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Title 琉球大学大学教育センター報 = University Education Center … · 2018-07-12 ·...

Date post: 19-Feb-2020
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Title 「情報科学演習」の実際と課題 : 計算機の理解のために Author(s) 長山, 格 Citation 琉球大学大学教育センター報 = University Education Center Bulletin(10): 52-56 Issue Date 2006-12 URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/41689 Rights
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Title 「情報科学演習」の実際と課題 : 計算機の理解のために

Author(s) 長山, 格

Citation 琉球大学大学教育センター報 = University Education CenterBulletin(10): 52-56

Issue Date 2006-12

URL http://hdl.handle.net/20.500.12000/41689

Rights

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「情報科学演習」の実際と課題

一計算機の理解のために一

「情報科学演習」担当 長山 格(工学部助教授)

1 .はじめに

rProfessor of the Y ear J制度が2005年度よ

り試験的に導入されることとなった。これは学生

による授業評価にもとづき、人文系・自然科学系

等10分野の合計971講義から、各分野において最

も高い評価を受けた 1講義ずつを選び全10講義を

表彰するものである。

2000年以降、我が国における情報技術に対する

認識は幅広く共有されるものとなり、社会的・経

済的・文化的なあらゆる面で生活に大きな影響

を与えるようになった。その基礎となったのが

e-Japan戦略である。 e-Japan戦略とは、平成13

年6月に政府IT戦略本部より公表された資料[1 ]

によれば次のように記述されている。

1 )高速・超高速インターネットの普及の推進

インターネット利用者数の急速な増加や通信料

金の低廉化、高速インターネット接続サービスの

普及を踏まえつつ、より高速で低廉なネットワー

クの形成を推進する必要がある。このため、条件

不利地域における高速インターネットの普及推進、

基盤的研究開発等を推進する。

2)教育の情報化・人材育成の強化

平成17年度までに IT人的資源大国となること

を目指すこととし、このために必要となる施策を

集中的に実施するための rIT人づくり計画」を

推進する。具体的には、学校等におけるインター

ネット接続環境の整備状況やネットワークインフ

ラの高速化・低廉化の進展状況等を踏まえ、一層

の整備促進・接続環境の向上を図るとともに、実

際の教育現場における ITの活用を推進するため、

多様な教育用コンテンツの充実・普及を図る等、

教育における情報化を促進する。また、国民の情

報リテラシーの一層の向上に取り組むとともに、

専門的な知識・技能を有する創造的な人材の育成

を促進する。

3) ネットワークコンテンツの充実

我が国を世界最先端の IT社会とするためには、

ネットワーク上で提供され、世界に発信される良

質なコンテンツを飛躍的に増大させていく必要が

ある。優れたコンテンツクリエーターの育成を図

るとともに、知的財産権の保護を含め、優良なコ

ンテンツの制作・流通を促進するための施策を展

開する。

4) 電子政府・電子自治体の着実な推進

申請・届出等の電子化に必要とされる地方公共

団体による公的個人認証サービス等システムの整

備等の基盤整備を着実に推進するとともに国にお

ける取組と歩調を合わせて地方公共団体における

取組が行われることとなるようこれを支援する。

また全てのIT化の基礎となるセキュリティの確

保に万全を期すこととする。

5) 国際的な取組の強化

我が国からより多くのコンテンツが発信され、

我が国がアジアのインターネット網のハブの役割

を担えるようにするとともに、知的財産権、消費

者保護等、 IT関係のルールや規格に関する国際

協調を図り、さらには IPv6の普及や人材育成等

を通じてアジアをはじめとした世界的な IT革命

の進展に貢献することにより、我が国がアジア地

域における IT革命の中心的な役割を果たしてい

くことが重要である。

これらの 5つの重点政策分野に集中的に取り組

むことによって、世界最先端の IT国家となるこ

とが目標として策定された。 2005年度までに上記

の目標を達成することとして多くの関連施策が実

施され一定の成果をあげた。特に、教育分野にお

ける成果について、その一部を表 1に示す。

-52-

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全体の底上げとなるこれら初等中等教育機関のみ

ならず、大学等の高等教育機関でも情報教育を積

極的に実施していく動きが活発になり、校内 ・キャ

ンパス内の計算機環境・ネットワーク環境の整備

やカリキュラムの改訂が進められた。

表 1 学校における IT整備状況

(初等中等教育分野) 2001年度末 2004年度末

教育用コンビュータ整備状況

11.1人/台 8.1人/台

高速インターネッ ト38.0% 81.7%

接続率

コンビュータを使用し指導できる教員の 47.4% 68.0% 割合

校内LAN整備率 21.1% 44.3%

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図 1 ITに関するリテラシー

2. 情報リテラシー

情報教育(IT教育)のパックボーンとなる概

念は「情報リテラシー」であり、情報教育ではそ

の酒養が目的となる。情報リテラシーとは、 1980

年代後半に ALAPresidential Committee on

Information Literacyにおいて初めて明確化さ

れた概念であり、情報を自らの目的に合わせて自

由に利用することができる能力を指す。ところが、

その後、情報リテラシーから「コンビュータリテ

ラシー」と「メディアリテラシーJ という概念が

派生した(図 1)。これらは互いに補完する部分

があり、それぞれに特徴を持つ。すなわち、

情報リテラシー :

