで厳寒の冬が続いた時期と一致しており、地上の平均気温と太陽黒点数との関連が推測されている (ダルトン極小期では平均気温が 1℃下がったといわれている)が、まだ明らかではない。また、近年の3周期の黒点数の極大値が急激に減少しており (上右図参照)、マウンダー極小期の再来?かもしれないという説もある。

    一つの黒点周期の期間内で太陽面上黒点の現れる緯度領域が変化する。周期の始まりの黒点数の少ない時期には、黒点は比較的高緯度領域に現れる。時間とともに黒点の出現する緯度領域が赤道に近づいてゆき、黒点周期の末期では赤道付近に出現する。黒点の発生した緯度を時間に対してプロットすると右図のような蝶の羽のような図となり、(Mounder)バタフライ ダイアグラムとして知られている。

    黒点はほぼ東西に並ぶペアとして現れ、その磁場の極性はNとSのペアとなっている。

    3-5

  • これは、この二つの黒点を貫く磁力線が光球より上部でつながっていてループとなっていると理解できる。N極の黒点がペアの東側であるか西側であるかの順序は、半球内では同じであるが、北半球と南半球ではその順序が逆となっている。さらに、おもしろいことに、その順序は黒点数の 11年周期ごとに逆転する。したがって、黒点の極性まで考慮すると黒点周期は 22年であるといえる。

    この現象にを説明するモデルが右図である。黒点周期の初期は磁力線がほぼ南極から北極方向に並んでいる。磁力線はガスと一緒に移動する性質をもっている。太陽の自転は赤道ほど速く両極で遅くなっているので、時間が経つにつれて磁力線が巻き付く。磁力線が強く巻き付いて磁力線の密度が高くなるとガスの密度が小さくなり軽くなるという性質があるので、強く巻き付いた部分が光球の上に浮き上がって黒点のペアとなる。そのような黒点のペアが数多く出来、フレアを数多く起こし磁場のエネルギーが散逸してゆき磁力線が初期の状態に戻って、1周期が終わる。

    3.3 太陽の5分振動

    太陽表面の各点での速度の時間変化を観測すると、周期が5分程度の振動をしていることが、1960年頃から知られるようになった。それは太陽5分振動とよばれ、その数多くの振動数の精密な観測から太陽内部の状態を「計測」する日震学 (Helio-seismology)が発達した。

    右の図は、人工衛星 (SOHO) の観測によるある時の太陽面の速度分布をあらわしたものである。左側は太陽の自転運動を含んだ速度分布で、赤道付近で左右に約2 km/secの自転による速度差があることが見て取れる。右側の図は自転による速度の影響を除去した時の速度分布で、小さな単位で、±500m/s 程度の速度の揺らぎがあることがわかる。この揺らぎは、この小さな単位で振幅が、大きいもので、500m/s の周期が5分程度の振動をしていていることによって起きている。

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  • 太陽5分振動は、右の図のようにこまかく分かれたパターンの振動の非常に多くの数(百万またはそれ以上)の重ね合わせで、いろいろな波長をもつ音波である。太陽と地球間にガスがないので、その音は聞こえないがガスの振動運動から非常に多くの音波が発生していることがわかる。振動周期は約5分であるがそれぞれのパターン (モード)の振動で周期はすこしずつ異なっており、太陽内部のどのくらいの深さまで振動するかも各振動モードで異なっている。このような性質を利用して、観測で得られる正確な振動数から、太陽内部の音速分布、自転速度分布など、光の観測では見ることのできない太陽内部の状態についての情報を知ることができるので、太陽5分振動は太陽内部を理解する上で非常に役に立つ現象である。

    太陽振動パターンの1例。赤い部分と青い部分は振動の位相が半周期ずれている。(前者が外向きに運動している時、後者は内向きに運動する)

    左の図は SOHO衛星による太陽振動の観測結果から、太陽面で各周波数と表面波長 (の逆数)に対してどのくらい強く振動しているかを表した図である。赤く表されている領域で振幅の大きな振動が起こっている。太陽5分振動は、振動周期が主に4分から8分で、波長は太陽円周程度からその数百分の1程度までの非常に多くの振動の集まりであることがわかる。これらの振動は、太陽外層で起こっている対

    流の運動によって、太陽外層の圧力分布が揺らぎを受けるために起こる。(この現象は、鐘を打つと音が出る現象と似ている。) 対流層内では、種々の空間的、時間的なスケールの運動が起こっているので、種々の周波数、波長の振動が起こされる。

    上の図は、太陽振動の精密な振動周波数を計測することによって明らかになった太陽内部での自転の様子を表している。太陽は非常にゆっくり自転している。表面では、最も速く自転する赤道

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  • 付近でも自転周期は25日程度であり、極に近づくほどゆっくりと自転し、極付近では、1回転35日ほどかかる。この傾向は対流層内でほぼ保たれているが、対流層境界よりも内部では緯度に対する依存性はなくなり、0.7 ≳ r/R ≳ 0.2 の領域ではほぼ、剛体的に自転している。中心に近い領域、r/R ≲ 0.2については、太陽振動による自転速度の決定が不可能になる。な

