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Ⅱ.調整融資のレビュー - Ministry of Foreign Affairs › mofaj › gaiko › oda ›...

Date post: 26-Jun-2020
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43
Ⅱ.調整融資のレビュー 1.SAL、SECAL の概要把握 (1)調整融資における SAL、SECAL の位置づけ 調整融資は、第 2 次石油危機、国際金利の高騰、不適切なマクロ経済政策による非 効率な資源配分などにより、財政赤字の増大、国際収支の悪化、インフレーションの激 化などに見舞われた開発途上国を支援するため、1980 年に世界銀行によって開始され た融資である。従来は安定化及び調整措置を実施しながら、国際収支の均衡を維持す るための一時的な資金を提供するものとされていたが 17 、 その後、社会・構造・セクター の改革を支援するための重要な開発手段へと概念が変化していった 18 。SAL、SECALは この調整融資を実施するための手段であるが、その位置づけや定義は、各機関によって 違いがある。 世界銀行では、融資をプロジェクト型の投資貸付とプログラム型(ノンプロジェクト型) の調整融資に分類している。調整融資はその概念の変化とともに多様化し、当初導入さ れたSAL、SECALに加え、プログラム型構造調整融資(PSAL)、特別構造調整融資 (SSAL)、地方調整融資(SNAL)などがある。しかしながら、SALとSECALの分類はさほ ど明確ではなく、世界銀行の個別案件情報を参照すると、SALとして管理されている案件 の中にも、案件名にセクターの名称を含んでいるものもあれば、SECALと区分されてい ながらその対象セクターが広範囲に及ぶ案件もある 19 図表 1 世界銀行における SAL、SECAL の位置づけ 投資貸付 調整貸付 Structural Adjustment LoansSALsSecter Adjustment Loans (SECALs) Programmatic Structural Adjustment Loans (PSALs) Special Structural Adjustment Loans (SSALs) Subnational Adjustment Loans (SNALs) 世界銀行 融資 投資貸付 調整貸付 Structural Adjustment LoansSALsSecter Adjustment Loans (SECALs) Programmatic Structural Adjustment Loans (PSALs) Special Structural Adjustment Loans (SSALs) Subnational Adjustment Loans (SNALs) 世界銀行 融資 注) 2004 年 8 月の実施要領の改訂により、調整貸付の SAL、SECAL、PSAL、SSAL、SNAL は全て Development Policy Lending に置き換えられた。ただし、PRSC は既にその呼称が定着していることから、そのままの名称として存続することと なった。 出所 World Bank [2001] pp.7, 8 より作成 わが国では、いわゆる調整融資というカテゴリーは一般的ではなく、構造調整融資と いう言葉がしばしば用いられるがその概念は必ずしも明確になっていない。そこで、本レ ビューではわが国のノンプロジェクト借款のうち、世界銀行と同様に被援助国の政策・制 17 World Bank [2001] p.8. 18 World Bank [2001] p.23. 19 世界銀行ホームページ、案件検索 (http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/PROJECTS/0,menuPK:51563~pagePK:95873~piPK:95910~theSitePK :40941,00.html) 4
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Page 1: Ⅱ.調整融資のレビュー - Ministry of Foreign Affairs › mofaj › gaiko › oda › shiryo › hyouka › ...②SALのプロセス SALは、通常トランシェと呼ばれる複数の期に分けて実施され、設定されたコンディシ

Ⅱ.調整融資のレビュー

1.SAL、SECAL の概要把握

(1)調整融資における SAL、SECAL の位置づけ

調整融資は、第 2 次石油危機、国際金利の高騰、不適切なマクロ経済政策による非

効率な資源配分などにより、財政赤字の増大、国際収支の悪化、インフレーションの激

化などに見舞われた開発途上国を支援するため、1980 年に世界銀行によって開始され

た融資である。従来は安定化及び調整措置を実施しながら、国際収支の均衡を維持す

るための一時的な資金を提供するものとされていたが17、 その後、社会・構造・セクター

の改革を支援するための重要な開発手段へと概念が変化していった18。SAL、SECALは

この調整融資を実施するための手段であるが、その位置づけや定義は、各機関によって

違いがある。

世界銀行では、融資をプロジェクト型の投資貸付とプログラム型(ノンプロジェクト型)

の調整融資に分類している。調整融資はその概念の変化とともに多様化し、当初導入さ

れたSAL、SECALに加え、プログラム型構造調整融資(PSAL)、特別構造調整融資

(SSAL)、地方調整融資(SNAL)などがある。しかしながら、SALとSECALの分類はさほ

ど明確ではなく、世界銀行の個別案件情報を参照すると、SALとして管理されている案件

の中にも、案件名にセクターの名称を含んでいるものもあれば、SECALと区分されてい

ながらその対象セクターが広範囲に及ぶ案件もある19。

図表 1 世界銀行における SAL、SECAL の位置づけ

投資貸付

調整貸付

①Structural Adjustment Loans(SALs)

②Secter Adjustment Loans (SECALs)

③Programmatic Structural Adjustment Loans (PSALs)

④Special Structural Adjustment Loans (SSALs)

⑤Subnational Adjustment Loans (SNALs)

世界銀行融資

投資貸付

調整貸付

①Structural Adjustment Loans(SALs)

②Secter Adjustment Loans (SECALs)

③Programmatic Structural Adjustment Loans (PSALs)

④Special Structural Adjustment Loans (SSALs)

⑤Subnational Adjustment Loans (SNALs)

世界銀行融資

注) 2004 年 8 月の実施要領の改訂により、調整貸付の SAL、SECAL、PSAL、SSAL、SNAL は全て Development Policy

Lending に置き換えられた。ただし、PRSC は既にその呼称が定着していることから、そのままの名称として存続することと

なった。

出所 World Bank [2001] pp.7, 8 より作成

わが国では、いわゆる調整融資というカテゴリーは一般的ではなく、構造調整融資と

いう言葉がしばしば用いられるがその概念は必ずしも明確になっていない。そこで、本レ

ビューではわが国のノンプロジェクト借款のうち、世界銀行と同様に被援助国の政策・制

17 World Bank [2001] p.8. 18 World Bank [2001] p.23. 19 世界銀行ホームページ、案件検索

(http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/PROJECTS/0,menuPK:51563~pagePK:95873~piPK:95910~theSitePK

:40941,00.html)

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度改革を目的として実施される融資を調整融資であると捉え、具体的には SAL 及び

SECAL が該当すると想定した。なお、わが国では、円借款をプロジェクト型とノンプロジェ

クト型に分類し、後者にSAL、SECAL、商品借款、セクター・プログラム・ローンなどを位置

づけている。しかし、我が国でも世界銀行と同じくこれらの融資手段の区分が明確ではな

い。JBIC は、公表データ上、SAL と SECAL ならびに他のノン・プロジェクト型借款との区

別を行なっておらず、全て「商品借款等」と区分している。

図表 2 日本における SAL、SECAL の位置づけ

円借款

プロジェクト型

ノン・プロジェクト型

①商品借款

②構造調整借款(SAL)

③セクター調整借款(SECAL)

④セクター・プログラム・ローン(SPL)

円借款

プロジェクト型

ノン・プロジェクト型

①商品借款

②構造調整借款(SAL)

③セクター調整借款(SECAL)

④セクター・プログラム・ローン(SPL)

出所 外務省 [2002a] p.125 より作成

(2)SAL、SECAL の定義

(イ)構造調整借款(SAL)

*図表 3 参照

構造調整借款は基本的に開発途上国の経済構造の改革を支援するものであるが、そ

の定義は国・機関によって差異がある。我が国では、「借入国の総合的な経済政策改善

と制度改革を支援するための借款である」と定義されており、借款の対象は、通常、一般

輸入商品であるが、必要に応じて「構造調整計画」実施のためのコンサルタント・サービ

スを伴う」こととされている20。また、世界銀行では、「成長、資源の有効利用、中・長期的

な国際収支の持続的なバランスを促進する改革を支援する」ものとして定義されている21。

①SAL の目的

SAL の目的は時代の要請に応じて多少変化しているものの、基本的には短期的な経

常収支の改善と中長期的な経済構造の改善及び経済ファンダメンタルズの向上を目的

としている。新古典派の考えに基づく市場重視型の制度設計を基本として、貿易・対外開

放の促進、財政構造改革、公的部門の改善、金融セクターの改革と効率化によって、こ

れらの目的を達成することを想定していると考えられる。

20 外務省 [2002a] p.130。 21 World Bank [2001] p.8.

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②SAL のプロセス

SAL は、通常トランシェと呼ばれる複数の期に分けて実施され、設定されたコンディシ

ョナリティの達成状況に応じて各トランシェの貸し付けを実行することになっている。また、

SAL の実施に先立って被援助国とドナーとの間で政策対話を実施するようになっている

ことも大きな特徴の一つである。

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図表 3 SAL のロジックモデル

レベル1

Inputs

レベル3

Outcomes

(第一次)

レベル5

Impacts

借入国ドナー・世銀

プロセス

第1トランシェ

コンディショナリティ実行

政策対話

援助申込

第1トランシェ

援助担当機関

援助受入機関

世銀

第2トランシェ

コンディショナリティ実行

第2トランシェ

・・・

・・・

マルチトランシェ、一度限り

ワシントンコンセンサスに基づく標準的な政策アドバイス

セクター調整融資 (ローン)

短期的 :経常収支の改善

中長期的:経済構造の改善、経済ファンダメンタルズの向上

市場重視型の制度設計

・価格・賃金の硬直化廃止・市場経済ルールの整備 他

貿易・対外開放の促進

・為替相場の切り下げ

・関税の引き下げ

財政構造改革

・地方財政支出の削減

・徴税体制の改善

金融セクターの改革と効率化

・銀行制度の充実

・金利政策の改革 他

公的部門の改善

・行政手続きの簡素化

・民営化・アウトソーシングの促進他

・雇用環境の改善

[雇用者所得の安定的上昇

・労働需要の拡大

[雇用者所得の安定的上昇]

・国内企業の信用力向上

[倒産数等]

・ 起業・創業の拡大

[純開業率の向上(開業率-廃業率)]

・企業の存続年数の向上

[平均存続年数]

・輸出促進・経常黒字の拡大

[輸出額の上昇・経常収支の向上等]

・多国籍企業(自

動車・航空機等のアセンブル産業)の立地

・財政赤字の削減[累積財政赤字]

・公共サービス・行政サービスの質の向上 

[各種行政手続時間の短縮等]

・資金の安定供給実現

[借入困難企業の減少]

 ([]内は主な指標)

・貯蓄性向・消費性向の上昇[平均貯蓄性向・平均消費性向の上昇]と個人消費の拡大 等

・ 終需要額(個人消費額、設備投資額)の拡大 [GDPの上昇]

・企業立地の促進・新規投資の誘発 [民間設備投資の上昇]

・すそ野産業への波及効果[経済波及効果(生産・付加価値等)

・国の信用力の拡大[国債利回り上昇]    他

・消費者利益・生産者利益の発生[消費者余剰、生産者余剰の拡大]      他

・民間企業の設備投資の拡大[設備投資額]    他   ([]内は主な指標)

レベル2

Conditionalities

レベル4

Outcomes

(第ニ・三次)

レベル1

Inputs

レベル3

Outcomes

(第一次)

レベル5

Impacts

借入国ドナー・世銀

プロセス

第1トランシェ

コンディショナリティ実行

政策対話

援助申込

第1トランシェ

援助担当機関

援助受入機関

世銀

第2トランシェ

コンディショナリティ実行

第2トランシェ

・・・

・・・

マルチトランシェ、一度限り

ワシントンコンセンサスに基づく標準的な政策アドバイス

セクター調整融資 (ローン)

短期的 :経常収支の改善

中長期的:経済構造の改善、経済ファンダメンタルズの向上

市場重視型の制度設計

・価格・賃金の硬直化廃止・市場経済ルールの整備 他

貿易・対外開放の促進

・為替相場の切り下げ

・関税の引き下げ

財政構造改革

・地方財政支出の削減

・徴税体制の改善

金融セクターの改革と効率化

・銀行制度の充実

・金利政策の改革 他

公的部門の改善

・行政手続きの簡素化

・民営化・アウトソーシングの促進他

・雇用環境の改善

[雇用者所得の安定的上昇

・労働需要の拡大

[雇用者所得の安定的上昇]

・国内企業の信用力向上

[倒産数等]

・ 起業・創業の拡大

[純開業率の向上(開業率-廃業率)]

・企業の存続年数の向上

[平均存続年数]

・輸出促進・経常黒字の拡大

[輸出額の上昇・経常収支の向上等]

・多国籍企業(自

動車・航空機等のアセンブル産業)の立地

・財政赤字の削減[累積財政赤字]

・公共サービス・行政サービスの質の向上 

[各種行政手続時間の短縮等]

・資金の安定供給実現

[借入困難企業の減少]

 ([]内は主な指標)