情報への自由なアクセスと活用能力

コンビュータリテラシー :

コンビュータを自由に使う能力

メディアリテラシー :

新聞 ・TV等のメディアからの情報を正しく

評価 ・識別する能力

とされる。

情報科学演習は、これらのうち「コンビュータ

リテラシー」を育成するものと言える。すなわち、

道具としてのコンビュータおよびソフトウェアを

抵抗無く使いこなし、文書作成 ・表計算 ・電子メー

ルコミュニケーション等を実行するのに必要な知

識とスキルを学ぶ。その結果、情報リテラシーも

ある程度実現される。

表2 利点と問題点

利点

.TAによるきめ細かい指導

.演習に基づく実践的教育

・実技演習のメリ ットがわかりやすい。

-レポート作成や業務で実際に利活用できる。

問題点

-演習を面倒がってしまい、学ぼうとしない。

・指定したテキストを購入しない。

-欠席がちである。

.講義中に指示した練習課題をやらない。

-全くの初心者の場合、操作法の習得が難し

しミ。

-操作を憶えるだけであり、仕組みを理解で

きない。

-53-

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3. 情報科学演習

琉球大学における共通教育科目「情報科学演習」

は、便覧によればコンビュータリテラシーの育成

を主目標としている。また、期せずしてe-Japan

戦略に沿う形で大学初年級の学生に対する情報教

育カリキュラムとして一定の役割を果たしている。

図2に講義に使用されるコンビュータ室の様子を

示す。

これまで本科目を担当した経験から言えば、大

学入学段階でコンビュータリテラシーに対する基

本的素養を身につけていない学生は相当数にのぼ

る。 一方で、それなりの知識 ・技量を持つ学生も

居るため、講義 ・演習を進める際の難しさが際だ

つ科目とも言える。演習科目とすることにより、

実践的に学べるという点では学生の評価は高い。

また、 TAを活用することで、十分とは言えない

がある程度きめ細かい指導ができることも学生の

評価として高いものがある。これらの利点と問題

点を整理すると、表2のようになる。

これらのうち、計算機工学を専門とする立場か

らの視点として、表 2で「仕組みの理解が得られ

ていなしリという問題点は特に重要と思われた。

一般に、コンビュータやソフトウェアの表層的な

操作法やユーザインターフェースは製品ごとに異

なる上に、パージョンアップによって変更される

ことも多々ある。したがって、表面的に操作法を

理解しただけでは、将来、異なるソフトウェアや

システムを使用したときに使用法がわからず、と

まどう結果となることが多い。このようなことを

避けるためには、出来るだけコンビュータの基礎

的な構成・仕組みも解説し、本質的な理解を促す

必要があるだろう。例えば、 CPU・メモリの仕

組みや外観ならびに内部構造や個々のデバイス聞

の働きを簡潔かつ明快に説明することが、理解の

一助になる。特に、図 3のように普段は見ること

の少ない内部構造を示す教材を利用すれば、理解

促進が期待される。

さらに、表2における利点および問題点は、い

ずれも学生自身の学習上のモチベーションの有無

に起因すると思われる。すなわち、学習意欲のあ

る学生は、しっかり指導することによって学習達

成感を得ることができ、さらに修学に励むという

好循環が出来る。ところが、学習意欲の少ない学

生は、出席して受講することすら確実でないため、

演習についていけず内容が理解できなくなるとい

う悪循環が生じる。

そのため、学習意欲の少ない学生に指導の重点

を置くこととした。すなわち、必要事項について

できるだけわかりやすく説明するとともに、演習

における学習目標を次のように設定し、与えるこ

ととした。

図2 コンビュータ実習室の様子

-54-

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A)目標の明確化

何をどこまで達成するのか、具体的に説明する

こと。

B)課題の設定

どういう課題をどこまで行うのか具体的に説明

すること

C)補足説明

操作や課題に必要と思われる事項を解説するこ

と。

学習目標の設定では、特に次のことに留意する。

すなわち、授業開始直後に演習の目標を具体的に

説明するとともに、適宜繰り返して確認させる。

些細ではあるが、意外に重要なポイントであろう。

これらA) B) C) を適切に行うことによって、

学生自身の目標設定を容易にすることができる。

また、質問に対しては、すべてきちんと説明し回

答することで、理解不足に陥りがちな学生を少な

くすることができる。その場合、学生がいつでも

質問しやすい雰囲気を作ることも重要であろう。

上記A) B) C) の事項について、口頭で詳しく

説明するとともに、いつでも確認できるよう資料

として配布する。その例を表3に示す。

図3 計算機の内部

-55

表3 資料の例

Wordによる文書の作成 1

目標:

1 )ワープロソフト Wordの操作に慣れる.