    ぜなら、太陽振動はおもに外層の振動で、内部深くでは、ほとんど振動しないからである。

    3.4 太陽中心部での核融合反応とニュートリノの発生

    太陽の中心付近では、4個の水素原子 (陽子)が1個のヘリウム原子核が生成される核融合反応が起こってエネルギーが発生し、それが太陽の発するエネルギーの源となっている。エネルギーが発生するのは、4個の水素原子の質量に比べて、1個のヘリウム原子核の質量の方が約 0.7%だけ小さいので、mc2に対応するエネルギーが発生するためである。1グラムの水素が全てヘリウムに成ったときに放出されるエネルギーは、6.5 × 1011ジュールで、このエネルギーは、約2千トンの 25℃の水を沸騰させる膨大なエネルギーである。水素からヘリウムが出来る際、4個の陽子が一度にヘリウム原子核になるのではなく、主にppチェイン(陽子+陽子反応で重水素ができ、重水素に陽子が反応して軽いヘリウム 3Heが生成され . . .)といわれる連鎖反応によってヘリウム(4He)が生成される。

    ヘリウム原子核は2個の陽子と2個の中性子からなるので、4個の陽子(水素原子核)からヘリウム原子核ができるためには、生成される連鎖反応のどこかで、2つの陽子が2つの中性子に変えられる。この際、ニュートリノという素粒子が発生する。ニュートリノは奇妙な性質をもつ素粒子で、ガスを構成する他の通常の粒子 (電子、水素、ヘ

    リウム、炭素、、、、) とほとんど衝突も反応もしないで、発生すると光速に近い速度で太陽から出て行ってしまう。このことは、もしこのニュートリノを観測できれば、太陽の中心の現時点の核融合反応率を計測することができることを意味する。(光子の場合、中心で発生しても表面に出てくるまでに吸収、再発光を幾度となく繰り返すので、その影響が表面に出てくるには10万年またはそれ以上経過する。)しかし、ニュートリノが物質と相互作用をほとんどしないということは、それをとらえることが非常に難しく、大型の装置が必要となることを意味する。太陽ニュートリノを捕らえる試みは 1960年代後半から始まった。アメリカ人のR. Davisは、約40万リットルの洗剤の一種C2Cl4 を満たした巨大なタンクからなる測定装置をつくった。この装置では、ニュートリノと塩素 Clが反応して、アルゴンの放射性同位元素が作られることを利用する。このタンクの中で、一日一回程度の反応が起こることが予想されるので、1ヶ月程度放置した後アルゴンの放射性同位元素を集めて、それの発する放射線をとらえて数を数えるというとても難しい実験であった。

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  • この装置で 20年以上にわたって測定がなされたが、太陽モデルにもとづく理論的な予想値の3分の1程度しかニュートリノが捕らえられなかった。(右図) これが本当なら、太陽内部の核融合反応によるエネルギーの発生が予想の3分の一しかないことになり、大問題である。これは、太陽ニュートリノ問題といわれ、最近まで謎であった。

    Davis の実験が太陽からのニュートリノが少なすぎるということを明らかにした当初は、その結果を疑問視する傾向もあった。太陽ニュートリノ問題が実際に存在することを疑いないものにしたのが、日本のグループによる神岡鉱山跡におけるカミオカンデ実験である。これは、Davis らの実験とは全く異なり、内側を光電管で埋め尽くされた巨大なタンクに水を入れ、ニュートリノが水の中の電子と衝突して電子をはねとばす際に、電子が水の中の光速よりも速く走り、そのときに発せられる光 (チェレンコフ光)を光電管で捕らえる装置であった。この装置は後に、スケールアップされスーパーカミオカンデ装置として現在も実験が継続されている。この実験でも、太陽からくるニュートリノは理論的予想値の半分しかなく、太陽ニュートリノ問題の存在が事実であることが明らかになった。

    Distance

    under ground

    1.6 km

    SUPERKAMIOKANDE DETECTOR Catching NeutrinosAbout once every 90 minutres, a neutrino interacts in the detectorchamber, generating Cherenkov radiation. This optical equivalent ofa sonic boom creates a cone of light that is registered on thephotomultipliers that line the tank. Characteristic ring patterns tellphysicists what kind of neutrinos interacted and in which directionthey were headed.

    The light isdetected byphoto sensorsthat line thetank, andtranslated into adigital image.

    Electronicstrailers

    Controlroom

    Accesstunnel(2 km)

    12.5 million gallontank of ultra-purewater

    Mt. Ikena Yama

    Mountains filter out other signalsthat mask neutrino detection.

    A few neutrinos interactwithin the huge tank of superpure water, generating acone of light.

    University of Hawai'i media graphic

    スーパーカミオカンデ装置。神岡鉱山跡地のトンネル内にある、光電管で内側が覆われた巨大な水のタンクである。

    右の図は、スーパカミオカンデで測定された、各エネルギーに対するニュートリノ数と、理論的予想値を表している。どのエネルギーに対しても、理論予想値の半分程度しか測定されていないことを表している。

    太陽ニュートリノ問題の原因が何であるかを見いだすために、太陽内部構造の理論モデルと、それに使われる核融合反応率、ガスの性質等の様々な物理データの精度等が検討された。しかし、理論太陽モデルには欠陥はなく、むしろ、太陽5分振動をよく再現することがわかった。

    結局、ニュートリノ問題は、素粒子物理学の発展によって解決された。太陽からのニュートリノが理論予想値よりも少なかったのは、太陽中心部から発せられたニュートリノの一部が途中で、Davis の装置やカミオカンデでは捕まえられない種類のニュートリノに変わってしまうためであると理解されている。

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