・貯蓄性向・消費性向の上昇[平均貯蓄性向・平均消費性向の上昇]と個人消費の拡大 等

・ 終需要額(個人消費額、設備投資額)の拡大 [GDPの上昇]

・企業立地の促進・新規投資の誘発 [民間設備投資の上昇]

・すそ野産業への波及効果[経済波及効果(生産・付加価値等)

・国の信用力の拡大[国債利回り上昇]    他

・消費者利益・生産者利益の発生[消費者余剰、生産者余剰の拡大]      他

・民間企業の設備投資の拡大[設備投資額]    他   ([]内は主な指標)

レベル2

Conditionalities

レベル4

Outcomes

(第ニ・三次)

出所 各種資料より作成

7

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(ロ)セクター調整借款(SECAL)

*図表 4 参照

SECALは、特定セクターの改革を支援するために、世界銀行によって1982年に導入さ

れたものである22。わが国では「セクター調整借款は特定セクターの総合的な政策改善と

制度改革を支援することを目的とする」ものであると定義され、融資対象は、通常一般輸

入商品であるが、当該セクターの開発に必要な輸入資機材および役務に特定されること

もある23。世界銀行は、SECALとは「SALのように経済全体を対象とするのではなく、セク

ター毎の特性にきめ細かな対応を行うことで、SALを補完するもの」としている24。

SECALが登場した背景には、SALのように国全体の経済政策に関わる政策運営を実

行できるだけの能力が借り入れ国にないと判断された場合にセクター毎の対応をする必

要があったこと25、また、同じように構造調整のための支援を行っていたIMFのプログラ

ムへの配慮があったものと考えられる26。データからも、SALとSECALは 80 年代及び 90

年代を通じて併存しており27、構造調整支援を実施してゆく中で、借り入れ国や対外的な

事情を配慮しながら、両者の使い分けを工夫していった結果と思われる。

①SECAL の目的

SECALの目的は、特定セクターの総合的な政策改善と制度改善を支援することにあり、

SAL と同様に新古典派の理論を基本とし、セクター内における市場経済化を中心とした

方法により、これらの目的を達成することを想定していると考えられる。

②SECAL のプロセス

SECAL のプロセスは、SAL と同様に政策対話を行った上でコンディショナリティを設定

し、複数のトランシェに分けて実行される。

22 World Bank [2001], p.ⅷ. 23 外務省[2002a]、pp.130-131。 24 World Bank [2001], p.ⅷ, para.3, l.4. 25 Nicholas [1988], p.ix, para.3, l.11. 26 Mosley [1995], p.43. 27 本報告書pp.15-17 参照。

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図表 4 SECAL のロジックモデル(金融セクター)

金融セクター調整融資 (ローン)

レベル2

Outputs

レベル1

Inputs

レベル3

Outcomes

経済政策の枠組み

・マクロ経済政策と金融セクター改革との整合性の確保

法規制改革

・ペイオフ制度の導入

・国内銀行への海外からの投資を禁止する規制の撤廃

・会計基準の変更による透明性確保

・金融監督機関の設立

・マネーロンダリングに対する監視強化

金融機関の再編

・銀行の統合

・国有銀行の民営化

・公的債権保証機関の資産売却

借入国ドナー・世銀

プロセス

第1トランシェ

コンディショナリティ実行

政策対話

援助申込

第1トランシェ

援助担当機関

援助受入セクター

世銀

第2トランシェ

コンディショナリティ実行

第2トランシェ

・・・

・・・

マルチトランシェ、一度限り

ワシントンコンセンサスに基づく標準的な政策アドバイス

金融セクターにおける制度改善

・金融業界における透明性の確保

・市場競争を通じた金融機関の効率的な経営

・円滑な資金供給による民間企業の資金アベイラビリティの向上

金融セクター調整融資 (ローン)

レベル2

Outputs

レベル1

Inputs

レベル3

Outcomes

経済政策の枠組み

・マクロ経済政策と金融セクター改革との整合性の確保

法規制改革

・ペイオフ制度の導入

・国内銀行への海外からの投資を禁止する規制の撤廃

・会計基準の変更による透明性確保

・金融監督機関の設立

・マネーロンダリングに対する監視強化

金融機関の再編

・銀行の統合

・国有銀行の民営化

・公的債権保証機関の資産売却

借入国ドナー・世銀

プロセス

第1トランシェ

コンディショナリティ実行

政策対話

援助申込

第1トランシェ

援助担当機関

援助受入セクター

世銀

第2トランシェ

コンディショナリティ実行

第2トランシェ

・・・

・・・

マルチトランシェ、一度限り

ワシントンコンセンサスに基づく標準的な政策アドバイス

金融セクターにおける制度改善

・金融業界における透明性の確保

・市場競争を通じた金融機関の効率的な経営

・円滑な資金供給による民間企業の資金アベイラビリティの向上

出所 各種資料より作成

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2.わが国における SAL、SECAL の推移

(1)全体的な実績の推移

調整融資は、先述のように、第 2 次石油危機、国際金利の高騰を背景として危機に

陥った開発途上国を支援するため、1980 年に世界銀行によって開始され、当初は SAL、

SECAL という融資形態で行われた。世界銀行の調整融資は多くの場合他ドナーとの協

調融資の形で行われており、わが国は世界銀行の 大のパートナーとなっている。

わが国では 1986 年に初めて SAL を実施したが、それ以降 2002 年までの SAL、及び

SECAL の実績は合計 78 件、総額 9,676 億円となっている。1 件あたりの融資額は、平均

124 億円である。年度別の傾向をみると(下図表)、案件数・融資額ともに 1988 年度にピー

クを迎え(14 件、約 2000 億円)たが、その後縮小し、97 年度~99 年度で再び増加したのち、

2000 年度以降低調に推移している。融資額ベースでみると、大きく 1987-91 年と、1997-99

年に、大きな山が形成されていることが見て取れる。その背景には以下のような国際的な

要因の他、協調融資のパートナーである世界銀行の動向にも影響を受けていると考えられ

る。

図表 5 日本の SAL 及び SECAL 実績の推移(金額、件数)

拡大HIPC

イニシアティブ

98 67

1,561

1,028

651

836

499

91

259

557

1,234

480

62

257

146255

0 0 0 0 0 0

56

14

9

11

6

21

2

5

10

1

334

5

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

0

2

4

6

8

10

12

14

16

日本SAL, SECAL総額(百万ドル)

日本SAL, SECAL件数(件)

件数(件)金額(百万ドル)

年度

日本における動き

世界における動き

資金還流構想発表

88-90 SPA 1

ナルマダダム延期

MDBキャンペーン

ワシントンコンセンサス

アジア通貨危機

HIPCイニシアティブ

新宮沢構想発表

トロントター

ム合意

ベー

カー

構想発表

MDGs

ナポリター

ム合意

ウォルフ

ェンソン総裁

91-93 SPA 2 94-96 SPA 3 97-99 SPA 4 00-03 SPA 5

ブレイディ提案発表

(債務・利払い軽減

第二次オイルショック

債務危機頻発

世銀

、構造調整融資開始

注)円からドルへの換算には、日本銀行公表の月末スポットレートの該当年度における平均値を使用した。

出所 グラフ:JBIC 案件リスト、外務省案件リストより作成

日本、世界における動き:各種資料より作成

10

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図表 6 世界銀行、日本の SAL 及び SECAL 実績の推移比較(金額、件数)

5271,173 1,072

3,391

1,018

2,361

4,392 4,3444,054

5,8295,149

6,612

3,977 3,879

2,157

4,030

4,893

11,039

14,263

6,644

3,891

4,842

3,522

98 67

1,5611,028

651 836499

91 259557

1,234

48 0 62255 146 257

810

8

22

12

20

34 3436

47

51

48

36

45

35 36

4644 45

41

38

3028

0 0 0 0 0 0

5 6

14

911

6

2 1 2

5

1 0 1

54 3 3

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

0

10

20

30

40

50

60

世界銀行SAL, SECAL総額(百万ドル)

日本SAL, SECAL総額(百万ドル)

世界銀行SAL, SECAL件数(件)

日本SAL, SECAL件数(件)

件数(件)金額(百万ドル)

年度 出所 日本:JBIC 案件リスト、外務省案件リストより作成

世界銀行:世界銀行ホームページ内、案件検索データベースより作成

(http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/PROJECTS/0,menuPK:51563~pagePK:95873~piPK:95910~theSitePK:

40941,00.html)

(イ)1980 年代後半(1987 年度~1988 年度)

~SAL 及び SECAL が増加した背景~

この時期に SAL、SECAL が急増した要因は深刻な国際収支の悪化を抱えた国が存在

する中、国際的な支援の一環として調整融資が活用されたことにあると判断される。アジ

ア諸国では円高に伴う債務返済負担増等により国際収支の悪化が問題となっていたし、

アフリカでは国際収支の悪化や財政赤字の増大が深刻化していた。これらの問題に対し、

国際社会では、「ベーカー構想」が提案され、またアフリカ支援の枠組みであるアフリカに

対する戦略的パートナーシップ(SPA: Special Program of Assistance for Africa)が形成さ

れており、日本もこれらの動きに対応して、SAL、SECAL を増大していったと考えられる。

なお、この時期における日本の SAL 及び SECAL 実績は世界銀行と同様の傾向を示して

おり、世界銀行のトレンドに影響を受けた面もあると推察される。わが国も世界銀行もと

もに、80 年代末から 90 年代初頭にかけて案件及び実績額が比較的多くなっている。

①ベーカー提案と資金環流措置

この当時、開発途上国の国際収支の悪化は流動性の危機によるものと捉えられてお

り、開発途上国の開発に不可欠な資金の供給が重要であると考えられていた。1985 年

には、IMF・世界銀行総会にて米国のべーカー国務長官より、いわゆる「ベーカー構想」

11

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12

が提案されたが、これは開発途上国の資金流動性をたかめるため、経済成長にとって不

可欠な資金(ニュー・マネー)の供給確保を目的としていた。また、こうしたニュー・マネー

の供給とともに借り入れ国の政策改革による構造調整の重要性が指摘されていた。例

えば、ヴェネチアサミット(1987 年)における「ヴェネチア経済宣言」においては、「我々は、

借入れ国の政策改革を促進し、その構造調整プログラムに融資している地域開発銀行

を含む国際金融機関の活動を強く支持する。(第 22 節)」と述べられている。

日本では、この「ベーカー構想」を受け、1988 年に 200 億ドルの資金還流措置(アンタ

イドでの供与を前提とした資金)を実施し28、その後 5 年間で 650 億ドルまで規模を拡大し

た。特に、当時は、開発途上国を巡る問題に対しては各種の開発プロジェクトを推進する

よりも差し迫った国際収支悪化を乗り切ることが第一義的であり、経済構造の改善を支

援するためのノンプロジェクト援助が大きな流れとなってきたと認識されており29、SAL及

びSECALの実績が伸びていった30。

②SPA

1987 年、アフリカにおける債務問題の深刻化を背景に、世界銀行と IMF を中心とする

複数のドナーがアフリカにおける改革プログラムの予算確保、援助の有効性を高めるた

めの協調の機会の提供を主な目的として SPA を設立した。SPA は基本的に 3 カ年の援

助期間毎に区切られており、SPA1(1988-2000)では、SPA 対象国における ODA の約

16%にあたる約 75 億ドルを拠出した。

日本は先に述べた資金環流措置という背景もあり、SPA の開始当初は積極的な姿勢

を見せている。1988 年の実績は 9 件 69 億円であり、これは 1987 年の 6 件 9 億円から

飛躍的に増加している。しかしながら、その翌年以降は 2 件 11 億円、2 件 13 億円と比較

的低レベルで推移しており、1988 年だけの一時的な伸びに留まっている。

(ロ)1990 年度前半から 96 年

~SAL 及び SECAL の実績が緩やかに落ち込みを見せた背景~

この時期に SAL 及び SECAL の件数、金額がともに落ち込んできた背景には、当初想

定された効果が現れなかったことによる構造調整に対する批判の高まり、債務削減の主

流化、アジアにおけるニーズの低下などがあったと考えられる。ちなみに、94 年までは世

界銀行も同様の傾向を見せていたが、95 年以降再び増加傾向にある。これは世界銀行

が社会主義経済から自由主義経済への移行途上にある国の支援を積極的に展開した

ことが背景にある。一方、わが国は自由主義経済への移行国に対しては主に OOF によ

る支援を行っていたため、SAL、SECAL の増加には繋がらなかったものと考えられる。

28 外務省『我が国の政府開発援助』1988 年版p.237, para.3 29 外務省『我が国の政府開発援助』1988 年版、p.19, para.5。 30 外務省『我が国の政府開発援助』1990 年版p.301。