2) 文書の書式(余白,網掛け,行間隔など)を

調整できるようになること.

3)基本的な図形や模様を描けるようになること

課題:

1 )テキスト3.1節から3.2節までを読み,操作を

順番に練習しなさい.

2)サンプルの「見積り依頼書 ・購入申込書」を

Wordで作成しなさい.

注意点:

1 )現在使用している Wordのソフトウエアは,

最新版にバージョンアップされているが,テ

キストの操作記述と一部食い違う場合がある.

(これは実習用 PCの管理のためである)そ

の場合,食い違う部分の操作は省略して良い.

2) 作成した文書はフロッピーディスクに保存す

るとよい.

(方法)

「ファイル」→「名前を付けて保存」

→ [保存先]のVボックスをクリック

→3.5インチ FD(A:)を指定→ [保存]をク

リック

3) 作成した文書の印制イメージを見るときは,

印刷プレビューを行えばよい

(方法)

「ファイル」→「印刷プレビュー」をクリック.

4) 各ソフトウエアには画面上方に「ヘルプ」機

能があるので,わからないことは「ヘルプ」

機能で調べるとよい.

4.あとがきと今後の課題

このように必要十分な事項を明確にしてやるこ

とにより、多くの学生の取り組みは真剣になって

いる。 一方で、いくつかの課題も目についた。す

なわち、

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1) TAを現状の 1名ではなく 2名程度に増やす

方がより効果的な指導が出来る。

2) 高校において基礎的な知識・技能を学習した

学生が増えているので、単なるコンビュータ

リテラシーにとどまらず、より進んだ情報リ

テラシー/メディアリテラシーへの深化を目

指すこと。

3)情報リテラシーのうち、セキュリティに関す

る知識及び技能の習得を拡充すること。

4)著作権などソフトウェアの権利保護に関する

知識及び技能の習得を拡充すること。

5)表層的な操作法の暗記だけでなく、コンビュー

タに対する本質的な理解を促すために、 LSI

のミクロな仕組み・構造・外観やハードウェ

アのコンポーネント構成についても実例を示

すなど実践的に解説することが必要であろう。

特に、コンビュータリテラシーから情報リテラ

シー/メディアリテラシーへと深化させるとき、

コンビュータで、 IV可が出来て何が出来ないか」を、

ある程度理解させる必要がある。そのために、次

年度は計算機アーキテクチャーの基礎に関して簡

単な解説を行うことが必要かもしれない。すなわ

ち、

. 2値ロジックの概念

-論理回路と CPUの仕組み

-ハードウェアとソフトウェアの構成

.アプリケーションの操作

などを解説し、コンビュータ内の主要な処理は

CPUで行われている等を示すことで理解の一助

とする。また、このような工夫は学生の学習意欲

の増進にも有益かもしれない。しかしながら、い

まどきのビジ、ュアル世代の学生に演習への興味を

持ってもらいつつ、コンビュータの動作を理解し

やすいような説明をどうすればよいか、工夫のネ

タに頭が痛いところである。

最後に、講義終了後の学生に講義への意見・感

想を記述してもらった例を下記に示す。

-56

-授業についてはとてもいいと思います。自分の

ペースで出来たのでとてもやりやすかったし、

先生や院生が授業中教室を回ってくれるので、

わからない所があったらすぐに質問できたので

困ることはあまりありませんでした。授業では、

ゃった!という実感はなくても、家に帰ってワー

ドなどをしてみると、結構理解していてピック

リしました。とにかく、気楽に受けれてとても

やりやすい授業でした。

・授業を受講するまで、私は全くパソコンという

ものに縁がなかったのですが、この授業を通し

て、パソコンを頻繁に使うようになりました。

例えば、授業でレポート提出があったりすると、

手書きでよくてもパソコンでうつようになりま

した。その意味で、ワードの授業はとても役に

立ちました。最初はただ文字をうつだけという

感じだ、ったのですが、授業を通して学んだ太字

や、中央揃えなども使うようになり、確実にス

キルアップしたと思います。私が授業の中で最

も興味を持ったのは EXCELです。やってい

てとても楽しくて、これが使いこなせたら最高

だろうな・-と思いました。これからも、お家

のパソコンで練習して、もっとすらすら使いこ

なせるようになりたいです。また、メールの授

業もとても楽しかったです。携帯ではもちろん

使ったことがありましたが、パソコンでメール

を送るのは初めてだ、ったので、送れたときは感

動しました。これからも、パソコンを使いこな

せるように頑張りたいと思います。

参考文献

[1J j jwww.kantei.go.jpjjpjitjnetworkjdai5j5siryou2.html

[2J ! /www.ala.org/ala/acrl/acrlpubs/whitepapers/presidential.htm

[3J j jwww.mext.go.jpjb_m日nujhoudouj17j08j05080101.htm


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