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スギ林フラックスタワーの観測開始 - Gifu...

Date post: 04-Jul-2020
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-1- 1 3 4 COE 5 5 6 目次 スギ林フラックスタワーの観測開始 岐阜大学 流域圏科学研究センター スギ林の中に立つフラックス観測タワー
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Page 1: スギ林フラックスタワーの観測開始 - Gifu University年間,本COEプログラムを生態系生態学の拠点 とするべく,努力したい。私は学生の頃から植物の成長と環境条件との関

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スギ林フラックスタワーの観測開始 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1

スギタワーサイトにおける土壌呼吸速度の自動連続測定の開始 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3

衛星生態学創生における植物生理生態学の役割 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4

COE 研究員の紹介 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5

活動報告:研究集会の開催 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 5

編集後記 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 6

目次

スギ林フラックスタワーの観測開始

岐阜大学 流域圏科学研究センター

スギ林の中に立つフラックス観測タワー

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「衛星生態学創生拠点」プロジェクトは,精査

域として,岐阜県高山市の日影平山西側の大八賀

川流域を選んで研究が進行中である。そこの山頂

近くの標高1400m 付近には10年以上前から観測

を続けている産業技術総合研究所の CO2 フラッ

クス観測タワーや岐阜大学の生態観測櫓などの設

備があるが,今回,もう一つの拠点施設として標

高 800m 付近の生井地区の杉林に,岐阜大学のフ

ラックス観測タワーが設置された(表紙)。

このタワーでは,図 1 に示すような計測器を装

備し,森林の機能の評価としての森林と大気との

間の CO2 や熱・水蒸気・運動量などの交換量の

観測や,そのモデリングのために必要な林外林内

の風速・気温・湿度などの気象要素,林内外での

光環境,降水量,土壌水分や地温などを通年で観

測する。これによって,既存のいわゆる高山サイ

ト以外に,人工の杉林でも生態系機能評価のため

のグラウンドトゥルースを取得し,詳細な観測に

基づいて,森林生態系のモデリングを行う。

人工の杉林は,この地区に限らず日本の代表

的な植生の一つであるが,実はこの種の観測

は多くない,日本のフラックス観測地点を集め

た AsiaFlux Webpage(http://www-cger2.nies.go.jp/

asiaflux/indexJ.html)をみると森林総合研究所の鹿

北流域試験地のところに樹種スギ・ヒノキとある

だけであり,この高山の杉林タワーはフラックス

観測だけでも貴重な観測点となると期待される。

写真に見られるように急傾斜地で,人家や道路か

らも遠くないなど計測上の困難はいくつか予想さ

れるが,むしろこれが一般的な姿であるのでここ

での評価とモデリングを目指す。

観測データの取得は, 5 月上旬の時点でまだ調

整中の機器もあるが,すでに開始しており,さら

によりよい評価とモデリングに必要な情報の取得

のために,今年度も計測器を追加して観測を強化

する。また,タワーまでネットワーク環境が整う

ので,夏には岐阜大学にいてもデータのチェック

などができるようにする予定である。

【モデリング解析・評価グループ

玉川一郎(流域圏科学研究センター 助教授)】

図 1  スギ林フラックスタワーの計測器配置図(赤印は,配置予定)

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スギタワーサイトにおける土壌呼吸速度の自動連続測定の開始

生態プロセス研究グループでは大八賀川小流域

の森林研究サイトの一つであるスギタワーサイト

において土壌からの二酸化炭素放出(土壌呼吸速

度)の自動連続測定を始めた。土壌呼吸を測定す

るための自動開閉チャンバーシステム(Automated

Open-Closed Chamber;以下 AOCC)の設置を2005

年 4 月21日~25日の間に行った。前号のニュース

レターに報告した韓国 KoFlux サイトである光陵

(Kwangnung)で使用しているシステムと同じもの

を設置するために,韓国からの李載錫教授と学生

2 名(D 2 の徐尚旭君と M 1 の開允敬さん)が手作

りのチャンバーとコントロールシステムのチャン

バーを持ち来日し,日本学術振興会特別研究員の

安立美奈子と李美善の 5 名で作業を行った。チャ

ンバー,ポンピングシステム及びタイマーシステ

ムで構成されている AOCC は,直流モータを使っ

た比較的簡単な構造の自動開閉システムである。

土壌表面に設置された 6 個のチャンバーは,そ

れぞれ30分間隔で測定され,一巡りするのに3時

間を要するので,一日で 8 回の測定が可能である。

チャンバーは北斜面に 3 つ,東斜面に 3 つ設置さ

れた。また,チャンバーは測定時には蓋が閉じ,

非測定時には蓋が開いているので,チャンバー内

の環境条件は比較的自然の状態に近く保つことが

できる(風や降雨の影響を受ける)。

赤 外 線 分 析 装 置 2 台 に

より大気中とチャンバー内

の二酸化炭素の濃度差を測

定することにより土壌呼吸

速度を把握することができ

る。右写真の真ん中にはポ

ンプシステムとタイマーシ

ステムが見えるが,このシ

ステムによりチャンバーの

自動開閉が制御できる。

韓国からの研究者との有意

義な交流を行ったことにより

国際共同研究の絆を深めるこ

とができた。

【生態プロセス研究グループ

李 美善(流域圏科学研究センター COE 研究補佐員)】

(李載錫教授が撮影した設置作業中の様子)