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13

①構造調整への批判

90年代前半期は、構造調整の結果として生じた様々な困難、すなわち、過度な緊縮財

政による社会サービスの低下、金融市場の過度な自由化による金融機関の閉鎖、銀行

の貸し渋りによる中小企業の倒産などを背景に、MDBキャンペーンをはじめとして構造

調整に対する批判が指摘されるようになった時期である31。

「ベーカー構想」は、結果として民間銀行からの新規融資を十分に集められなかったこ

とから空振りに終わり、結果的に中南米やアフリカ諸国で緊縮政策や構造調整への抵抗

として反政府運動が相次いだことから、債務危機対策の転換につながった32。

また、市場主義と小さな政府を理想とする新古典派主義を理論的な根拠として提唱さ

れたいわゆる「ワシントン・コンセンサス」は多くの批判を浴び、財政の健全性、外向き志

向、経済自由化という「ワシントン・コンセンサス」の内容33は途上国に対する市場原理の

押付けとされた34。

日本においても海外経済協力基金(OECF、現 JBIC)をはじめとして、市場原理に基づ

く効率性追求一辺倒のアプローチに疑問を投げかける声が強まった。OECF は、1991 年

に「世界銀行の構造調整アプローチの問題点について-主要なパートナーの立場から

の提言」を発表し、市場原理による資源配分効率化の重要性は認めつつも政府の役割

の有効性や社会的弱者への配慮を重視するよう提起した。

②債務削減へのシフト

この時期、「ベーカー構想」の失敗を受け、新たにブレイディ米国財務長官(当時)によ

る債務削減戦略が提唱された。ブレイディは、途上国の債務危機を流動性危機ではなく、

支払不能危機と認識し、重債務国に対しては構造調整借款などの新規融資よりも債務

を削減する方向に戦略をシフトした。その後、トロント・サミット以降債務の一部棒引きが

開始され35、南米諸国やフィリピン等の債務国では債務削減措置がとられることになり、

わが国のSAL及びSECALの実績は縮小していった。

③アジア地域におけるニーズの減少

90 年代のアジア地域では、フィリピンにおける対外債務危機の緩和、インドネシアにお

ける政治的運動、他の融資形態の増加などにより、SAL 及び SECAL に対するニーズそ

のものが減少したと考えられる。

フィリピンは 80 年代初頭に対外債務危機に陥り、厳しい構造調整を実施した。その結

果、90 年代の初めには貿易、海外直接投資、金融の自由化を一定程度達成し構造調整

を完了した。

31 構造調整融資に対する直接的な批判とは位置付けが異なるが、この時期は、インドにおけるナルマダダム建設に

対する批判が多く寄せられ、その結果建設の延期が決定された時期(1992 年)と重なる。 32 毛利 [2001]、p.35。 33 毛利 [2001]、p.137。 34 批判の一例として、スティグリッツ[2002]、pp.127-131。 35 毛利 [2001]、p.36。

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14

インドネシアも、83 年の石油価格下落による経常収支危機以来、構造調整政策を受

け入れたが、民族主義者と一部のイスラム勢力による反自由化政策運動が拡大し、ス

ハルト自身もエコノミストの警告を遠ざけるようになった36。

こうした状況の下、日本の構造調整融資は、1988 年にフィリピン 3 件、インドネシア 1

件で 125 億円あったが、89 年にはフィリピン 1 件、インドネシア 1 件で 73 億円、90 年に

はフィリピン 3 件 37 億円と減少し、91 年以降アジア通貨危機まで実施されていない。一

方、この時期の円借款そのものは増加傾向にあり、プロジェクト型円借款やセクター・プ

ログラム・ローンなどの実績が増えている。

(ハ)1997 年度以降

~SAL 及び SECAL の実績が再び増加した背景~

わが国の SAL 及び SECAL は 1997 年以降再び実績を伸ばしているが、そのほとんど

が東南アジア(インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム)を対象としたものであり、その背

景には 97 年に始まったアジア経済危機への対応があると考えられる。

アジア通貨危機は、短期的な国際投機資本の急激な流出に端を発し、銀行の閉鎖と

いった金融危機から企業の倒産や失業を生む経済危機、さらに国によっては政権の崩

壊や暴動といった政治・社会危機へと発展した。こうした状況の下、貿易金融の円滑化

など短期的な資金需要を満たすための短期資金及び金融システムの安定化や景気対

策といった実体経済回復のための中長期的な資金支援に対するニーズが高まった。

日本は「アジア支援策」、「新宮沢構想」、「経済構造改革支援のための特別円借款」を

表明し、短期のみならず中長期的なものまで幅広い支援を行ったが、SAL及びSECALは

主要な援助形態であった。こうした取組は相手国の課題に対する柔軟性が高く、アジア

経済危機によって被害を受けた国の経済安定化に貢献したと言われている37。

(ニ)2000 年度以降

~SAL 及び SECAL の実績が再び低調に推移している背景~

2000 年度以降はアジア経済危機も落ち着き、貧困削減に対する取組がより重視され

るようになってきたことを背景として SAL 及び SECAL の実績が減少したと考えられる。

また、世界銀行では 2004 年 8 月に実施要領を修正し、それまで調整融資と呼ばれて

いた SAL、SECAL などを開発政策融資(Development Policy Lending)と改称し、より社会

開発に配慮したものとした。外務省でも PRSC や一般財政支援について検討が行なわれ、

2004 年 12 月にはベトナム向けの PRSC が開始された。このように現在では構造調整融

資から貧困削減戦略への取組に重点がシフトしており、こうした動きが SAL 及び SECAL

の実績に影響していると考えられる。

36 渡辺 [2003] p.160。 37 外務省 [2002b]。

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(2)形態別実績の推移

これまで SAL 及び SECAL の全体傾向をみてきたが、ここではそれぞれの形態別に実

績の推移を分析する。ただし、78 件全てが SAL、SECAL と明確に分類されているわけで

はなかったため、世界銀行との協調融資で実施した案件については世界銀行の分類に

従って SAL と SECAL を区別した。しかし、それ以外の案件についてはどちらの形態に属

するのか確認できず、「SAL 又は SECAL(確認不能)」とした。

まず、日本における SAL と SECAL の実績を件数から見ると、86 年の開始以来現在ま

で一貫してほぼ同数で推移しており、特別な傾向は見られない。金額ベースでは 80 年代

後半は SECAL、90 年代前半以降は SAL が比較的大きくなっているものの、件数がほぼ

同数であることを踏まえると、1 案件あたりの金額の大きい案件があったことが大きく影

響していると考えられ、特に国内外の動向との関連は見いだせない。

図表 7 形態別実績推移(件数、日本)

2(20%)

12(35%)7(21%) 2(20%)

10(29%)

7(21%)

6(60%)

12(35%)

20(59%)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

86-89 90-96 97-

SAL SECAL SALまたはSECAL(確認不能)件数(件)

計34 計34

計10

15

出所 JBIC、外務省案件リストより作成

図表 8 形態別実績推移(金額、日本)

77(31%)97(28%)51(14%)

34(14%)

67(20%)

90(24%)

141(56%)

178(52%)233(62%)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

86-89 90-96 97-

金額(10億円)SAL SECAL SALまたはSECAL(確認不能)

計373計342

計253

年度

年度

出所 JBIC、外務省案件リストより作成

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一方、世界銀行による構造調整融資の推移を見ると、まず 1980 年代前半には件数、

金額ともに SAL が SECAL を凌いでいたのに対し、80 年代後半にはその傾向が逆転し、

さらに 97 年以降では再び件数金額ともに SAL の割合が大きくなっている。

まず、1980 年代後半にSECALがSALの実績を上回るようになった背景には①多くのセ

クターにまたがる多様なコンディショナリティを付与することで、多大な調整コストが生じ38、

被援助国政府のキャパシティを超えると考えられたこと、②特定のセクタ-における調整

が全般的な調整よりも優先課題となったこと39、③SALはIMFのプログラムとの両立が前

提となるのに対し、SECALはIMFのプログラムへの参加が前提とはならない点40などがあ

げられる。

また、97 年以降再びSALがSECALを凌ぐようになった背景には、アジア通貨危機の勃

発により、被援助国におけるセクター横断的な構造調整融資へのニーズが増大したこと41等があげられる。

図表 9 形態別構造調整融資推移(件数、世界銀行)

163(55%)154(52%)

59(39%)44(55%)

68(45%)

143(48%)

92(61%)

36(45%)

0

50

100

150

200

250

300

350

80-85 86-89 90-96 97-

SAL SECAL件数(件)

年度

計80

計151

計297

計231

出所 世界銀行ホームページ内、案件検索データベースより作成

38 Mosley [1995] p.44, para.3. 39 Nicolas [1988] pp.13-17. 40 SALはIMF のスタンドバイアレンジメント(SBA:短期的な国際収支困難に対して、IMFが実施する も一般的な融資

制度)が実施されていることが前提となるため、同プログラムとの強いリンケージを回避する手段としてSECALが利用

されたとのことである。 Mosley [1995] p.43, para1. 41 World Bank [2001] p.9, para.2, l.7.

16

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図表 10 形態別構造調整融資実績推移(金額、世界銀行)

30,681(52%)

13,722(45%)

4,409(24%)

5,482(57%)

13,782(31%)

16,973(55%)

14,209(76%)

4,059(43%)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

45,000

50,000

80-85 86-89 90-96 97-

SAL SECAL金額(100万ド)

年度

計9,541

計18,618

計30,696

計44,463

出所 世界銀行ホームページ内、案件検索データベースより作成

3.目的・コンディショナリティの変遷

(1)目的の傾向

ここでは、わが国の SAL 及び SECAL を便宜的に①国際収支支援、②経済・産業セク

ター改革支援、③公共セクター改革支援、④社会開発支援という 4 つの目的別に分類し、

年代別の傾向を分析した。ただし、1 つの案件が複数の目的のために実施されている場

合には複数の目的を持つものとして分類した。また、80 年代の案件については案件の目

的に関する情報の取得が困難であり、サンプルが少ない点に留意する必要がある。

ここでいう国際収支支援とは、短期的なファイナンシャル・ギャップを埋めることを目的

として掲げる案件とした。また、経済・産業セクター改革支援は対象国の構造調整計画を

支援することで、同国の経済・産業セクター改革を目的として掲げる案件とした。より広く

「マクロ経済の安定」や、より単に「構造調整計画の支援」等を目的として掲げている案件

についても、当分類に含めた。公共セクター改革支援は、対象国の公共セクター効率化

等を目的として掲げる案件とした。社会開発支援は、対象国における雇用確保等、社会

サービスの水準向上を目的とした案件とした。

以上の考え方のもと、目的情報を入手できた案件(35 件)を分類・整理し、80 年代、90

~96 年、97 年以降の 3 期間に区分して推移を見た(下図)。80 年代は国際収支支援と

経済・産業セクター支援を、それぞれ単一の目的として掲げる案件が大多数であるのに

対し、90~96 年度には経済・産業セクター支援と同時に、公共セクター支援や社会開発

支援を同時に目的として掲げる案件が増えた。さらに、97 年以降では、社会開発を主目

的とする案件、国際収支支援、経済・産業セクター支援、社会開発支援の要素が複合的

に目的を形成する案件が大きな割合を占めている。こうした傾向は次のような要因が背

景にあったと推察される。

17

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18

(イ)1980 年代後半(1986 年度~1989 年度)

~国際収支支援ならびにマクロ経済政策支援が多い理由~

同時期、国際的には、差し迫った国際収支悪化を乗り切ることが第一義的な課題とな

っている途上国が存在していたことから、足の速い短期的な国際収支支援へのニーズが

大きかった。このため、資金ギャップを埋めることを目的とした融資が多く拠出されたと考

えられる。

また、貧困問題は明確に重視されることはほとんどなく、経済調整の社会的インパクト

も考慮されなかった。これは、小さい政府を志向する新古典派理論が構造調整アプロー

チの根底にあり、相対価格の是正が貧困層を均等に支援することになると考えられてい

たこと、また社会政策は主に並行して実施される投資案件により扱われるべきとの認識

があったことから、付されるコンディショナリティについても社会政策よりも経済政策関連

のものが多かった42。

(ロ)1990 年代(1990~1996 年度)

~マクロ経済政策支援が目的の中心となると同時に、一部に社会開発を主目的とした

案件が見られるようになった理由~

この時期は「ワシントン・コンセンサス」にて新古典派理論に基づく、市場主義的な構造

調整が提唱され、マクロ経済政策支援が依然目的の中心となっていた。しかし、その一

方で、構造調整アプローチに対して各種の批判が多く出された時期でもある。世界銀行

など開発銀行が環境や現地住民に対する説明や補償が不十分であるとして、NGOが中

心になり国際的に起こったMDBキャンペーン(80 年代後半~90 年代前半)や、教条的な

新古典派の考え方に警笛を鳴らした『東アジアの奇跡』(1993)が、その代表例としてあ

げられる43。

このような状況の下、世界銀行が毎年発行しているレポート、”World Development

Report” では、1990 年に社会的支出、セーフティネットを通じた弱者・貧困層の重要性を

謳っており、社会開発を主目的とする案件が策定されるようになったと考えられる。

(ハ)1997 年以降

~社会開発を主目的とする案件、国際収支支援、マクロ経済政策支援、社会開発支

援が複合的に目的を形成する案件が多く見られる理由~

この時期は 1997 年に発生したアジア通貨危機に対応する必要があり、再び短期的な

42 World Bank [2001], p.23. 43 1992 年には、インドのナルマダ・ダム建設プロジェクトにおいて移転住民への配慮が不足していたとして、プロジェク

トを延期する措置がとられており、MDBキャンペーンの象徴的な出来事となっている。

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国際収支支援のニーズが増加した。また、これと同時に、経済が困難な途上国における

社会的弱者救済の必要性が認識されており、これらの案件が複合的に形成されたと考

えられる。

図表 11 目的別 SAL 及び SECAL 金額推移(日本)

13 (3%) 13 (5%)

43 (12%)

158 (46%)

52 (21%)

5 (2%) 21 (6%)

110 (44%)

5 (2%) 16(5%)

72 (28%)

1(0.3%)

7 (2%)

134(39%)

316 (85%)

-

50

100

150

200

250

300

350

400

86-89 90-96 97-

国際収支 経済・産業 国際収支+経済・産業

国際収支+公共 経済・産業+公共 国際収支+社会

経済・産業+公共+社会 国際収支+経済・産業+公共+社会 社会

不明金額(10億円)

年度

出所 JBIC、外務省案件リストより作成

図表 12 目的別構造調整融資件数推移(日本)

3(9%) 2(20%)

2(6%)

13(38%)

2(20%)

1(3%)2(6%)

3(30%)

1(10%)

1(3%)

2(20%)

1(3%)

2(6%)

15(44%)

28(82%)

-

5

10

15

20

25

30

35

40

86-89 90-96 97-

国際収支 経済・産業 国際収支+経済・産業

国際収支+公共 経済・産業+公共 国際収支+社会

経済・産業+公共+社会 国際収支+経済・産業+公共+社会 社会

不明

年度

出所 JBIC、外務省案件リストより作成

(2)コンディショナリティの変化

コンディショナリティは SAL 及び SECAL の実行のために対象国が実現すべき条件で

あり、その内容は、各案件の目的等を反映していると考えられることから、目的の分析を

19

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するためにコンディショナリティの傾向を把握することは必要不可欠である。本調査では、

日本の過去の SAL 及び SECAL 案件全てのコンディショナリティ情報を取得することは困

難であったものの、情報を入手できた 37 件について傾向を把握した。

分析に際しては、世界銀行”Adjustment Lending Retrospective”のコンディショナリティ

の分類を元に、調査団でコンディショナリティをセクター/分野ごとに分類した44。また、こ

れらの分類をマクロ経済関連、社会開発関連、公共セクター関連に大分類し傾向を見

た。

(イ)コンディショナリティ全体の傾向

80 年代後半には金融セクター、経済政策関連、民間セクターといったマクロ経済関連

が多かったが、年度区分が進む毎に社会開発関連コンディショナリティ、公共セクター向

けコンディショナティの割合が増加、90 年代から多様化傾向がみられる。97 年のアジア

通貨危機以降も、金融セクター関連のコンディショナリティが増加しながらも同時に社会

開発関連のコンディショナリティ数も多いのは、国際収支支援と同時に貧困層などへの

配慮をしていたためと予想される。

図表 13 セクター別コンディショナリティ数推移(小分類)

20(4%)22(5%) 45(19%)65(25%)

130(27%)

5(2%)

79(30%)

85(18%)

39(16%)

53(20%)

40(17%)

132(27%)

53(20%)

7(1%)

9(4%)

100(42%)

28(6%)8(2%)

51(11%)

12(5%)

0

100

200

300

400

500

600

86-89 90-96 97-

9.農業セクター

8.教育セクター

7.社会セクター

6.環境分野

5.公共セクター

4.民間セクター

3.経済政策

2.金融セクター

1.エネルギーセクター

計263

計483

計238

年度

出所 JBIC、外務省案件リストより作成

44 分類基準は、以下のとおり。 エネルギーセクター(エネルギー価格の設定、関連企業の改革等)、金融セクター(金融市場における競争促進、金融機関の発展等を支援する政策の採用等)、経済政策(貿易自由化、インフレ対策、財政赤字対策、物価対策、産業育成等)、民間セクター(規制緩和、競争促進政策、国有企業の民営化・リストラ等)、公共セクター(債務管理、市民サービス向上、税・補助金政策等)、環境分野(森林の維持、エネルギーの効率的利用、環境規制等)、社会開発(労働関連、保健関連、貧困対策、年金・保険制度の拡充、社会開発への予算配分等)、教育セクター(教員増強、奨学金制度制定等)、農業セクター(農業信用、価格設定、農耕用地開発等)

20

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図表 14 セクター別コンディショナリティ数推移(大分類)

89(37%)

257(53%)197(75%) 40(17%)

132(27%)

53(20%)

109(46%)

94(19%)

13(5%)

0

100

200

300

400

500

600

86-89 90-96 97-

社会開発

公共セクター

マクロ経済

計263

計483

計238

年度

出所 JBIC、外務省案件リストより作成

(ロ)案件毎のコンディショナリティの構造の変化

案件 1 件当たりに盛り込まれているコンディショナリティの数や構成は年代別に変化し

ている。SECAL については特定セクターに限定されているため、そのコンディショナリティ

も当該セクターに関連するものになり、大きな傾向は見られないが、SAL については、コ

ンディショナリティが多様化していることがわかる。

80 年代の後半は比較的少数のセクターに関するコンディショナリティの設定となってお

り、その内容も民間セクターや経済政策といったマクロ経済関連が中心であった。一方、

それ以降は 4 つや 5 つのセクターに関するコンディショナリティが設定されるようになり、

一つの案件でもより複数のセクターを対象としていった様子がうかがえる。

21

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図表 15 SAL 個別案件のコンディショナリティ構造(実数)

6

4

10

8

14

7

11

3

12

4

8

19

6

7

5

7

2

4

15

19

6

9

11

1

10

12

3

8

6

14

12

4

11

7

11

27

9

12

7

3

8

6

39 9

4

1

18

5

17

9

1

4

9

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

構造調整計画(Ⅲ) (マラウイ、1986年度)

構造調整計画(ガーナ、1987年度)

公社改善計画借款(フィリピン、1988年度)

構造調整借款(Ⅱ)(コスタリカ、1989年度)

構造調整計画(ホンジュラス、1990年度)

経済構造改善計画支援のための借款 (スリランカ、1990年度)

構造調整計画(ニカラグア、1991年度)

経済復興計画(パナマ、1991年度)

構造調整計画(パプアニューギニア、1991年度)

公共セクター調整計画(パキスタン、1993年度)

経済復興計画(第二期)(ニカラグア、1994年度)

構造調整計画(Ⅲ) (ベナン、1995年度)

民間セクター調整計画(ガーナ、1995年度)

財政改革・規制緩和計画(マラウィ、1996年度)

ソ-シャル・セ-フティ・ネット借款(インドネシア、1999年度)

構造調整計画(パプアニューギニア、2000年度)

2.金融セクター 3.経済政策 4.民間セクター 5.公共セクター 6.環境分野 7.社会セクター 9.農業セクター

出所 JBIC、外務省案件リストより作成

22

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4.国別・地域別の傾向

(1)国別・地域別の全体傾向

わが国の SAL 及び SECAL の実績を地域別にみると、融資額(L/A ベース)で東南ア

ジアが全体の 44.8%、アフリカが 22.6%を占めている。各地域とも比較的少数の国に融

資が集中しており、東南アジアではインドネシア、フィリピン、アフリカではガーナ、ナイジ

ェリア、ケニア、南西アジアではパキスタン、インドなど、中南米ではペルーなどが多く、こ

れらの国への融資総額は、全融資総額の約 71.3%である。これらの国を見ると、経済規

模や貧困状況の深度のみを基準に融資先が決まっているわけではないことがわかる。

融資先の決定にあたっては要請主義を基本としているものの、複数の要請があった場合

にどのような選定基準で、あるいは何をもってこれらの国を優先していたのかについては

読み取ることができなかった。

一方、世界銀行は通貨危機や国際収支の著しく悪化した国々を主な支援対象として

いることが見受けられ、中南米を筆頭に旧東欧、東南アジア向けが多くなっている。

図表 16 日本の SAL 及び SECAL の対象国割合

(金額(L/A)ベース、1986~2002 年)

金額ベース

ケニア3%

ナイジェリア3%

その他地域4%

ガーナ4%

中南米その他7%

ペルー7%

南西アジアその他3%

インド6%

パキスタン7%

フィリピン16%

アフリカその他13%

タイ4%

ベトナム2%

インドネシア 21.9%

東南アジア計44.8%

南西アジア計15.0%

中南米計13.8%

アフリカ計13.8%

件数ベース

ナイジェリア1%

その他地域9%

ケニア4%

インドネシア 21.9%

ベトナム1%

タイ1%

アフリカその他37%

フィリピン10%

パキスタン4%

インド3%

南西アジアその他4%

ペルー3%

中南米その他10%

ガーナ8%

東南アジア計17.9%

南西アジア計10.0%

中南米計12.8%

アフリカ計50.0%

(注)構成比 2.5%以上の対象国について、国名を表示。

(東南アジア地域内で唯一 2.5%以下のベトナムを除く)

出所 JBIC、外務省案件リストより作成

23

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図表 17 対象国別 SAL 及び SECAL 実績額(日本)

1990-1996年度

67

53

37

27

17

16

14

13

13

10

0 100 200 300

ペルー

インド

フィリピン

ヨルダン

ガーナ

パキスタン

ニカラグア

スリランカ

パナマ

ザンビア

十億円1986-2000年度

212

166

68

67

53

37

36

27

26

25

0 100 200 300

インドネシア

フィリピン

パキスタン

ペルー

インド

ガーナ

タイ

ヨルダン

ケニア

ナイジェリア

十億円1986-1989年度

105

93

25

19

19

16

14

13

12

11

0 100 200 300

インドネシア

フィリピン

ナイジェリア

パキスタン

ケニア

ボリビア

ガーナ

モロッコ

コスタリカ

マラウイ

十億円1997-2002年度

107

36

36

32

20

7

6

5

2

0 100 200 300

インドネシア

フィリピン

タイ

パキスタン

ベトナム

スリランカ

ガーナ

パプアニューギニア

キルギス

十億円

※この期間の対象は9カ国のみ

出所 JBIC 案件リストより作成

図表 18 対象国別 SAL 及び SECAL 実績額(世界銀行)

9,419

9,259

7,772

5,319

5,120

3,630

3,600

2,956

2,877

2,541

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000

メキシコ

アルゼンチン

韓国

トルコ

ロシア

ブラジル

インドネシア

パキスタン

コートジボワール

モロッコ

百万ドル1980-2002年度

3,415

2,681

1,550

1,452

1,265

1,202

1,155

1,038

1,015

950

0 2,000 4,000 6,000 8,00010,00

0

メキシコ

トルコ

アルゼンチン

フィリピン

モロッコ

ナイジェリア

ブラジル

パキスタン

バングラデシュ

インドネシア

百万ドル1980-1989年度

3,275

2,480

1,650

1,501

1,450

1,250

1,009

910

875

800

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000

アルゼンチン

メキシコ

ペルー

コートジボワール

インド

ポーランド

ザンビア

ウクライナ

ハンガリー

アルジェリア

百万ドル1990-1996年度

7,000

4,620

4,434

3,524

2,637

2,475

2,400

1,640

1,350

1,061

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,0

韓国

ロシア

アルゼンチン

メキシコ

トルコ

ブラジル

インドネシア

パキスタン

タイ

コロンビア

百万ドル1997-2002年度

出所 世界銀行ホームページ内、案件検索データベースより作成

24

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図表 19 対象国別 SAL 及び SECAL 件数(日本)

1986-2002年度

8

6

4

4

3

3

3

3

3

2

0 2 4 6 8

フィリピン

ガーナ

インドネシア

マラウイ

ケニア

トーゴ

パキスタン

パプアニューギニア

ヨルダン

10カ国

件1986-1989年度

4

3

2

2

2

2

2

2

2

1

0 2 4 6 8

ザンビア

ベトナム

インドネシア

ギニア

ケニア

ブルンジ

マダガスカル

ジャマイカ

パナマ

13ヶ国

件1990-1996年度

3

3

3

2

2

2

2

2

1

0 2 4 6 8

ガーナ

フィリピン

ヨルダン

インド

ニカラグア

パプアニューギニア

ペルー

モーリタニア

15カ国

件1997-2000年度

2

1

1

1

1

1

1

1

1

0 2 4 6 8

インドネシア

ガーナ

キルギス

スリランカ

タイ

パキスタン

パプアニューギニア

フィリピン

ベトナム

出所 JBIC 案件リストより作成

図表 20 対象国別 SAL 及び SECAL 件数(世界銀行)