(スギサイトの AOCC チャンバーの様子)

(プロット設置後の様子)

(八角形のチャンバーの様子)

(スーパーハウス内に設置

されたシステムの様子)

(韓国からの参加者 3 名と生態プロセス研究

グループの交流会後の集合写真)

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衛星生態学創生における植物生理生態学の役割

2004年夏に21世紀 COE

プログラム「衛星生態学

創生拠点」が発足して,

早くも 9 ヶ月が経とうと

している。流域圏科学研

究センターの機関研究員

としてプログラム立案か

ら発足に携わり,去る 4

月 1 日 に COE 研 究 推 進

担当の助教授に採用していただいた。これから 4

年間,本 COE プログラムを生態系生態学の拠点

とするべく,努力したい。

私は学生の頃から植物の成長と環境条件との関

係における植物の形態的・生理的機能の役割を理解

することをテーマとして研究を続けてきたが,2003

年 4 月に岐阜大学流域圏科学研究センターの機関

研究員に着任してからは高山試験地の森林生態系

の炭素循環研究に関わるようになった。人の縁とは

不思議なもので,高山試験地で共同観測を始めた西

田顕郎さん(筑波大学・農林工学系)とディスカッ

ションしていた構想が,本 COE プログラムの立案

に少なからず寄与した。その構想とは,植物の生理

生態学的な特徴(葉での光の吸収/反射特性と光合

成特性との関係,葉の角度による群落への光の入射

特性,葉の形態的・生理的フェノロジーなど)を十

分に考慮した植生リモートセンシング観測を行い,

森林の構造と機能の理解を進めようというもので

あった。本 COE プログラムの最終的な目標は,衛

星リモートセンシングと気象・生態モデリングによ

り広域の生態系機能(主に炭素・水の動態)を高精

度で推定する研究手法を確立することにある。しか

し,そのためには生態系機能のメカニズム(=生態

プロセス:植物の光合成や呼吸などの生理生態学的

特性や土壌呼吸,植物バイオマス分布などの環境条

件との関係など)を詳細に観測し,その結果を衛星

リモートセンシングにより検出可能な光学的指標

と照合したり,気象・炭素動態モデリングによる時

空間スケールの統合が必要となる。

植物を中心とする生態系(森林,農耕地など)の

炭素動態および収支の観測とメカニズムの解析を広域

スケールで行うためには,炭素吸収過程である光合成

能と活性,葉面積の空間分布と季節変化のモニタリン

グが鍵となる。衛星リモートセンシングにより生態現

象を「読める」ようにするためには,生態学・生理生

態学的に説明可能で普遍的な指標の利用が不可欠であ

り,そのためにはいくつかの植生タイプ(機能タイプ)