32

25

24

23

22

21

21

20

20

20

0 10 20 30 40

ガーナ

コートジボワール

ザンビア

アルゼンチン

マラウィ

バングラデシュ

ウガンダ

ケニヤ

メキシコ

タンザニア

件1980-2002年度

13

12

10

9

8

8

8

7

7

7

0 10 20 30 40

トルコ

ガーナ

バングラデシュ

ウガンダ

ジャマイカ

マラウィ

メキシコ

モロッコ

パキスタン

タンザニア

件1980-1989年度

14

14

12

11

11

11

11

10

10

9

9

9

0 10 20 30 40

コートジボワール

ザンビア

ガーナ

バングラデシュ

ガイアナ

ホンジュラス

マラウィ

ケニア

セネガル

アルゼンチン

ボリビア

ウガンダ

件1990-1996年度

10

9

8

7

6

6

6

6

6

6

0 10 20 30 40

アルゼンチン

タンザニア

ガーナ

メキシコ

ブルガリア

カメルーン

コートジボワール

パキスタン

ロシア

ザンビア

件1997-2002年度

出所 世界銀行ホームページ内、案件検索データベースより作成

(2)国別・地域別の推移と背景

次に、わが国の SAL 及び SECAL の国・地域別の推移を年度別に見ると、件数ベース

では、80 年代末のアフリカ向け融資件数が多い。また、金額的には 80 年代末と 90 年代

末の東南アジア向けが多く、全体の傾向に大きな影響を及ぼしていることが分かる。さら

に 1991 年の中南米向けの大きさも目立っている。

25

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図表 21 わが国の SAL 及び SECAL 実績の推移(対象地域別、金額)

16 9

69

11 13 16 11 17 10

23 8

22

11

77

13

125

73

37

72

128

19

17

20

33

16 32

77 6273 528

11 4

7

0

50

100

150

200

250

1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002年度

金額(10億円)

南西アジア

東南アジア

中南米

中東

中央アジア

大洋州

欧州

アフリカ

出所 JBIC、外務省案件リストより作成

図表 22 わが国の SAL 及び SECAL 実績の推移(対象地域別、件数)

56

9

2 21

2 2

4

211

1

1

1

1

21

1

1

1

2 2

3

1 1

4

23

2

3

1

2

1

1

1

1 10

2

4

6

8

10

12

14

16

1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 年度

件数

南西アジア

東南アジア

中南米

中東

中央アジア

大洋州

欧州

アフリカ

出所 JBIC、外務省案件リストより作成

26

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図表 23 わが国の SAL 及び SECAL 実績の時期別推移(対象地域別、金額)

6(2%)

75(22%)105(28%)

2(1%)

5(2%)

10(3%)

2(1%)

27(8%)23(6%)

105(31%)

29(8%)

200(79%)

37(11%)197(53%)

39(16%)

87(25%)

19(5%)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

86-89 90-96 97- 年度

金額(10億円)アフリカ 欧州

大洋州 中央アジア

中東 中南米

東南アジア 南西アジア

計373

計342

計253

出所 JBIC、外務省案件リストより作成

図表 24 わが国の SAL 及び SECAL 実績の時期別推移(対象地域別、件数)

22(65%)

13(38%)

1(10%)

1(3%)2(6%)

1(10%)1(10%)

2(6%)

3(9%)

3(9%)

7(21%)

6(18%)

3(9%)

5(50%)

1(3%)5(15%)

2(20%)

0

5

10

15

20

25

30

35

40

86-89 90-96 97- 年度

件数(件)

アフリカ 欧州

大洋州 中央アジア

中東 中南米

東南アジア 南西アジア

計34 計34

計10

出所 JBIC、外務省案件リストより作成

27

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(イ)アフリカ

わが国のアフリカ向け融資実績をみると、1980年代後半~1990年代におけるまで、案

件数の多さが目立つ。ピークは SPA1 期(1988~90 年度)。SPA2 期以降は縮小し、SPA4

期には一度ゼロとなっている。

アフリカが案件数において比較的多いのは、アフリカ地域に国際収支状況の好ましく

ない国が多いこと、また、日本がSPAに参加しており、積極的に支援を実施していたこと

があげられる45。

SPA2 以降縮小した理由は、この時期債務削減の議論が盛んに行われていたことを踏

まえると、新規融資の供与による支援から、債務削減による支援へと、アフリカに対する

援助の形態がシフトしてきたことの影響を受けたものと推測される。

図表 25 対アフリカ SAL 及び SECAL 実績の推移と背景

169

69

11 13 716

11 017

10 0 0 6 0 0 0

5

6

9

2 2

1

2 2

0

4

2

0 0

1

0 0 00

10

20

30

40

50

60

70

80

1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

年度

金額(10億円)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

件数(件)金額(左軸)

件数(右軸)

SPA2 SPA4 SPA5 SPA3SPA1

年度

アジア通貨危機

(資金還流措置) 98.10 新宮沢構想

88.11

トロントスキーム合意 94.12

ナポリスキーム合意 99

拡大 HIPC イニシアティブ

96

HIPC イニシアティブ

出所 JBIC 案件リスト、外務省案件リストより作成

45 アフリカ諸国等LLDCの援助先としての重要性につき、『我が国の政府開発援助』1988 年版、p.4、para.2、SPAにつき

同p.93, para.2~p.96, para.1 に関連する記述がある。

28

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(参考)SPA における議論内容と支援方針の変化

SPA は 3 年プログラムとして、1988 年より実施されている。もともと SPA-3 までは、

Special Program of Assistance for Africa という名称だったがその後改名され、現在では

Strategic Partnership with Africa の略となっている。現在は第 6 次が進行中となってい

る。

これは各種ドナーの協調的な試みとして実施されており、IDA と IMF がその中心的な

役割を果たしている。対象国は、サブサハラの低所得高債務国となっている。

(Adjustment for Africa で検討されている 29 カ国が対象国。)

基本的な狙い

改革プログラム用に十分な予算が確保できるように支援すること

そうしたプログラムに対するドナー支援の有効性を高めるための協調の場を提供

すること

これまでの実績と評価

SPA の実績は以下の通りであるが、SPA が開始される前の調整融資は、SPA1 の水

準の 60 パーセント程度となっていたことから、SPA の影響は大きいと考えられる。

図表 26 SPA による調整融資

(十億ドル)SPA 1 SPA 2 SPA 3 SPA 4 SPA 5

1988-90 1991-93 1994-96 1997-99 2000-02

IDA 1.6 2.3 3.3 2 3.3 12.5

IMF 1.7 1 2 1.7 2.1 8.5

他のSPAドナー 4 4.9 5.6 3.3 2.8 21.6

Fifth Dimension※ 0.2 0.3 0.5 0.2 0.2 1.4

Total 7.5 8.6 11.5 7.2 8.4 44

SPA諸国向けODAに占める割合

15.7 16.6 22.5 18.5 19.1(見込み)

※Fifth Dimention: 80年代末にIDAにより設立された、貧困国を対象とした債務救済スキーム

合計

SPA-1/2 の成果については、マクロ経済政策面ではある程度の改革が実現し、それ

にともない経済成長や貿易面での改善はみられたが、一方で公共部門の削減や公社民

営化などはあまり進まなかったという評価が行われている。46

SPA-3 の開始においては、World Bank [1994] Adjustment in Africa で指摘された課題

がほぼ踏襲されている。SPA-3 開始時に挙げられていた 5 つの優先事項は以下の通り:

46 World Bank [1994].

29

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政策改革の実施強化

貧困削減

セクター投資計画への協調支援

現地の管理能力や組織能力強化

モニタリングの改善

特に 初の点については、かけ声や方針発表ではなく実際の実施や結果に基づいた

モニタリングが重要とされている。また、貧困削減テーマとして重要性を増してきたのもこ

の SPA-3 の時点であり、この頃から PRSP との連携などがうたわれはじめている。

ただしSPA-4 頃にはすでに構造改革はある程度進み、また多くのアフリカ諸国が多少

なりとも国民 1 人当りの成長は実現していたため、構造調整のプライオリティは下がり、

代わりに成長の加速ならびに貧困削減等のより長期的な問題に関心が移ったとされる47。

SPA-4 融資額が下がっているのは、こうした認識が背景にあると予想される。

SPA-5 になると、アフリカ諸国がMDGを達成できないことが大きな懸念として指摘され

るようになり、これに対する対策としてSPAの役割がクローズアップされるようになってき

た。SPA-5 は、PRSPの重要性の指摘と、PRSP採用の推進(それらをコンディショナリティ

としたパフォーマンス評価)を重要なポイントにしてきた48。

(ロ)東南アジア

わが国の SAL 及び SECAL の実績のうち、融資額(L/A ベース)で も大きい割合を占

めるのが東南アジアである。この地域では、1988~90 年及び 98~99 年に SAL 及び

SECAL の融資実績が集中しており、2 つの山を形成していることが図表 27 からもわかる。

この背景には、先述のように 80 年代後半の円高による債務返済負担増と資金環流措置、

90 年代における対外債務危機の緩和と政治運動、90 年代後半のアジア通貨危機など

があげられる。また、この地域の実績の多くはインドネシア並びにフィリピンに集中してお

り、両国の政治・経済状況及び他の融資形態の動向がこうした傾向に関係していると考

えられる。

30

47 SPA-6 [2002] p.2 48 SPA-6 [2002] p.3, Annex C

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図表 27 対東南アジア SAL 及び SECAL 実績の推移と背景

72

33 35

72

36

37

36

20

40

53

0 0

4

2

3

0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

2 3

0

20

40

60

80

100

120

140

1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10インドネシア タイ フィリピン ベトナム 件数合計 件数(件)承諾額(十億円)

年度

97 アジア通貨危機

(資金還流措置)

85

ベーカー構想

98.10 新宮沢構想 89.3

ブレイディ構想

出所 JBIC 案件リスト、外務省案件リストより作成

①インドネシア

インドネシア向け SAL 及び SECAL の実績は、2 つの山を形成しており(図表 28)、1980

年代及び 90 年代の終盤に実績が集中する一方で 90 年から 97 年までは実績が 0 となっ

ている。

80 年代の終盤に実績が伸びている背景には、83 年の石油価格下落によって発生した

対外債務危機によって調整融資に対するニーズが存在しており、これが資金環流措置

のタイミングと合致したことによると考えられる。

図表 28 対インドネシア SAL 及び SECAL 実績の推移

72

3335

72

0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

1111

0

10

20

30

40

50

60

70

80

1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

SAL及びSECAL承諾額 SAL及びSECAL件数

承諾額(十億円) 件数(件)

年度

出所 JBIC 案件リスト、外務省案件リストより作成

31

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図表 29 インドネシアの対外債務(対 GDP 比率)推移

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

160%

180%

1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002年度

出所 World Development Indicators より作成

また、90年代にSAL及びSECALが実施されなかった背景には、同国向けのセクター・

プログラム・ローンならびにプロジェクト型援助といった他の融資形態の実績が増えてい

ることも影響していると考えられる。

図表 30 から、まず 88・89 年度に実施されていた SAL 及び SECAL が、90 年度以降に

はセクター・プログラム・ローンにより代替されていることがわかる。これら SAL 及び

SECAL ならびにセクター・プログラム・ローンにより、90 年代初頭までは当時逼迫してい

たインドネシア経済を支援すべく、足の速い援助が実施されたものと考えられる。

94 年度以降はセクター・プログラム・ローンも減少するものの、円借款合計金額に目立

った減少は見られず、むしろ 94 年以降は増加傾向にある。これは、プロジェクト型融資額

の規模・割合ともに上昇していることを示している。

アジア通貨危機時には、再び SAL 及び SECAL とセクター・プログラム・ローンが増加し

ている。危機を反映してプロジェクト型融資の承諾額割合は 98 年に大幅に減少し、99 年

度には一度 0 となっている。通貨危機収束後、2000 年度以降再び構造調整融資の承諾

額はなくなり、プロジェクト型援助が再び盛り返している。

32

Page 30: Ⅱ.調整融資のレビュー - Ministry of Foreign Affairs › mofaj › gaiko › oda › shiryo › hyouka › ...②SALのプロセス SALは、通常トランシェと呼ばれる複数の期に分けて実施され、設定されたコンディシ

図表 30 対インドネシア SAL 及び SECAL、セクター・プログラム・ローン、

その他の円借款の推移

72

33

72

3868 66

3421 17 16 20

150

80 88

104

127143 94 108

124137 153

174195

45

236

35

99

0 01 1

0 0 0 0 0 0 0 01 1

0 00 0 0 01 1 1 1 1 1 1 1

20 0 0

13

86

13

16

19

1618

2021

23

19

10

6

4

0

50

100

150

200

250

1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001

0

5

10

15

20

25

30

SAL及びSECAL承諾額 セクター・プログラムローン 承諾額

その他円借款 承諾額 SAL及びSECAL件数

セクター・プログラムローン 件数 その他円借款 件数

承諾額(十億円) 件数(件)

年度

出所 JBIC 案件リスト、外務省案件リスト、ODA 白書各年版より作成

②フィリピン

フィリピン向けの調整融資実績も、インドネシア同様 2 つの山を形成しており(図表 31)、

1980 年代及び 90 年代の終盤に実績が集中する一方で 91 年から 97 年までは実績が 0

となっている。

フィリピンは 80 年代初頭に対外債務危機に陥り、厳しい構造調整を実施した。これが

インドネシアと同様に資金環流措置のタイミングと合致したことにより、80 年代後半の実

績の伸びに繋がっていると考えられる。

図表 31 対フィリピン SAL 及び SECAL 実績の推移

53

4037 36

0 0 0 0 0 0 0 0 0

1

0 0 0 0

3

1

3

0

10

20

30

40

50

60

1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

SAL及びSECAL承諾額 SAL及びSECAL件数

承諾額(十億円) 件数(件)

年度

出所 JBIC 案件リスト、外務省案件リスト、ODA 白書各年版より作成

33

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図表 32 フィリピンの対外債務(対 GDP 比率)推移

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002年度

出所 World Development Indicators より作成

また、91~97 年度には SAL 及び SECAL の実績が 0 になるが、円借款合計額自体は

一度縮小するものの、基本的にアジア通貨危機までの間増加傾向にある。この間、ノン

プロジェクト型借款は供与されていないことから、フィリピンにおいてはプログラム型より

もプロジェクト型の援助が実施されていたことが見て取れる。

図表 33 対フィリピン SAL 及び SECAL、その他の円借款の推移

53 40 37 36

121

7775

162

37

8247

124149

124

121

136 129 114

0 0

31

3

0 0 0 0 0 0 01

0 0 00

18

1112

17

1

7 7

14

18

14

0

13 1315

8

0

50

100

150

200

250

1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001

0

5

10

15

20

25

30

SAL及びSECAL承諾額 その他円借款 承諾額

SAL及びSECAL件数 その他円借款 件数

承諾額(十億円) 件数(件)

年度

出所 JBIC 案件リスト、外務省案件リスト、ODA 白書各年版より作成

34

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③その他

アジア通貨危機によって大きな影響を受けた韓国に対しても資金需要があったと考え

られるが、わが国と世界銀行では SAL 及び SECAL の実績が大きく異なる。世界銀行は

金額ベースで 90-00 年における第 2 位の供与先となっているのに対し、日本は韓国向け

実績がない。これは、日本にとって韓国は ODA 卒業国となっていたため、アジア通貨危

機支援として OOF による支援を供与していたことが主な要因であると考えられる。

また、モンゴルは比較的規模の小さい移行国であり、円借款による支援を供与してい

るものの、SAL 又は SECAL の実績はない。

(ハ)南西アジア

南西アジア向けの案件を見ると、わが国の構造調整融資全体の供与が盛んであった

80 年代末~90 年代前半を中心に、各年概ね 1 件ずつ(90 年のみ 2 件)供与されている

(図 34)。対象国はインド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュの 4 カ国となっており、

特にインドならびにパキスタン向けの案件の規模が大きい。

今回の調査では、この地域の実績の推移の背景は明らかにならなかった。ただし、94

年から 2001 年まで実績がない中で例外的に 1997 年に、パキスタン向けに SECAL が供

与されている背景には、この時期パキスタンにおいて経常収支の赤字が膨らんでいたこ

とが背景にあると考えられる(図表 35)。

図表 34 対南西アジア SAL 及び SECAL 実績の推移

20

33

7

16

324

13

19

0 0 0

1

2

1 1 1

0 0 0

1

0 0 0 0

1

0

5

10

15

20

25

30

35

1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

インド スリランカ パキスタン バングラデシュ 件数合計

件数(件)承諾額(十億円)

年度

出所 JBIC 案件リスト、外務省案件リストより作成

35

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図表 35 パキスタンの経常収支(対 GDP 比率)

-3.7-3.2-2.6

0.2

-3.8-3.4-2.0-1.7

-3.7-3.3-4.2

-2.8-3.9

-5.6

-3.5

-5.5

-7.0

-2.7-3.6

-1.6-0.1

3.2

6.6

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

(%)

年度

赤字

出所 World Development Indicators より作成

(ニ)中南米

中南米向けの案件を見ると、日本の構造調整融資全体の供与が盛んであった 80 年

代末~90 年代前半を中心に実績が伸びている。特に 91 年度の供与額規模の大きさが

目立っているが、これはペルー向けに大規模案件が供与されていることが影響している

(図表 36)。

80 年代末~90 年代前半の構造調整融資の供与は、資金還流措置の一環であると考

えられる。特にペルーに対し、91 年度に大規模な構造調整融資が供与された背景には、

90 年 7 月のフジモリ政権の発足と、同政権による経済構造調整の断行と国際金融社会

への復帰があり49、同じタイミングで世界銀行も同年度よりペルーに対する構造調整融

資の供与を開始している。

その後、80 年代後半の保護主義経済により、一時はインフレ率年間 7 千%のハイパ

ーインフレを記録するも、90 年代の同政権下のネオリベラリズム経済政策により、インフ

レは沈静化し50 (図表 37)、これと呼応する形でSAL及びSECALの実績は減少している。

49 外務省『我が国の政府開発援助(1992 年度版)(下)』、p.715。 50 外務省『政府開発援助 国別データブック(2004 年度版)』、p.872。

36

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図表 36 対中南米構造調整融資実績の推移

12

410

4

13

55

137

9

8

0 0

1

2

3

1

0

1

0 0 0 0 0 0 0 0

2

-

10

20

30

40

50

60

70

80

90

1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

コスタリカ ジャマイカ ニカラグア パナマ

ペルー ボリビア ホンジュラス 件数合計

件数(件)承諾額(十億円)

年度

出所 JBIC 案件リスト、外務省案件リストより作成

図表 37 ペルーのインフレ率推移

3,398.7

7,481.7

59.1 75.4 64.4 111.2

110.2

163.4 77.985.8

667.0409.5 73.5 48.6 23.7 11.1 11.5 8.6 7.2 3.5 3.8 2.0 0.2

-

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002

インフレ率(%)

年度

出所 World Development Indicators より作成

(ホ)ロシア、東欧諸国

社会主義経済から自由主義経済への移行途上にある国に対し、世界銀行は積極的

に調整融資を供与している。例えば、ロシアは世界銀行の調整融資の第 4 位(金額ベー

ス)の受取国となっている。

これに対し、わが国はロシアをはじめとする主要な旧東欧諸国に対しては主にOOFに

より支援を行なっており、SAL 及び SECAL の実績は少ない。特に、ロシア向けの実績は

ない。

37

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5.SAL 及び SECAL の課題

(1)課題の類型

調整融資に関しては、80 年代より数々の課題が挙げられてきた。その内容を大きく整

理すると、概ね下表のように 3 つのタイプにまとめられると考えられる。

図表 38 SAL 及び SECAL に対する批判

・完全競争市場を途上国に単純に適用しているが、これは途上国の経済社会の現実からあまりに遠い前提に基づいている

・構造調整だけでは持続的な投資の波を生むのに不十分であり、追加的な他の政策が必要ではないか

・性急な輸入自由化は、途上国の産業の発展を阻害するのではないか

・金融セクターのあり方を考える上で市場原理に偏りすぎていないか

・地場の民間資本が十分に育っていないような国においても民営化を強行していないか

・緊縮財政の結果として不況が生じ、一般大衆の生活にダメージを与える。また、緊縮財政は省庁や国有企業等公的部門における人員整理につながり、新たに失業をもたらす。

・歳出削減が社会セクター向け予算の削減につながる。

・財政再建と市場原理導入の目的で行なわれる価格補助金の削減・廃止により、物価が上昇する。

・価格自由化や為替レートの調整による切り下げの結果、物価が上昇する。

・構造調整融資により経済的弱者が悪影響を受ける可能性があることから、何らかのセーフティネットが同時に必要。

・世銀が要求する政策改革に対し、被援助国の方は強く反対意見を述べることができないことから、政策対話の仕組みがうまく機能しない。この結果、長期的に見て望ましくない政策改革を強制される場合がある。

・実施スケジュールが野心的で性急な効果を狙いすぎており、また、プログラムの内容が必要以上に複雑かつ広範囲であるため,途上国側の実施能力を超える。

・改革プログラムの内容が画一的で現地の実状が無視されている。

・派遣国の利害の代弁している側面も否定できない。自らが優位を持つ技術やすでに先行的に構築した制度的枠組みが国際標準として認定されれば、競走上極めて有利となることは自明であるからである。

・金融自由化・資本取引の自由化には力を注いだものの、その監督・規制の強化には政策当局や金融機関の注意を向けさせなかったことから、通貨危機が発生した。

出所 整理の考え方については次の文献によった。   ・下村恭民他『ODA大綱の政治経済学』有斐閣、1999年、pp.22-26.  批判内容については、上記に加え、次の文献を参考にした。 ・ウィリアムイースタリー『エコノミスト 南の貧困と闘う』東洋経済、2003年   ・海外経済協力基金(当時)「世界銀行の構造調整アプローチの問題点について」『基金調査季報』No.73、1992年   ・小浜裕久『ODAの経済学(第2版)』日本評論社、1998年   ・ジョセフ・E・スティグリッツ『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』徳間書店、2002年   ・西垣他『開発援助の経済学(第3版)』有斐閣、2003年   ・毛利良一『グローバリゼーションとIMF・世界銀行』大月書店、2001年   ・E. Zuckerman, “The Social Cost of Adjustment” 1991. ・J. Nelson and S. Eglinton, Global goals, Contentious Means, 1993. ・Koeberle, S. G. “Should Policy-Based Lending Still Involve Conditionality?”, 2003.   ・World Bank OPCS. “FROM ADJUSTMENT LENDING TO DEVELOPMENT POLICY LENDING:                 UPDATE OF WORLD BANK POLICY”, 2003.

3

運用面の批判

(構造調整融資を実施する国際機関の姿勢ないし政策手段の運用に関するもの)

1

理論的視点からの批判

(新古典派経済学の基本前提が、途上国の現実から著しく乖離していることを指摘しつつ、このアプローチの有効性に疑問を投げかける)

2

「調整の社会的側面」への批判

(負の側面としての社会的影響に着目)