を対象とした生態プロセス研究とリモートセンシング

観測を行うことによって綿密なデータ検証と観測・解

析手法の試行錯誤が当面の課題となる。このデータ検

証と照合の過程では,モデルシミュレーションによる

時空間スケールの調整が重要な役割を持つ。

植物生理生態学的なアプローチを主とする私の

研究面での当面の課題は,森林を構成する主要樹

種の個葉生理生態学的特性(光合成,呼吸,クロ

ロフィル含量)とその季節変化,および個葉スペ

クトル特性の観測によって,個葉光合成能をリモー

トセンシングによってモニタリングするための

データを得ること,個葉生理生態学的特性に基づ

く群落光合成モデル構築のためのパラメタリゼー

ションを行うこと,森林内光環境や葉群分布の観

測結果にもとづいて,衛星リモートセンシングに

よる吸光係数(fPAR)や葉面積指数(LAI)のモ

ニタリング精度向上を図ることである。特に落葉

広葉樹林では,環境や植物の季節性(図)の考慮

が欠かせない。林冠木の葉のフェノロジーは,自

らの光合成生産力だけでなく,森林内の光環境を

介して林床植物の光合成生産に影響を及ぼす。そ

の過程の理解を深めるためには,丹念な地上観測

とリモートセンシング観測データとの照合が欠か

せない。雪解け直後から落葉期にかけて頻繁に森

に入って観測を続けることを通じて,また,多く

の研究者の方々との共同研究を通じて,森林の構

造と機能を測るために必要な知恵を得たいと思う。

【生態プロセス研究グループ

村岡裕由(流域圏科学研究センター 助教授)】

図 林冠木であるダケカンバとミズナラ

の樹冠頂上の葉の最大光合成速度の

季節変化(2003年,2004年)。

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COE 研究員の紹介

2005年 4 月 1 日付けで

COE 研究補佐員として

流域圏科学研究センター

に着任しました齋藤琢(さいとうたく)です。学

類(学部)・修士課程は筑波大学の自然学類およ

び環境科学研究科に在籍し,気象学を専攻して

いました。その後,九州大学大学院生物資源環

境科学府森林資源科学専攻の博士後期課程に移籍

し,農学の博士号を取得しました。学類・修士課

程では,衛星データや再解析データを利用して熱

帯の対流活動や植生についての研究を行ってきま

した。博士課程では,ボルネオ熱帯雨林をフィー

ルドとするプロジェクト研究に参加し,生態系炭

素循環の定量的評価に関する研究を行ってきまし

た。また,九州大学の研究室では,様々な研究分

野(植物生理生態学,水文学,生物環境物理学な

ど)を専門とする研究者に囲まれていたので,私

の専門とする森林気象生態学以外の研究にも携わ

る機会を得ることができました。これらの経験を

本 COE 研究に活かしていきたいと思います。

今後は,各研究グループの研究者や学生と連携

しながら,高山第 2 フラックスタワーにおける微

気象・フラックス観測を行い,得られたデータを

基にスギ林における生態圏-大気圏間の物質動態

の評価と生態系プロセスベースドモデルの構築を

行う予定です。

活動報告:研究集会の開催

2005年 2 月11日に,『高山セミナー(第 7 回研究交

流会)』と称して「衛星生態学創生拠点」と「高山

研究会」の合同公開セミナーを岐阜大学キャンパス

にて開催した。高山セミナーとは,流域圏科学研究

センター高山試験地での森林生態系の炭素動態研究

プロジェクトに参加している(独)産業技術総合研

究所,筑波大学,(独)農業環境技術研究所,そし

て流域圏科学研究センター(小泉研究室,秋山研究室)

のメンバーによる研究交流および情報交換を目的と

して毎年冬に岐阜大学にて開催する研究小集会であ

る。「衛星生態学創生拠点」は高山の森林生態系一

帯の炭素動態研究を主要な研究テーマとしているた

め今回は合同セミナーとして開催し,高山試験地(通

称,高山サイト)での研究成果および今後の展開に

関する話題提供を中心に,研究者交流を行った。セ

ミナーには上記の研究機関に加えて,(独)森林総

合研究所や地球フロンティア研究センターなどの研

究者の出席もあり,約40名が集まる集会となった。

10件の話題提供およびその後の総合討論を通じて,

これまでに高山サイトで研究を展開してきた研究者

および COE 関係者の間で研究の方向性について議

論し,協力体制を充実させていくことを確認した。

本セミナーでの講演は以下の通りである。

高山サイトでの研究の流れ~衛星生態学創生拠点が目指すもの小泉 博(岐阜大学・流域圏科学研究センター・衛星生態学創生拠点リーダー)

衛星生態学における生態プロセス研究の役割-植物の生理生態を例に村岡裕由(岐阜大学・流域圏科学研究センター)

高山サイトにおけるN2Oの発生及びラドンを用いた温室効果気体の大気-土壌交換量の推定について石島健太郎(産業技術総合研究所)

モデリング解析・評価グループ

齋藤 琢

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本稿が皆様の下に届く頃には,スギ林の第 2 フラックスタワーも全ての観測機器が設置され,観測が開始されていることと思います。スギ林と言えば,今年のスギ花粉は非常に多いと報道されていましたが,スギ花粉症でお悩みの方々の症状はどうだったのでしょうか。 以前知人より,衛星画像でスギ花粉の分布は分からないかと問われたことがあります。一般の方の関心が深い身近な問題が,衛星生態学で解決できるようになったら良いなと,ふと思いました。スギならぬヒノキのアレルギーに苦しみつつ。 (児島)

岐阜大学 流域圏科学研究センター COE 事務局

〒501-1193 岐阜県岐阜市柳戸1-1

TEL:058- 293- 2081 FAX:058- 293- 2062

URL: http://www.green.gifu-u.ac.jp/sateco/

● 連 絡 先 ●

高山サイトにおける航空機撮影(CASI-3)と処理結果及びリモセングループの取り組みについて児島利治(岐阜大学・流域圏科学研究センター)

デジタルカメラを用いた森林の LAI 推定三上寛了(筑波大学・生物資源学類)

高山サイトにおける定点景観映像時系列を用いたフェノロジーの解析とその応用蒲生 稔・前田高尚(産業技術総合研究所)

高山サイトにおけるリモセン地上検証観測の現状と次年度計画西田顕郎(筑波大学・農林工学系)

高解像度気象モデリングによる中部地域の気象要素計算とその生態系研究への応用吉野 純(岐阜大学・工学部)

高山サイトにおける炭素循環シミュレーション伊藤昭彦(海洋研究開発機構・地球環境フロンティア研究センター)

“統合的炭素収支研究”これまでの成果と今後の研究展開~高山サイトを中心に山本 晋(産業技術総合研究所)

高山セミナー参加者


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