38

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39

(2)課題への対応について

SAL、SECAL の目的やコンディショナリティは変化しており、その内容は、短期的な国

際収支のバランスから中長期のマクロ経済支援、さらには公共セクターの改革や弱者は

貧困層への社会配慮など複合的なものへと変化している。この背景には、特に 90~96

年代にかけておこった MDB キャンペーンや途上国からの抵抗・批判があげられる。すな

わち、SAL、SECAL はこれらの批判に対応するように、その目的やコンディショナリティの

内容を変化させていたのである。

2004年8月、世界銀行はこれまでの調整融資(Adjustment Lending)から開発政策融資

(Development Policy Lending)に名称を改め、調整融資のあり方を大きく変えようとして

いる。では、変容する調整融資は、先の 3 つの課題にどのように対応し、あるいは対応し

ていないといえるのだろうか。ここでは、本レビューの対象となった SAL,SECAL について

注目し、次に開発政策融資として現在進められている PRSC(Poverty Reduction Support

Credit)についても 2004 年 12 月に協調融資として始められたばかりのベトナム向け

PRSC に注目してみる。

(イ)3 つの課題

前述の 3 つの課題は以下のように要約できる。

①理論的視点からの批判:新古典派経済学の基本前提が途上国の現実から乖離してい

る。

②調整の社会的側面への批判:構造調整の結果、社会的側面、特に弱者に負の影響を

負わせる。

③運営面の批判:融資側(国際機関など)の姿勢やアプローチが高圧的である。

(ロ)SAL、SECAL の課題への対応状況

世界銀行の SAL,SECAL はこうした批判に応えて変化している。コンディショナリティが

社会セクター分野に増加したこと、さらにはコンディショナリティの量も減少傾向にあるこ

となどはその現れである。

これまで世界銀行のコンディショナリティは、画一的で教条主義的である、援助側の論

理で進められ途上国の主体性が重んじられていない、コンディショナリティ項目が多すぎ

る、貧困層を無視している、などの批判を浴びてきた。これらの指摘は、それぞれ先の 3

つの課題に通じるものである。

このような批判を受けながらも調整融資は続けられ、1988 年以降、貸付全体額の

25%以上を占めている。しかしながら、その内容、特にコンディショナリティには変化がみ

られ、1990 年代後半からは、社会セクター、環境、公共セクター管理、財務・民間セクタ

ー分野でのコンディショナリティが増加している。このように、世界銀行の調整融資は、先

の課題②に対応しようとしていたことがわかる。

わが国の SAL,SECAL について注目すれば、先のコンディショナリティの分析結果から

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40

は、社会セクター分野でのコンディショナリティは 88 年以前より実施されており、特に

1988年―1994年に増加傾向を示している。本調査では、コンディショナリティの実施方法

と実施状況、さらにはその影響や効果についてはみていない。したがって、本分析のみ

では限界はあるが、少なくとも社会セクターへの配慮は皆無ではなく、年月を経るにつれ、

その比重は高まっていることがわかる。その意味で、課題②に対しては、SAL、SECAL と

もに対応しようとしていたことは認められる。

(ハ)新たな政策支援ツール(Development Policy Lending)による対応

上記のような SAL 及び SECAL 自体の変化に加え、世界銀行は新たな政策支援ツー

ルを作ることで改善を図っている。2004 年 8 月、世界銀行は、SAL,SECAL など調整融資

(Adjustment Lending)の名称を改め「開発政策融資(Development Policy Lending)」とし

た。その目的は、数々の調整スキームが作られ複雑化したものを整理し、PRSP や MDG

をもとに貧困削減に焦点をあてたスキームをつくること、そしてその運営は途上国のオー

ナーシップを重んじた参加型にすることである。

開発政策融資の代表的なスキームが PRSC(Poverty Reduction Support Credit)である。

PRSC とは世界銀行が 2001 年 5 月に導入したもので、当該借り入れ国が定めた貧困削

減戦略(Poverty Reduction Strategy Paper: PRSP)に基づき、その実施を支援するため

に供与されるローンである。世界銀行はこれまでに、ブルキナファソ(3 件)、ベトナム、ウ

ガンダ、アルベニア(2 件)、スリランカ、ネパール、タンザニア、ベナン、ニカラグア、ガイ

アナで実施している。

PRSCと調整融資の相違は図表 39 にまとめられる。すなわち、融資のゴールは短期的

マクロ経済安定から、それと貧困削減になり51、実施にあたり借り入れ国のオーナーシッ

プを尊重するスタンスに変わっている。また、借り入れ国の参加を得ながら、当該国の

PRSPをもとに実情に応じたコンディショナリティを作成しようとしている。これらは、課題

②、③に対応しようとしている。

しかしながら、運営面の修正について疑問が残る点もある。調整融資では、複数のト

ランシェに分けてコンディショナリティの達成状況をチェックする方法が借り入れ国の負担

になっているという批判やまた、融資を受けたいがゆえに、達成不可能なコンディショナ

リティを受け入れ、融資後に「できなかった」という言い訳を借り入れ国側が行い、同時に

融資側の担当者は自身の業績評価が悪くなることを憂慮して、コンディショナリティの達

成状況が多少悪くても次のトランシェのディスバースをしてしまうという、モラルハザード52

の問題も指摘されていた。このような批判に対し、PRSCにおいては単一のトランシェにし

ている。また、調整融資のように、 初のトランシェで支払いをし、その際に課したコンデ

51 構造調整あるいはセクター構造調整の目的変化分析からは、マクロ経済安定を機軸にしながら教育や農業など社

会開発目的を加えて組み合わせていることがわかる。したがって、マクロ経済から社会開発というように単純に目的が

転換されているわけではない。 52 融資後のコンディショナリティ達成状況が悪く財政状況や貧困状況が芳しくない場合にドナーが助けてくれることを

予想し、受入国は、改革の努力を行うインセンティブがないことを受入国のモラルハザードと呼ぶ。構造調整融資の問

題点としてSevensson[2000]が指摘したものである。

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ィショナリティの達成状況に応じて次のトランシェを決定する方法はとらない。PRSCでは、

PRSPにもとづき既に達成された成果(prior action)に応じて行われることになっている。

しかし、ベトナム向けPRSCのように、第 2、第 3 のPRSCが続く場合には、次期のPRSCを

開始する際に達成しているべき成果(trigger)を設定することになっている。こうなると、事

前に融資条件を提示するのと同様にもみえ、伝統的な調整融資のコンディショナリティの

提示の仕方との相違は明らかではない。 したがって、調整融資で批判されていた運用

面の問題、すなわちトランシェが原因となってもたらしたとされる問題はPRSCが複数繰り

返される場合には必ずしも解消するとは言い難い。

図表 39 PRSC と伝統的構造調整ローンの相違点要約表

政府及びNGOの幅広い参加に基づく

協議世銀による政府との対話ステイクホルダー

の参加

・中期的なフレームワークの下、通常シングルトランシェのプログラムをシリーズで行う

・Ex postで、順応性があり、トリガーと

なるコンディショナリティー

・結果に注目し、成果のモニタリングを行う

・極力予算サイクルとの整合を図る

・一回限りで、マルチトランシェで実施

・Ex anteで順応性のないコンディショ

ナリティー

・コンディショナリティーの実行をモニタリング

・国内予算のサイクルと無関係に実施

案件の形成

中期的に構造面、社会面、制度面を重視。社会サービスの分配、規制の枠組み、公的セクターマネジメント、ガバナンス、キャパシティービルディング。

短期のマクロ経済を重視。安定化、市場・貿易の自由化、民営化及び民間セクター育成を主な政策目標とする。

重点ポイント

当該国の状況に応じカスタマイズされた政策提言。

ワシントンコンセンサスに基づき標準的な政策をアドバイス。

世銀のポリシーフレームワーク

PRSPに基づいた当該国のイニシアティ

ブ/オーナーシップを重視。開発パートナーによる調和的な支援。

世銀、IMF及び開発パートナーが政

策形成の中心をなす。イニシアティブ/

オーナーシップ

PRSC伝統的構造調整ローン

政府及びNGOの幅広い参加に基づく

協議世銀による政府との対話ステイクホルダー

の参加

・中期的なフレームワークの下、通常シングルトランシェのプログラムをシリーズで行う

・Ex postで、順応性があり、トリガーと

なるコンディショナリティー

・結果に注目し、成果のモニタリングを行う

・極力予算サイクルとの整合を図る

・一回限りで、マルチトランシェで実施

・Ex anteで順応性のないコンディショ

ナリティー

・コンディショナリティーの実行をモニタリング

・国内予算のサイクルと無関係に実施

案件の形成

中期的に構造面、社会面、制度面を重視。社会サービスの分配、規制の枠組み、公的セクターマネジメント、ガバナンス、キャパシティービルディング。

短期のマクロ経済を重視。安定化、市場・貿易の自由化、民営化及び民間セクター育成を主な政策目標とする。

重点ポイント

当該国の状況に応じカスタマイズされた政策提言。

ワシントンコンセンサスに基づき標準的な政策をアドバイス。

世銀のポリシーフレームワーク

PRSPに基づいた当該国のイニシアティ

ブ/オーナーシップを重視。開発パートナーによる調和的な支援。

世銀、IMF及び開発パートナーが政

策形成の中心をなす。イニシアティブ/

オーナーシップ

PRSC伝統的構造調整ローン

出所 国際協力銀行資料

2003 年 12 月、日本政府はベトナム向け PRSC(III)への協調融資に参加し、2004 年よ

り実施している。協調融資であるので基本的には先の PRSC の目的、方針に準じて融資

をしている。その中で、日本は融資の際、①CPRGS(ベトナム版 PRSP)の資源配分メカ

ニズムの適正化、②日越共同イニシアティブの実施支援、③CPRGS実施状況のモニタリ

ングと評価への参加を表明している。①については、インフラ運営管理費用に配慮ある

財務マネジメントや公共投資プロジェクトの選定方法の改善、②は輸出義務規定の廃止

や知的財産権行政の強化に関する行動計画の策定、③は政策評価、公的支出レビュー

への参加などである。

これらは、マクロ経済の成長と貧困の共存をねらったベトナム独自の政策を重んじな

がら、日本独自のインプットを行おうとする姿勢であると認められる。その意味で、オーナ

ーシップとカスタマイズを重んじて融資をするという、運用面の配慮が伺われる。

このように、SAL、SECAL あるいは 近の新しい融資スキームが調整融資の課題、特

41

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に社会的側面、運用面への課題に対応しようとしていることが確認された。理論面(新古

典派理論)での批判あるいは課題についてどう判断するかは容易な事では無いが、ささ

やかな試みとして後の第Ⅲ章で、定量分析によるシミュレーションを行い、課題への対応

可能性の有無について考察した。

(ニ)今後の課題

①運営面の課題:SAL,SECAL の調査から

a. 援助のツールとしての方針を明確にすること

今回の調査においては、データの変化に対応する背景情報として国際的な潮流を取り

上げた。同時に、日本がどのような政策判断を下していたのかについても説明しようとし

たが、可能ではなかった。

SAL 及び SECAL は世界銀行との協調を前提にしながらも、日本の援助方針や情勢判

断を反映して対象国、援助額、形態を選択していたはずである。例えば、日本の ODA 全

体(あるいはプログラム・ローン)の供与傾向とは異なり、アフリカやパキスタンへの調整

融資の案件数や額が目立っている。このようなデータ上に見られる顕著な特徴や変化の

背景には、何らかの判断があったと思われるが、それらを明確に説明する明確な情報が

得られないことが多かった。このことは、調整融資の実施方針や政策判断が外からはよ

くみえず、今後の政策判断や戦略をつくるための教訓情報を得る上で阻害要因となって

いる。

したがって、今後 PRSC などの財政支援型援助を進めてゆく上では、モニタリング・評

価が重要視されていることもふまえ、データを整理し、公開することが必要である。案件

をゼロ件にするなどの顕著な判断があったものは、その判断根拠を明示のかたちで示し

公開することが必要である。

また、協調融資で実施する場合、日本は他のドナーと比較してどの程度の比率で融資

を出しているのか。また、協調融資をする際に、その比率をどのような根拠で決めてゆく

のか。この点も明らかにはできなかった。そもそも、政策改変にかかるコストがいくらなの

かを算出することは容易なことではない。その意味で、援助額の算定が難しい分野であ

る。しかし、他ドナーとの調和を尊重しながら、日本の特色を主張するのであれば、この

種の判断や配慮は重要と思われるし、そのための判断材料としてのデータは必要でない

か。

わが国の ODA もその戦略性が問われ、PRSP への積極的な取組が求められている。

今後、PRSC を財政支援実施のためのツールとして位置づけるのであれば、ツールを使

いこなすための条件を明確にすることが必要である。

b. マクロ経済の安定と貧困削減

前項で、SAL,SECAL のコンディショナリティの変化を分析したが、90 年代を境に社会

開発・ガバナンス分野のコンディショナリティは確かに増加しているが、マクロ経済支援

は社会開発分野より下回ることはなく、5 割前後を常に維持している。したがって、SAL,

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SECAL は徐々に社会開発重視に移行したとはいえ、その基調にあるのはマクロ経済支

援であったと捉えることができないだろうか。

PRSC のロジック・モデルに注目してみよう。ベトナム向け PRSC に注目すると、その目

標は大きく、市場経済への移行、包括的開発、近代的ガバナンスの構築に分けられる。

このうち、市場経済移行を目的として、政策改革の対象となったセクターは、貿易セクタ

ー、公企業セクター、民間セクター、金融セクター、通信セクターで、その範囲は広い。す

なわち、PRSC が開発政策支援を目的としているが、基調にはマクロ経済の安定化があ

るといえるだろう。ここで浮上する疑問は 2 点で、ひとつはロジック・モデルの縦軸が示す

ような発展段階とそれに応じた政策の処方(カスタマイズ)、もうひとつはマクロ経済成長

と貧困削減の関係である。

PRSC が調整融資のアプローチと異なる点として挙げられているものに、カスタマイズ、

すなわち当該借り入れ国の事情に適した開発支援策を作成するという点がある。これは、

①発展段階に応じた政策、②当該国独自の政治・社会あるいは文化的要素を配慮した

政策の 2 点を意味すると考えられる。PRSC の場合、①、②の双方を反映したカスタマイ

ズなのか、あるいは①に偏重しがちなのか、明らかにしてゆく必要がある。

マクロ経済成長と貧困削減の関係であるが、PRSC のロジック・モデルに注目するとそ

の 終目標は貧困削減にある(レベル 5)。そして、その前提にレベル 4、すなわちマクロ

経済の安定と社会的安定の双方が実現していることが挙げられる。では、レベル 4 が実

現すれば、真に貧困削減は実現するのか。この問いは、先の調整融資の批判の①、す

なわち、「理論的視点からの批判:新古典派経済学の基本前提が途上国の現実から乖

離している」に通じるものである。トリックル・ダウンの考え方のみでは貧困層に裨益でき

ないことは、過去の援助経験が物語っている。そこで、政策、制度、ガバナンス面での改

革、社会的弱者支援策の充実を導入しているが、これらとマクロ経済政策がうまく融合す

るか、あるいは相乗効果をもたらすのかは未知である。

ロジック・モデルは政策策定者の資料をもとに、本調査者が議論を連ねて想定したも

のである。その意味で恣意的な面があることは否めない。そこで、科学的な視点を導入

すべく、次章で、計量経済学のモデルを用いて、シュミレーションを試みることにした。

② 今後の調査課題

本調査は調整融資の過去の実績のレビューを行うことが目的であり、ある意味でよう

やく評価や運営方法あるいは政策策定のためのより詳細な調査の下地を作れたというこ

とができよう。したがって、今後の調査課題としては、複数の側面にわたって考えられる。

すなわち、調整融資の効果にかかわる評価、調整融資にかかわる政策を支援するため

の調査、さらには、新規に始められた PRSC など一般財政支援の運営方法にかかる調

査である。

a.調整融資の効果に関する評価

調整融資が開始された当初の主目的は国際収支の改善であるが、短期的には融資

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の効果があるといわれている。しかし、それをサステイナブルにするためには、経済ファ

ンダメンタルズの向上が不可欠であるとして中長期の目標として各種構造改革をコンデ

ィショナリティとして借り入れ国に求めるようになっている。

果たして、このような中長期の目標は借り入れ国において達成され、その効果は発現

しているのか。さらには、借り入れ国である途上国の 大の課題である、貧困問題にい

かに寄与しているのか、あるいは負の影響を与えていないのか。これらについては、世

界銀行等で調査が試みられているが、今後も定性・定量の双方の側面から調査・分析し

てゆく必要がある。

b.政策支援のための調査

本レビューは、過去にわが国において実施された調整融資(SAL 及び SECAL)の全体

傾向を把握しようとしたものであり、その意味で今後の政策策定のための基礎的な資料

を提供すると考えられる。しかし、本報告書をもってして十分に必要な情報を提供できる

とは言いがたい。なぜならば、種々のデータ分析の背景にあるわが国の政策的判断、あ

るいは政治的な意思の動向を説明していないからである。各種データに「背景」としてそ

の時々で関連すると思われる国際援助の潮流や出来事を列挙した。しかし、肝心なのは、

それらの援助の潮流や、借り入れ国のニーズを鑑みながら、わが国としてどのような政

策的判断を下したのかという点ではないか。その判断のゆえに、援助が実施され、結果

(効果あるいは効果無し)が導き出されている。援助戦略や政策のためにフィードバック

することが求められるとすれば、援助効果の有無とあわせその際にどのような政策的判

断をしたのかという情報と対になることで、より有益な情報を提供することになるだろう。

したがって、本調査で得られたデータから、さらにその背景にあるわが国の政策的判断

についても調査してゆくことが必要であろう。

c.PRSC など新たなモダリティの運営と課題に関する調査

PRSC、あるいは PRSB など、財政支援を行うスキームが近年、次々と誕生、実施され

ようとしている。日本は、80 年代より実施してきた調整融資の経験から、慎重な態度をと

りながらも、これらに参加するようになっている。開始して間も無いので、顕在化していな

い課題もあろうが、既に顕著になった課題もある。PRSC にみられるように、運営面にお

いて、借り入れ国およびドナーと合意形成が重んじられ、その結果、念入りな会議が行

われるようになっている。そこに投じられる時間など調整コストは大きい。さらに、日越共

同イニシアティブの例が示すように、PRSC で課す融資条件(trigger)に日本の主張を反

映させようとするならば、ますます調整コストが大きくなることが予想される。このような初

期段階、あるいは実施段階で生じるコストへの対応方法についても考えてゆく必要があ

るだろう。

また、ここでの議論に参加するためには、金融、公共財政、さらには開発経済の潮流

について理解が不可欠であり、専門的知識が必要になる。また、モニタリング、評価にも

参加しているが、ここでも相当量の時間が必要とされることが予想される。このことだけを

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考えても、専門家の確保が必要になることは明らかである。他ドナーも新たな財政支援

に着手するにあたり、専門家の採用を積極的に行っている53。今後、我が国が、財政支

援に参加するのであれば専門家の確保は必要で、また、調整融資のみならず援助一般

に言われていることではあるが、一定期間の勤務期間(契約)が必要である。

PRSC は成果重視の考え方をベースにしている。借り入れ国である途上国が策定した

PRSP(Poverty Reduction Strategy Paper)をもとに目標を設定し、それを達成するた

めの政策を策定、実施プロセス、実施後の効果についてはモニタリング・評価を実施し、

次の政策立案にフィードバックしてゆく。モニタリング・評価には借り入れ国のみならずド

ナーが参加するが、一般に途上国側の統計データが不足する中で、より有効な評価方

法を模索すべく手法を開発している。これらの評価手法の有効性や改善点についても明

らかにしてゆく必要があろう。

その他、単年度制の課題、カスタマイズを強調しているが、どこまで借り入れ国の経済

社会や文化状況を融資条件に反映できるか、また、モラルハザードの問題がどこまで解

消できるのかなど、実務者や専門家からの指摘はあるが、この点についてもさらに調査・

分析が必要であろう。

53 近藤 [2004]。

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図表 40 PRSC ロジックモデル

PRSC (ローン)

Ⅰ.市場経済への移行

レベル2

PRSPに明記

された施策

レベル1

Inputs

レベル3

Outcomes

(第一次)

レベル4

Outcomes

(第ニ・三次)

レベル5

Impacts

借入国ドナー・世銀

プロセス

トリガー実行

政策対話、PRSP作成

PRSCの検討

PRSC1

援助担当機関

援助受入機関、NGO等

世銀

トリガー実行

シングルトランシェ、

 

シリーズでの実施

当該国の状況に応じカスタマイズされた政策提言

借入国によるイニシアティブ・オーナーシップ

成果モニタリング、

PRSCの検討

援助担当機関

援助受入機関、NGO等

世銀

PRSC2

Ⅱ.包括的な開発 Ⅲ.近代的ガバナンスの構築のための施策

貿易セクター

貿易における国際統合

公企業セクター

国営企業改革

金融セクター

金融セクター開発

民間セクター

民間セクター改革

通信セクター

インフラ整備

○貿易障壁の撤廃

(数量割当の撤廃)

(関税の引き下げ)

○税関手続の簡素化とスピードアップ

○国営企業の削減

○国営企業の生産性向上

○国営企業向け不良債権の低下

○銀行セクター規制へのコンプライアンス遵守

○不良債権率の削減

○全企業への同一な規制の適用による平等な競争条件の確保

○通信・IT分野への参入自由化

○合理的な価格設定

①民間部門の付加価値額の向上

①国内産業の国際競争力の強化

 ・海外・国内からの企業立地増加             ・中間財価格の低下と生産費用の削減

 ・生産技術の改善・製品の質の向上  等

②物価の安定と消費の喚起

 ・消費者物価指数の低下                  ・平均消費性向の向上と消費支出の拡大 等

③国内産業連関に基づく 終需要額(個人消費の増加、設備投資の向上等)の増加

④産業各セクターにおける資本蓄積・労働蓄積の増加

⑤輸出産業の国内生産額の増加 ・ 関連輸入額の増加   等

貧困削減

○国際的部品産業の立地

○国際競争に晒される非効率産業部門の淘太

○製造業製品の輸出の増進

○民間部門における輸出の増進

○銀行セクターの収益率の上昇

○銀行セクターの事業規模拡大

○企業・家計の資金調達環境の改善

○金融市場の活発化

○通信・IT分野の活発化

○企業の通信コスト及び企業活動費用の低減

各種社会インフラの整備 

a教育インフラの充実

b保健インフラの充実

c土地市場整備、社会インフラの

充実他

d統合的河川流域計画の実施

e環境保全、環境影響評価実施

fジェンダー対策

a就学率の向上

b乳児死亡率の低下

c土地の適正・公平な分配

dプロジェクト環境影響評価の実施

e土地権利者(LUC)の配偶者双方の名前での再発行割合

○企業の生産額・売上額の増加

○民間部門全体の生産性向上

○民間企業による投資の増加

○企業の新規参入数の増加、起業の拡大

○民間部門における雇用の増加

公共セクター 

a計画プロセスの改善

b公的セクターの効率的な ファイナンシャルマネジメント

c財務アカウンタビリティの確保

d公共行政改革

e法制度の透明性確保

f反汚職対策

g情報のアベイラビリティ確保

a貧困緩和を意識した社会経済計画の策定

b政策立案における省庁間協調

c中期的財務計画の公開

d国際慣行に合致した会計規範の適用

e公共サービス・行政サービスの質の向上

f汚職の低減

g公開用統計データの充実

○計画の迅速化、効率化

○計画にかかる時間・コストの削減

○国家予算の削減

a主要産業セクター(農業を中心)における生産性の向上

b平均余命の向上、社会的な安心・安定の創出

c大気・水質等汚染の軽減

d生物多様性の維持

e女性就業率の向上→労働力の増加

○消費者利益・生産者利益の発生

[消費者余剰、生産者余剰の拡大]

○生活の質の向上

[持ち家比率、ホームレス人口の減少]

PRSC (ローン)

Ⅰ.市場経済への移行

レベル2

PRSPに明記

された施策

レベル1

Inputs

レベル3

Outcomes

(第一次)

レベル4

Outcomes

(第ニ・三次)

レベル5

Impacts

借入国ドナー・世銀

プロセス

トリガー実行

政策対話、PRSP作成

PRSCの検討

PRSC1

援助担当機関

援助受入機関、NGO等

世銀

トリガー実行

シングルトランシェ、

 

シリーズでの実施

当該国の状況に応じカスタマイズされた政策提言

借入国によるイニシアティブ・オーナーシップ

成果モニタリング、

PRSCの検討

援助担当機関

援助受入機関、NGO等

世銀

PRSC2

Ⅱ.包括的な開発 Ⅲ.近代的ガバナンスの構築のための施策

貿易セクター

貿易における国際統合

公企業セクター

国営企業改革

金融セクター

金融セクター開発

民間セクター

民間セクター改革

通信セクター

インフラ整備

○貿易障壁の撤廃

(数量割当の撤廃)

(関税の引き下げ)

○税関手続の簡素化とスピードアップ

○国営企業の削減

○国営企業の生産性向上

○国営企業向け不良債権の低下

○銀行セクター規制へのコンプライアンス遵守

○不良債権率の削減

○全企業への同一な規制の適用による平等な競争条件の確保

○通信・IT分野への参入自由化

○合理的な価格設定

①民間部門の付加価値額の向上

①国内産業の国際競争力の強化

 ・海外・国内からの企業立地増加             ・中間財価格の低下と生産費用の削減

 ・生産技術の改善・製品の質の向上  等

②物価の安定と消費の喚起

 ・消費者物価指数の低下                  ・平均消費性向の向上と消費支出の拡大 等

③国内産業連関に基づく 終需要額(個人消費の増加、設備投資の向上等)の増加

④産業各セクターにおける資本蓄積・労働蓄積の増加

⑤輸出産業の国内生産額の増加 ・ 関連輸入額の増加   等

貧困削減

○国際的部品産業の立地

○国際競争に晒される非効率産業部門の淘太

○製造業製品の輸出の増進

○民間部門における輸出の増進

○銀行セクターの収益率の上昇

○銀行セクターの事業規模拡大

○企業・家計の資金調達環境の改善

○金融市場の活発化

○通信・IT分野の活発化

○企業の通信コスト及び企業活動費用の低減

各種社会インフラの整備 

a教育インフラの充実

b保健インフラの充実

c土地市場整備、社会インフラの

充実他

d統合的河川流域計画の実施

e環境保全、環境影響評価実施

fジェンダー対策

a就学率の向上

b乳児死亡率の低下

c土地の適正・公平な分配

dプロジェクト環境影響評価の実施

e土地権利者(LUC)の配偶者双方の名前での再発行割合

○企業の生産額・売上額の増加

○民間部門全体の生産性向上

○民間企業による投資の増加

○企業の新規参入数の増加、起業の拡大

○民間部門における雇用の増加

公共セクター 

a計画プロセスの改善

b公的セクターの効率的な ファイナンシャルマネジメント

c財務アカウンタビリティの確保

d公共行政改革

e法制度の透明性確保

f反汚職対策

g情報のアベイラビリティ確保

a貧困緩和を意識した社会経済計画の策定

b政策立案における省庁間協調

c中期的財務計画の公開

d国際慣行に合致した会計規範の適用

e公共サービス・行政サービスの質の向上

f汚職の低減

g公開用統計データの充実

○計画の迅速化、効率化

○計画にかかる時間・コストの削減

○国家予算の削減

a主要産業セクター(農業を中心)における生産性の向上

b平均余命の向上、社会的な安心・安定の創出

c大気・水質等汚染の軽減

d生物多様性の維持

e女性就業率の向上→労働力の増加

○消費者利益・生産者利益の発生

[消費者余剰、生産者余剰の拡大]

○生活の質の向上

[持ち家比率、ホームレス人口の減少]

出所 外務省資料より作成

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